森の中はいろんなことが不思議な世界。
その奥底で出会うのは「とてもすごい存在」のようで。
成すべきことを成した王女さんの前にまたしてもピンチの予感が……、そんなお話。
本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』の二次創作です。
ソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した二次創作です。
第21話は「1日目」「2日目」「3日目」「4・5日目」の4回に分けて公開します。
『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「王女」→「王女さん」
PC「飛行士」→「飛行士さん」
等々となっています。
先に記しとく設定、
作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
と言うことで。
使った(引いた)カード
キャラクター:皇女(ストーリーの都合上、作中では「王女」とする)
イントロダクション:空から女の子が!
シーン1:無人島で生き抜ける?
カード1:光:発光してる
シーン2:希望への船出
カード2:闇:秘薬
シーン3:謎の社交クラブ
カード3:光:相棒
シーン4:巨人の森
カード4:光:パトロン(NPC)
シーン5:死を告げるサイン
カード5:闇:盗賊団
クライマックス:革命の夜
クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.
3日目。
窓から入る日の光で目が覚めました。
夜が明けてすぐのようです。
ベッドから出ます。
私が動くごそごそとの音で女の子も目を覚ましました。
「起こしてしまいましたわね、ごめんなさい」
「あ、いえ、
もう起きた方が良いですね」
女の子が言うには、森に入る、けれども特別な準備はいらない。
女の子、森の妖精が言うのだからそうなのでしょう。
宿の食堂で朝食を摂って、部屋に戻って胃を落ち着かせて。
「では行きましょう!」
「はい!」
宿を出て、街を出るまでは私が前を歩きました。
街を出た後は交代、女の子に前を歩いてもらいます。
街を離れて森に入ります。
初めは木はまばら、日の光が地面に届いています。
30分ほど歩いたでしょうか。うっそうとした森の中を歩いています。
さらに進むと緑も鮮やかな原生林になりました。
森の奥へ奥へと入っていきます。
足下、地面が苔で覆われているところが時々。
じきに苔の面積が大きくなります。
「ちょっと待って頂戴」
「何でしょうか?」
女の子が振り返りました。
「苔を踏まないと歩けませんわ。
苔がここまで育つには相当な時間がかかるはず。
傷つける訳にはまいりません」
女の子の顔に笑みが浮かびました。純粋に喜びの笑顔。
「森を思いやる心のある人には森を傷つけることはできません」
「そうなのですか?」
女の子はこくり、とうなずきました。
傷つけることはできない、そう言われましたがなるべく踏まないように、気をつけて歩きます。
さらに森の奥へ。
いつの間にか「魔法の森」とでも言うような森に入り込んだ気持ちになりました。
まわりの木も草も巨大。
まわりが巨大になったのか、私が小さくなったのか、不思議に感じます。
「大樹の森」なのですからこれくらいのことは当たり前なのかもしれません。
「!
動かないでください!」
女の子の声に私はびくりとしました。
「どうしたのですか?」
「苦しい感じが近づいてきます」
どう言うことでしょうか?
わずかの後、どすん、どすん、と何か大きな音。歩く音のようです。
巨大な獣、狼が現れました。普通の狼の10倍くらいはあるでしょうか。
グルルルルと吠えようとしています。
恐怖を感じるべき時なのかもしれませんが、まったく怖くありません。
この狼、何かを耐えているようです。
女の子は狼を撫でて落ち着かせようとしています。
?
狼が来た方を見ました。
赤い何か、おそらく血、が点々と続いています。
「あれを見て、けがをしているのですわ」
私が指した方を女の子が見ます。
女の子は、はっとして狼の足を見ました。
狼は右の前足をかばっていました。
「横になってもらえないかしら?」
「はい、言ってみます」
狼を撫でつつ女の子は何かを言います。
女の子の言葉を聞いてか、狼が体を横たえました。
狼の足の裏に木が刺さっていました。
「木が刺さっていますわ。
今から抜きます。落ち着かせて。
こちらを見ていた女の子がこくり、とうなずきました。
木をしっかりと持って、ぐいっと引き抜きました。
ガウッ、と吠えて狼の体が揺れました。
木は抜けましたが傷口から血が流れています。
これでは傷が痛いままです。
ふっと気づきました。「秘薬」です。
「人間には過ぎた」だったはずですが、この森、大樹の森は人以上の存在。
その森の狼になら使っても大丈夫でしょう。
ガラス瓶の中の液体を少し手に出して傷口に塗ります。
秘薬がついた傷口から、しゅうしゅうと煙が上がります。
大丈夫でしょうか? 不安になります。
「痛がってはいませんか?」
「落ち着いてます」
そう、ではたくさん塗りましょう。
手にいっぱい秘薬を出して傷口に塗ります。
しゅうしゅうと出る煙は先ほど以上。
驚いたことに傷口がどんどん治っていきます。
そのあと二度、秘薬を塗ると傷は完全に癒えました。
女の子から問われました。
「もう大丈夫?」
「ええ、傷は治ったわ」
私の声を聞いて、女の子は狼を立たせました。
狼に苦しそうな感じはありませんでした。
私たちに感謝をするようなしぐさをして、狼は森の中に消えていきました。
この森は珍しいものだらけです。パトロンなど要りません。
いえ、この森にお金の話を持ち込んではいけません。
再び歩き始めます。
うっそうとしている森、日の光が届くはずのない森の中ですがなぜか暗くありません。
不思議な森です。
「もうすぐです」
「そう言えばどこに向かっているの?」
私は行き先のことは何も考えずに、女の子の後を歩いていました。
「精霊王様のところです」
「もしかして、この森でいちばん偉い方かしら?」
何かすごい方に出会えそう、そう感じました。
「はい、大樹の森の主様です」
言葉を返そうとしたところで、森が途切れました。
とてつもなく広い空間と、その中心にそびえたつ巨木。
女の子について巨木に近づきます。
ある程度近づいたところで女の子は地に膝を着きました。
私もあわてて膝を着けて頭を下げました。
ふわり、と光を感じました。
「なに、堅苦しいことはするな。
頭を上げて、それに、立ちなされ」
何か安心させられるような優しい声。
言われるままに頭を上げて前にいるであろう「方」を見ます。
小柄な男性。老人の姿です。
ですが、特別な方に違いありません。
「ほれ、立ちなされ。
わしにはそこまでの礼儀はいらぬ」
私は男性に言われるがままに立ち上がりました。
隣にいた女の子も立っていました。
「あなたが大樹の森の、……主様、ですか?」
「まあ……、そうじゃの」
男性はにこにこと答えます。
女の子が言います。
「大樹の森の精霊王様です」
!
精霊王!
つい先ほど女の子が言っていました「精霊王」と。
精霊王、神と同じくらいの力をもつ存在です。
「精霊王様、でしたか。
無礼をお許しください」
私は改めて膝を着きました。
「言ったではないか、
そこまでの礼儀はいらぬ。
立ちなされ」
「では」
私は立ち上がります。
精霊王様は私を見て話し始めました。
「この森のものが世話になったな。
好奇心ゆえに人の領域に出て人に捕らえられた妖精と」
女の子をちらりと見る。と言うか、軽くにらむ。
「それに足を痛めた獣と。
感謝せねばならん」
「いえ、私は私の思うがままにしたこと。
大それたことは行っておりません」
精霊王様は、ふふふ、と笑う。
「森のものの礼をせねばならぬの。
しかし……、おぬしには無用か」
「それは……?」
やはり私はまだまだと言うことでしょうか。厳しい言葉です。
私の考えを読み取ったかのように精霊王様が言いました。
「わしが礼をするとなると『森の精霊王』の力を授けることになる。
おぬしは受け取れぬであろう」
「確かに……、その通りです。
しかし、なぜそのことを?」
精霊王様は笑顔で話します。
「『赤い星』の折、わしもいたのでな」
はっとしました。
まったく気がついていませんでした。
あわてます。
「知らなかったとは言え重ね重ねの無礼を……」
私の言葉は精霊王様にさえぎられました。
「だから礼儀はいらぬ」
精霊王様は少し考えます。
「わしの力は授けられんとして……。
では『真実のかけらを見る力』ではどうじゃ」
「『真実のかけらを見る力』、……ですか?」
精霊王様の笑顔はまったく崩れません。
「さよう、真実を見ることができる。
しかし……、真実とは時に残酷じゃ。
ゆえに「そのかけらを見る力」。
かけらを見た上で真実を見るのもよし、見ぬのもよし。
それはおぬしが決めること」
「ありがたきお言葉。
では『真実のかけらを見る力』、授けていただきます」
「よし、
では目を閉じよ」
言われるままに目を閉じます。
ふわり、ふわり、両目のまぶたが柔らかな空気で撫でられました。
「ほれ、これで良い。
目を開けなされ」
私は目を開きました。
目の前には森の精霊王様。老人の姿があります。
時折、精霊王様の姿が違うように見えます。何かもっと巨大な……。
精霊王様を見ようと意識を集中させます。
精霊王様、老人の姿が消えました。
代わりに、光輝く巨木が見えました。
巨木の葉から金色の光、銀色の光が降り注いでいます。
これが……、森の精霊王様の本当の姿……。
私は何も言えません。
と、元の景色に戻りました。精霊王様は老人に見えます。
「わしの真実を見たようじゃな。
真実を見るのは悪いことではない。
じゃが、重ねて言うが、真実は時として残酷となる。
そのこと、決して忘れてはならぬ」
「はい、その旨、しっかりと心に刻みます」
新たな力が手に入りました。
力を手に入れるたびに自分が怖くなります。
授かった力を使うのは人の力が及ばないときだけ。
それ以外で使うと私は破滅してしまうでしょう。
女の子、森の妖精が大樹の森に帰って、私がすべきことは終わりました。
後は森を出るだけ。
ではありません。もうひとつすべきことが。
秘薬です。これは「人間には過ぎた」もの。
人間の領域ではなく精霊の領域にあるべきでしょう。
秘薬を精霊王様に差し出します。
「秘薬か?」
「はい、これは私には過ぎるもの、
精霊王様がお持ちください」
秘薬を精霊王様に手渡しました。
「うむ、では受け取ろう」
これで今度こそ終わりです。
精霊王様に対します。
「では、私はこれにて失礼致します」
「そうじゃな、
しかし……、帰り道は分かるか?」
はっとしました。来るときは女の子、森の精霊に着いてきましたが……。
「ふふふ、すまんことを聞いたな。
森から出るにはおぬしが思う方へまっすぐに進め。
さすれば森を出られる」
「ありがとうございます。
では」
私は精霊王様と女の子、森の妖精に一礼して巨木を後にしました。
言われた通り、森の中をまっすぐ歩きます。
進むにつれて森の様子が、原生林になり、うっそうとした森になり、木がまばらになり、森を出ました。
森を出ると夕方になっていました。
これで私のすべきことは全部です。
後は宮殿に戻れば終わりです。
何も言わずに勝手に宮殿を飛び出しましたが、理由を言えばいくらか叱られるだけで済むでしょう。
そのようなことを考えつつ街に戻り、宿に戻りました。
宿に入り、部屋に向かいます。
部屋のドアを開けようとしたところで、足下の「何か」に気づきました。
床に5輪、花が置かれています。
何もしていない花から始まり、花びらを少し摘んだ花、半分くらい摘んだ花、全部摘んだ花。
最後は花びらが全部摘まれた花が踏みにじられていました。
北方の暗殺者の符号にこのようなのがありました。
私の記憶に間違いがなければ、何人かで襲撃してなぶり殺しに、です。
少し悩もうと思いましたが、廊下、ドアの前に立ちっぱなしで考え事、目立ってしまいます。
床にあった花を全部持って、部屋に入りました。
部屋に入って改めて悩みます。
符号が置かれた、と言うことは、暗殺者は絶対に明日、私を襲撃します。
ちょっとした護身術ならできますが、プロが何人かで襲ってくる。
いくらか足掻くくらいにしかならないでしょう。
いちばん楽観的なのは、飛行機械まで走って飛行機械で一気に逃げる、でしょう。
もちろん、上手く行くとは思えません。ですが、あきらめたくはありません。せめてそれくらいは……。
これ以上は考えても無駄です。宿の食堂で食事をして、早々にベッドに横になりました。
続
『冒険すること、果たすこと』、「3日目」はこれにて閉幕です。
森の妖精が大樹の森に戻って、巨大な狼の傷を癒やして、大樹の森の精霊王さんから新たな力を授かった王女さん。
これでめでたしめでたし、にはならなくて、北方の暗殺者の影が現れました。
このピンチの先には何があるのか。
次回は、第21話のラスト「4・5日目」です。
次回もご贔屓のほどよろしくお願い致します。