どうにもならないけど、どうにかしないとダメな訳で。
そんなところに意外な助けが現れて。
でもその先には新たなピンチが。
王女さんが果たすべきこととは……、そんなお話。
本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』の二次創作です。
ソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した二次創作です。
第21話は「1日目」「2日目」「3日目」「4・5日目」の4回に分けて公開します。
『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「王女」→「王女さん」
PC「飛行士」→「飛行士さん」
等々となっています。
先に記しとく設定、
作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
と言うことで。
使った(引いた)カード
キャラクター:皇女(ストーリーの都合上、作中では「王女」とする)
イントロダクション:空から女の子が!
シーン1:無人島で生き抜ける?
カード1:光:発光してる
シーン2:希望への船出
カード2:闇:秘薬
シーン3:謎の社交クラブ
カード3:光:相棒
シーン4:巨人の森
カード4:光:パトロン(NPC)
シーン5:死を告げるサイン
カード5:闇:盗賊団
クライマックス:革命の夜
クレジット
ゲーム名:のびのびTRPGスチームパンク
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.
4日目。
窓から入る朝日で目が覚めました。
起きてすぐに暗殺者のことを考えてしまいます。
けれど、どうにもならないことです。
食堂で少々早い朝食を食べました。
この後……、宿にいてもどうにもなりません。
飛行服に着替えて、着替えた服をリュックに入れて部屋を出ます。
宿のカウンターでチェックアウトして宿から出ました。
まだまわりには誰もいません。
飛行機械の離着陸床に向かいます。
離着陸床の横の駐機スペース……。
!
私の飛行機械がありません!
考えが甘すぎました。悔やむしかありません。
そんな私のまわりに人の気配が現れました。
まわりを見ると暗殺者らしきのが5人。私を囲んでいます。どう考えても足掻くしかありません。
あきらめるしかない。心が折れ始めました……。
「いくぞーっ!」
「おりゃーっ!」
突然に大きな声がたくさん。
私を囲んでいる暗殺者5人、それをさらに囲むように10人かそれ以上が現れました。
暗殺者1人を2人か3人かで相手にします。
現れた人たちはそれぞれが武術に長けているようです。
人数のこともあり、暗殺者相手でも余裕です。
暗殺者5人が倒れたのを見て、その中のひとり、グレーの髪の年配の男性が私の手をとって走り出しました。
私は一緒に走るしかありません。
「すまねぇ、理由は後で話す。とにかく走れ」
「分かりましたわ」
私も全力で走ります。走り始めて少し。大型船が見えてきました。
どうやらその船を目指しているようです。
船まで走り、そのままタラップを駆け上がります。
「あんた、こっちだ」
男性に続いて船の中を走ります。
向かった先はブリッジでした。
男性は乱れた呼吸をすぐに整えました。私も整えます。
「全員そろってるな?」
「回収確認しました」
男性にクルーのひとりが言葉を返します。
「発進!
すぐに高速航行だ!」
「了解!」
船が動き始めました。高度を上げつつ加速。速度がどんどん上がっているようです。
ようやく息が整いました。男性に質問をぶつけます。
「理由を聞かせていただけるかしら?
あなたたちは何者ですの?
私に何をしたいの?
私の飛行機械を動かしたのはあなたたちなの?」
男性が話し始めます。
「簡単に説明できるところから言う。
あんたの飛行機械はこの船に格納してる。今は整備中だ。
で、俺たちはブラスト盗賊団だ」
それを聞いて私は男性の話をさえぎりました。
「ブラスト盗賊団ですって!?」
ブラスト盗賊団。
まっとうな船には手を出さない。後ろ暗いところがある船だけを狙う。
義賊と呼ばれることもある有名な盗賊団です。
ですが、ブラスト盗賊団のなわばりは王国周辺のはず。どうしてこんなところに?
「で、理由だ」
男性が改めて話し始めました。
「あんたの国の偉いさんのひとりが国を乗っ取ろうとしてる。
けど、王様を失脚させるにはそれなりの理由がいる。
だから「市民の不満」ってのを国に向けさせて、表向きは「革命」ってことにするつもりだ。
とは言え、変なうわさを流したりしても市民はそうそう動かない。
そんなもんだから、北方の魔術師だかを使ってそれなりの数の市民を操って、そいつらをはでに動かしてまわりを煽って、結果的に動いちまった」
私は唖然とした後、腹が立ってきました。
「そんな無茶苦茶な、許せませんわ!」
「まあ待ちな、まだ続きがある。
その動いた市民ってのが今日の夜、宮殿前の広場に集まる。
首相と王様が説得することになってるが、魔術師に操られてるやつがいる以上、説得じゃ収まらねぇ。
後は集まった連中のいくらかが無茶やり出して警察じゃどうにもならなくなる。
仕方なしに軍を動かす。そうなりゃ国は滅茶苦茶だ」
男性は冷静に説明する。
私の疑問。
「それがどうして私を助けるのとつながるのかしら?」
「それだ、向こうさんの都合だと、あんたに出てこられちゃ困る。
だから暗殺者を雇った。
逆に言えば、あんたが出ればどうにかなる。
そんなもんだから、俺たちはあんたを助けた」
でも、どうして盗賊団が国を? それに私を?
正直に聞きました。
「どうして盗賊団が国を守るのですか?
それに私を守るのですか?」
「俺たちには深い訳はねぇな。
あえて言うなら……、まっとうに動いてるとこをわざわざ潰しにかかる、てのには納得できねぇ。
けど、俺たちが出ても何もできねぇ。
だからあんたに動いてもらう。
首相の説得と王様の説得が終わった後、あんたが説得するんだ。
それでどうにかなる」
まったく、こんな迷惑なこと……。
でも……、私は王女です。
国のために動くのは使命です。
最後の疑問。
「集まるのは今夜とのことですが、間に合うのですか?
このクラスの船だと、どう考えても間に合うとは思えません」
私の問いに男性は自信たっぷりに答えます。
「大丈夫だ。
こっちに来てみな」
男性の後について、クルーのひとりの席に行きます。
「これを見な」
男性が制御パネルの数字のひとつを指します。
指されたのはスピードメーター。
その数値は……、大型船にはありえない数字です。
ですが、このスピードでしたらなんとか間に合います。
そこから首都に着くまでは待つしかありません。
時々、時計を見ます。見てもどうにもならないのは分かっています。ですが見てしまいます。
日が暮れてきました。
クルーのひとりが静寂を破りました。
「目標ポイントまで1時間」
その声の後はとにかく時計が気になります。
時間がすぎるのがひどく長く感じます。
ようやく30分すぎました。
日はもうしっかりと沈みました。
のこり15分になりました。
男性が言葉を出しました。
「あんた、そろそろ準備だ。
ついて来な」
男性の後をついてブリッジを出ます。
船の後部へでしょうか、歩きます。
ドアをいくつか通って、最後に頑丈そうなドアを抜けると広い空間に出ました。
「……ここは?」
「格納庫だ」
クルーがふたり、メカニック担当でしょうか、がこちらに来ました。
「準備はどうだ?」
「全部問題なしです」
クルーが自信のある声で答えます。
「こっちです」
クルーの後を男性と私が続きます。
そこには……、私の飛行機械がありました!
「さすがにこの船で首都には行けねぇ。
ここから先は自分で飛んでくれ。
ほら、早く乗りな」
「ありがとうございます!」
お礼を言って飛行機械に乗り込みます。
『目標ポイントまで5分』
船内通信が聞こえます。
男性とクルーふたりが格納庫から出ました。
飛行機械の下、船体下部のパネルが開きます。
飛行機械を支えているアームが伸びます。
私は大型船の下、空に出ました。
『アーム開放まで1分』
ジェネレーターの出力を上げていきます。
『開放カウントダウン、5、4、3、2、1、開放』
飛行機械が大型船から離れました。
ガクン、と軽い衝撃。
ゆらりと機体が揺れました。ですが、すぐに安定します。
少し様子を見るために、機体を上下左右に揺らします。まったく問題ありません。
大型船が離れて行きます。
「ありがとうございます」
大型船に無線を飛ばします。
『上手くやりな』
通信が返ってきました。
機首を首都に向けます。
ジェネレーターの出力を上げられるところまで上げます。
飛行機械の速度を上限いっぱいで飛びます。
首都の明かりが見えてきました。
そこからは速度を少しずつ落として。
首都の中央、宮殿の上空に着きました。
宮殿のかなり上空でホバリングをします。
かすかな不安を感じます。ですが、私のすべきことです。
飛行機械を降下させます。少々目立ってしまいますが仕方ありません。
宮殿の裏の離着陸床に飛行機械を着陸させました。
どのような状況になっているのか分かりません。
ですが広場に向かって説得をするのであれば3階のバルコニーのはずです。
バルコニーのある部屋に急ぎます。
その部屋の前に衛兵がふたりいました。
「!
王女様!」
「お父様は中に?」
衛兵に尋ねます。
「はい、いらっしゃいます」
「ありがとう」
礼を言って扉を開け、部屋に入りました。
お父様、お母様、首相、大臣たち、たくさんの人がいました。
「お父様、申し訳ありません」
とりあえず謝っておきます。
「いったいどこに行ってたんだ! 心配したぞ!」
「申し訳ありません。
ですが、絶対に行かなければならない理由がありましたので」
私なりの理由をひとことで言います。詳細は後で話せばいいでしょう。
それよりも今は説得のことです。
「説得はどうなっているのですか?
首相は? お父様は?」
「できなかった。
もう軍を動かすしかないと話していたところだ」
お父様の言葉にわずかに安心しました。
ぎりぎりで間に合いました。
「では、私にさせてください!」
お父様は一瞬言葉を失いました。
その後。
「何を言うんだ! そんなことはさせられん!」
私にはあきらめるつもりは微塵もありません。
お父様の前に膝を着きました。
「王女として国王にお願いいたします。
機会を与えていただきたく願います」
「……自信があるのか?」
ここでないとは言えません。
「私にできるすべてをします。
あきらめたくありません」
「……分かった。王女に頼もう」
お父様の許しをもらえました。
お父様が認めてくれたのでお母様には何も言われません。
バルコニーに出ました。
広場に集まった人々から悪意に満ちた声がいっせいに上がります。
ですがまったく気になりません。
私は私の言葉で話し始めました。
言葉が届いているとは思えません。それでも話し続けます。
どれくらい話し続けた時にか、
キンッ、とバルコニーの手すりで鋭い音がしました。
……銃弾のようです。
だからと言ってひるむことなどできません。
語り続けます。
先ほどの銃弾が呼び水になったらしく、あちらこちらから銃弾が飛んでくるようになりました。
けれども私に当たる気配はまったくありません。
むしろ私には銃弾が絶対に当たらない自信がわいてきました。
なぜかは分かりません。
分かりませんでしたがすぐに分かりました。
私に向かって飛んできた銃弾が淡い金色のカーテンに弾かれました。
!
右手の甲を見ます。金色の紋様が激しく光っていました。
左手も見ます。銀色の紋様はゆるやかな光です。
金色の紋様は使うべき時がきた、銀色のはまだ時ではない、と言うことでしょう。
右手を肩の高さに上げました。
私の右側に巨大な金色の戦士、『勇敢なる覇王』が現れました。
人々にどよめきが広がります。
私は『勇敢なる覇王』の力を説明します。
とてつもない力があることと、それが破滅の力となり得ることを。
人々の声のトーンが下がってきたように感じます。
少し安心したいと思いますができません。
私は話し続けます。
人々のどよめきがさらに広がり、強くなります。
広場を見渡すように視線を動かしながら話しています。
集まっている人々の中に赤黒い光が、ちか、ちか、とかすかに光っていることに気づきました。
もしかすると「真実のかけら」かもしれません。
赤黒い光に意識を集中させます。
広場のあちこちに赤黒い光が見えました。
これが真実なのでしょう。
魔術師に操られている市民がいる。もしかしてこの光が?
左手の甲がうずきました。見ると銀色の紋様が激しく光っています。
こちらも使うべき時がきたようです。
左手を上げました。
私の左側の空中に銀色の紋様そのものが浮かび上がりました。
『祝福と幸運』いったいどんな力なのか?
銀色の紋様、幾何学的な図形、がその形を変えました。
王国の、王家のエンブレムになります。
次に『∞』と『∀』の図形が現れます。
3つ図形が重なり、3つの図形を合わせた新たな銀色のエンブレムが空中に現れました。
そのエンブレムの光が広場を照らします。
光に照らされると赤黒い光が少しずつ弱まっていきます。
これからが本当の説得です。話を再開しました。
こんどは『祝福と幸運』について話します。
街の、国の、世界の、太平を護る力であることを語ります。
赤黒い光はほとんど消えました。
私の言葉に納得してくれたのか、広場の人々が少しずつ減り始めました。
ですがまだまだです。
人が減れば良いのではありません。納得してくれる人を増やすのです。
とにかく話し続けます。
広場を後にする人が増えました。
私の限界も近い、その思いを全力で否定します。
王女の使命をはたす。それだけです。
私が知っているすべての言葉を使って話しかけます。
たくさんの人が広場から出て行きます。
広場にいる人々はもう残り少しです。
私は話をやめません。
もう少し、また甘い考えでした。
気が緩んだ拍子に足下がふらつきました。
バルコニーの手すりに寄りかかります。
良いことではではありませんが、悪いことでもありませんでした。
バルコニーのすぐ下が見えました。
そこには赤黒い光がまだ残っていました。
『祝福と幸運』の光のちょうど陰になっていました。
気を取り直してしっかりと立ちます。
左手に意識を集めます。
『祝福と幸運』が前へ動き、バルコニーのすぐ下を銀色の光が照らしました。
赤黒い光が消えると、そこにいた人たちは広場から去りました。
ちらりと後ろを見てすぐに広場に視線を戻します。
広場にはもう誰もいない。そう報告されるのを待ちます。
少しの後、その時が来ました。
後ろから誰かに肩を軽く叩かれました。振り向くと国王、お父様でした。
私の役目は終わった。その場に崩れ落ちました。
同時に役割を終えた『勇敢なる覇王』と『祝福と幸運』が姿を消し、手の甲の紋様も肌にとけ込みました。
お父様に支えられて部屋の中に戻ります。
すぐにソファが用意され、私はそこへ崩れました。
足ががくがく震えます。のどもひどく痛みます。
ですが疲れを見せないように、座り直しました。
お父様とお母様が褒めてくれました。首相たちからは拍手をもらいました。
お父様から聞いて、ぞっとしました。私は3時間近く話し続けていたそうです。
体に無理がくるのも仕方がない、そう思いました。
お父様と首相たちは、この件の後始末がある、と言って部屋を後にしました。
お母様に、しっかりと休みなさい、そう言われて私は部屋を出ました。
私室の寝室に戻って服を着替え、ベッドに横になりました。
すぐに深い眠りの中に沈みました。
5日目。
「王女様、起床のお時間です」
その声で私は目を覚ましました。
侍女が服を用意して待っていました。
私はベッドから降ります。
服を着替えて、朝食に向かいます。
食堂。
お父様とお母様はもう席に着いていました。
急いで自分の席に着きます。
「遅くなって申し訳ありません」
「なに、昨日あれだけあったのだ。
少しくらい構わん」
お父様は笑顔です。対してお母様は厳しい表情。
ですが、私はお母様よりお父様の方が怖く感じます。
朝食はいつもと同じ、和やかです。
お父様は私に『勇敢なる覇王』が現れたことを喜んでいました。
お母様からは小言を少々いただきました。
朝食を終えたところでお父様から、執務室に来るように、と言われました。
私はお父様に着いて執務室に入りました。
その先は延々と叱られました。
王女の仕事を放り出して良いのかと、
何も言わずに宮殿を飛び出すなと、
王女としての自覚はあるのかと、
他にもいろいろと。
ですが、王女は人の心を分かろうとする、それは正しいことだ。
人を助けるのも正しいことだ。
ただし宮殿を出たいときはそう言ってから出なさい。
そう言ってもらえました。
最後にお父様は、
「言いたいことはあるか?」
と言いました。
私は宮殿を飛び出した理由、大樹の森に行ったこと、森の精霊王に会ったこと、を話しました。
続けて『勇敢なる覇王』について、『祝福と幸運』について、『真実のかけらを見る力』について、私が理解できているところを聞いてもらいました。
お父様はたいへん驚いたようでした。
ここまででお父様との話は終わりました。
私は自分の執務室に戻ります。
ここ何日か放り出していた仕事がたまっています。
これからは仕事をためないようにしましょう。
そうすれば「王女の仕事を放り出して良いのか」とは言われません。
それに「王女としての自覚」もしっかりと心に刻みましょう。
最後に、宮殿を出たいときは言いましょう。
いつでも冒険ができるように!
了
『冒険すること、果たすこと』はこれにて終劇です。
闇カード「盗賊団」が出たらこの人たち、おやっさん&盗賊団の皆さん、です。
あと、勇敢なる覇王さんはその存在だけでとてつもない力です。
王女さんはチャンスが来たらもちろんまた冒険をします。
次回は、「インターミッション6:登場人物を語る3」です。
次回もご一読のほどよろしくお願い致します。