超能力者のセカイ   作:聖剣エクスカリバー

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最終χ 拍手喝Ψ! ワンダーステージ、遂に開演!

 フェニックスワンダーランドの辺鄙な場所に位置する、ワンダーステージにて。

 狭い会場に溢れんばかりの客が集まったそこに、着ぐるみ達がせっせと長椅子を運んで来ている様子を眺めながら、とある音楽サークルに属する4人の少女は歩きを止めた。

 

「へぇー、ここが話題のステージなんだ。思ってたより小さいね」

「でも質はボクが保証するよ♪ 楽しみだな〜!」

 

 新しく置かれた椅子に4人は雪崩れ込むように座る。

 

「つ…疲れた…」

「……ほら、水。……奏にはしっかり見て貰わないと、困る。」

「スランプ、これで脱出出来るといいね。」

「うん…。」

 

 曲作りに詰まってしまった奏に、瑞希がこのショーを見ることを提案したのだ。単純に誘われていたし、今回のショーのクオリティは凄まじいと類が言っていた。

 

「……あの人は出てくるの?」

「あ〜、いや? 直接の出演はないらしいよ。」

「そう……」

 

 まふゆがこれに賛成したのは、楠雄の手品(?)を直接目にしたことがあるのが大きい。間違いなく刺激的なものになる筈だという確信があった。

 暫くして、そろそろ始まるかという頃。

 

「オイ何やってんだ燃堂!」

 

 瑞希は後ろから聞こえてきた叫び声に少しだけ振り返る。

 そこにはモヒカンに剃り込みを入れたとんでもない悪人面の男と、右腕に包帯を巻いた目の鋭い銀髪の男が居た。

 

「お? んだチビ、お前も座れよ。」

「だからって床に体育座りする奴が居るか! ステージ見えねぇだろ!」

「お゛ーーー?! き、気付かなかったぜ! うっし、ならこうだべ!」

「空気椅子するぐらいなら立ってた方がマシだろ!!」

 

 思わず苦笑いをしながら瑞希は目線を戻した。

 

「ククッ、演劇なんて高尚なものお前に理解できる頭があるとは思えんがな、一応解説してやろう。このワンダーステージの宣伝映像には、本物の超能力を使ってるとしか思えないような――」

「お、始まるぜ。黙れチビ。」

「ッッッッッッ(怒)」

 

 どうやら見た目に反してマナーを尊重するらしい二人組であった。

 ショーが始まろうとしている。

 

 

――

 

 

 時は少しだけ戻って。

 

「少し…いや滅茶苦茶人多いな?!」

 

 開演前、天馬は準備室からの光景に相変わらずの大声を上げる。ベンチは埋まりに埋まり、人形達が心の声で数えきれない程暑い暑いと叫びながら追加のベンチを運んできている程だ。確かにインターネットで宣伝が結構バズっていたが、これは少々想定外の多さだ。

 注目される所の話じゃないぞ、本当に……やれやれ、何故こんなことになってしまったんだ。絶対に表舞台には出ないからな。

 

 ……だが、これだけ集まれば、もうステージが存続するのは確定したようなものだ。一連のショーが終わったら、僕はやめてもいいかもしれない。……コイツ等なら、僕抜きでも充分やっていけるだろう。

 

「寧々、いけるか?」

「……うん。」

「いいか? 客は全員、最高に目立つオレを見る! お前なぞ誰も注目せんから、緊張するだけ損だぞ! ハッハッハッ!!」

「なにそれ、励ましのつもり? ……ありがと。」

 

 僕と神代は、一つ一つの装置の最終確認を行なっていく。

 

「………うん、充電・動作共に問題ないね。」

 

 それにしても、神代は演出家として確かに凄腕だが、それと同じぐらいエンジニアの才能もあるな。こんなに大量のロボットや装置を、高校生として1人で作り上げたというのは普通に狂っている。まあ僕が言えた話ではないが。

 

「じゃあみんな、今日もやろう! せーの……みんな頑張ろ、わんだほ〜いっ☆」

「わんだほ〜い!」

「わ、わんだほ〜い…」

 

 神代と寧々が従うが……僕は絶対やらんからな。特にあの謎のポーズ、恥ずかしげもなくやっている神代の気が知れないぞ。

 

「逆に気が抜けるわ! いいか? こうだ!」

 

 天馬は胸の前に拳を握り、笑顔で叫ぶ。

 

「ワンダーランズ×ショウタイム、公演スタートだッ!!」

 

 

===================

 

 

『悪の魔王を倒すため〜♪ 私は旅立つのだ〜♪』

 

 オレは天馬司。将来は最高のスターになる男だ!

 

『お、王子様?! 助けて下さい! 私の村が魔物達に襲われているんです!!』

『何?! 今すぐ行くぞ!!』

 

 王子達が走り出した後暗幕が閉ざされ、プカプカと数軒の家や魔物型のロボット達が運ばれて来る。楠雄のマジックのおかげで、場面切り替えは少人数ながら非常にスムーズに行われる。

 

 暗幕が開かれると、ちょい役として頑張ってもらっている人形の中の人達が、今にも襲い掛かろうとする魔物達に叫び声をあげた。

 

『キャーー!』

『た、助けてくれ!!』

 

 魔物をバッタバッタと薙ぎ倒した王子は、祈る様に手を握っている少女に振り返る。

 

『王子様…!』

『もう大丈夫だ。怪我はないか?』

『大丈夫です。村を助けて頂き、ありがとうございました!』

『ハッハッハッ、礼には及ばん!』

 

 だがその時、ゴオゴオと大気全体が揺れるような轟音が鳴り響く。

 

『なんだ?!』

『まだ来るのですか…?! あ、あれは!!』

 

 白い鱗に幾本もの青白い線が走った、巨大なドラゴンが何処からか飛来し、ステージの周りを旋回し始める。

 客席からは凄まじい勢いで子供達の歓声が鳴り響き、大人に至っては現実を知りすぎている故か子供達よりも驚きあんぐりと口を開けて固まってしまう。

 

 だが、叫ばれてばかりではショーが成立しない。舞台袖の類に合図を送ると、観客席は段々と静かになって行った。なんでも、声をほんの少しだけ遅らせて返すことで、脳を混乱させ静かにさせられる装置らしい。やはり類は天才だ。

 

 ステージに舞い降りたドラゴンは、首を持ち上げて大きく咆哮した。

 

『か、格が違いすぎないかぁ?!』

『アーッハッハ! アタシはドラゴンのお世話係、エムム! 王子なんて、ぺっちゃんこにしてやるぜ!!』

 

 えむの役は元々もっとバカみたいなキャラの予定だったが、ドラゴンのリアル化に伴いサディスティックな印象を受ける口調や見た目に変更された。当初はえむがそんな役を演じれるか心配だったが、幼少期からの演劇に触れてきたためか演技がとても上手く、意外とハマり役になっている。

 

『くっ! あんな巨大なドラゴン、どう倒せばいい?!』

 

 攻めあぐねる王子に、村人Cが助言を叫ぶ。

 

『歌です! あのドラゴンは、歌を聴くと眠ってしまうのです!』

『歌か!! 誰か、歌に自信のある者は?!』

『……王子様! ここは、私に任せて下さい。』

 

 息を深く吸った少女は、ゆっくりとその喉を震わせる。

 

『〜〜〜〜〜♪』

 

 本当に、綺麗な歌声だ。

 聴き入っている観客達を見て、オレも誇らしい気持ちになる。

 

『そんな……ド、ドラゴンが!! クソッ、待ってろよ王子! 今度は必ず、アタシのドラゴンにお前の味を教えてやる!!』

 

 ドラゴンを引きずって撤退していくドラゴン使いに、王子達はほっと息を吐く。

 

 王子は村長の家に招待され、その祭壇で振動している大きな卵に驚いた。

 

『私達の村は、来たるべき時に産まれ、勇気ある者と共に魔王を倒すと、古くから言い伝えられてきた伝説の「フェニックスバード」の卵を代々守ってきたんです。』

『そうか! あの魔物達は、卵の孵化を妨げるための魔王からの差金だったんだな!!』

 

 こいつも、会議の末追加されたキャラクターだ。楠雄のできることが思っていたよりも多かったため、オレの台本はそんなに原型を留めていない。

 卵にヒビが入り、炎をメラメラと纏わせた巨大な鳥が神々しい産声を上げた。

 

 家の外まで出た王子は、フェニックスバードの足を掴んで村人達に手を振る。

 

『王子様…!』

『私は必ず、魔王を倒してみせる!』

『お願いします……世界を、救ってください!!』

 

 

 

 その後もショーは、派手かつ感動的に進んでいく。

 特に魔王城でのドラゴンとの再戦にて、ビームから王子を守って命を散らすフェニックスバードには観客達も涙を流さずにはいられなかった様だ。だが、まだアレの出番は終わりじゃないぞ。

 最終戦で魔王・王子共に力を使い果たし、逃亡を図ろうとする魔王に王子が無念の雄叫びを上げた時。灰から復活して魔王を仕留め、王子と感動の再会を果たすのだ。まさに、一鳥二涙という奴だな!

 

 王子は王座に深々と座った魔王ルイゼと対峙し、伝説の剣を構える。

 

『人間にしては、よくやったと言いたい所だね。』

『ああ!! そして、これで全てが終わる!!』

『それは、君が死んでしまうからかい?』

『死んでもいい! しかし、その時はお前も一緒だ!!』

 

 第1形態の魔王との闘いは、基本的に互角に繰り広げられる。

 王子が魔法を避け、魔王と剣を交え、双方が後退するのを何度か繰り返す。ハラハラした勝負を見せつつ、変身で絶望感を感じさせる算段だ。

 

『はぁ…はぁ…』

『ククク……ハーーーッハッハッ』

『何がおかしい!!』

『もしや、俺様に“勝てる”だなんて思っていないだろうね?』

『……まさか!!』

 

 飛んで来た大量の黒いワタが類を一旦隠し、奥のカーテンを小さくめくって類は捌ける。そして、更にワタが大量に積み重なって巨大な人型を作った後に、交代で黒光りする鎧を着た人形がステージに投入された。

 

 ワタが一気に吹き飛んでいくと、魔王の第二形態の姿が露になる。

 

『これが俺様の本当の姿だ…』

『なん…だと…』

 

 薙ぎ払われた巨大な剣を受け止めきれず、王子はよろけてしまう。その隙に、蹴りを入れられた王子は斜めに吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。勿論ぶつかる箇所全てがかなり柔らかく作られているが、このシーンはかなり生存本能が刺激される。

 

 客席から悲鳴が上がるが、お構いなした。

 

 まだ王子が壁に埋まっている間に、ドン、ドン、ドン、と三度拳を叩きつけられた。……痛くはないのだが、本当に生存本能が刺激される。

 

 壁を伝って地面に落ちた王子は、剣を落として地面に膝を突く。

 

『ぐはっ……』

『終わったな。』

 

 だが、それでも王子は立ち上がり逆転するのだ。

 震えながらも、ゆっくりと――

 

 ……え?

 

 右足が、攣ってしまった。

 額に汗が一筋流れる。

 

 嘘だろ…? このタイミングでかよ!

 嫌だ。ここまで、オレ達は頑張って来たんだ!

 絶対に……成功させるんだ!!

 

 立ちあがろうとするが、酷く痛む足は言うことを聞かずにまた崩れ落ちてしまう。

 舞台袖に居る類も異変を察知し、奥から様子を伺い始めた。

 

 クソッ…クソッ…!! オレは……スターに――

 

「頑張れーー!!」

 

 思わず、観客席の方を一瞬だけ見てしまった。長い一瞬が訪れる。

 

「王子様、頑張れーー!」

「負けないでーー!!」

 

 泣きそうな表情で子供達が、王子ペガサスを応援している。

 ここで終わったらどうなる? 子供達はずっと悲しいままじゃないか。

 

 

 そんなの……絶対にダメだ……!!

 

 

 子供達の姿に、無意識に小さな咲希が重なる。

 オレがショーを始めた、本当の理由。

 

 

 剣を手繰り寄せ、少しずつ立ち上がって行く。

 痛みがどうした。オレが目指した、スターは。

 

 

 待ってろ……!!

 

 

 今から、魔王を倒して……!!

 

 

 みんなを……笑顔にしてやるからな……!!!

 

 

「諦めて、たまるかぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ポンと身体に触れられた。

 何故か、楠雄が舞台袖から飛び出していた。

 

「……え」

 

 身体に一気に活力が湧き上がる。

 と同時に、楠雄の姿がステージから消え失せた。

 

 分からん、分からんが――ありがとう、楠雄!!!

 

『……なんだと、身体に力が漲ってくる?! そうか、今のは私が助けて来た者達の祈りが形となって現れたのか!! 私は――1人じゃない!!』

 

 そうだ。類に楠雄、えむに寧々。

 みんなが居るから、オレは今ここに立っている。

 

『何が…そこまで貴様を突き動かす! 王子ペガサス!!』

『そんなの、決まってるだろう!!』

 

 オレは剣を再び構えて、心の底から叫んだ。

 

『世界中の人達を――笑顔にするためだ!!!』

 

 

===================

 

 

「なんとかなったねぇ…☆」

 

 控室で、僕達は魂が尽き果てたかのように椅子に倒れ掛かっていた。だかそれぞれの表情には、確かな達成感が浮かんでいた。

 まさか僕がここまで消耗するとはな…主に精神をだが。

 

「無理な練習をし過ぎたようだね。咄嗟のアドリブが成功したのは、本当に良かったよ。」

「あの時楠雄が来てくれて、マジで助かった。ありがとう、楠雄!!」

 

 拳を握って笑う天馬だったが、僕は目を逸らしてしまう。

 

[……おかしいと思わないのか? 明らかにマジックでは説明できないだろう。]

 

 それを言われた天馬は、尚も太陽の様に微笑む。

 

「確かにそうだけど、深くは聞かないさ。だって、知られたくないんだろう?」

[……。]

「楠雄はオレを助けてくれた。それで良いじゃないか。それに、何があってもオレ達は友達だからな!!」

 

 ……え?

 

「誰にも隠し事の一つや二つあるものさ。……そして、僕も楠雄くんは友達だと思っているよ。フフ、君とやるショーはとても楽しいんだ。」

「私も、だよ…楠雄くん。勇気をくれて…ありがとう。」

「うんうん! だから、元気出してーー!!」

 

 ……そう言われてもな。

 人間と僕とではそもそも種族自体が違うんだ。片方だけが勝手に思考も読めていつでも殺せるような関係なんて――

 

「だ〜っ! もう、まだ不安なのか?! じゃあ楠雄よ、お前に問う!! オレ達とやるショーは、楽しかったか?!」

 

 ……!

 

「聞くまでも無さそうだけどね。ショーが終わって爆音と形容できる程の拍手が響いていた時、とても嬉しそうにしていたじゃないか。」

[……そうだったか?]

「まあ、笑ってる所なんて誰も見たことなかったもんね。」

 

 ……気付かなかったな。

 思っていた以上に、僕はショーに夢中になっていたらしい。

 

「やっと分かったか! じゃあこれでこの話は終わりな!」

「ねーねー、次はどんなショーにする〜☆?」

「こら、アホえむ! まだ一回しか“王子ペガサス”は上演してないんだぞ!」

「まあまあ、案ぐらいは考えておいても良いじゃないか。楠雄くん、何か良いのはあるかい?」

 

 まだ次も参加するなんて言ってないんだがな…。やれやれ――

 

「面倒な奴らだ、全く…」

 

「……ん?」

「楠雄くんの声、なんだか初めて聞いた気が…」

「でも、いつも話してるよね? あれぇ〜?!」

「フフフ、今日はなんだか初めて見る楠雄くんが多いねぇ。」

 

 皆とショーをやっていくのも、まあ、悪くないな。




奏「インスピレーション…湧いてきたかも…!」
絵名「私も! 今すごく絵が描きたい!」
瑞希「いやはや、マジックって凄いねぇ〜」
まふゆ「マジックなわけない……」
彰人「結局俺はドッチボールしただけかよ」
杏「名前だけの私よりマシでしょ?」
青龍院「なんですかあのショーは凄すぎてアアアッアッアッくぇrちゅいおp」
燃堂「滅茶苦茶スゲェじゃねぇかァ! オレっち…っぐぅ…感動したぜぇ…」
海藤「フ、フフッ、はしゃぎ過ぎだぞ燃堂!」(←燃堂の3倍ぐらいはしゃいでた人)

楠雄と類って滅茶苦茶相性良い組み合わせだと思うんですよね。楠雄は超能力でどんな演出にも応えられるし、今まで知れなかった“達成感”も味わえる。類はハイレベルな演出やストーリーの組み立てで楠雄に足りない部分を補完できるし、とても自由にショーを作って行くことができる。今まで認めて貰えなかったものを、2人が出会ってから初めて心置きなく発揮出来るようになったという共通点まであります。
だから、もしワンダショに入っても楠雄は救われるんじゃないかなぁと。そんな思い付きから始めた小説でした。

アフターライブをやるとしたら、『Ψです I LIKE YOU(楽曲コード715-7042-0)』がワンダショにも合ってて良さそうですね。今作にぴったりのワードが多く含まれているので、一回聞いてみて欲しいです。作者は玄人なのでメンバーの歌声を脳内補完出来ます。

元々投稿する予定ではなかった本作ですが、楽しんでくれたのなら嬉しいです!
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