林間合宿のカオスと、神野の事件を経て寮生活となった今日この頃。初の登校日を迎えた俺達は、教室で相澤先生の話を聞いていた。仮免取得に向けて、色々とやっていくとは聞いていたけど、今日から何をするのだろうか。
通形先輩達の話を聞く限り、仮免試験も中々の難関資格試験だと聞く。まぁ、そもそもヒーロー免許自体、ヴィラン退治、避難誘導といった公の場で個性の使用を許可されるライセンス。一歩間違えたら犠牲者とかが増えるような場面で個性の使用を許可されるのだから、そりゃあ仮免の時から難関なのは頷けるだろう。五割を切るらしいし。
「仮免試験において必ず見られる素質────戦闘力。それを見せつけるため、君達には一人最低でも二つ……必殺技を作ってもらう!!」
「「「学校っぽくてそれでいてヒーローっぽいのキタアアアアアア!!!」」」
「必殺! コレ即チ必勝ノ型・技ノ事ナリ!!」
「その身に染み付かせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」
「技は己を象徴する! 今日日必殺技を持たないプロヒーローは絶滅危惧種よ!」
「詳しい話は実演を交え、合理的に行いたい。コスチュームを着て体育館γに集合だ」
先生達の一言の後、俺達は体育館γことTDLに訪れた。TDLって大丈夫なのかな?
まぁ、でも……この場所も結構使ってるなぁ。通形先輩達との組手は基本的にここでやっていたし、結構馴染みのある場所だ。
「相澤先生、質問をお許しください! なぜ仮免許の取得に必殺技が必要なのか、意図をお聞かせ願います!!」
「順を追って説明するよ。その前に……多々良。お前がよく真似ている技群。それの元ネタの動画とかはあるか?」
「え? ああ、はい。ちょっと待ってくださいね……」
相澤先生に言われたのでスマホを持ってきて動画投稿サイトを起動。いつでも見れるようにと保存していた動画を開くと、接続された投影機にその元ネタの映像が映し出された。様々なアニメやゲームキャラの必殺技を見せられたクラスメイトの全員が、頭のおかしい人間を見るような目でこちらを見てきた。
「頭のおかしい技ばっかじゃねぇか!?」
「何だあの全武器射出連続斬り!?」
「何で馬に乗って空飛んで激突したら爆発してるの!?」
「ゲーム、ソシャゲしかやってなかったけどマジであれやべぇな!? 何だあの斬撃!?」
「あのデカいモンスターみたいなの三体の攻撃で何を殺すつもりだよ!?」
「ドラゴン、星、ラダーン、セフィロス、アーデン、アルテマ」
「聞きたいのはそこじゃねぇよ!?」
赤き腐敗の花はまだ咲かせられない。炎でそれっぽいのできないか模索中だけど。
「とにかく、それらを見て、お前らは何を思った?」
「……派手?」
「カッコいいとか……かな」
感じたことを伝えるクラスメイト達は、呟いてから気付いたようで、ハッとする。
「そう。必殺技、必勝の型は己がどういった存在であるのかを示す。それを見て助けられた人が何を思うのか……多角的に考えて開発してみろ」
ちなみに爆豪君のハウザー、飯田君のレシプロ、轟君の蒼零拳、人ちゃんや響ちゃんの
そんなことを考えていると、セメントス先生が触れた箇所を起点にセメントが隆起し、エクトプラズム先生の口から分身が生まれる。まばらに展開された円柱状の足場────必殺技開発の舞台であり、圧縮訓練の舞台が誕生した瞬間だ。
「個性の伸びや技の性質に合わせてコスチュームの改良も考慮しておけ。プルスウルトラだ。……準備はいいな?」
「「「はい!!」」」
「ワクワクしてきたぁ……!!」
ワクワク……するかな、これ。俺、ちょっと若干冷めてるところがあったりするからなぁ……必殺技みたいなのを考えた時にふと思っちゃうんだよね。これ、ヴィランに向けていいものなのかなとか、人に向けていいものなのかなとか。AFOと戦った時とか、I・アイランドのヴィランといった手加減ができるようなやつじゃない連中ばっかりと戦っているからなのかな……アメリカでも結局愚瀉ツ刀が一番活躍したと言ってもいいし……無明と
クラスメイト達が必殺技開発のために移動を開始した中、ちょっとだけ冷めた考えをしていると、相澤先生が思い出したように声をかけてきた。
「多々良、公安から渡された例の武器、どうなってる」
「ああ、あれですか? 武器自身がもう誰も傷付けたくないそうなので、アクセサリーにしちゃいました」
「そうか。まぁ、そうなるんじゃないかとは思っていた。もうできてるのか?」
「はい。こちらです」
胸に手を突っ込んで取り出したのは、赤い石が嵌め込まれたブレスレット。
その説明を聞いていた相澤先生とミッドナイト先生が驚いたように目を見開いていた。うん、ですよね。そうなりますよね。
「……医療に革命が起きそうなアクセサリーになったな」
「ええ、これだけでどれだけの人が救われるか……」
「この子が望んだことですから。人を傷付けたくない。人を助けたいって」
多分ステインも何かきっかけがあればヒーローとして人々を救っていたのだろう。この武器達からはそういう感情も伝わってきた。ヒーロー殺しがヒーローとなっていたら……ヴィランっぽい個性だとしていじめを受けている人も少しは減ったのかな。
「公安に提出するのこれでいいですかね」
「まぁ、文句は無いだろう。別に武器を作れとは言われていない」
「ですよね! 打ち直せと言われただけですもんね!」
武器として打ち直せとは言われてないですもんね。よぉし、これで完成というわけで提出だ! あとで根津校長先生に渡しておこう。受け渡しとかは全部根津校長先生がやってくれるらしいし。ありがたいよね、本当に。
「それで、お前は必殺技の開発に着手しなくていいのか?」
「うーん……と言っても、俺は武器、炉心、
あと、必殺技は結構あるんだよね。模倣必殺も結構馴染んできてるし。
「ふむ……進化が可能になってるのは誰だ?」
「今すぐにということなら媚主絶天、
「多々良君、
「うーん……武器達の進化条件ってその武器によって違うみたいで……ただ、全員が契約を果たすことで進化するみたいです。形を変える子も……いるにはいます」
万雷と喝采がその類だしね。無明も、ちょっとだけ見た目が変わった。進化した武器は有無を言わさず顕現するタイプになるようだが、媚主絶天と黒剣の亡骸が顕現したらどうなるのだろうか? ううむ、分からない。分からないというのは怖いものだ。けど、知らなくてはならない。俺は生み出した親としてあの子達の全部を知って、向き合い続けなくてはいけないのだ。俺にはその責任がある。
「どっちから進化行きますか?」
「ふむ……安全面を考えれば媚主絶天だが……進化した場合、その能力がどうなるか分からん」
「
そこんとこどうなの、媚主絶天と黒剣の亡骸。
『ふふ、そこは教えられないわ。だって、それが分かっていたらお父様もつまらないでしょう?』
『我らが進化した場合、どうなるのか……私からは何かお伝えできることはありませぬ。申し訳ない』
うーん……つまらない云々の話ではない気がするけど……子供達の意志を尊重するのも親の務め。進化させてからのお楽しみだというのなら、進化させて見極めようじゃないか。
「分からないっぽいのでどっちも進化させます。最初は……まぁ、媚主絶天で」
なんだかんだ言ってこの子が一番俺との付き合いが長いんだ。無明が最初に進化したのも不思議なくらい、この子とはずっと一緒にいる。……思えばこの子がお姉ちゃんを繋ぎ止めてくれた存在なんだよな。俺がお姉ちゃんと出会えたのはこの子が初めて生まれた武器だったからだ。ありがとう、媚主絶天。お姉ちゃんと会わせてくれて。
「ずっと君と一緒に進んできた。俺がここにいるのは多分、君の存在が大きいよ。響ちゃんと人ちゃんだけじゃない。相澤先生とこうして縁ができたのも君のお蔭だ」
媚主絶天の刃の腹を額に当てて言葉を投げかける。本心からの言葉だ。届いてくれると嬉しい。
「でも、ここが終わりじゃないんだ。ここで学んで、ヒーローになって────まだまだ先がある。俺はどんどん進むよ。君も連れて。君の力を貸してくれる?」
『ええ、もちろん。お父様のために私は生まれてきたのだから』
強く、心臓が鼓動し、媚主絶天から紫紺の靄が滲み出し、俺の体に纏わりつく。
『だから、契約しましょう? お父様』
無明が進化した時と同じように、靄が形を成していく。炉心から溢れる炎が媚主絶天を包み、その子が望む姿へと形を変えていく。
『お父様の見据える未来。求める未来。それらを叶えるまで、進み続けると誓える?』
「うん、誓うよ」
『その先に、どれだけの地獄が待っているとしても、誓える?』
「うん。俺はヒーローになるよ。ヒーローになって、未来を掴む」
『そう。ならばここに契約は果たされた。啼き続けましょう、喘鳴を。神仏すら堪え切れぬ色欲を謳い続けましょう。あなたのために、私は生まれてきたのだから』
変わる。変わる。変わっていく。金槌を振るっていないのに、鉄を打つ音が響く。炎の中で形を変えていく媚主絶天の声が、俺の頭の中で大きく響いている。
『あなたが未来を掴むため、私は共に歩みましょう!! さぁ、呼んで? 私の名前は────!!』
「……進むよ、
その名を呼んだ時、完成に至り────炎の中から現れたのは、薄い桃色の刀身を持った美しい短剣。黄金の蓮華が意匠として施された独鈷が柄となっている短剣は、進化する前のカッコよさは消え去り、荘厳さと色っぽさが全面に出ている。
あの黒はどこに消えたと思ったが、黒い部分は俺の左腕を変貌させていた。
そして極めつけはやはり進化した武器ということで顕現した媚主絶天のイメージ。俺に寄り添うように現れたそれは、露出度の高い踊り子のような装いを纏った褐色肌の女性だ。あの、無明の時も思ったんだけどさ、鎧はどこに消えたんで?
『正直嫌いなのよ、鎧。こっちの方が動きやすくていいわ』
あ、そうなんだ……それはちょっと申し訳ないことを……ん? もしかして、鎧って拘束具っていう側面もあるのか? 俺の体が武器の進化に耐えることができるようになるまで、本来の姿にならないように押し留めておくための……………………キバかな?
「多々良ァ……! 何だよその純粋無垢な少年たちの性癖を悉く粉砕するようなドスケベキャラは……!!! エロスの塊かよぉおおおお……!!!!??」
おっと、性癖に正直な峰田君がエントリーだ。エロスって……確かにカーマって愛の神様だけどさ、媚主絶天はそういう存在じゃないんだけど。……まぁ、確かに扇情的な服装ではあるよね、この子の服。紫を主体としたその服は胸や鼠径部やそこに近い部分が少し隠れているだけで、その他は薄い羽衣のようなものを纏っているため、とても扇情的だ。ファンタジーの踊り子ってこんな感じ────というのを体現しているかも。でもね、峰田君……
「ミルコを超えた性癖破壊キャラをお出しするんじゃねぇよォ!!!??」
「俺の娘をそういう目で見ないでくれる?」
「ぎゃんっっ!!? ────────────────―!?!?!?!?!?」
飛びかかってきた峰田君に左腕の炎で咄嗟にガードしてしまったが、その炎に触れた峰田君がべちゃりと地面に落ちた後にビクンビクンし始めた。いや、ビクンビクンというよりもビチビチビチビチビチと釣り上げられた魚のように跳ねている。トカゲの尻尾が切られた時みたい。
「多々良、これに攻撃してみろ」
「え? わわわっと!?」
相澤先生が捕縛布でぶん投げてきたセメントから自分の体を守るために左手でガードすると、炎の腕が巨大化してセメントを捉えることなくすり抜けた。ただ、レッドブロウの爆速攻撃に対応していた経験が右腕を動かした。右手に握られていた短剣がセメントを切り裂く。
「お、おお……?」
『ねえお父様、昔からずっと思ってたけど、あの人いきなり過ぎないかしら? 一度締めましょう? 締めた方がいいわよ絶対。お父様のこと無駄に傷付けることあったわよね。あの時から一度潰したいと思ってたの。タマも潰しましょ』
ギギギ、と勝手に体が動きそうになる。媚主絶天の感情に俺の体が引っ張られかけているのだろう。けど、怒りに身を任せるのは良くないことだ。怒るのはいい。怒るっていうのはエネルギーの源になる。けど、それに振り回されたら意味がない。
「
不機嫌になった子供をあやすような声音で怒りを滲ませる彼女に声をかける。するとどうだ、ピタリと体が止まり、媚主絶天本人も驚いたように動きを止めた。
「相澤先生のお蔭で俺はここにいるんだ。相澤先生がいなかったら、君とこうして話してなかったかもしれない」
しかしそれだけには留まらず、媚主絶天の頭を撫でてやる。もちろん短剣は腰の紐に結んでから。
「だから、ね? 今回は落ち着いてくれないかな?」
『……………………今回だけよ、お父様』
「ありがとう。でもね、そうやって怒ってくれたのは嬉しかったよ」
怒ったことを注意するだけではなく、自分の代わりに怒ってくれてありがとうと伝えてあげるのも大切だ。俺のために怒ってくれたんだから、注意だけじゃちょっと可哀想だろう。
「それにしても、この炎……もしかして無機物を貫通する?」
『ええ、そうよ。私の力は無機物には通用しないけど、生物であればどんなものであろうと感覚を過敏にさせるわ』
あ、だからセメントがすり抜けたのか。……じゃあこの武器は? 豆腐でも切るかのようにセメントが切れたんだけど。
『……あの男が入ってきた時、決め手がなくて、誰かに任せることしかできなかった。それじゃあお父様を守れないと思ったから。それだけよ』
「…………君は優しいね」
武器でありながら殺傷力を持たないで生まれた理由が、誰かを傷付けないようにと願ったからのはずなのに、その主義主張を撤回してでも、俺のことを守るために殺傷力を手にしてくれた媚主絶天。それを優しいと言わずして何と表現するべきだろうか。
「でも、殺傷力が無くてもいいんだよ。君の力はそれが無くてもとても強いんだから」
『いいえお父様。これは私が選んだことよ。それに……』
「それに?」
『お父様が力を解放しなければ、前の短剣の状態だから』
あ、そうなの? ……確かに無明も解放して使っていたけど、普段普通に使う時はいつも見ていたあの刀の状態だったし……もしかして俺って、結構無駄な使い方をしてたのか……?
俺の課題は個性の制御だけではなく、こういった武器を使った時の思い込みを何とかすることにもあるのかもしれない。
『それで? スルトも進化させるの?』
「う、うーん……………………いや、黒剣の亡骸には悪いけど後日にしよう。今は君の力のあれこれに慣れたい」
『そう。ならさっさと始めましょう? ちなみに私、無明よりかは燃費がいいけど、それでも疲れるわよ。頑張ってね、お父様?』
「うん、頑張るよ」
というかさっきからこっちを見てるクラスメイト共、見世物じゃないぞほらほら、必殺技開発に戻りなさい。爆豪君を見るんだ、彼はもうこっちなんか眼中にないぞ。
そんなことを考えながら
「多々良君、ちょっといいかな?」
自分がちょっとでも考えてしまったことに自らお叱りを入れながら着替えをしていたところ、本日人ちゃんと尾白君と切島君とで殴り合ってサンドバッグになりかけていた緑谷君が声をかけてきた。今更衣室にいるのは俺と緑谷君だけだ。女子更衣室にも誰かいそうだけど。
「いいよ。何?」
「いや、大したことじゃないんだけど……多々良君ってどうしてヒーローを目指してるのかなって気になって……」
「ああ、何だそんなこと? 響ちゃんと人ちゃんとずっと一緒にいたいから。ただそれだけだよ」
「思った以上に身も蓋もない!?」
「? 緑谷君もそんな感じじゃないの?」
「へっ!?」
え、だって君……いや気付いてないのか? 言っていいのかな? いいのか? ……まぁいいや、言っちゃえ。
「緑谷君、爆豪君を憧れの人を見るような目で見てたりするから。爆豪君を追いかけて、ヒーローになりたいと思ったんじゃないの?」
「え、ううん……僕はオールマイトに憧れてヒーローを目指したつもり……だったんだけど……言われてみれば確かに、かっちゃんの姿が凄くカッコいいと感じたのもある、かも」
まぁ、爆豪君は────あ、これは言わない方がいいか。この辺りはあの二人が自分達で解決すべき話題だろうし……
「ちょっと腰かけて話そうか。別に俺のオリジン? オリジンなのかこれ? ……まあ、そういうのは結構単純だし」
お姉ちゃんの個性が発現した時、武器も生まれたんだよね。うん、媚主絶天。あの子が生まれてさ、紙も切れなくて不思議に思って試しに自分に刺してしまえって自分にぶっ刺したんだ。そしたら個性が暴走して……もう全身火だるま、感度上昇で全身激痛の嵐だったよ。
「それ、大丈夫だったの……?」
「大丈夫じゃなかったよ?」
「だよね!?」
ははは、と笑ってから続ける。
で、もう痛いし熱いし苦しいしでもう涙も出なくて。誰か助けてって言いたくても炎と突然の感度上昇のせいでまともな声が出せないし、近くにいた人達はいきなり火だるまになって悶絶してる子供を見ても、自分の子供を俺から遠ざけるくらい何もできなかった。だってそうだろう? 火傷するかもしれない、自分の子供が傷付くかもしれないって、なったらそれ以外の行動はできないよ。
ただ、それに小さい頃の俺はちょっと絶望したんだよ。ああ、俺を助けてくれる人は誰もいないんだって。こんな武器を生み出す個性なんていらない……なんて思いそうになった。自分の自業自得なのにね。
「そんな中、火だるまになった俺をびっしょびしょになった状態で抱きしめてくれた人がいたんだよ」
「もしかして、それが?」
「うん、響ちゃんと人ちゃん」
ちょっと大きい公園だったからさ、噴水があって、それにわざわざ飛び込んで俺のことを助けようとしてくれたんだ。響ちゃんと人ちゃん、両親の制止を振り切ってまで俺のことを助けようとしてくれたんだよ。
まぁ、子供の体力と個性の出力なんてたかが知れてるでしょ? 次第に俺の炎は消えた。でも感度上昇は無くなってなくて痛みに絶叫し続けて暴れる俺が落ち着くまで、二人は抱きしめてくれた。「大丈夫」、「俺がいる」、「ウチがいる」、「怖くないから」、「絶対離さない」、って口々に言いながらさ。
「まぁ、その時偶然相澤先生がお父さんと何か話があるとかで近くにいて、駆けつけてくれたお蔭で事態は早めに終息────で、その後ちょっと色々病んだよね」
故意じゃないとはいえ、響ちゃんと人ちゃんを危うく殺しかねなかったこととか、少なくない火傷を負わせてしまったこととか。うん、色々あって病んだよね。
「…………そりゃあ、そうだよ」
「あははは、ま、こうして病み期は過ぎたんだけど、これもまた響ちゃんと人ちゃんのお蔭っていうね」
引き篭もろうとしていた俺の部屋にいきなり突撃してきて、「お前が引き篭もるのなら俺も引き篭もる」、「七日間戦争みたいなのできるの結構ワクワクする」とか言ってきて俺の部屋に居座り始めたんだよね。マジかこいつらって思うでしょ? 俺は超混乱した。火傷も治ってないのに、俺が原因なのに近付いていいのかって思ったし、離れようとしたんだけどね……二人は全く離れようとしなかった。で、色々言い合った後に、二人が「ずっと一緒にいる」って言ってくれたのが嬉しくて。俺も二人の隣にずっといたいって思うようになって……結構弾けて────
「まぁ、そうして相澤先生に話をしたらこう成長したってわけ」
「凄い紆余曲折あったんだね!?」
「うん。まぁ、これが俺のオリジン。オリジンか? ……まぁとにかく俺がヒーロー目指してるのは響ちゃんと人ちゃん、あの二人とずっと一緒に、二人の隣を歩いていたいからだよ」
ね? ありきたりというか、結構単純で笑える感じだったでしょ? と俺が肩を竦めると、緑谷君は首を横に振った。
「笑わないよ、多々良君。君がこうしてヒーローを目指してるオリジンを笑うなんて、僕はしない」
「そっか。笑い飛ばしてくれたらそれはそれでいいと思ってたんだけどね」
過ぎた事だし、今となっては三人の間で笑い話にできるようなものだ。まぁ、それでも……こうして笑わずに肯定してくれる人がいるっていうのも結構嬉しいもんだね。
マジでお前、本当にオリジンか?