とある夏の終わり、一人の少女は想い人に自分の心境を告白する──。

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 皆さま、おはこんばんにちは。咲野 皐月です。

 本日は企画小説をお届けしたいと思います。公開がギリギリになってしまい、大変申し訳ありませんでした。


 それでは、本編スタートです。

 最後までごゆっくりとお楽しみ下さい(本編中にはゲストキャラとして他作品のオリジナルキャラクターも出て来ますので、そこも合わせてお楽しみ下さい)。


第1話

「先輩、お仕事中にすみません。少しだけお時間を貰っても良いですか?」

「初華か。構わないよ、どうしたの?」

「実はですね……折り入って先輩にお話があるんです」

 

 

 連日猛暑日と思わせる暑い日が続き、全国各地で熱中症警戒アラートが続出しているこの頃……事務作業をしていた僕は、今現在担当を受け持っている、金色の髪をセミロングヘアにして、アメジスト色の瞳をした少女である、初華──三角(みすみ) 初華(ういか)から声をかけられた。

 

 彼女はここに今は不在の相方である、純田(すみだ) まなと共に二人組のアイドルバンド【sumimi】に所属しており、その傍らでもう一方のバンド……【Ave Mujica】にも在籍している。

 

 

 そんな彼女だが、今日はまなが不在と言う事で……自主練に務める様に事前に僕の方から指示を出していた。その初華が此方に来る程の用事とは……果たして何事だろうか。

 

 

「……あぁ、これか。毎年恒例のお祭り」

「はい。開催は8月末なので、もしご都合が合えば、になるんですが……私と一緒に行きませんか?」

「うーん……わかった、少し予定を確認してみるね。ちなみに8月末って言ってたけど、何日……。初華、この日にその予定を聞くって事は、夏休みの課題はやった?」

「はい。お仕事やライブの合間を縫って、海鈴ちゃんに立希ちゃんを加えて三人で。先輩にも時折助けて貰って、とても捗りました」

 

 

 初華が見せて来た内容はと言うと、花咲川地区では毎年8月に行なわれている……所謂、毎年恒例の夏祭りの広告だった。以前ふらっと羽沢珈琲店に立ち寄った際に聞いた話だと、今年も巴が和太鼓を叩くそうで、バンド練習の傍らで太鼓の練習にも顔を出してるのだとか。

 

 受験シーズンで気が休まらない時に、和太鼓の練習にも精を出すとは……正直、良い意味で感服モノだ。後々の行動には逐一注意する必要こそあるが、それでも今年も大盛況なのは間違い無いだろう。

 

 

 そして初華はと言うと……ここ最近お仕事にライブに、と詰め詰めなスケジュールだったのもあり、何日かオフの日を設けて学業に専念させる事にしたのだ。その時に丁度手が空いていた僕が講師役となり、海鈴と立希の二名の課題の進捗具合も追加で監督する事になった。

 

 最初は三人ともシャーペンの音だけが響いていて、さぞ集中力がすごいだろうなと思ったが……ある程度進んだ所で、立希が限界に達したらしく、それを僕ら三人でフォローする羽目になったのだ。

 

 

 ……まあ、何とか夏季休暇中の課題は全員耳を揃えて終わらせたから良かったものの、あの様な始末は本当に手に負えないから勘弁して欲しい所だ(ちなみに僕も自分の課題をその傍らで済ませてました)。

 

 

「わかった。時間は夕方からみたいだし……どうする? その日は午後からオフにしよっか?」

「えっ、良いんですか?」

「良いよ。ここ最近お仕事にライブに、初華も色々と疲れたでしょ。そのうえで今日は自主練、明日はまたお仕事……なんて、身体が幾つあっても足りなくなる。プロデューサーには僕の方から話をしておくから」

 

 

 その話をした途端、初華の表情がパアッと明るくなった様に感じられた。この光景を見ていると、本当にアイドルとかそう言うのを抜きにしても可愛いよなぁ……と心の中で思えてしまう。

 

 ただ、お祭りに行くとなると良からぬ事を考える輩も少なからず居ると思うので……その際はキッチリ締め上げておくが。

 

 

 そんな話をした後、僕は再び事務作業に戻る事にした。初華は僕の作業が終わるまで待っているらしく……適宜手の空いている所に入っては、可能な範囲でサポートに入っていたのだった。

 

 


 

 

 ……そして、先輩にお祭りのお誘いをして暫くした頃。

 

 

「初華、腰の紐を結ぶので腕を上げてください」

「うん、分かった。でもさきちゃん……浴衣を着付けるの上手だね」

「見様見真似ですが。独学で勉強して、着付けをマスターしたまでですわ」

 

 

 私は心の中で納得しながら、さきちゃんに浴衣を着付けて貰っていた。そんな彼女の装いも私と同じ浴衣だったので、誰かを誘ってお祭りに行くのかな、と察する事が出来た。

 

 ……あれ? 独学で勉強して、って事は……。

 

 そう思った私は、着付けて貰ってる立場だけど……さきちゃんの邪魔にならない範囲で、一言声をかける事にした。

 

 

「それってもしかして、獅音(れおん)くんとデートする際に役に立つと思ったから?」

「……初華、あまり揶揄わないで貰えますか?」

「あっ、ゴメン…」

「構いませんわ。事実なので。……あとは、帯をキチンと締めれば……はい、着付けが終わりましたわ」

 

 

 私がそう言った瞬間……さきちゃんの表情が図星を突かれたのか、かなりキツイ物になっていた。それを見た私は即座に謝ったけど、私の思っていた事は事実だった様で、何でもない旨を伝えて来た。

 

 ……良かった、怒ってる訳じゃないんだ……。

 

 それならホッと一安心だよ……。

 

 

 彼女に拠る着付けを終えた私は、一度姿見の前に立ってくるりと一回その場で回った。黄色を基調とした金魚のプリントされた浴衣で、これを選んださきちゃんのセンスの良さがよく伝わってくる。

 

 

「着付けてくれてありがとう、さきちゃん♪」

「どういたしまして。初華も颯樹さんとのデートを楽しんできなさいな♪」

「もうさきちゃんってば、さっきの根に持ってる?」

「何の事でしょう?」

 

 

 着付けてくれたさきちゃんに私がお礼を言った後、彼女からとんでもない流れ弾が飛んで来た。確かに先輩に一緒に行こう、と誘ったのは他でも無い私自身なので……そう言われたって何の間違いも無い。

 

 でも、その話をそこで持って来るのは卑怯だよ……。

 

 くすくすと上品に笑うさきちゃんに対して、私は顔をほんのり赤らめていた。これじゃあお互い様と言わんばかりだ。誰も何も言えたもんじゃない。

 

 

「ところでつかぬ事を聞きますが……初華、待ち合わせの時間は大丈夫ですの?」

「うん、先輩からは『着替えに時間がかかるだろうから、車で迎えに行く』って言われてるから、私の連絡一つで来ると思うよ」

「そうですか。それにしても……とてもキレイな姿になりましたわね、初華。先程の着付けもあると思いますが、それを差し引いても見惚れる程には」

「うぇぇっ!? き、急にどうしたのさきちゃん!?」

 

 

 先輩にメッセを飛ばした後、私はさきちゃんから思わぬカウンターを貰ってしまった。その証拠に私の顔は熟れたトマトの様に紅くなってるはずだ……こんな姿、先輩に見られたら何て言われるのやら……。

 

 いつもの様に優しくフォローしてくれるとは思うけど、私としては生殺しも良い所だ。傍から見ればやり過ぎと思われるかもしれないけど、いっその事このまま気を失わせて欲しい程に。

 

 

「それを言うならさきちゃんだって。とても似合ってる」

「そうですか、ありがとうございます。いつもの格好より動きにくいのが難点ですが、時間が経てば慣れてしまうものです」

「やっぱりさきちゃんはキレイだよ。見惚れちゃう」

「あら、そんな事を軽率に言って良いんですの? こんな場面を颯樹さんにもし見られていたとしたら、合わせる顔が有りませんわよ?」

 

 

 構うもんか、私だけ辱めを受け続けるなんて不公平だ。

 

 先輩はまだもう少しかかるって言ってたし、こうやって他愛も無い世間話をするには充分過ぎるくらいだ。ただ……さきちゃんのこんな笑顔を見ていると、まるで昔一緒に遊んでた時に戻った様に感じてしまう。

 

 今でもさきちゃんと一緒に居られる時間は心地良いし、同性だからこそ言える事だってあると思う。

 

 

 でも、私は……。

 

 

「初華、どうかしましたの?」

「え? な、何?」

「さっきからずっとぼんやりしていましたけれど……何かあったのですか? もしや、体調が良くないなど……」

「そ、そんな事無いよっ! 私はいつだって元気だよ。 心配してくれてありがとう」

「そうでしたか。もう直ぐ颯樹さんも見えられます、恥ずかしくない貴女で接してあげませんと」

 

 

 ……そうだよね、さきちゃんの言う通りだ。

 

 

 先輩と行動を共にし始めてからと言うものの、私はその一挙一動に目を奪われている気がする。気がすると言うのは、私自身あまり意識して無いからなのかもしれないけど……最近はよく彼の事を考えてる私が居る。

 

 仕事に学業に家事全般諸々って忙しいはずなのに、疲れた顔ひとつ見せない。いつも私たちの事を気にかけてて、自分の事なんて後回しと言わんばかりだ。

 

 

 そんな先輩が頼もしく見える反面、ちょっと気負い過ぎなのでは無いか……と思えてしまうのが現実だ。使える伝手は全部使って、私たちが何不自由無く活動できる様に最大限のサポートをするなんて、そう言うのは傍から見れば少しやり過ぎな気もしてくる。

 

 

\ピンポーン♪/

 

 

「タイミングばっちり。来られたみたいです」

「うん、ありがとうさきちゃん」

 

 

 さきちゃんにお礼を言いつつ、私は玄関先に向かって先輩を出迎える事にした。今心の中で思っている事は多かれ少なかれあるけれど、その気持ちを伝えるのは……何も今じゃなくても良い。

 

 この時でなくても大丈夫だけど、いつか耳を揃えて聞き出さなければ行けない。もう私たちは……共犯者だから。

 

 

★ ★ ★ ★ ★

 

 

 先輩からのお迎えを受けて私たちは、夏祭りの会場へと足を運んでいた。時間帯も人が続々と集まり始めている頃合いだったので、合流できた時間がまさに見計らったかの様だった。

 

 ちなみにその時先輩の車には、途中で合流していたと思われる獅音くんも居た為……さきちゃんも無事落ち合う事が出来て、4人揃って会場に来ていると言う次第だ。

 

 

「随分賑やかですのね。あちこちから祭り囃子の音がよく聴こえてきますわ」

「そうだね……先輩、エスコートをお願いします」

「もちろん。祥子の方は」

「わかっています、颯樹さん。祥子ちゃんを守るのは僕の役目ですから」

 

 

 そんな話をお互いにした後、私たちは屋台の立ち並ぶフロアに入って行く事にした。中に進んで行くとどれも賑やかで、思わずあれもこれもと手が出てしまいそうになるけど……そこは確り我慢しなきゃ。私はアイドルやってるんだから。

 

 

 ……って、その時までは思っていたんだけど……。

 

 

「先輩」

「ん?」

「私……あれ食べてみたいです」

 

 

 私が先輩に視線で促した先にあったのは、焼きそばの屋台だった。思わず辺りを充満させる様な……ソースの濃厚で病みつきになる香りに、私は先程まで強く保とうとしていた意志を完全に折られてしまった。

 

 ついこの間も水着のグラビアがあると言う時に、思わず食べ過ぎてしまった過去(ぜんか)があるにも関わらず……私の中の食欲はそれすらお構い無しみたいだ。

 

 

 うっ、こりゃ暫くトレーニングメニューを増やして何とかするしか無いかな……って、そんな時だった。

 

 

「わかった。買って来るよ、二人前で良い?」

「えっ、いいですよ私の事はお気になさらず!」

「せっかくお祭りに来たんだから、多少は羽目を外したって何の問題も無いよ。ただし明日から確りトレーニングして貰うのが、条件だけど」

 

 

 先輩の私の思考を見透かした様な発言に、私は思わずそんな言葉を言ってしまった。私が心の中で言っていた言葉の一端が、何処かで漏れてしまったのだろうか……と気掛かりだったけれど、幸いにもさきちゃんや獅音くんには聞かれていない様だった。

 

 かく言うその二人も、近くにある食べ物系の屋台に行ってどれが良いか吟味していたんだけどね。

 

 

「ありがとうございます。じゃあ、二人前で」

「おっけー。だったら、離れない様に手を繋いでおこう。ただでさえ人が多いんだ……もし逸れたら探しようが無い」

「あ、ありがとうございます……」

 

 

 そんな私の事を気遣ったのか、先輩は私の巾着袋を持っている手を片方取って、その屋台に向かって歩き始めた。聞けばその行動は同級生で迷子になりやすい人が居るから、と言うきっかけがあったらしいのだが……私にとっては、そんな事は気にならなかった。

 

 屋台で焼きそばを買う際に、店主と思しき男性から付き合ってるのかと問われたけど……先輩はそれをすんなりあしらって買い物を済ませていた。

 

 

 先輩と私の今の状況……傍から見れば、そう言う関係だと思われたって仕方ない、んだよね。先輩はマネージャーで、私はその担当アイドルだけど。もちろん私だけじゃなくて、まなちゃんの事も受け持ってくれてるけどね。

 

 

 ……でも、今は二人っきり。

 

 まなちゃんにはちょっぴり罪悪感があるけど……この機会を利用して、先輩との距離を縮めておくのも良さそうだ。

 

 

「あいよぉ、お待ちどおさま。焼きそば二人前ね」

「ありがとうございます。お題は1000円からで」

「毎度ありぃ! し〜っかしよく出来た兄ちゃんだなぁ、こんな別嬪さんを連れてここに来て……そのうえで礼儀正しいと来た。オレもアンタらの様な青春がしたかったぜぃ!」

「あ、あはは……。それでは、失礼します」

「おう! 楽しんでってなー!」

 

 

 快活な店主さんの声を受けて、私たちは祭りの喧騒の中へと再び戻って行った。そしてその後に同じく食べ物を調達出来たさきちゃんや獅音くんと一緒に、少し人混みから離れたベンチに座って各々夕食を摂る事にした。

 

 焼きそばの味は美味しかったけれど、さっきのやり取りを聞いていた側からすると……生殺しも良い所だ。その拍子に顔が赤くなってる様な気がする。

 

 

「(先輩ばかりに主導権を握られちゃダメだ、私だってやれるって所を見せないと)」

 

 

 そうして焼きそばを食べ終えて、二人で次に向かったのは射的だった。店主さんの後ろにある棚には、均等な間隔に置かれたたくさんの景品が並んでいた。倒れている的はあまり無くて、挑戦するには良いけれど……少しだけ難易度が高いみたいだ。

 

 まあ……金額は400円とさっきの焼きそばに比べたら安いけれど、5発でキッチリ撃ち落とせるか、と言われたら少し不安になって来てしまう。

 

 

「らっしゃい!」

「すみません、射的に挑戦したいのですが」

「おう、良いぜ。弾は5発……確り狙ってけよ」

 

 

 そんな言葉を店主さんから貰った後、私は銃の発射口にコルクの弾を一つセットして、射撃態勢に入った。狙いを定めて、慎重に……。

 

 一呼吸置いた後に撃った弾は、目的の景品の目の前にある的を少し掠める程度に終わってしまった。その後も続け様に残りの4発全てを使って景品を狙ったけど、それは為す術無く終わる事になった。

 

 

「うーん、残念。少々力みすぎちゃいねぇかい?」

「ご心配ありがとうございます」

「気にすんな。嬢ちゃんの様に全弾スカなんてよくある事だからよ」

「はい」

「さて、次は「店主、僕も挑戦します」おっ、やる気で良いねぇボウズ……そこの嬢ちゃんのオトコかい?」

 

 

 私が店主さんとそのやり取りをした後、先輩は財布から徐ろに400円を出して参加費を支払い、弾を装填し始めた。私が話している間にいつの間に……と驚く私を他所に、店主さんは何やら不敵な笑みを浮かべて先輩の方を見ていた。

 

 

「初華、どれが欲しいの?」

「え?」

「やれるだけやって見る。運が良ければ取れるかも」

 

 

 そんな事を小声で私に言って来たので、私は視線を促す様にその場所へと目を向けた。そこにあったのは……薄い黄色の体毛をした折れた耳が特徴の犬が鎮座していて、瞳は紫色の私とまるで瓜二つと思わせる様だった。

 

 場所は景品の置かれている棚の中でも、右上の一番端と特別狙いにくい場所にセットされていて、入手困難だと言う事が嫌でも伺えてしまう。

 

 

「ボウズ、気張るのは良い事だが……さっきの嬢ちゃんみてぇに力みすぎんなよ?」

「ご忠告ありがとうございます。では、一発目」

 

 

 そう言って先輩は銃を構えて、さっきの私と同じ様な射撃態勢に入った。銃口は的の中心を狙っていて……て、えぇっ!? 中心じゃなくて、少し脇に逸れた所に照準がある!?

 

 

「せ、先輩幾ら何でもその向きだと外して終わりじゃ」

「見てて。終わるまで私語厳禁」

「は、はいっ」

 

 

 私が疑問に思った事を伝えるも、先輩はそれすらお構い無しと言った具合で集中し始めた。店主さんも私と同じ様な心境だったのか、少し諦めが入った顔色だったけど……結果は?

 

 

\コンッ/

 

 

「「えっ」」

 

 

 ……そう思ったのはほんの一瞬。

 

 先輩が初撃で撃った弾は、最初こそ懸念通りの方向に行ったけど……それは途中で軌道が変わり、的の中心に的確にヒットしていた。そして的の役割をしていた紙は乾いた音と共に、パタリと音も無く倒れていた。

 

 

「せ、先輩……」

「ボウズ……当たりだぜ。今準備するから、待ってろ」

 

 

 そんな言葉を言った後に店主さんは景品のある棚から、私が狙っていたぬいぐるみを手に取り、新しい景品と入れ替える形で作業を行なっていた。そしてその流れが終わった後、此方の方に手提げ袋に景品を入れた状態で戻って来た。

 

 

「あいよ、おめでとさん。なかなかイカすじゃねぇかぁ、一発で落とすなんてよ」

「ありがとうございます。はい、初華。これは僕からのプレゼント」

「えっ……い、良いんですか? 元はと言えば、先輩が当てた景品なのに……」

「大丈夫。それに、いつも初華は頑張ってるし、労いの意味も込めたご褒美と思って受け取ってよ」

 

 

 ……そんな風に人をその気にさせる言葉を、恰も自然にスラスラと言えてしまう先輩が羨ましい。でも、できる事なら……その言葉は私にだけ言って欲しい。先輩の性格上、それは届かぬ想いなのだろうけど。

 

 

 その後は残りの4発全てを撃ち終え、結果としては全5発のうち3発景品にヒットとなった。中には獅音くんやさきちゃんに渡す為の物も含まれてたので、こう言う所も私が心惹かれているのだと実感出来た。

 

 そして少しした頃、私たちと離れて別行動をしていた二人と合流して……少し急な坂のあるスポットに向かったのだった。

 

 

「花火の時間までに間に合いましたね」

「そうですわね。ここなら障害物も少ないので、よく綺麗に見えると思います」

「ここに私たち4人で来るなんて、最初は想像してなかったけどね」

「本当に。でも、今はこうして来れてる。それが事実だ」

 

 

 先輩からの言葉に共感した私は……ぬいぐるみを抱えた状態で徐ろに空を見上げて、星を眺め始めた。今日は雲ひとつ無い晴天だった事が影響して、満天の星空が辺り一面に広がっていた。

 

 

「……先輩」

「ん?」

 

 

 見上げた視線を外さずに、先輩の方に一言だけ軽く声をかけたけど……それに先輩は応答してくれた。

 

 

「私、もっと頑張りますから……これからも、見守っていて下さいね」

「もちろん。約束する」

 

 

 そんな事を話していると、一際大きな音が聴こえて……花火が打ち上げられ始めた。その勢いは周りの喧騒すら掻き消すくらいの大音量で、アイドルとして活動している私ですら、多少声を張らなければ聞こえなくなってしまうくらいだった。

 

 

 ……先輩は花火に夢中。

 

 なら、今がチャンス。

 

 

好きです、先輩

 

 

 私は先輩の耳元でそんな言葉を零して、音も無く彼の唇を奪った。さきちゃんや獅音くんは幸いにも気づいていなかったので、これはまたと無い機会だ。その後花火は大盛況のうちに終わり、私たちは各々の家に帰宅して翌日に備える事になった。

 

 

 ……先輩の事は誰にも渡さない。誰であろうと、絶対。

 

 まなちゃんから後日問い詰められるかもしれないけど、それは誠心誠意対応しなきゃ。それが……私の役目だから。




 今回はここまでです。如何でしたか?


 本編中にてゲストキャラとして参加しましたのは、私と普段から親交のある作家さんである……なかムーさんの作品である迷子になるか、仮面を着けるかより……主人公である雨宮(あめみや) 獅音(れおん)くんと、そのヒロインである豊川(とがわ) 祥子(さきこ)ちゃんでした!


 事前にお話などは済ませており、今回この様な形での実現と相成りました。ちなみに二人には作中にて、颯樹から二人のイメージにぴったりなぬいぐるみをプレゼントされております(これは本編中には書いてなかったのですが)。



・祥子→自身と瓜二つの姿をした猫のぬいぐるみ

・獅音→愛嬌のある表情をしたライオンのぬいぐるみ



 それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。

 せっかくですので、私の代表作と……ゲストキャラとして出演頂きました、獅音くんの活躍する作品のリンクを掲載したいと思います。機会がありましたらご一読頂けると嬉しいです。


【代表作】
『仮面と彩りの狂騒曲』

【作品リンク】https://syosetu.org/novel/334571/


【獅音くんの活躍する作品】
『迷子になるか、仮面を着けるか』

【作品リンク】https://syosetu.org/novel/326730/

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