走者がガバったら(世界が)即終了チャート はーじまーるよー!   作:私は地を統べる

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サクサク物語を進めたい気持ちと、丁寧に日常を書きたい気持ち。心が二つある~!


お気に入り、しおり、感想、評価、ここ好き、誤字報告ありがとうございます。頂いた感想…ニマニマしながら見てます。




虚ろう心の在り方を

 

 何処からともなく吹き寄せる風が、白い砂を舞い上げる。月光に照らされながら舞う砂粒を追うように、上へと向けた視線の先には藍色のカーテンを引いたような深い夜空が広がっていた。反転した月だけがポッカリと浮かぶその空は、現世の空とは違い、酷くつまらないなと思う。

 

 大地も、空も、視界に映る全ての物が無彩色で、酷く殺風景なこの場所は、見る者の心に言い知れぬ物悲しさを抱かせる。生き物の気配すら感じられない、終焉の空気を漂わせたこの大地に、僕は足を踏み入れた。

 

 

 

 

…ここが虚圏か テンション上がるな~(…ここが虚圏か、些か、気分が高揚するな)

 

 なんちゃって。

 誰に拾われることもない、ふざけた独り言を呟いた。その声は、虚ろな空間に吸い込まれるように消えていく。

 

 

 さて、僕は鑑化水月によって造られた藍染惣右介の複製体である。名前はまだない。これから付けられることもない。

 今頃、山積みの書類仕事に追われているであろう本体から渡された任務は二つ。

 

・話の通じる虚を捕まえること。あわよくば部下に

・研究施設を建てられるような場所を見つけること。静かで人気の無い場所が好ましい

 

 実に雑な指令だ。まあ文句を言ったところで仕方がない。人権の無い僕は黙々と任務を遂行するしかないのだから。

 

 

 しかし、歩けども歩けども全く虚が現れない。

 僕が砂を踏みしめる音が響くのみで、人気、いや虚気?の一つもないのだ。虚圏ってこんなに虚が居ないものなのか?コロニーとかあるんじゃないの?

 これは長くなるなと早々に悟った僕は、溜め息を一つ吐いて、緩んだ外套を深く被り直したのだった。

 

 

 彷徨うこと数刻。ようやく、視線の先に一つの影を見つけた。

 気のせいじゃないよな…と思い、レンズに付いた細かな砂を丁寧に拭った後、再度その影を見る。うん、虚だ。

 

 

 やっと第一村人(?)発見!

 どうも初めまして~、僕、藍染惣右介というものなんですが…あっ逃げるな!待て!待ってください!逃げられた…。

 

 すかさず距離を詰め話し掛けた僕だが、目の前の馬型の虚は物凄い速さで駆け出した。

 何なんだ、コミュ障なのか?

 呆然と虚の背中を見送った僕は、何とも言えない感情を抱いたまま、しばらくその場に立ち尽くしたのだ…。

 

 

 ……あっ!第二村人(?)発見!

 今晩は~僕、藍染そうs…

「ギヤァーーーーッッッ!!!!」

 うーん、反射のように攻撃してくるの止めてほしい。いや、そういう生物だっていうのは分かっているのだけれどね? 

 

 

 

 それ以降も探索を続けたが、状況は一つも変わらなかった。

 僕と目が合った瞬間、脱兎のごとく逃げ出したり、近付いてきたと思ったら先手必勝とばかりに攻撃してくる虚共。コミュニケーションのコの字さえ取れない。

 

 ひどい虚しさを抱きながら、僕は虚圏をトボトボと彷徨い続けた。何故だ?どうして彼らは僕をそんなにも頑なに避けるんだ?…もしかして、僕が臭うのか?

 

 そんな無意味な自問自答を繰り返していた僕の目の前に、ついに、一体の虚が現れた。

 やっと話の通じる相手に出会えたのか!と期待に胸を膨らませたその瞬間、彼は忠誠を誓う騎士のように片膝をついて、僕へと跪いたのだ。ええ?(困惑)

 

 予想外な行動を取った虚に困惑しながら、その様子を見下ろす。

 片膝をつき頭を垂れる彼は、その体躯を僅かに震わせている。まるで、目に見えない何かに耐えるようにしてその四肢に力を込めていた。

 

 その様子を見て僕は首を傾げ、そして、気が付いた。

 辺り一面に異様に濃い霊圧が漂っていることに─。

 

 

 …これ、もしかして、僕のせいか? 

 

 そういえば、虚圏は、現世や尸魂界に比べて大気中の霊子濃度がかなり高いから、死神・虚・滅却師などもこの空間では大幅に力が上昇するんだよな。

 つまり、いつものように霊圧を抑えているつもりが、虚圏に来て力が上がったことで、僕は無意識に大量の霊圧を垂れ流していたのか。だから虚が僕に近寄ってこなかったと。え、じゃあ瞬歩でわざわざ虚を追い掛けていた僕の労力は一体?……恥ずかしい。

 

 

 原因に思い当たった僕は、即座に霊圧を抑える。

 

 やはり、僕が原因だったのだろう。身体の硬直を解いた彼は、ゆっくりと頭を上げ、僕の顔を真っ直ぐと見据えた。

 

 顔全体を覆う白い仮面。その隙間から覗くのは、深みのある翡翠色の瞳。頭部からは二対の鋭い角が突き出している。全体は白い体躯だが、腰の辺りから生えた漆黒の翼が堕天使を思わせる妖艶なシルエットを描いていた。神聖さと妖しさ、相反する美が同居する倒錯的で美しい姿。

 

 見惚れつつも、僕は挨拶をしてみる。

 初めまして、僕は藍染惣右介。藍色に染め上げるで藍染。お惣菜の惣に右手の右、介錯の介で惣右介だよ。

 

 

 ……。

 ………。 

 …………。

 ……………無視? 

 

 

 先程までの粛々とした態度とは裏腹に、僕の問いかけを彼は堂々と無視する。そのちぐはぐな態度に、僕は訝しんだ。

 

 …ん?あ。よく見たら彼には口が無い。なるほど、だから応答できなかったのか。

 うーん、まあ、良いだろう。身振り手振りである程度の意思疎通はできるだろうし、必要ならそれ専用の鬼道を作ればいいからね。モーマンタイだ、モーマンタイ。

 そう納得した僕は、彼の白い手を力強く握り上げ、ゆっくりと立たせた。今日から君は僕の部下ね。答えは聞いてない! 

 

 というわけで、最初の目的達成である。こんなにも格好いい配下を加えられたと知ったら、本体も大喜びするに違いない。

 

 

 さて、そうと決まれば、次は研究施設の立地場所だ。どこに研究所を建てようか。別にそこまで立派な場所である必要はないのだ。人目につかず、静かなところであれば良い。

 

 君はここら辺で良さげな場所知ってる?

 後ろに佇む彼に聞いてみる。虚圏に来たばかりの僕が宛もなく彷徨うよりも、現地住民に聞いた方が早いだろう。

 

 僕の問いに彼はゆっくりと瞬きした後、首を横に振った。そっか。知らないのか。うーん、じゃあ君はどこから歩いてきたのかな?と尋ねてみる。すると彼は、ゆっくりと十時の方向を指さした。

 あっち?じゃあその反対の方向に歩いていこうか。時間はたっぷりあるからね。散策がてらコミュニケーションでも取ろうじゃないか。

 

 ─そうして僕たちは、宛もなく歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

✳✳✳

 

 

 

 

 

 どのくらい歩き続けただろうか。淡々とした会話─といっても、僕が一方的に話し掛けているだけなのだが─を続けていた僕達は、奇妙なものを見つけた。

 

 それは、今まで通ってきた道筋に生えていた、石英のような枯れた木々の集まりで。無秩序に伸びる枝一つ一つに反射した月光が、キラキラと辺りを照らす。

 この植物だけが、寂れた空間の中で唯一生きているように思えた。

 

 

 凄いなあれ。培養とか出来るのかな?と、頭の片隅で無駄なことを考えていると、虚の彼が僕の横を通り過ぎて、吸い込まれるようにその木々の中へと進んでいったのだ。

 

 僕は驚いた。刺々しくて痛そうな木々の中へ躊躇なく突き進んでいく彼に、少し引いてしまった。だって、あれはほぼ硝子みたいなものじゃん。バキバキいってるよ? 身体に刺さってない? 大丈夫なの?

 

 神聖な儀式のようなその光景を見守りながら、場違いな心配をする。月光に照らされた木々が、まるで彼を迎え入れるかのように揺れ動き、一歩踏み出すたびに、彼の背中に潜む影が一層濃くなっていた。

 

 

 暫くして、彼は戻ってきた。

 煌く破片を纏いながら、どこか満足げな様子を見せている。

 その顔をよく見てみると、頭を覆っていた白い仮面が、左半分だけを残して消えている。…あの木々には虚の進化を促進する力があるのか?

 

 まじまじと、彼の顔を見つめていると、僕は強烈な既視感に襲われた。

 この顔、この姿、どこかで見たことがあるような気がする。既視感の正体を突き止めようとじっくり観察していると、あることに気が付いた。

 ─口がある。

 ということは、今なら会話ができるのだろうか?好奇心に駆られた僕は再度、名前を尋ねてみたのだ。─君の名は?

 

 …?

 

 ………ウル、え?

 

 ……………。

 

 

 

ファ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

 

 

 

Side U

 

 藍色の空。誰も彼もに見捨てられ、箱庭のように閉ざされた虚ろな世界には、銀色の月光が静かに降り注いでいた。

 

 

 その御方は、身に纏っていた黒い外套を俺の肩に掛ける。僅かな温もりが宿るその外套に触れて、この方にも生き物らしい体温があるのかと俺は思議した。

 

 

「再誕おめでとう…とでも、言えば良いのかな。」

 

 

 低く穏やかな声が、風に乗り静かに響く。

 その口許には、僅かな微笑みが宿っている。

 

 ─再誕?確かに、そう言われれば、そうなのかもしれない。

 

 自身の顔に触れる。

 破れた仮面の跡と、そこから露わになった素肌。そして、口が在ることに気付く。その新たな器官の存在を確かめるように、俺は指先で口許をなぞった。

 

 錆び付いた血のような深い瞳が、真っ直ぐに俺を見据えている。その眼差しは、俺の魂の奥底まで見通しているかのようで、

 そうして、その御方は、酷く穏やかな、しかし、何か測り知れない深い意図を潜ませた声色で俺に問う。

 

「─君の名は?」

 

 ─…

 ─……っ

 ─………u

 

 喉元で音が震える。

 初めて使う声帯が、貴方様の問いに応える為に、言葉を紡ぎ出そうとする。

 

 

「─()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 俺の名を聞いたその御方─藍染様は、口許に浮かべた微笑みを、さらに深めたのだった。

 

 

 

 

 

 





複製体→その時に写し取った本体の心理状態に左右されるので、本体よりも楽観的だったり、悲観的だったりと微妙に個体差が出来る。

微笑みを深める→微笑んだまま固まっている。

ウルキオラに気付かなかった→主人公はウルキオラのスピンオフを読んでいない。


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