ある日、椎名が派出所に入ると時行がいた。
「時行様。」
「えっ。あっ。は、はい!なんでしょうか椎名さん!」
時行が慌ててこちらを向く。背中に何か隠している。
「どうされたのですか時行様?」
「い、いえ何も!」
時行は大量の汗をかき派出所を走って出て行った。
その日の午後
「両津!貴様という奴は!」
「知りませんよ!」
両津と大原部長が言い合っていた。それを中川と麗子はいつものことかと見ている。
「知らんとはなんだ!?しっかりと貴様の机に置いたのだぞ!」
「わしが来た時にはそんな物ありませんでしたよ!」
「また嘘をつくか!もういい!貴様は派出所から出て行け!」
「酷いや!本当に知らないのに!」
大原部長に怒鳴られ両津は泣きながら派出所を去って行く。それを中川が追いかけようとするも大原部長が止めた。
「部長…」
「放っておけば2,3日で戻って来るだろう。頭を冷やしておけ。」
心配する中川を他所に大原部長は仕事に戻った。その両津は超神田寿司にいる。泣いている両津を檸檬がよしよしと撫でている。
「どうしたのじゃカンキチ?」
「部長がわしが大事な書類を勝手に処分したと決めつけ追い出された。」
両津は仰向けになり不貞腐れている。
「本当に知らんのか?」
「知らん。わしが来た時には確かに書類なんてなかった。」
檸檬が考える。
「そういえば時行はどうした?」
「派出所に遊びに行ったはずじゃが?」
「わしは会ってないぞ。」
両津は起き上がりこれからどうすらか考える。
「もう1度話し合ってはどうじゃ?」
「わしも意地がある。こうなったら絶対に帰らんぞ。」
両津は大原部長に対する抗議として派出所に帰らないことを宣言する。しかし、派出所に行かない間はお金は入らない。
「よし。アルバイトをしよう。」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。」
両津は決心するとまず超神田寿司で働こうとした。そこに纏が来る。
「カンキチ。何か大切な書類を無くしたって噂になってるぞ。」
「チクショー!」
両津は超神田寿司を諦めた。署員が居ないところをアルバイト先にする。真っ先に選んだのは電極スパークの会社だ。
「わしが試験をしてやるよ。」
「ダメだ。あんたは何度もうちの物を壊してるだろうが。」
「そこをなんとか…」
「両津さん。先程、檸檬さんから連絡が来て…」
「チクショー!」
両津は次に絵崎のビール工場に来た。
「どうだい両津君?」
「ビールにしては喉越し爽やかだな。本当にあんたが作ったビールか?」
「もちろんだとも。」
「よし!ここでアルバイトしよう!」
両津がアルバイト先を決める。そこに絵崎が両津に報告した。
「そういえば、中川君から両津君を捜していると連絡が入ったが…」
「わしはここにはいないと言っといてくれ!」
両津はまた逃げた。今度は知り合いがいないガソリンスタンドでアルバイトを始めた。最初は問題なく続けていたが数日が経った頃、いつものように接客していると本田と乙姫がガソリンスタンドに来た。
「まずい!」
両津は見つからないように隠れる。2人は両津に気付いていない。
「教官。これからどうしますか?」
「菜々ちゃんはどこに行きたい?」
「栃木に行きたいです。」
「まずいな。」
2人を見た両津は慌ててアルバイト先を変えた。今度は道路工場のバイトだ。ショベルカーの運転免許を持ってるため即採用される。
「これなら知り合いと会うこともない。」
両津は安心して操縦している。そこに丸井が来た。両津は丸井を見つけるとショベルカーごと逃げる。
「何故だ!?何故ここに丸井が!?」
「両さんどこだろう?」
明らかに両津を捜していた。両津はこうなったらと知り合いは誰も来ないであろうアルバイト先を探した。その姿は最早、時効寸前の犯罪者である。
それから、しばらくして両津を心配していた時行が大原部長のところに来た。しばらく両津に会っていないし連絡も着かない。
「そんなことが…」
「両津の奴、あれから3週間は経ってるぞ。」
「そうでした!」
時行は大原部長にぐちゃぐちゃになった封筒を渡した。
「これは?」
「じ、実は…」
時行は大原部長に経緯を話し始めた。
両津が出て行った日の午前に派出所に時行がやってきた。しかし、誰も居ない。出掛けているのかなと思い休憩室で待つ。ふと、帰って来たらすぐ飲めるようにとお茶を淹れた。
「これで…」
両津の机に置く。すると、犬が入ってきた。犬は時行のポニーテールに目を着けると突然噛みついた。それに時行は驚き湯呑みを傾けてしまった。
「あわわわわ…どうしましょう…」
時行は震える。封筒がお茶で濡れてしまった。時行は犬を追い払い急いで綺麗にするも封筒はグチョグチョに濡れてしまっていた。そこに椎名が来た。時行は慌てて封筒を背中に隠しその場から逃げた。
「…あれからなんとかして乾かそうとしたのだすが…」
「これは…」
大原部長が封筒の中身を確かめる。両津に言っていた大切な書類だ。
「つまり、両津が無くしたわけではないのか…」
大原部長は振り返る。両津の言葉を聞かず一方的に追い出してしまった。大原部長は大量の汗を流す。そこに中川が来た。大原部長は慌てて書類を背中の後ろに隠す。
「部長!」
「ど、どうした?」
「先輩を見つけました!」
中川の後ろに麗子と椎名も来る。
「どこだね!?」
「千葉県の港です!」
中川がスマホでニュースを見せる。クロマグロが豊漁と言うニュースでインタビューを受けている男性の後ろに一瞬、両津が映った。
「おそらく、すぐに稼げて知り合いも居ないところを選んだのでしょう。」
「どうするの部長さん。」
麗子が聞く。大原部長は勘違いで両津を追い出した負い目があるためギクシャクしている。
「そ、そうだな…わしも言い過ぎたし…両津に戻って来てもらおうかな。」
全身が震えている。そんな大原部長に対し中川達は喜んでいる。すぐに両津を迎えに行く。両津は千葉県の漁港にいた。仲間達と食事している。そこに中川達が来た。
「先輩!」
「中川!」
両津がすぐに逃げようとする。その先に時行が待っていた。
「両さん!」
「時行!ここで捕まってたまるか!」
「待って両ちゃん!」
麗子が駆け寄る。
「部長さんが戻って来てって!」
「なにぃ!?」
両津が止まった。
「お願いします両津先輩。」
椎名も戻って来てほしいと懇願する。両津はしばらく考えるが分かったと了承した。
両津が派出所に戻って来る。大原部長は汗ダラダラで待っていた。遅れて丸井と纏も来る。
「すまんかった両津。さすがのわしも言い過ぎた。」
「部長~。」
両津は涙目になり大原部長に縋る。大原部長も涙を流し両津を優しく抱える。これでめでたしめでたし…
「結局、あの書類はどこに行ったんだろう。」
とはならなかった。丸井の一言で現実に戻る。
「部長。その書類ってなんですか?」
「あ、あれは…た、大した書類ではないから安心したまえ!」
「その大した書類じゃないのにわしを追い出したんですか?」
大原部長の汗が尋常じゃないぐらいに流れる。両津が周りを見ると時行も大原部長と同じように尋常じゃないぐらいの汗を流していた。
「そ、それより追い出してしまった詫びだ!わしがなんでも奢ってやるぞ!」
「部長…」
両津が疑い始める。大原部長はなんとか話を反らそうとする。しかし、纏が大原部長が隠していた封筒を見つけてしまった。
「部長。これは?」
「そ、それは!」
大原部長が慌てて封筒を取るも中身が飛び出してしまった。それを拾う中川達。
「これ、例の書類ですよね?」
「そうね。でも、かなり濡れてるわね。急いで乾かした跡もあるわ。」
全員が大原部長を見る。椎名が封筒を拾う。
「あれ?これ、あの時、時行様が隠した封筒じゃないですか?」
「あの時?」
「両津先輩が出て行った日です。」
椎名の発言に時行がギクッとする。両津は時行と大原部長を交互に睨む。
「部長…時行…」
「え、えっと…私がその大切な書類を濡らしてしまいました…」
「時行君!?」
「それで大原さんに相談を…」
「ほう…」
両津は時行と大原部長を睨む。自分がこうなってしまった原因だから仕方ない。
「部長!時行!」
両津が拳銃を抜こうとした。その前に時行と大原部長は全力で逃走した。
「あっ!しまった!」
「さすが逃げ上手。」
「両ちゃんが次する行動を読んでいたわね。」
「時行様…」
全力で逃げる時行と大原部長を乱射しながら追いかける両津であった。