天空の花嫁の姉って?   作:ざいざる嬢

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グランバニア 妊娠報告

「あ、ありがとうねアベル。 わざわざ運んでもらって……重くなかった?」

 

「気にしないで。 それにデボラが重いなんてことはないよ。むしろ細く引き締まっていて──」

 

「わー!! やめてやめて!!こんな公衆の面前で惚気ないでちょうだい!!?」

 

 部屋に移動してから心配で着いてきたオジロン王とサンチョと使用人たちが見てる中で惚気られると恥ずかしいものがある。

 遠回しに体重が重くなった=子供がデキたという風に伝えてみたら、返って来たのがストレートな惚気だとは思いもしなかったわ……。

 

「なんとまあ……お熱いようじゃな。 わいも若い頃は……」

 

「ああ、坊っちゃんが幸せな家庭を築けていて良かった……!!」

 

 こっちはこっちで反応しにくいのよ!! 特にサンチョは事情は理解しているけど重いのよ!!

 

「あの……そろそろ診察を始めてもよろしいですか?」

 

 少し遠慮気味にシスター──サンチョの家に来ていた方かしら?──が申し出れば、全員がシスターに場所を譲った。

 

「あの、すみませんでした。お待たせしてしまって……」

 

「いえいえ、新婚でしたら仕方ないことですよ」

 

 シスターの温かい目が地味に痛い。恥ずかしくて顔が真っ赤になっている自信があるわ。

 ……と、場の空気も落ち着いたところでようやく診察が始まった。

 チゾットの村でもそうだったけど、どうやら神父様やシスターは魔法で診察を行うみたい。職業的には僧侶みたいな感じなのかしら? 多分この辺りはフローラの方が詳しいのよね。私と違ってちゃんと修道院で勉強していたから。

 

「おや……これは?」

 

「シスター、何か分かったのですか?」

 

「もしかして重い病気なんですか!? チゾットの村でも体調を崩していたから──」

 

「落ち着いてアベル、大丈夫だから。 自分の身体のことだもの、私が一番理解しているわ」

 

「デボラさん、もしかしてですが……」

 

「ごめんなさいシスター。 私から言わせてもらっていいかしら?」

 

 シスターから了承を貰い、アベルを手で招く。

 ついにこの時が来た。逃れられないこの時が。さっきは遠回し過ぎて伝わらなかったけど……今度こそは!

 

「あのねアベル……耳を貸して?」

 

「な、なんだい?」

 

「……実はね、妊娠してるの」

 

「………………え」

 

 そう伝えるとアベルは呆けた顔で私と目を合わせた。

 その瞳は戸惑いと喜びに満ちていて、同時に未だ受け止めきれていないという風に揺れている。

 それでも事態を呑みこめたのかその凛々しい顔は歓喜に満ちていて、感情が揺さぶられたからか涙が流れている。

 ──嬉しい。 ああこの人(アベル)と結婚してよかったと心の底から思える。

 私も感極まって涙が流れる。そのままアベルを優しくお腹に抱きとめる。お腹にいる赤ちゃんの鼓動を感じさせるように。

 

「ほら、よく聞いてみて。 私たちの愛の結晶を」

 

「デ、デボラさん、もしかして……!!」

 

「その通りですよサンチョさん。おめでたです。

 あまりお腹は目立ちませんが、かなり育っているようですよ」

 

「なんと!! それはまことか!!」

 

「こいつはめでたい! 坊っちゃんとデボラさんの子供だから きっと玉のようにかわいい赤ちゃんが生まれますよ!」

 

 周囲の反応を余所にアベルは私のお腹から赤ちゃんの存在をはっきり感じ取れたのかゆっくりとお腹から頭を離し、そのままぎゅっと抱きしめてきた。

 

「……ありがとう。ありがとうデボラ! 僕たちに子供ができただなんて!夢みたいだ!!」

 

「隠していてごめんね。でも喜んでくれて嬉しいわ。 それと夢じゃなくて現実よ」

 

 そうして笑いあって、家族が増えたことを喜び合って私たちは一度別れた。

 きっとこれからアベルにはオジロンから王位を譲る話をされるのだろう。原作通りならアベルはそれを受ける。

 そして──大臣が動き出す。

 

「やらないといけないことがわんさかあるわね……」

 

「ええ、本当にその通りですね」

 

 ……?

 横を見れば退室したはずのシスターが……いや、退室してたっけ?

 

「男性方がいなくなりましたので……お説教をと

 

「え」

 

「聞けば山の上のチゾットの村でも体調を崩していたとか。 いけません。いけませんね。何かあったらどうするつもりだったのですか?」

 

「えっとその……ちゃんとそうならないように色々とですね」

 

「なるほど、もっと早い段階から妊娠を知っていたと。ますますいけませんね。」

 

「……お、お手柔らかに」

 

 この後めちゃくちゃ説教されたわ。

 

 

 

 

 

 

「あ、アベル、戻ったのね」

 

 シスターからの説教を終えてからしばらくして、アベルが仲間たちを引き連れて戻ってきた。

 どうやらアベルの仲間ということで入場を許可されたようだ。

 

「デボラ大丈夫かい?なんだかすごく疲れたように見えるけど」

 

「ああ……気にしないで。私の浅慮をこれでもかと思い知らされただけだから」

 

「そんなことよりデボラ殿、なぜ黙っておられたのか!?知っていたのがまさかスミスだけとは……」

 

「このサイモンも全く気づきませんでしたぞ」

 

「サイモンはんは絶対気づかんやろ。 わいが気づけたのは種族的なものやから、サイモンはん以外は気にせんといてな」

 

「スミス?なんでこのサイモンにだけ辛辣なのですかな??」

 

「サイモン、自分の胸に手を当ててよく考えてみなさい」

 

「がうがうっ(そうだそうだ)」

 

「サイモンさん悪いさまようよろいではないんだけど、気をつけた方がいいと思うよ」

 

「???」

 

 仲間たちも賑やかでいいことだと思う。でもサイモンは本当に一度自分の言動を見つめ返して反省して欲しい気持ちもある。

 ただ、これからやって欲しいことはサイモンとピエールにしか頼めないけど……大丈夫かしらね?

 

「まあ妊娠は大分前から知ってたんだけど、私だけサラボナに帰るっていうのも……ね?

 それにアベルの故郷がもう目前まで迫っていたから、言うに言い出せなかったのもあるわ。それはごめんなさい」

 

「……いや、俺も気づけなかったのがいけないよ。 デボラにだけ負担を押しつけてしまってすまない……」

 

 うーん、アベルは悪くないと思うんだけどね。私が隠していたし、お腹も目立たなかったし、身体もテルパドールから重ねていないから気づくのは難しいと思う。

 

「負担だなんて言わないで。それを言ったら私は元気な子を産むまではもう戦えないんだから、そういうのを任せることになっちゃうんだから。

 アベルをひとりに……って思ったけど、みんながいるから平気かしら?」

 

「そうだね……って言いたいけど、デボラがいないと少し寂しいかな」

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃない。私はここにいるからいつでも会いに戻ってくれればいいし……それにすぐに旅に出るわけでもないんでしょ? 少しここで落ち着いてもいいと思うわ」

 

「……それなんだけど、話しておかないといけないことがあるんだ」

 

 アベルが語ったのはオジロンからの王位を譲りたいという申し出があり、そのためには王の試練を受けなければならない、ということだった。

 原作であった展開よね。妻離脱後の冒険で、ボスはカンダタだったかしら。雇い主は大臣だけど、これを皮切りに大きな騒動に発展してしまうことになる。

 そう、大臣が魔物──ジャミと組んでアベルを排除しようとし、薬を盛って皆を眠らせた後妻を誘拐する。そして大臣は裏切られて死に、アベルと妻は最終的に石にされてしまい10年に渡る長い別れになってしまう。

 

 原作として必要な流れだけれど、出来ることなら私はこの流れを改変したいと思っている。

 このまま黙って進めればアベルは8年、私は10年石になり、産まれてくる子供たちには淋しい思いをさせてしまう。

 ゲームなら仕方ないと割り切れるかもしれないけど、現実としてこの世界を生きている私はそれを受け入れたくはない。

 だから──

 

「王の試練、ね。 私は王位に興味はないから受けるかどうかはアベルに任せるけど……その前にこの国のことをよく知るべきだと思うわ」

 

「それって……父さんのこと?」

 

「それもそうだけど、王位を継ぐということはそれだけの責任が付いてくるものよ。王に相応しい知識や所作、礼儀作法なんていうのもあるし覚えることは山積みよ。

 同時にアベルが王になるのなら私は王妃になるわけだから、同じような知識を得ないといけないわ。

 学の無い王が玉座に着けば荒れた国が出来上がる。ヘンリーさんのいなかったラインハットみたい誰かにいい様に操られたりね」

 

 具体的な例を出せばアベルは事の重大さに気づいたのか、真剣な面持ちになった。

 前世で呼んだファンタジー小説知識がこんなところで役立ってくれるとは思わなかったわ。

 

「王の肩書っていうのは国を背負う覚悟がないと背負えないものよ。

 今のこの国に帰ってきたばかりのアベルがその覚悟を持てる?」

 

「それは……」

 

「アベル様が王になるのならこのサイモン、アベル様に剣を捧げ──」

 

「サイモン、黙って(マホトーン)

 

 頼むから余計な茶々を入れないでほしい。

 

「私たちがこの国に来てまだ半日も経っていないわ。だから一度足を止めてこの国を見て、お父さんのことをよく知ってからでも判断を下すのは遅くないはずよ。サンチョさんもいるしきっと協力してくれるはずよ?」

 

 まあ結婚する相手を一日で決めた私たちが言えた事じゃないけど、と冗談を交えて私はアベルに伝えたいことは全て伝えた。

 アベルが原作通りに(王に)なっても、ならなかったとしても私は変わらずアベルを支えていくつもりだ。

 だから、この選択はアベル自身が決めて欲しい。そうしたら、私も覚悟を決めるから。

 

「……デボラの言う通りだね、分かったよ。 父さんのいたこの国を、知ろうと思う。

 まずはオジロン叔父さんと話をしようと思う」

 

 結論から言うとアベルはオジロンと話しをしに行き、アベルの知りたいことを教えてもらえるように協力を得た。そしてその一週間後「父さんの後(王位)を継ぐことにした」と報告してくれた。

 結局は原作通りになってしまったが、これで私も腹が決まった。

 

 私も可能な限りこの過酷な運命(未来)に立ち向かおうと、妊娠した身で行動を開始した。

 




ゲームやりながら思ったんですけど、実際のところ主人公と花嫁が結ばれて子供ができるまでってどういう流れなんでしょうね。
特にグランバニア→王の試練→出産の流れが気になって。まあゲームなんで気にしたら負けなんですけど。
なので、この作品では王の試練に挑むまで日常イベントが挟まれます。

感想、高評価ありますとモチベーション上がりますので何卒お願いします!
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