メジロアルダン短編集『to the MEJIRO ARDAN』   作:いずさわ

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2025/9
harmonized finale


「大きな問題はなし。ですがまあ、それなりに疲労は溜まっているようですね」

「………………」

 

几帳面に白衣を着こなす先生の、眼鏡にかかったチェーンがゆらゆら揺れる。特に情緒もなくいつも通り渡された問診票を、僕はじっくりとその両の眼で、注意深く見つめていた。

 

「ふふふ、確かに最近はトレーニングにもかなり熱が入っていましたものね?」

「まあ、安静にとは言いませんが、それなりのリフレッシュはおすすめしますよ。温泉旅行など、良いかもしれませんね?」

「まあ、それは良い提案です♪ね?トレーナーさん?」

「…………」

「……トレーナー、さんっ?」

「んっ!?ん、うんうんそうだね!?一緒に入ろうか!ね!」

「えっ」

「えっ」

「……は、ははは、なーんちゃって……?」

 

意識外から彼女の、我が担当ウマ娘メジロアルダンの声がして、思わず的外れな生返事を返してしまう僕。当然ながら帰ってくるのは、女性陣二人の真っ白な目線のみであった。

 

 

──────────────

 

 

「ふうっ……!今回も、大事は無くてよかったよかった、です♪」

「う、うん、よかったよかった……」

 

僕らに課せられた、月に一度の定期検診。他者と比較してあまり身体の強くない彼女の心身を守るため、デビューするにあたってメジロの主治医さんから絶対条件として提示されたこの検診に同行するのも、もう二十回近くにもなるのか。昔から彼女がよく入院していたいつもの大病院、すっかり見慣れた床板に、顔馴染みのお医者さんたち。そして今日の結果もいつも通り、『大きな問題なしだか、それなりに疲労は溜まっている』、と。

 

「しかし、良いですねぇ温泉♪草津に別府……は、流石にこの時期に行く暇はありませんかね?では久しぶりに、メジロの保養所にでも……」

「…………」

「……ふふっ」

 

可もなく、不可もなく、現状維持、か。まるで見慣れた院内のスローモーションに進む情景を見ていると、湧き上がってくる燻る感情。封筒に入れてもらった今日の検診結果を僕はもう一度二度じっくりと見つめて、つま先を僅かに尖らせる。

 

「またいつも通り、『迷走』ムードですか?」

「えっ?め、迷走ムード?」

「良いではないですか、『悪くはなっていない』、すなわち『走ることに支障はない』という身体の状態なんて、私の中では百点の結果だと思いますよ?」

「いやいやもちろん、それはアルダンの言う通りだと、僕も思ってるよ?」

「……けれども?」

「……けれども、僕としてやれることを全力でやって、それでようやく現状維持。って言われるのは、なかなかヘコむなぁ……って、こういうのがいつも通りの迷走ムードっていうのか。ほんと、いつもいつも同じことばっかり言ってごめんね?」

 

と、口では謝りつつ、並行してまだまだ追ってくる、燻り。彼女の言う通り、メジロアルダンというウマ娘にとって『普通に走れる状態』というのは、それだけでひとつ奇跡的なものなのだろうし、そもそも競走ウマ娘であるからして、疲労がそれなりに溜まってしまうのは彼女に限らず皆そうなのだろうが。

 

「いえいえ、むしろ貴方がそうやって毎日注意深く考えていてくれるからこそ、私は今の健康を維持できているのです。貴方がいなかった頃の私はもっともっと不安定で、こうして朗らかな雰囲気で診断結果を聞くことなんて、そうそうできませんでしたから」

「あ、ああ、そう言われるとほんとうに嬉しいよ。ありがとう、アルダン」

「ふふふ、どういたしまして♪」

 

と、これまたいつも通り迷走する僕の事を、いつも通り励ましてくれるアルダン。こうして僕らはいつも通り気を取り直して、いつも通り少し休息を取って、そしていつも通り、また一ヶ月トレーニングに明け暮れるのだろう、が。

 

「…………」

 

そんないつも通りに感じる、『行き詰まり』。

 

「……ふふ、そうですね。では私は先生方や入院していた頃のお友達に……ああ、子供達にも、久々にご挨拶でもしてきましょうかね?」

「子供達?」

「ええ、私が入院している頃に、よく遊んでいた小児病棟の子供達がいるのです。実に沢山の子と仲良くさせていただきましたが……ああ、とりわけ特に手のかかる三人組がいましてですね?よくイタズラで院内の物を隠して、先生方に怒られていたりなんて……♪」

「へえ、それはまたやんちゃな……でも、元気でいてくれてるといいね?」

「ええ、まあもし未だにイタズラを繰り返しているようであれば、今度は私からもお説教してあげないと、ですけどね?」

 

なんて言いながら、さっぱり威圧感の無い微笑みを浮かべるアルダン。その姿に、危うく僕まで絆されそうになってしまう。

 

「……ですのでトレーナーさんも、少しの間だけでもおひとりでのんびりされてみてはいかがですか?」

「えっ?のんびり?」

「ええ、トレーナーさんはいつもお忙しそうなので、たまには肩の力を抜いて、のんびりまったり過ごしてみるのも良いでしょう?この病院の中庭のベンチは、陽当たりがよくて心地良いですよ?」

「…………」

 

チラリと、自分の手首にぶら下がる腕時計を見つめてみる。十二時手前、まだまだ帰るには惜しい時間帯だ。もちろん彼女がそんな事を勧めるのは、自分自身が皆とゆっくり思い出話に花を咲かせるため……と、この感じは、恐らくそれだけでは、ないな。

 

「……うん、それならそうさせてもらおうかな?アルダンも、ゆっくりお話しておいで?」

「ふふっ、了解です♪では気が済み次第、先程お伝えしたベンチに集合ということで……あ、何か困った事があればいつでも呼んでくださいね?それでは♪」

 

 

──────────────

 

 

「……………………」

 

病院の中庭、花壇には群がる蝶。もうそろそろ昼食の時間なのだろう、先程までちらほら見かけた散歩中の入院患者達もすっかり姿を消していった中、僕は一人木陰のベンチに座り込み、アルダンから貰った時間をいたずらに消費していた。

 

「……うーん、そうだなあ」

 

そして一人見つめていたのは、財布から取り出したトレセン学園のトレーナーライセンス。これを貰ってからももう数年、だと言うのに僕は未だにこんな初歩的な事でぐるぐると悩み続けているのか。

彼女の言う通り、メジロアルダンというウマ娘にとって『普通に走れる状態』というのは、それだけでひとつ奇跡的なものなのだろうし、そもそも競走ウマ娘であるからして、疲労がそれなりに溜まってしまうのは彼女に限らず皆そうなのだ……が、果たしてこのままで良いのか。体調は横這い状態でも、どうしたってじわじわと目減りしていく『残り時間』というもの。果たしてこの調子で、彼女はトゥインクルシリーズ引退までの間に、彼女自身が『なりたかった自分』になることが出来るのだろうか。

と、焦りに身を任せ更に彼女を追い詰めてしまえば、間違いなく『残り時間』の方にその代償が帰ってきてしまう。肉体をすり減らし、その命と引き替えに、走る。なんて、そんなことは絶対にさせられない。どんなものよりも彼女の心身を第一に、彼女のトレーナーになる時に、僕は己に固く誓ったのだ。

が、どうだろうな、もちろん現状維持のまま進めば彼女の『身』は守れるのだろうが、では『心』の方は、どうなのか。現状のままで、無理をせず、いつまでもレースの度に『善戦だった』『惜しかった』を繰り返せば、すり減っていくのは、彼女の精神の方なのではないだろうか。いや、しかし、でも。

 

『行き詰まり』なのだった。まるで迷路の中、同じ景色をぐるぐると回り続けているかのような。人生で何百回と思い浮かべた同じ悩みを、性懲りも無く僕は、カラカラと頭の中で空回しさせる。

 

「……まだ、若かったなあ、この頃は」

 

さらに小さく焦点を合わせる、手元のトレーナーライセンス。数年前に撮った、今よりほんの少しだけ自信に満ち溢れていた自分自身の証明写真とパチリと目が合ってしまう。どうだろうな、もしかして時間と共にすり減っていっているのは、むしろ自分の方、なのかも……

 

 

「う、うわーっ、お、おなかが、おなかがぁ〜」

 

 

「…………?」

 

と、物思いに耽っていると……あれは、なんだ?

 

「う、ううーん、おなかがぁ」

 

僕の目の前の通路で、いつの間にかうずくまっていた入院着を着た男の子。年齢は、七、八歳ぐらいといったところか。何となく気の抜けた声で異変を訴える彼に、僕はとりあえず、手荷物をベンチに残したまま慌てて駆け寄った。

 

「え、えーと?その、君、大丈夫?」

「うーんうーん、おなかが、おなかがぁ……」

「お腹?お腹痛いの?お医者さん呼ぶ?」

「お、おなかが……おなかが……」

 

「おなかがすいたなあー!」

 

「……へっ?」

「あー!おなかすいた!は、はやくおひるごはん、たべなきゃなあー!」

 

……と、僕が駆け寄った途端にすくりと立ち上がって、一目散にその場から走り去ってしまった男の子……な、何故にわざわざ僕に向かって、あんな意味の分からないアピールを……?

 

「は、はぁ……やっぱり子供って全然分かんないなぁ……」

 

なんだか気概が削がれ、どっと両肩に疲れがのしかかってきた僕。そういやこの病院、地下に喫茶店とかあったなぁ。ここはひとつ、コーヒーでも飲みながら頭を休めるか……なんて考えながら、ベンチの上に散らばせたままの荷物を片付け始める……が。

 

「……あれ?あれ、あれ?ちょっと待て、おかしいぞ?あれ?」

 

財布に、スマホに、診断結果が入った封筒。ベンチの上は間違いなく、先程と同じ状態。

ただ一つ、僕が先程までまじまじと眺めていた『トレーナーライセンス』が無いことを、除いては……

 

「嘘ォ!?えっ、嘘だよね?ベンチの隙間から落ち……てもないし、風……も、中庭だからそんな強く吹いた訳ないし……はぇ?嘘、嘘だよねぇ!?」

 

財布をひっくり返し、全身のポケットを漁りまくる……が、さっぱり現れてくれないライセンスに、じわじわと顔中の血の気が引いてくるのを感じる。どうする、どうする?流石に給料日前のこの時期に、再発行手数料+違反金合計一万円&始末書は痛すぎる……!

 

「どういうことだ?明らかに不自然に無くなってるし、まさか、窃盗……?いやいやいや、財布もスマホも無事なのにライセンスだけ取るって、なんの意味が……ん?」

 

這いつくばるように自らの足元を掻き分け、その場にライセンスが存在しない事を流石に受け入れた僕は、ようやくその重い頭を上げ、辺り一帯をじっくりと見回す。と、そこに見えたのは。

 

「女の子?妙に焦ってるみたいだけど……」

 

やたらと忙しなく、まるで何かから逃げ惑うように建物の影へと走り去っていった、これまた入院着を着た、腰元まで伸ばしたロングヘアが特徴的な女の子。年齢もまた、やはり七、八歳程に見えるが……

 

「ん?また同じくらいの年齢の子供……不自然なアピールの後、無くなってたライセンス……!?」

 

共犯っ……!?すなわちあの男の子が僕を引き付けてる間に、女の子がライセンスを奪って、逃走……彼らの術中に、すっかり嵌ってしまった訳、なのか!?

 

「ち、ちょっと君ーっ!?ま、待って!待つんだ……っ!」

 

財布と携帯、その他諸々ポケットに詰め込んで、とにかく僕は、全速力で彼女の背を追う……が、時すでに遅し。既に彼女の姿は建物の中、複雑に入り組んだ廊下の向こうへと消えてしまった後なのであった。

 

 

──────────────

 

作戦ナンバー①『聞き込み』

 

「あ、すいません看護師さーん……?」

「あら、アルダンさんのトレーナーさんじゃないですか?どうかされました?」

「ええと、人探しをしてまして、多分ここに入院してる子なんですけど……」

「入院してる子?ええと、どんな子です?」

「どんな……えっと、だいたい七、八歳ぐらいの男の子で……」

「ふむふむ、沢山いますね?」

「それと……ああ、入院着を着てました!」

「入院してる子は、全員着てますね?」

「あー、それと、それと……髪型はなんかこう、普通に短くて、普通に黒い髪で……」

「……沢山、いますね?」

「……すみません、出直します」

 

──────────────

 

作戦ナンバー ②『おびき寄せ』

 

「あー!ここの売店のお菓子は、お、おいしいなー!」

 

サクサク……ポリポリ……

 

「ぽ、ポテチも、チョコも、お、おいしいなぁー!こんなにおいしいなら、だ、誰かに分けてあげたくなっちゃうなー?お菓子が好きな子供なんて、だ、誰かいないかなー?」

 

「……ママー、あのひと」

「しっ!ダメ!怪しい人に近づいちゃいけません!」

 

「……はは、は、おいしー」

 

──────────────

 

作戦ナンバー③『聞き込み(Ver.2)』

 

「看護師さん!人探しを!」

「はいはい、どんな子ですか?」

「今度は女の子なんですけど、ええと、少しふわっとした、腰元までのロングヘアで……」

「……ああ!見ました見ました!確か今頃はナースステーションにいるはずです!」

「ほ、ほんとですか!よかったぁ……」

「すぐに呼びますけど……ふふ、どうされたんです?喧嘩でもしました?」

「え?喧嘩?それってどういう……」

 

プルルルルル……

 

「……あ、こちら受付ですー。アルダンちゃんいますよねー?トレーナーさんがお待ちで」

「あっ、違います違います!ごめんなさい!アルダンのことじゃないです!」

 

──────────────

 

 

「どこだ……どこに行ったんだ……くぅ……」

 

件の子供達をさっぱり見失った僕は、僅かばかりでも手掛かりを求め、恐らく彼らが入院しているであろう小児病棟までやってきた……は、いいものの、流石は地域一の大病院。この病棟だけでも相当な広さがあって、一体どこから手を付けていいんだか……

今の状況としては、男の子の方の顔だけは分かるが、それ以外の情報はさっぱりといったところ。女の子の方の顔は見えなかったし、そしてどちらも、名前は全く分からない。故に病室前の名札では探せないし、流石に一部屋ずつ病室を訪ねて、子供達の顔を確認していく訳にもいかない、と……

 

「そういえばだけど、なんで『トレーナーライセンスだけ』を盗んでいったんだ?お小遣いや遊び道具欲しさに財布やスマホを盗んでいくのなら分かるけど、ライセンスなんて持ってても仕方ないだろうに……」

 

まあ、トレセン学園のトレーナーライセンスなんてそうそうお目にかかれる物じゃないし、物珍しくて衝動的に……って、それにしてはやけに用意周到だったよなぁ。まるで初めから、僕に狙いを定めていたみたいな……

 

「いやーーーーーっ!!ギャーーーーッ!」

 

「っ!?うおっ!?今度はなんだ!?」

 

「こーら、暴れないの。お薬飲まなきゃ良くならないよ?」

「いーーやーー!やだーーっ!おうちかえるーーーっ!」

「良くならないと、お家にも帰れないからね?ね、だから、ほら、頑張って?」

「っ、うっ……うわぁああああああん!!!」

 

もう一歩、あと一歩で何かに辿り着けそうな僕の思考に、けたたましく入り込んできた幼い叫び声。思わず振り返ったその先にあったのは、すぐ近くの廊下の上、母親に恨めしい目線を向ける幼児と、その様を実に痛ましく見つめる母親の様子であった。

 

「うわぁああああああ!うわぁああああ!!」

 

「う、えええん……おとうさん、おかあさん……どこぉ……」

 

「こわいよぉ……しゅじゅつ、したくないよぉ……」

 

そして、少しだけ意識を周囲に向けると。あちらこちらからどんどん僕の耳に入り込んできた、子供達の悲痛な叫び。

 

「……そうだよな、こんなとこ、本当はいたくなんてないよな」

 

この病棟前の通路は何度か通ったことがあるけど、そうか、今までこの病院に来た時はいつもアルダンの事に手一杯で、こんな叫びすら聞こえていなかったんだな。改めて感じる、病院という場所は、元来そういう所なのだということ。

件の子供達を探しながら、僕は少しだけ肩の力を抜いて、病棟の廊下、その壁や天井を眺めてみる。一面に飾られていたのは、愛らしい折り紙の工作だったり、格好いいヒーローのポスターだったり……まるで治療には関係の無い、『身』を守るには必要のないものばかり、けれど。

 

「……どっちも大切なんだ、やっぱり、どっちも」

 

子供達を笑顔にする、折り紙やヒーロー。

子供達を苦しめる、薬や注射や手術。

実に相反する存在、けれども共通している『子供達を幸せにしたい』という、意思。どれだけ迷っても結局、『心』も『身』も、どちらも蔑ろになんてできないもの。それは、よくよくわかった。

 

「……とはいえ、やっぱり現実は厳しい、か」

 

『〇〇ねん 12がつ クリスマス!』

『□□ねん 9がつ マジックショー!』

『‪✕‬‪✕‬ねん 1がつ みんなでもちつき!』

 

次に僕の瞳に入り込んできたのは、壁にズラリと貼られた色褪せた写真達と、そこに写っている入院着を着た沢山の子供達の姿。きっとここに入院している子供達みんなで撮られた記念写真を大切に飾ってあるのだろう、けど。

よくよく見れば、数年に渡って写り続けている子、ほんの少しの間しか写っていない子。そして……しばらくの間写っていたのに、ある時からパタリと居なくなってしまった子。結果はどうあれ、やっぱりそうだ、何事もずっと『現状維持』でなんて、いられない。ならば。

 

残り時間が刻一刻と迫り来る中で、どちらか片方しか掴めないとしたら。彼女の勝ちたいという『心』と彼女の脆く儚い『身』、僕は、どちらを掴む?

 

ぐるぐると回る迷路、『行き詰まり』からようやく抜け出し、単純明快な二者択一まで辿り着いた僕の憂い煩い。このままどちらか片方を選べば、きっともう、こうして無駄に悩むことだって。

 

「やだーーっ!たすけて、アルダンおねえちゃーーん!!」

 

「……んっ!?」

 

「うえぇん……ひっく……あいたいよぉ、アルダンおねえちゃん……」

「……ほら、アルダンちゃんも今、トレセン学園で頑張ってるよ?元気になったら、お姉ちゃんのレース見に行くんでしょ?」

 

突然、見知った名前が聞こえてきて、目線を向けた先。僕の瞳に、次に飛び込んできたのは。

 

『アルダンおねえちゃん

とれせんがくえんでもがんばってね!』

 

「……もしかして、これ、入学前のアルダン?」

 

数ある写真の中でも、とりわけ豪華な額縁に飾られた一枚の写真の中。今より少し短い、青空のような煌めく髪を後ろ一つ結びにした、控えめな笑顔を浮かべる少女が一人。と、満面の笑みをその少女に向ける子供達の姿が、そこにはあった。

 

『アルダンおねえちゃんのデビュー!』

『アルダンおねえちゃんがしんぶんにのったよ!』

『おめでとう!アルダンおねえちゃん、にっぽんダービーで2ばん!』

 

「……すごいな」

 

写真、だけじゃない。廊下の一角に置かれた棚の中、彼女がデビューした時の中継写真に、彼女の名が載った新聞記事。僕ですら見覚えのないような彼女の姿が、所狭しと。

 

「ほらほら!アルダンちゃん、今度またレース出るんだって!頑張ったらきっと見に行けるよ!」

「……ほんと?アルダンおねえちゃん、ほんとにはしるの?」

「うんうん!だからお薬、頑張ろう?ね?」

「うん、それなら……がんはる……」

 

棚の中、沢山の彼女の姿をじっと見つめてから、その親子はゆっくりと病室へ帰っていく。その背を眺めながら、僕はしばし、身震いをした。

 

「分かってる、そうだよな、『僕だけのアルダン』じゃ、ないもんな」

 

もしも彼女がこの先、取り返しのつかない大怪我を負ってしまったとしたら。きっとここにいる子供達の心にも途方もないほどの暗い影を落としてしまうのだろう。そしてその影は、翻って彼女自身にも。

自分自身が望もうが望むまいが、どうしても沢山の人々の願いを背負ってしまうのが、ウマ娘という生物の宿命。

 

なのだとしたら、やはり掴み取るべきなのは『身』の方なのだろうな。

 

例え『現状維持』のままでも、大きな勝ち星がなくても、出来うるだけ永く永く走り続ける、何度負けても諦めない姿で子供達の『心』を救う、身近なヒーローでい続けること。それこそがきっと『メジロアルダン』というウマ娘に課せられた、この世界での役割。そしてその役割を全うし、人々から広く永く愛されることこそが、本当の『メジロアルダンの幸せ』なのかもしれない。いや、きっとそうなのだろう。

『行き詰まり』を抜け出し、すっかりと視界はクリアになる。偶然の産物だけど、本当にここに来れて、良かった。

 

「って!綺麗に解決した感出してる場合じゃない!ライセンス!あの子達は……ん?あれ、この写真……」

 

と、僕はここにやってきた本来の目的を思い出し、クリアになった視界でもう一度辺りをブンブンと見回す……と。

 

「い、いた!さっきの男の子!」

 

いた、間違いない。僕は件のやんちゃそうな男の子の顔を……先程の、控えめな笑顔を浮かべる少女が写る写真、その中から見つけ出したのだった。

 

「そうか、あの子もやっぱりアルダンに懐いてて……てことは、その隣の子がさっきの女の子?」

 

写真の中、数多いる子供達の中でもとりわけアルダンの近くに座り込んだ、三人の子。真ん中にいるのが先程の男の子で、恐らくその右隣の子が、先程の女の子。左側の子は覚えがないけど……

……気になったのは、彼らの表情。まるでアルダンを祝福するかのように笑顔を向ける他の子供達と違って、その三人組だけは眉間に皺を寄せて、やたらと怪訝で不服そうな表情を浮かべていた。

 

「……『三人組』?なんだっけ、つい最近聞いたぞ、その単語…………あっ!」

 

なるほど、そういうことか。過不足なく見えてきた事の全貌、であればきっと『彼女』なら分かるはずだ、僕のトレーナーライセンス、その在処が。

 

ピッピッピッピッ

プルルルルル……

 

僕は慌てて病棟を飛び出し、先程の中庭で携帯を取り出し、電話をかける。他でもない、我が担当ウマ娘『メジロアルダン』に向けて。

 

『もしもし、トレーナーさん?』

「あ、アルダン!ごめんね急に連絡しちゃって、今、何してるの?」

『今ですか?今は看護師長さんと少しお茶を……もしかして、すぐに戻った方が良いですかね?』

「いやいや、大丈夫!アルダンはゆっくりお茶してていいよ?ただ、ちょっとだけ聞きたいことがあってさ?」

『聞きたいこと、ですか?』

「ああ、さっき君が言ってた『イタズラ三人組』についてだけど……」

 

 

──────────────

 

 

「と、トモちゃん、大丈夫だよね?あの人に見つかったら、先生たちみたいに簡単に許してくれないんじゃ……」

「ぜったい大丈夫よ、コースケくん!あの人が私たちのこと、知ってるはずないじゃない!」

「うう……タカオくんもいてくれれば、昔みたいにもっといろいろできたのに……」

「しっかりしなさいよ!もういない人の事をアテにしちゃだめなの!アルダンお姉ちゃんも言ってたでしょ?大切なのは……えーと、えーーと……」

 

「『大切なのは、今、何を成すか』……ってところ、かな?」

 

「そうそうそれそれ!えっ?」

「えっ?」

「……やあ、一時間ぶりぐらい、だね?」

 

小児病棟の奥にあるおゆうぎ室、その更に奥にあるおもちゃ箱の前。彼らの姿をしかと両の瞳に映し出して、僕は慎重に、向こう側へと歩み寄る。

 

「あ、あんた、どうしてここが……」

「うーん……まあ、細かい事はいいじゃない?それよりも、君たちに大切な話があるんだ」

 

しっかり目を合わせて、両手を広げて、そして、彼らの目線までしゃがみこむ。昔見た、迷子の子供と接する時のアルダンの仕草。それを丹念にトレースして僕は彼らとまっすぐ向かい合う。

 

「……まずは、ごめんなさい。君たちの大切なアルダンお姉ちゃんを、あの日勝手に、連れて行ってしまって」

「…………!」

 

もちろん、彼女がトレセン学園の門をくぐったのは彼女自身の意思であって、なおかつその頃の僕は、全く彼女と関わりは無かったわけで。けれども、そんな事実はこの子達にとって、なんの意味もない。アルダンと共にちらほら病院に現れる見知らぬ男ともなれば、きっと彼らの怒りの矛先が僕に向いてしまうのも、自然の摂理。そしてその怒りはもちろん、僕が受け止めるのが道理というものだろう。

 

「見たんだ、棚に飾ってある写真。きっと君たちは、君たちだけは、アルダンがトレセン学園に行ってしまうのを拒んでいたんだろう。彼女の身体を心配して、彼女が傷ついてしまうのが、苦しくて」

「………………」

「……戻ってきて欲しかった、のかな。アルダンにもずっと、『今までのまま』安全な場所で暮らしていて欲しかった。だから彼女と僕を繋ぎ止めるもの、トレーナーライセンスを盗んで、そこの宝箱の中、いつもの秘密ポケットに隠した、っていうこと、どうだろう?」

 

正直なところ、やっぱり自分より小さな子の気持ちなんて、僕にはさっぱり分かりはしない。もしかしたらただのワガママだとか、本当に純粋なイタズラだったりするのかもしれない、けれど、それでも何かしら『落とし所』は必要なのだ。

『これはアルダンお姉ちゃんを思っての行動だったのだ』ということにすれば、きっと誰も傷つかずに、『現状維持』のまま着地ができる。それでいい、あとは。

 

「……すまない。彼女がトレセン学園に行くことになったのも、レースで……怪我をしてしまうのも。君たちの思う通り、全て僕のせいなんだ。どうか、僕の事は恨んでもらって構わない」

「……お兄ちゃん」

「僕も今日、分かったよ。身に染みて分かった。これからは僕、絶対に無理をさせずに、怪我なんてさせずに、いつか来る最後の時には、間違いなく元気なまま君たちの元に彼女を返すから。約束する、だから……」

 

あとはもう、誠実に、丹念に、言葉を尽くすのみ。僕は彼らに向かって、真っ直ぐに頭を下げる。全ての責任を取る、皆が愛するメジロアルダンの身を預からせてもらっているということを、自覚し、謙虚に、丹念に、『現状維持』のままで。

 

それが、それこそが僕の答え……

 

「……う」

「ん?何か言っ……」

 

 

「ぜんっぜんちがうわ!!!!!」

 

 

「えっ」

 

伝えるべき事を伝えきって、憑き物が落ちスッキリ透き通った僕の視界……を、大いに不満そうに掻き乱してくる、パンッパンに張り裂けそうな膨れ面。呆気に取られる僕に向かって、彼女はこちらのチンケな落とし所なんか無視して、たったひとつの真実を語り始める。

 

「なにが戻ってきてほしいよ!なにが今までのままよ!そんなの……そんなの『大人のいいわけ』じゃない!」

「…………!」

「全然ちがうわ!真逆よ!私たちがお姉ちゃんの事を助けてあげるの!私たちが『トレーナー』になって、ね!」

 

『大人のいいわけ』

後頭部を殴られたような衝撃で、せっかくピタリと合っていたピントがグラグラと揺らいでいく。そんな僕の様子も知らんぷりでどんどんヒートアップする彼女を、僅かに窘めるように今度は彼が、観念したような口調で語り始めた。

 

「……確かにお兄ちゃんの言う通り、僕たちアルダンお姉ちゃんがレースにいっちゃうの、嫌だった。お姉ちゃんがケガしちゃうかもしれないって思って、怖かったのも、ほんとのこと。だけど」

「……だけど?」

「ダービー、みんな2番でもすごいって言ってたけど、でもその時のお姉ちゃんの顔、すごく辛そうだった。ケガして病院に運ばれてきた時と同じくらい、悲しそうだったんだ」

「だから私たち、決めたのよ!私たちがアルダンお姉ちゃんのトレーナーになるって!今度は私たちがお姉ちゃんのことを、一番速くて、一番強くて、ケガもしなくて、いつまででも走っていられる、さいっっっきょうのウマ娘にしてあげるって決めたの!『お姉ちゃんのトレーナー』になれれば、そうしてあげられる、でしょ!」

「…………っ!」

 

……本当に、若い、なぁ。

二度、三度、ぼやけた視界を擦って、僕はもう一度彼らの姿を仰ぎみる。一番速くて、一番強くて、ケガもしなくて、いつまででも走っていられる、さいっっっきょうのウマ娘、か。

では、ライセンス上本物の『お姉ちゃんのトレーナー』であるはずの僕は、どうしてそうしてあげられない?どうして僕は……『どちらか片方』しか与えることができない?

 

できないんじゃない、やらなくなってしまった、だけか。

 

『行き詰まり』に陥るのが嫌で、自分の無力さを思い知らされるのが苦痛で。それで、『あえて現状維持を選んだ』と、言い訳をしていたんだな、僕は。責任を取るふりだけして、一番無責任な道に逃げようとしていたんだ、僕は。

 

「……そうか、そうか。君たちはそれでトレーナーライセンスを。ライセンスがなければ、トレーナーになれないから」

「う、うん。ほんとは自分で取りに行きたいけれど、僕たちの歳じゃ、誰にも相手にされないから……」

「そう、だったのか……それなら、話は別だ。『ライバル』に情けをかけられるほど、そうだ、僕は『大人じゃない』から」

「大人じゃない?それって、どういう意……」

「返せ」

「……へ?」

 

「返すんだ、僕の、ライセンスを、返せ」

 

「……ひ」

「ひいっ……!」

 

そして、そうだな、彼と彼女のことも、だ。

侮っていた、舐めていた、自分自身の『現状維持』に蝕まれた、貧弱な物差しで測ってしまっていた。きっと二人の方が今の僕なんかより、ずっと彼女のトレーナーに相応しいのだろうな。

だが、ああ、今度こそ、負けてたまるか。

 

「僕の『メジロアルダン』に対する執念を、舐めるなよ。彼女を全世界どんなウマ娘よりも『最強』の存在にしてあげられるまで、終わってなんか、やるもんか。例え千年でも、一万年でも、生き続けて、悩み続けてやるよ、僕は」

「…………」

「…………」

「だから、返せ。それは『僕のライセンス』だ」

 

もう一度僕は、『行き詰まり』の中へと飛び込んでいく。『心』と『身』、どちらもだ、やっぱり僕は、『どちらも欲しい』、その為に。

誰にも負けない指導力も欲しい、彼女の不調を見逃さない眼も欲しい、彼女のためになるものなら、全部、全部欲しい。そしてきっとそれはこの『行き詰まり』の中からしか、引きずり出せないんだろう。それなら僕は、喜んで悩もう、苦しもう、絶望してやろうじゃないか。『現状維持』の心地良さなんて、クソ喰らえだ。

 

「……う、ううっ」

「……えっ?」

「うう、う、うわぁーーーーん!」

「ひぇぇ……お兄ちゃん、こわいよぉ……!」

「えっ?えっ、あ、その、ごめんね?僕もそんな、そこまでやるつもりじゃ……」

 

「……トレーナーさん、これは一体、どういうご状況ですか?」

 

「えっ?え、あ、ははは……これはその、成り行きで……」

 

 

──────────────

 

 

「いくら物を盗られたからと言って、子供相手にあんなに強く当たる必要がありますか?ねえ?トレーナーさん?」

「はい、ないです……」

「本当に申し訳ないと、思っているのですか?」

「はい、おもってます……」

 

「うぇぇん……アルダンおねえちゃぁん……」

「怖かった……怖かっ」

「こら、すり寄ってこない。元はと言えば貴方たちが事の発端なのでしょう?少しは申し訳ないと思っているのですか?」

「……はい」

「おもってます……」

 

仁王立ちで睨みを聞かせる、我が担当ウマ娘メジロアルダン。と、その目の前で膝を畳んで仲良く並ぶ、三人組。辺りから飛んでくる他の子供達からの視線が全身に突き刺さり、耐え切れず僕は、ひたすら床を舐めるように見つめるのだった。

 

「急にあんな電話をかけてきたものですから、まさかと思って来てみれば……貴方たちは、相変わらずこんなイタズラをして……」

「それはっ!そ、そのー……」

「トレーナーさんも、困ったことがあれば呼んでくださいとお伝えしていたはずでしょう?どうして貴方はいつもいつも、お一人でなんとかしようとするのですか?」

「それはっ!そ、そのー……」

 

「……っ、ふふふっ!なんだかとっても懐かしいわねー?この部屋で三人組で叱られてるの、昔は何度も見てたんだけどね?」

「……ふふっ、それは、そうでしたね♪」

 

情けなく詰め寄られている僕ら三人組。と、その騒ぎを聞いてやってきたベテラン看護師さんは、ついつい思わずといった様相で笑みを浮かべる。そして、その様子を見たアルダンも。

 

「でも、本当に立派に成長したわ、アルダンちゃんも。昔は叱る役目は看護師長さんで、アルダンちゃんはその後の、皆を慰める役だったけれど……」

「あれから私も、強くなりましたから♪今の私ならまだまだ、もっともっと厳しく叱れますよ?」

「え、えーっ!?」

「ご、ごめんなさいお姉ちゃん……!僕たち、ほんとに反省してるから……!」

「う、うんうん!僕もほんっっとうに反省してます!」

「……ま、今日のところはこれくらいにしてあげましょうかね?それで、トモちゃん?コースケくん?今日はどうしてこんなことをしたんですか?」

 

吊り上げた眉をゆるりと解き放って、僕らと同じ目線に腰を下ろすアルダン。あまりに身に染みこんだ優しい所作に、思わず感嘆の声を上げてしまいそうになる、僕。やっぱり、本物は違うなぁ。

 

「ほんとにねぇ、最近ぱったりやらなくなったから、この子たちなりに成長してるものだと思ったんだけど……」

「…………!」

「あら、そうだったのですか?」

「ええ、最近はお薬も、お勉強も嫌がらなくなってきていたのに……どうしてまた急にこんなこと……」

「……いえ、大丈夫ですよ看護師さん。この子たちは間違いなく、『成長』してる。成長したからこそ、今日は……」

「トレーナー、さん?」

 

看護師さんの言葉に、考えるよりも先に口が動いていた。もちろん僕はかつての彼らの事なんて知らないけど、でも彼らは、間違いなく。

 

「わーっ!待ってお兄ちゃん!」

「そ、そうよ!私たちぜんっぜんいい子になんてなってないわ!き、今日だってお姉ちゃんと仲良くしてるこの人が、き、気に入らなかっただけよ!……ま、まあ仕方ないから、今日のところは返してあげるけど……」

「えっ?で、でも……」

「……負けたわ。今日のところは、わ、私たちがぜんぶ悪いってことにしておいてあげる。『大人のいいわけ』ってやつも、時々は必要なんでしょ?」

「い、いや、そんなの君たちが気にすることじゃ……」

「そのかわり!もしまたうかうかしてたら、もういっかい私たちがそのライセンス、奪いに……」

 

「何をひそひそ、話してるんですか?」

 

「う、うわぁ!?アルダン!?」

「な、なんでもないわ!はいこれ!その……今日は、ご、ごめんなさい!」

「ご、ごめんなさい!」

「……そ、そうだね、僕も、ごめんなさい!そして……ありがとう!」

 

ぺこりぺこりと、互いに床にめり込むほど頭を下げてから、アルダンの立ち会いの元成立した歴史的和解。およそ一時間ぶりに僕の手元に帰ってきたプラスチックのカードの、そのずっしりとした重みを、僕は改めて感じ取る。

 

「あら、何かと思えばトレーナーライセンスではありませんか。こんな大切なものを盗られてしまうなんて……本当に、気をつけてくださいね、トレーナーさん?」

「……うん、気をつけるよ。今までより、ずっと、ずっと」

「……?ああ、それにしてもこの写真のトレーナーさん、とっても若々しくて可愛らしいですね♪」

「あ、ああ、そろそろ取り直さないとね?」

 

やっぱり、若いなあ。若くて、無鉄砲で、後先考えてなくて。でも、その瞳の色はやっぱり眩しかった。そうだな、次にこの写真を取り直す時には、G1トレーナーとして……いや、天皇賞春秋連覇トレーナー……いやいや二大グランプリ……とにかく今より立派になってから……と、まずはその前に、来月の検診こそ『何の問題もなく、完璧!』と言われるように。

方法なんて、まだまださっぱりわからないけど、また、もう一度、何度でも、『行き詰まり』の中、頑張らないとな。

 

「ふふふ、なんだかとってもいい光景ね?……タカオくんにも、見せてあげたかったけど……」

「あ……」

「……タカオ、くん」

「あ……そういえば、タカオくんの姿が見えませんが……もしかして」

「ああ、アルダンちゃんはまだ聞いてなかったのね?タカオくんは、ね……」

 

 

「……あれー?トモちゃんにコースケくん、それに、あ、アルダンお姉ちゃんだー」

 

 

「えっ」

「えっ」

 

「あー!タカオくん!久しぶりー!」

「ええー!ちょっと!くるならくるって連絡しなさいよー!」

「えー、いちいち連絡するのめんどーでしょー?どうせ二人ももうすぐ退院なんだし、そしたら学校で毎日会えるじゃんー?」

 

「……タカオくんは一足先に退院して、もう学校に通えるようになったのよ?あの二人も、次の検査で問題がなければ、ね?」

「……ふ、ふふふふっ!それはそれは……ね?トレーナーさん?」

「ふふ、それはそれは……最高のハッピーエンド、だね?」

 

 

そして、やっぱりどうしても『終わり』が来てしまうとしたら。

願わくば、こんなハッピーエンドでありますように。少し大人びた、照れくさそうに笑い合う三人組の姿をしかと見つめながら、僕は性懲りも無く、そんなことを考えるのだった。

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