ジェネリック藍染が生き足掻く話   作:榛眞

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あけましておめでとうございます~!(断界からの発信)
タイトル通りテコ入れ回です。




進め………!ここからは破面篇だ………!
「テコ入れ」という言葉の語源が、道具の「梃子」であることは知っているね?


 

「昨晩はお楽しみだったようで」

「……何の話だい?」

 

 日差しの眩しい真昼間。

 書類に向き合っていた可城丸秀朝の机へ、志波海燕が片手をつき、身を乗り出している。

 海燕の口元に浮かぶのは、いやらしいほどのニヤニヤ笑い。その小憎たらしい顔を見上げながら、可城丸は眉をひそめた。

 

「とぼけんなよ。昨日は四番隊の副隊長殿とデートだったろ?」

「ああ……いや、だから何度も言っているだろう? あれは業務の一環で──」

 

「はいはい、業務業務……で、秀朝」

 

 海燕はわざとらしく言葉を切ると、内緒話をするようにして、可城丸の耳元へと口を寄せる。

 

「もちろん、()()はしたんだよな?」

「ブッ!!!!!」

 

 あまりにも直球な爆弾発言に、可城丸は思いきり噴き出した。慌てて口元を押さえ、周囲に人がいないかを確認すると、気持ち声を潜めて怒鳴りつける。

 

「ナニっておまっ……! 下世話なことを言うな!!」

「なぁに純情ぶってんだよ。お前が勇音を抱えて隊舎に向かったってネタは、もう上がってんだぜ?」

「なっ……それ、誰から聞いて……!」

 

 動揺のあまり、言葉が途切れ途切れになる友人の様子を笑いつつ、海燕は肩をすくめて言った。

 

「俺の情報網をなめんなよ。……さあ、さっさと吐きな。もちろんAはしたンだろ? もしかしてB……いや、Zまでいったのか?」

「いってない!!」

 

 ABCと指を折りながら勝手に盛り上がる海燕に、半ばキレ気味で言い返す可城丸。

 そもそもZって何だ、と内心でツッコミを入れながら、彼は態とらしくコホン、と一つ咳払いをして、冷静に言葉を返した。

 

「……お前が想像しているようなことは何一つしていないよ。酔った勇音さんを部屋まで送っただけだし、その後はそのまま宿直室に戻ったさ」

 

 そう、取り繕うでもなく言い切って、可城丸は再び書類へと視線を落とす。その声音には、言い訳めいた揺らぎはない。

 言葉を受けた海燕は、ぱちりと一度だけ目を瞬かせると──

 

「……マジかよ」

 

 まるで、ルキアの描いた兎(珍獣)でも見るかのような、理解が追いつかないものを見る目で、じっと可城丸を凝視した。

 やがて、その疑問の視線は顔から胸元、さらに下へと降りていき、──何故かちょうど袴紐のあたりで止まる。

 

「……なんだい?」

「……いや、その……お前って……」

「……?」

 

「──不能なのか?」

「しばくぞ」

 

 あまりに失礼な一言に、可城丸は取り繕うことも忘れて素で言い返す。

 

「いや、だってそれ以外なくね? 据え膳で、しかも告白までしてきた女だぞ? なんで手ェ出さねぇんだよ!?」

「だから、そういう下世話な話を大きな声でするな……って、なぜ僕が告白されたことを君が知っているのかな? オイ、海燕。説明しろ。目を逸らすな、オイ」

 

 机越しに睨みを利かせるが、海燕はまるで意に介さない。むしろ、どこか確信めいた目つきで、ぐっと距離を詰めてくる。

 

「だってオマエ、好きなんだろ? 勇音のこと」

「──ああ、好きだよ」

 

 即答だった。

 照れも、言い淀みもない。その平然とした肯定に、海燕は一瞬、言葉を失う。

 

「……なら何で……」

「好きだからこそ、大切にしたいんじゃないか」

 

 一拍。

 可城丸は視線を逸らさず、言葉を重ねた。

 

「……そもそも、酔って前後不覚の相手に、同意もなしに行為を迫るなんて、下劣がすぎるだろう」

「……うーん。これを紳士と呼ぶか、意気地なしと呼ぶべきか……」

「何とでも言えばいいさ」

 

 吐き捨てるように言い放ち、可城丸は止まっていた事務作業に戻った。紙の上を走る筆先を追いながら、小さくため息をつく。

 顔を上げずとも分かる。前面から伝わってくる海燕の気配は、まだ少しも納得していない。

 

「僕は、彼女に誠実でありたいんだ」

「だったらさっさと告れよ」

 

 ピリッ──と空気が張り詰める。

 

「好いた女に告白までさせたくせに、なあなあにしたままのやつの、どこが誠実なんだよ」

「──それは……勇音さんは、あの日の記憶がないから……」

「そういう話じゃねえだろ」

 

 短く、しかし確かな怒りが込められたその言葉に喉をつまらせた。

 

「……そうだね、海燕の言う通りだ」

 

 言葉を切り、視線を落とす。止まったままの筆が、紙面に暗い滲みを作り出している。

 

 

(──死ぬかもしれない俺が……彼女の未来を縛るような言葉を口にしてしまっていいのだろうか)

 

 

 ──彼の胸に去来するのは、この世界ではあまりにも異端すぎる知識。

 

 自分の行く末を識っているがゆえに、彼は安易に未来の約束を口にすることを憚るようになっていた。

 もちろん、それを変えるために必死に足掻いている最中だ。それでも、心情としては、どうにも割り切れない。

 そんな憂いを滲ませた表情を浮かべる可城丸を見て、海燕は小さくため息を吐いた。

 

「……お前は、グダグダと考え過ぎなんだよ。たまには衝動に身を任せてみろって。どれだけ考えて動いたって、全部思い通りに行くことなんてねぇんだからさ。特にお前は妙なところ抜けてるし」

「うっ! ……はい……それはもう本当に、身にしみて……」

「だろ? 未来をみんのもいいけどよ、今を生きるのも大事だぜ」

 

 いつの間に用意していたのか、新しい書簡を手にしていた海燕は、それを可城丸の手元にある滲んでしまった紙と交換する。

 

「お前が何か失敗したとしても、俺がフォローしてやるからさ」

「海燕……」

 

「だからな、秀朝…… ちょっくら告って、一発やってこい

「海燕……ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

 

 

 

 破面篇、はーじまーるよー!

 

 という軽口はさておき。

 

 日番谷冬獅郎、朽木ルキア、松本乱菊、阿散井恋次、斑目一角、綾瀬川弓親。──そして、原作ではいなかったはずの志波海燕の八人を含めた彼ら日番谷先遣隊は、すでに現世へと向かい、藍染惣右介の侵攻に備えている。

 

 対して俺はというと、──十三番隊舎で留守番していた。

 

 いや言いたいことは分かるよ。「現世は?」って思うよね。でも聞いてくれ。

 

 いくら現世が危機的状況だとはいえ、尸魂界の通常業務が止まるわけではない。むしろ、ルキアや海燕といった幹部主戦力が抜けた今、現場を回す人間は必要不可欠なわけでェ……

 その役目が回ってきた……というより、押し付けられたのが俺だ。

 

 それに、ぶっちゃけた話をすれば、俺が現世に行ったところで、出来ることは限られている。海燕までメンバーに入っている時点で、戦力としては十分すぎるくらいだろう。むしろ過剰戦力だ。

 ……てかなにより、浦原喜助に会いたくないんだよね。あの人すげー怖いじゃん、俺の事なんか全部見透かしてきそうだし……

 

 まあ、そんなこんなで。

 俺は今日も今日とて、変わらず書類に埋もれながら業務に勤しんでいたんだけれど──

 

「可城丸三席、こっちの写真も使って良いですか?」

 あっ、どうぞどうぞ。

 

 現在俺は、檜佐木修兵と共に瀞霊廷通信の編集作業をしている。

 どうしてこうなった……?

 

 

 

 

 

 ──話は、数日前に遡る。

 

 

 男性死神協会からの襲撃騒ぎが一段落した直後のことだ。

 俺は、来訪した檜佐木副隊長から、「瀞霊廷通信への寄稿」を頼まれた。

 

 どうやら以前受けた俺へのインタビュー記事……そこに掲載された、俺の趣味である写真を記事に載せたいのだという。

 

 ──とは言ってもなぁ。

 俺の写真なんて、特別な教養があるわけでもない、完全にド素人の趣味だ。

 しかも被写体の大半は護廷十三隊の隊士たちだし(もちろん、撮影前には必ず許可を取っている)、他にも瀞霊廷内の建物や風景が多い。

 一応、秘匿区域や重要書類が写り込まないよう注意は払っているが……それを広報誌に載せるのはプライバシー的によろしくないんじゃないか? って、正直に言った。

 

 そしたら返ってきたのが、これだ。

 

「レンズを向けられると、無意識にカッコつけちゃったり、レンズを向けた方もカッコよく撮ろうとしちゃうじゃないですか。でも可城丸三席の写真って、なんか自然なんですよね。

 これなら、護廷十三隊のホントの雰囲気が伝わりやすいかな〜って……」

 

 めちゃくちゃ褒めてくるじゃん。

 え〜すごくうれしい、ありがとう!!

 

 というわけで調子に乗った俺は浮竹隊長を通して総隊長に直談判し、結果、掲載する写真については、被写体本人からちゃんと許可を取ること。そして、隊内の景観に関しては、浮竹隊長に事前確認をしてもらう、って条件付きで話はまとまった。

 

 まあ、護廷十三隊で「写真はちょっと……」なんて言う内気な人、ほとんどいないんだけどね。カメラ向けた瞬間、こっちに寄ってきてピースするやつの方が圧倒的に多いから。

 そんなこんなで、ついでに仕事手伝うよ〜って話をして今に至るわけだ。……俺の自業自得だったな。

 

 

 そんな回想を終えた俺は、横目でこっそりと檜佐木副隊長の様子をうかがう。

 パラパラと冊子をめくるその横顔。精悍な顔立ちを損ねるように、切れ長の眼の下にはうっすらと隈が浮き出ていた。

 

 そりゃそうだよな〜……

 

 尊敬する上司が自分たちを裏切って離反したんだ。

 それだけでメンタルはボコボコだろうに、隊長不在となった九番隊の立て直しに加え、『瀞霊廷通信』の編集作業まで立て込んでいる。

 ……というか、藍染、東仙、ギンという人気執筆陣が軒並み離反したせいで、穴埋めの作業はいつも以上に大変だろう。

 

 こんな時ぐらい休刊にしてもいいと思うけれど……まあ、身体を動かしていた方が、余計なことを考えずに済むって理屈は、俺にも分かる。

 

 しかし、いくらなんでもこれは不健康すぎる。

 

 それこそ、誰かといっしょに飲みに行ったり、鍛錬で汗を流したりすれば少しは発散できるんだろうが……たしか檜佐木副隊長って友達いないんだよな。

 

 俺が友達になると言っても、この年齢差だし。いや、死神に歳の差なんて関係ないのかもしれないけれど、そもそもきっかけが「同情」から始まる友人関係っていうのも何か違う気がする。

 俺自身は素直に檜佐木副隊長と友人になりたいと思っているけれど、向こうがどう思うか……だいたい、いい大人が「友達になろう」なんて言い出すのは、ねぇ?

 

 ……ん? そういえばギンのファーストコンタクトがまさにそれじゃなかったか? 「ボクと友達になって、あの腹黒眼鏡をかち割ろうよ!」とか言ってきたし(※言ってない)……うん、ギンを参考にするのはやめよう。

 

 

 んん〜〜〜……

 あっ、そうだ!

 

 

 檜佐木副隊長、檜佐木副隊長

「ん? どうかしました?」

 俺、檜佐木副隊長にちょっと聞きたいことがあったんすよね

「なんすか?」

 

 檜佐木副隊長って──卍解とか興味あります?

 

「……え?」

 

 

 






主人公から告白させたいタイミングがありますので、どうか今しばらく、初々しい二人を見守っていてください……!


次回
更木剣八 VS 檜佐木修兵
監修:卯ノ花烈

斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。

  • 尸魂界篇後
  • 破面篇後
  • 本編終了後
  • 斬魄刀異聞篇を書かない
  • 他に何かご意見があれば活動報告の方へ
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