前回のあらすじ
風死「剣八に勝てるわけないだろ!!」
檜佐木「馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!!」(卍解会得)
「ウラァッ!!」
「うわぁぁぁッ!!」
「おいおい、つまんねぇなァ……もっと本気で来いよ、ァア?」
「死ぬっ、死んじゃう!!」
【酷すぎる……】
「あらあら」
暴行現場だ。
以上、相即不離、卯ノ花隊長、そして俺の言葉である。
眼前に広がるのは、更木剣八と檜佐木修兵の
しかし、それはどう贔屓目に見ても対等とは言えず、猫がネズミをいたぶるどころか、猛虎がネズミを弄ぶような、あまりにも一方的な狩りだった。
いや、一方的とまではいかないか?
逃げ腰ではあるものの、致命打はどうにか捌いているし、些細とはいえ反撃もできている。
あの更木隊長相手にここまで善戦している時点で、重畳だろう。
「オラァァァァァ!!!!!」
「ぎゃああああああああああ!!!!!」
【ああ……】
「あらあら」
……うん、生きてるだけで重畳、重畳。
──そんな血なまぐさい光景が繰り広げられている場所は、毎度おなじみ、浦原・夜一コンビの秘密基地だ。
と、言うのも、ここには特殊な結界が張られていて、霊圧や気配が外に漏れにくい仕様になっている。だからこそ、あの霊圧ゴジラことチャンイチが虚化したときでさえ、死神たちに特定されなかったってワケ。
まあ、「漏れにくい」だけで、完全に遮断されているわけじゃない。集中して探られれば、普通にバレる。
実際、俺が一護と別れたあと、この場所に脱獄してきた阿散井副隊長が凸してきたらしいし。
流石に、夜一さんも不味いと思ったのか、彼女が経年劣化による結界の緩みを修復して、更に強力な結界を重ね掛けした……と、阿散井副隊長から聞いたんだけど。
確かに、言われてみれば、この場所全体に張り巡らされている術の気配が以前より増している気がする。秘匿性も向上してるんじゃないかな?
そんな経緯もあって、今回もありがたくこの場所を利用させてもらっている訳だ。
「うーん……ん? アレは……東仙隊長?! 東仙隊長、なぜ此処に、というよりなぜ背中に羽がッ……はっ、もしや、天の使い……? いや、けど、文献で見た天使とやらにしては随分真っ黒で毛むくじゃらのような……」
「ア? 何ブツブツ言ってんだオマエ。何でもいいからさっさと立てよ」
「クゥン」
「──ところで、可城丸三席。なぜ突然、更木隊長と檜佐木副隊長を仕合せようとなさったのです?」
獣のような咆哮と絹を裂くような悲鳴を
事前に説明した通り、檜佐木副隊長に卍解を会得していただくためです。一応、僕も檜佐木副隊長のお相手をさせてもらったのですが、如何せん僕の技量では追い込みが足りず……そこで、更木隊長にお願いしたというわけです。
「なるほど……しかし、些か早急ではありませんか? こういう言い方も何ですが、いくら何でも実力差がありすぎるでしょうに」
不可思議そうに首をかしげる卯ノ花隊長に、思わず苦笑する。
確かに、その通りだ。
いくら同じ隊長格とはいえ、隊長と副隊長では差がありすぎる。ましてや更木隊長は、隊長陣の中でも上澄み中の上澄み……なんなら公式チートだし。
なら何故、そんな相手と、檜佐木副隊長を戦わせたかと言うと──
檜佐木修兵の卍解会得のためには、彼本人が死にかける様な目に遭う必要があると判断したからである。
相即不離のおかげだろうか。俺は、人々を繋ぐ「縁」のようなものを感じられるようになった。
分かりやすく言えば、相即不離をアンテナにして、俺本体が漂う思念を受信しているようなイメージ。感覚としては霊圧探知の拡張に近い。卍解中はこれと少し感知の仕方が
【深く関われば関わるほど、その人のことを強く感じられるようになるんだ】とは、相即不離の弁である。
……なんかちょっと、言い方エッチじゃない?
とにかく、この感覚を頼りに、俺は檜佐木副隊長と彼の斬魄刀の関係性をおおよそ把握した。
そして俺は、彼らが何か大きな──それこそ命の危機に瀕するような衝撃を受ければ、今の彼らの繋がりをより深く、より鮮明なものにできると考え、この策に踏み切ったのである。
【いや、それは策というより、山勘頼りの博打では?】
ドン引きした様子でそう語り掛けてくるのは、腰に佩いた相即不離。
ははは、いやまさかそんな。だってこちらには、万能ヒーラーの卯ノ花隊長がいらっしゃるんですよ?
それに、いざとなれば相即不離で檜佐木副隊長の命をこの世(この場合はあの世か?)に繋ぎ止められますから。万全を期して臨んでますとも。
【そのヒーラーに難があると言うか……】
え、何か言った?
【いや……】
まあ、さすがにそれだけの予想でこの策に踏み切ったわけじゃない。ある程度の考察はしてるんだ。
ほら、檜佐木副隊長って、空座決戦でアヨンに骨をバキバキに折られてたのに、その後は普通に五体満足で復帰してただろ? あれを見るに、卍解の土台自体は、すでにできていたはずで、実際、そのあたりは小説でも言及されていた。
要するに、「きっかけ」がなかっただけだ。
なら、極限状態にまで追い込めば、卍解を引き出せる可能性は高い。
だから、小説の時みたいに、檜佐木副隊長が死にかける目に遭えば、風死くんも
【う、ううん、さすがに荒業が過ぎると思うけれど……そもそも、いくら死にかけるとはいえ、実戦と訓練とじゃ状況がまったく異なるんじゃないかい?】
そこで我らが
あの人は相手の技量に合わせて
けど、今は俺たちのガバとチャンイチの
実際、今もすごい殺気を放出してるし。相対してる檜佐木副隊長も、更木隊長本人も、もう訓練だってこと忘れてると思う。
あと、檜佐木副隊長には事前に免責同意書を書いてもらったから、心的プレッシャーも上乗せされてるんじゃないかな。
【酷すぎる!】
うん。発案した俺が言うのもなんだけど、酷すぎると思う。
まあ、藍染一派の離反以降、さらに霊圧が上がってしまった更木隊長は、従来の眼帯に加え、黒い拘束帯を手足に巻くことを追加で義務付けられたわけで……この黒い拘束帯って、千年血戦篇で藍染惣右介が巻かれてたやつかな?
とにかく、これらの拘束のおかげで更木隊長の霊圧はかなり抑えられているし、むしろ以前よりも弱体化している。これなら檜佐木隊長を相手にさせても良いだろうと判断したってわけよ。
まあ、今の戦況を見たら若干の判断ミスは否めないけど。
【なるほど、一応の抑止力はあるのか……】
あと、流石に同意書についてはパフォーマンスであって、決して死なせるつもりはないから! 後遺症も考慮してるし、専門家監修のもとで行っています。
【だからその専門家が信用ならないって言ってるんだよ!】
え、何か言った?
【……君、先程から都合の悪いことだけ聞こえないふりをしていないかい?】
と に か く ! !
きっとさ、半殺しじゃダメなんだよ。本物の殺意を浴びせられて、文字通り死ぬほど追い詰めなきゃ、檜佐木副隊長の才能は開花しないんだ……!
だから俺は祈るしかない。
がんばれ、檜佐木副隊長!
俺、信じてる。信じてるからな……!!
【脳筋ここに極まりかな。本人にとってはたまったもんじゃないだろうね……南無三】
「──可城丸副隊長? 突然、黙り込んでどうしました?」
ハッ! しまった。完全に自分たちの思考に没頭していた。
慌てて意識を戻し、卯ノ花隊長に答える。
……ええ、確かに隊長と副隊長では差があります。ですが今後を考えれば、格上との戦闘に慣れておくことも重要かと。
それに、「窮鼠猫を噛む」とも言いますし。もし卍解を会得した暁には、更木隊長に膝をつかせる──なんてことも、あり得るかもしれませんよ?
「あの子が、猫……? ふふ。
──猫と間違えて、虎の尾を踏むことにならなければよいのですけれど」
上品に笑いながら、どこか恍惚とした表情でそう呟く卯ノ花隊長。その言葉に、俺は苦笑いを返す。
いや、もうとっくに虎穴には入ってると思うけどね。
蛇足
「それはそうと、可城丸三席」
「はい?」
「貴方、勇音に手を出したのですか?」
「!?!?!? 出してませんが!?!?!?!?」
「出していない? 何故です」
「何故って、むしろこっちが何故なんですが!?」
「勇音に想いを告げられたのでしょう? まさか、袖にしたのですか」
「い、いえ、振ってはいませんけど……というか、何故それを知って……いや、まあ、何となく理由は察してるんですが。ええと、とにかく、あの場は酒の席でしたし、勇音さんも正常な状態ではなかったので──」
「……ふむ。つまり、返事もせず、うやむやにした、と」
「え?」
「判りました。──首を差し出しなさい」
「何故!? いや、本当にどうして!? 待って、卯ノ花隊長、刀を下ろして!」
「慈悲などありません。死ね」
「ウワーーーッ!?」
※このあと、めちゃくちゃ死合した。
※なんだかんだで四つ巴の大乱戦へと発展し、最終的には剣八ズによる血まみれ(愛)死合が開幕。可城丸と檜佐木は、逃げることもできず、巻き込まれながら最前列で最後まで観戦する羽目になった。
浦原・夜一コンビの秘密基地「こわれる゛っ♡ こわれちゃ゛う゛っ♡」(大破)
主人公と相即不離の能力は、「空気を読む」ことに少し似ています。
場の雰囲気や人間関係の機微を察し、自分の言動を調整する能力。たとえば、上司が不機嫌なときや友人が落ち込んでいるときなど……程度の差はあれど、誰しも一度はそうした空気を感じ取った経験があるでしょう。彼らの能力は、その感度を3000倍にしたようなものです(過言)。
【檜佐木修兵の卍解について】
原作では、「罪は断罪し、死神としての矜持を受け継ぐ」という、東仙隊長の死を乗り越えた強い意志が、斬魄刀の屈服へと繋がります。が、ここでは主人公の「とにかく死にかけたら対話が進むんじゃね?」というクソ雑理論のせいで、檜佐木は谷へ突き落とされ、虎穴へ放り込まれる羽目に。可哀想。
もちろん主人公に悪意はありません。ただ、「死にかけて精神世界に入った」という原作の展開だけは、やや薄れた記憶の中にも残っており、「じゃあ死にかければいいのでは?」という結論に至っただけです。
もし実行前に相即不離へ相談していれば、もう少し穏当な方法になっていました。
一方の風死は、「合理的であるようで、あまりにも雑すぎる作戦」を檜佐木に実行されたことでブチギレています。ツンデレです。
空座決戦篇までに卍解を会得できるかはまだ不明ですが、もし会得できたとしたら、風死が屈服する理由も原作とは少し違ったものになるのかも……?
次回
十三番隊に仮加入する織姫
十三番隊舎崩壊、主人公の胃も崩壊
斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。
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尸魂界篇後
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破面篇後
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本編終了後
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斬魄刀異聞篇を書かない
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他に何かご意見があれば活動報告の方へ