ダンジョンに初代ロトの勇者がいるのは間違っているだろうか。   作:ドラクエ11激推し侍

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いつもありがとうございます。
今後は諸事情で更新頻度が落ちると思いますが、応援よろしくお願いします。
評価、感想等、有難き幸せ。ここ好きとかも待ってます。

本作には原作改変の要素が多く含まれます。
ご理解頂けると助かります。


リヴィラ防衛戦

 

 

 

 

 

 

 

 取り敢えず、イレブン達はハシャーナを起こすことにした。

 街の封鎖はボールスがしてくれているから任せるとして、推定被害者に直接話を聞くのが最も手っ取り早い、ということで。

 

 

「【神の言祝(ことほ)ぎ、天使の唄声(うた)、聖者の祝詞(いのり)聖句(きせき)をここに。傷を認めず(いやし)不条理()破却(ひてい)し、(すべて)肯定する(ゆるす)。命ある限り万物(なんじ)を救う。聖なる泉より湧き出す波動(ひかり)よ。我が友を癒せ】────【ベホマ】」

 

 

 高等回復薬(ハイポーション)を使ったとは聞いていたが、念のためにイレブンが治癒魔法を使用する。

 高速詠唱によって魔法円(マジックサークル)が輝きを増し、ハシャーナを包み込んだ優しい光は瞬く間に彼の傷を消し去った。

 イレブンが軽く肩を揺さぶると、寝惚けたような顔をして目を覚ました。

 

 

「………………んがっ?」

「おはよう、ハシャーナさん。状況は理解してる?」

「どうしてイレブンが俺の部屋にいるんだよ。…………いや、違えな。ここはホームじゃない。てか、九魔姫(ナイン・ヘル)に剣姫に千の妖精(サウザンド・エルフ)!?どうなってんだ!?」

「……私もいるんだけど?」

 

 

 ロキ・ファミリア一行を見て一気に眠気が飛んだらしい。

 ガバリと跳ねるように起き上がると、反射的な行動なのか彼女達から距離を空けて挙動不審になる。

 一人だけ自然な流れで存在を無視された形のエマが憤慨していたのは余談だ。

 

 

「ハシャーナさん、ここは地上じゃないよ。リヴィラにある宿屋の一室だ」

「リヴィ、ラ?──────思い出した。30階層で()()()()()()()……そうだ!あの女は何処にっ!?」

()()?なんだそれは、クエストの類か?」

 

 

 リヴェリアが疑問を呈すれば、ハシャーナはうっかり口を滑らせたようで冷や汗を掻きながら顔を顰めていた。

 何やら面倒ごとの予感がしてリヴェリアが溜息を吐く。

 俄かに緊迫し始めた空気を察して、エマとレフィーヤが困惑した顔を見合わせる。

 そして、イレブンは騒がしい外を窓から覗くアイズを横目に見ながら、一度手を打って鳴らすことで空気を切り替えた。

 

 

「諸々の事情について話を聞きたいところだけど…………まずは、顔を洗ってきたらどうかな?」

「顔を?……うわっ、最悪」

 

 

 イレブンに指摘されて初めて血塗れの顔に気付いたハシャーナが、心底嫌そうに嘆息した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 綺麗に顔を洗って場を改めたあと、今度はボールスも加えてハシャーナから話を聞き出した。

 とはいえ、彼も詳しくは知らないようだった。

 

 

「……なるほどな。依頼者の名前は分からず、回収物の正体も不明のクエストか。何故こんな怪しい依頼を受けたんだ?」

「あー、それは秘密にさせてもらう。俺の一存では話せないんだ。悪いな」

 

 

 このように何度か答えられない質問もあった。

 ガネーシャ・ファミリアの団員であることから悪人と連むことはないだろうが、割と根が深そうな問題だと感じさせた。

 

 

「赤髪の女はレヴィスって名乗ったんだよね?」

「そうだぜ。聞き覚えのない名前だったから、サポーターかなんかでリヴィラまで来たのかと思ったんだけどなぁ……」

「実際にはL()v().()()()()は確実、か。私も耳にしたことは無いな」

「僕も知らない名前だね。偽名という可能性もあるけど、()()()()()()()()()()だ」

「……闇派閥(イヴィルス)?」

「正確にはその残党かもしれない、ってことだよね?」

 

 

 アイズとエマの疑問に、イレブンは重々しく頷いた。

 七年前から五年前の二年間で主力を失い壊滅した闇派閥(イヴィルス)だったが、まだ残党が存在していることは分かっている。

 掃討しきれなかったのはイレブン達の失態だ。

 恐らくは今もまだ水面下で碌でもない悪巧みに精を出していることだろう。

 一度隠れられると後手にならざるを得ないのが、闇派閥(イヴィルス)と戦う時に厄介な点である。

 

 

「素顔を見てんなら話が早えな。街の連中を動かして、現時点でリヴィラにいた奴等を広間に集めさせてる。奴らの顔を『剛拳闘士』が確認して犯人を見つけりゃ、あとは捕まえるだけってことだろ?」

「……そうだな。レヴィスは宝玉を狙ってたみたいだが、俺はもう運び屋に渡してたからな。そいつがまだリヴィラにいるなら保護してやりたい」

「じゃあ、ハシャーナを中心に動いていこう。怪しい人物を見掛けても単独行動は慎むこと。いいかな?」

 

 

 ボールスとハシャーナの意見を採用し、今後の行動方針が決定した。

 

 

 

 これは余談だが、昨晩のことについても話を聞いた。

 行為に及ぶ直前に宝玉についてそれとなく聞かれたらしく、訝しみながらも運び屋の存在を話してしまったようだ。

 直後に頭を殴り潰そうとしてきたところに頭突きを合わせて、想定以上の力によって額が割れた。

 相手の拳も破壊したとは言うが、詰めが甘いと言わざるを得ないだろう。

 

 ハシャーナは衝撃で意識が飛びそうになりながらも、レヴィスが痛みに怯んだ隙を見逃さず、立て直す暇を与えずに反撃をした。

 二つ名に恥じない剛拳の使い手であることから、直撃した手応え的に幾つか内臓を破壊した自信があるらしい。

 Lv.6相当という話だったが、耐久に特化しているのでもなければLv.5の拳をまともに喰らえば甚大なダメージを負うのも当然のことだった。

 そうして撃退したはいいものの、ハシャーナのダメージも深刻で意識を落としてしまったらしい。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 

 

 広間にはみっしりと人々が集まっていた。

 事情を知る者が伝えていたというのもあるのか、隣の誰かを疑いながら警戒を緩めていない。

 現状を思えば悪くない反応だった。

 

 

「これで全員か!?鼠一匹外に出してねェだろうな!?」

「おう!バッチリだぜ、ボールスさん!」

 

 

 リヴィラの街の冒険者だろう人物がサムズアップをした。

 まずは、事情を知らない人向けにボールスが壇上に登って話し始める。

 

 

「よぉ、お前等!俺はリヴィラの街を取り仕切ってるうちの一人、ボールス・エルダーだ。本日この街で由々しき事態が起きた。────冒険者による殺人未遂事件だ!その犯人がこの街にまだ潜伏している、ってわけで犯人捜索に協力してもらう!安心しろっ、扱き使おうってつもりじゃねえ。顔を見せてくれたらいいだけだ、簡単だろ?」

 

 

 ニヤリと悪人面で笑うボールスだったが、聴衆の反応は悪くなかった。

 物々しい雰囲気だからと警戒していたところに、なんてことのない協力要請だ。

 顔を見せるだけならすぐ済むし、文句も出なかった。

 

 空気が和らいだのを確認して、今度はハシャーナが壇上に登ってボールスの隣に立つ。

 

 

「俺はハシャーナ・ドルリア。ガネーシャ・ファミリアの『剛拳闘士』だ。そんでもって、今回の被害者でもある。…………その割に怪我をしてねえって言いたそうな奴がいるが、普通に治してもらっただけだ。高くついたがな?」

 

 

 Lv.5が被害者?と騒然としかけた場をハシャーナの(おど)けた言動によって収める。聴衆から少し笑い声が漏れ聞こえた。

 群衆の主であるガネーシャの眷属だけあって、人と接するのが上手いのは流石と言うべきだろうか。

 極秘任務の後に女を買ったということで、絶賛リヴェリアを筆頭とした女性陣の評価は底をついているが、仕事はできるのだ。

 

 あと、治療費が高くついたのは本当のことだ。

 高等回復薬(ハイポーション)なんかよりも、イレブンの治療費の方が数倍は高い。

 この辺りはなあなあにしていい部分ではないため、治療を施した以上は金を取るのも義務の一つとして要求している。

 そうでもないと医療系ファミリアなどの営業妨害になってしまうので、セーニャにも無償で癒す時には目撃者がいない状況で、必ず口止めすることを約束してもらっていた。

 

 

「そういうわけだから、顔隠してる奴等には悪いがちょっと見せてくれ。少しの間だけでいいから協力してほしい。頼む!」

 

「……ったく、仕方ねえなぁ!顔見せるだけでいいんだろ?分かったよっ!」

「ちっ、早くしてくれよな。さっさと地上に帰りたいんだよ、こっちは!協力するから街の封鎖を解除してくれ!」

「そうだよな、俺も早く帰りたいし……」

「…………仕方ない。ここは私も……」

 

 

 気安い態度を見せたあとに、真剣に頼み込む姿を見せる。

 あとは仕込みとして紛れ込ませていたボールスの手下が、さも仕方なさそうに協力する姿勢を見せれば、集団心理で周りも倣うというわけだ。

 外套で隠した顔を見せる聴衆達を大きく首を巡らせて確認したハシャーナが眉を顰めた。

 

 

「…………いねぇな。なあ、今も顔隠したままの奴等も協力してくれ!殺人鬼が紛れてるかもしれない以上は、あんまりにも協力的じゃなければ実力行使もしなけりゃならなくなる!なるべく穏便に済ませたいんだ!」

 

「そうだそうだ!俺達だって顔見せたんだぞ!?」

「ちょっと顔見せるだけだろ!さてはお前が殺人鬼じゃねえだろうな!?」

「ま、待って!違うっ、私はただのサポーターだ!」

「……分かった!見せるっ、見せるから無理矢理はやめてくれ!」

 

 

 そうして聴衆の全員が顔を見せた。

 しかし、その中に赤髪の女はいても、ハシャーナは首を横に振って否定する。

 レヴィスがいないのはどういうことか。

 まさか、このリヴィラにボールス達でさえ知らない隠れ家のような場所が有るとでも言うのだろうか。

 広間に嫌な空気が蔓延しそうになった時、一人の犬人(シアンスロープ)が進み出てきた。

 

 

「お、おいっ、『剛拳闘士』!」

「ん?その声……良かった。まだリヴィラにいたんだな。てか、ヘルメス・ファミリアの『泥犬(マドル)』じゃないか」

 

 

 ヘルメス・ファミリアのルルネ・ルーイ。

 神々から『泥犬(マドル)』という名を与えられたLv.2冒険者である。

 その彼女が胸に鞄を抱えながら、焦った顔をしてハシャーナに詰め寄ってきた。

 

 

「何を呑気なこと言ってるんだよ!まさか、アンタが狙われたのって……!」

「お察しの通りだ。だから、一刻も早くお前を保護しようと探してたんだ。自分から出てきてくれて助かった」

「う、うぅっ……!こんな怪しい依頼受けなきゃ良かった!」

「取り敢えず、それは一旦俺が預かる────」

 

 

 そう言ってハシャーナが鞄を手に取った瞬間。

 リヴィラの街が()()()

 同時に、街の至るところから緑色の蛇のような何かが飛び出してくる。

 

 

「なっ、なんだ!?どうなってやがる!」

「……アレは、モンスター?」

「えっ、アイズさん本当ですか!?でも、あんなモンスターなんて見たことも聞いたことも……!」

()()()()()()()()、か。最近は妙に縁があるな。或いは、何か関係でもあるのか?」

 

 

 ボールスが慌てふためく中、アイズは冷静に剣を抜き、リヴェリアとレフィーヤも杖を構える。

 アイズは普段使っている『不壊属性(デュランダル)』が付与されたデスペレートは修理中のため、別の剣を使用している。

 その昔イレブンに依頼して作られた対竜種に特化したドラゴンスレイヤーという名の片手剣だ。

 元々は竜種への攻撃時に40%の特攻効果が付与されていたが、イレブンの成長に合わせて現在では70%になっている。

 当然だが、武器としての性能も格段に向上しているのは言うまでもないだろう。

 

 

「エマ、モンスター部隊の指揮を!この場の全員の安全を確保するのを最優先にして!」

「任せて!それならいつもやってるし、この子達の得意分野だよ!よーしっ、ルキ、みんなっ────【バッチリ頑張れ】!」

「ワォーンッ!!」

『『『ギャウッ!』』』

『『『アォーンッ!』』』

『『『ガウッ!』』』

 

 

 エマのスキル【魔物使役(モンスター・テイマー)】によって使役されたコボルト、ヘルハウンド、ルー・ガルーが三匹一組で街中に展開していく。

犬姫狼従(ドッグ・デイズ)】の戦闘時に自動で発動する常時効果(パッシブ)と合わせて、【必勝応援(ファイト・ファイト・ファイト)】の効果を受けたモンスター部隊の精強さは並みの第一級冒険者を凌駕する。

 ルキと部隊から一組はエマの護衛として側を離れないため、相手からすれば()りにくい調教師(テイマー)だろう。

 

 コボルトの盾が敵の攻撃を受け流して逸らし、時にヘルハウンドが火を吐いて焼き尽くし、時にルー・ガルーの剣や斧が叩き切る。

 冒険者達も負けじと新種のモンスターに攻撃を加えて、少しずつ数が減っていく。

 まるで競うようにして、けれど()()()()()()()()()()()()()()()()敵対者を倒す光景は珍しいものだろう。

 

 

「犬っころ共に負けんなぁ!」

「冒険者の意地を見せろ!」

「このモンスター打撃が効かねえぞ!刃物で殺せ!」

「魔導士が狙われてる!やらせんな!」

 

 

 徐々に勢いに乗って押して押しまくる防衛側だったが、そうは問屋が卸さない。

 新種というだけあって、一筋縄ではいかなかった。

 

 再び、地面が大きく揺れる。

 次の瞬間、冒険者達が立っていた地面が弾け飛んで、ようやくモンスターが姿を現した。

 

 それは、まるで巨大な花のような姿をしていた。

 全身緑色の体色で、蛇だと思っていた部分は巨大花から伸びている触手だった。

 目と鼻のない頭部には鋭い牙が生えている。

 打撃に強い耐性を持っており、攻撃面でもLv.3の魔導士くらいなら当たりどころが悪ければ一撃で戦闘不能に成りかねない。

 総じて、Lv.4以上の難敵だと言えるだろう。

 

 それが同時に()()も現れた。

 一瞬だけ、先程まで倒した気になっていた触手がほんの一部だった事実に弱気に成り掛けた冒険者達。

 だが、この場には巨大花よりも遥かに強い英雄達がいる。

 

 

「【目覚めよ(テンペスト)】────【エアリエル】」

 

 

 超短文詠唱により風の付与魔法(エンチャント)を発動させたアイズが、風を鎧のように纏って爆発的な加速で踏み込む。

 瞬時に巨大花に肉薄すると、太刀筋が目視不可能なほどの剣速で微塵切りにした。

 

 

「ルキっ、お願い!【ガンガン行こうぜ】!」

「ワンッ!!」

 

 

 エマによるバフ効果が()()()()()()()、更にルキ自身のスキルによって全身が金色に輝くと姿が掻き消える。

 ルキの複合スキル【愛犬六感(ルキ・シックスセンス)】のうち、相手の弱点を見抜く【愛犬看破(ルキ・アイ)】によって魔石の位置を特定して、一撃で倒すのが彼女の必勝法だ。

 轟音と共に現れたルキは巨大花の中心部を貫通し、魔石を口に咥えて嬉しそうに尻尾を振っていた。

 

 

「私だって……!【解き放つ一条の光、聖木の弓幹(ゆがら)。汝、弓の────】ッ!?」

「うおおおおっ!!この街でこれ以上てめェらに好き勝手させるかよォ!俺が防ぐから、お前が倒せっ!『千の妖精(サウザンド・エルフ)』!!」

「【────名手なり。狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!【アルクス・レイ】!!」

 

 

 詠唱と同時に魔力の高まりに反応して触手がレフィーヤを狙うが、魔力に反応するという習性は既に分かっていたこと。

 ボールスが漆黒の大剣で切り落とし、弾いて、防いで、レフィーヤまで攻撃を通させない。

 完成した魔法は、到底Lv.3とは思えない馬鹿魔力による極太の一条の光線となって巨体の中心に大穴を穿ち、露出した魔石が呆気なく地面へと転がり落ちた。

 

 

「打撃に耐性?それがどうした!耐性がある程度で手詰まりになるほど、第一級冒険者の肩書は軽くないんだよ!!」

 

 

 イレブンからの入れ知恵で使い始めた撃剣を取り出して、有り余る力に任せて柄尻を()()()()()()

 頑丈さのみを追求して作られた撃剣は壊れることもなく巨大花に深く突き刺さり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 まるで大砲でも直撃したような爆音のあとに、巨大花には大きな風穴が空いていた。

 

 

「リヴェリア」

「ああ、()()()()()()

 

 

 残る巨大花は二匹だけ。

 丁度二匹が隣り合うように出現した所為で、リヴィラの冒険者達は手間取っているようだった。

 その場をリヴェリアに任せて、イレブンが軽く跳躍した。

 

 

「みんな、離れて!」

 

 

 空中からイレブンが冒険者達に呼び掛ける。

 彼等が見上げれば、そこには陽炎のように揺らめく剣を脇構えに、イレブンが降ってきていた。

 嫌な予感を感じて各々が逃げる最中も魔力に反応した巨大花から触手が伸びるが、全て届かず()()()()()()()()()()()()

 

 それは、基礎にして奥義の域に達した技だった。

 

 

 

 

 

「【火炎斬り】!!」

 

 

 

 

 

 その一撃は、()()()()()()()()()()()()

 

 剣の刀身は虚空に剣戟の軌跡を残して掠りもしていないにも関わらず、巨大花は()()()()()()()()()()()を残して、二匹諸共に横一文字に両断した。

 まだ辛うじて反撃しようとした巨大花は、しかし次の瞬間────切断面から紅蓮の炎が迸り、刹那のうちに巨体を包み込んで焼失させた。

 

 あまりにも常識外の一撃。

 かつてイレブンの戦いを見た者でさえ、目を奪われずにはいられない。

 今の技が本来は名前通りに『()()()()()()()()()()()()』だと知る者は極僅かだったが、これが異次元であるということは全員に理解が及んだ。

 最早【火炎斬り】ではなく、【真・火炎斬り】とでも言うべき絶技と化していた。

 現実離れした光景に殆どの者が声を失い動きを止めた。

 

 そして、この好機を見逃さず動いた。

 

 

「死ね」

「えっ……?」

 

 

 地面を割って飛び出してきた赤髪の女、レヴィスが剣を振りかぶる。

 狙いは、宝玉を持つルルネ・ルーイ。

 例に漏れずイレブンの絶技に見惚れていたルルネに、絶死の刃を凌ぐことなんて可能なはずもなく──────()()()()()()()()が視界を埋め尽くした。

 

 正体は、リヴェリアだった。

 ルルネを庇って間に割って入り、()()()()()()()()()()()()いた。

 

 

「なっ、馬鹿な!?」

「魔導士なら()()()()()()()()()()とでも?私を嘗めるなよ、下郎っ!!」

「ガッ、ハァ──ッッ!!??」

 

 

 想定外によって体勢を大きく崩したレヴィスの腹に、リヴェリアの杖が突き立てられる。

 魔導士とはいえLv.7ともなれば膂力も相応のものがある。

 レヴィスは血反吐を吐きながら派手に吹き飛び、地面を転がった後に素早く立とうとするが、顔を顰めて膝を付いた。

 

 

「ちっ……護衛対象の側を離れるとは間抜けな奴だと思ったが、まんまと誘い出されたな」

「本当の間抜けが見つかった、ということだ。貴様がレヴィスで間違いないな?」

「そういうお前は『九魔姫(ナイン・ヘル)』か」

「ああ。貴様には聞きたいことが幾つもある。少し手荒になるが、地上まで同行願おうか」

 

 

 昨晩のハシャーナとの戦闘により、レヴィスは腹部に傷を負っていた。

 イレブンが控えていては姿を現さないだろうと読んで、敢えて隙ができたように見せ掛けたのだ。

 リヴェリアはエルフの王族として当然のように護身の術を身につけており、護る側と護られる側、そして襲う側の心理をよく理解している。

 故にこそ、的確に奇襲を防いで反撃まで可能にした。

 

 レヴィスの状況は絶体絶命だった。

 時間を掛ければイレブンが、Lv.8の絶対強者が戻ってくる。

 そうでなくても、この場には自身と同等の冒険者や辛うじて戦える程度の力を持つ者達が多くいる。

 ハシャーナによるダメージが抜けないまま、更にリヴェリアからの攻撃を受けて塞がった内臓の傷が再び開くことになった。

()()()()()から常人以上の回復力を持つとはいえ、容易く癒せるほどの傷ではない。

 

 そこまで思考して、レヴィスは即座に決断した。

 奇襲が失敗した時点で()()だ。

 

 

「生憎と、こんなところで捕まるわけにはいかない。暴れろっ、巨蟲(ヴィルガ)食人花(ヴィオラス)!!」

「だから私を嘗めるなと────なにっ!?」

 

 

 堂々と逃走宣言したレヴィスを捕まえようとリヴェリアが動こうとした時、まるでレヴィスを守るようにして巨大な芋虫のようなモンスター、多数の巨蟲(ヴィルガ)と三匹の食人花(ヴィオラス)が地面の下から現れた。

 その巨蟲(ヴィルガ)と呼ばれたモンスターに、リヴェリア含むロキ・ファミリアは見覚えがあった。

 冒険者達が応戦しようと武器を構えるより早く、美貌に焦燥を滲ませたリヴェリアから注意喚起の声が飛んだ。

 

 

「芋虫型の体液に気をつけろ!アダマンタイトの武器を溶かす危険物を死ぬ直前に自爆して撒き散らす!遠距離攻撃で仕留めるんだ!」

 

「……はぁあああっ!?なんだそりゃ!?」

「おい魔導士部隊!急げっ、詠唱始めろ!」

「石でも槍でも何でもいい!距離を取ってぶん投げろ!」

 

 

 リヴェリアから知らされた巨蟲(ヴィルガ)の余りにも傍迷惑な生態に阿鼻叫喚となる冒険者達。

 とはいえ、都合の良いことに辺りには食人花(ヴィオラス)の出現と同時に砕けた地面の破片が散らばっているため残弾には困らない。

 魔法と投石によって早々に巨蟲(ヴィルガ)を掃討し、溶解液を浴びてボロボロになった食人花(ヴィオラス)を倒す頃には、当然ながらレヴィスの姿は何処かに消えてしまっていた。

 

 

 

 

 

 こうして、リヴィラの街で突発的に起きた襲撃事件は幕を閉じた。

 レヴィスという推定Lv.6の調教師(テイマー)にして闇派閥(イヴィルス)残党の存在と、新種のモンスターに関する疑問を残して。

 

 

 

 

 

 

 





これにてリヴィラの騒動は一旦終了ですね。
色々と疑問が残る戦いとなりましたが、今後はどうなるのでしょうか。
先が気になりますね。

みんなカッケェな!これからも応援するぜ、頑張ってくれよな!
そう思った方は高評価、お気に入り登録、感想、ここ好きなどして頂けると作者のモチベーションに繋がります。
それでは、また次回をお楽しみに。



【技紹介】

・真・火炎斬り
炎を纏った斬撃ではなく、極熱を纏った斬撃により切断面から発火するという技に進化した。
刀身の延長線上に無色透明な高熱の刃が発生しており、直接刀身が触れていなくても焼き切ることが可能な上で、刀身から自然と放たれる熱波によって接近するだけで焼き殺される。
原理としては『残火の太刀』に似ているが、現状では火力の面で遥かに劣る代物。


【人物紹介】

・レヴィス
年齢不詳。女性。赤髪の美女。
所属不明。恐らく闇派閥(イヴィルス)だと思われる。
Lv.6以上の戦闘力の持ち主。
ダンまち原作とは大きく乖離していない。だが、今回の件で全く目的を果たせなかったことから、色々と思うことがあった模様。
片手剣、格闘を使用する。本人の戦闘力も高いが、調教師(テイマー)として食人花(ヴィオラス)などの新種のモンスターを使役しているため、脅威度はかなり高いと思われる。
実は、アイズの魔法を見て思わず飛び出しそうになっていたらしい。『アリア』とか無意識に口に出していた。なんだろうね?
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