どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!?   作:銀の弾丸

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遂にというかようやくと言うべきか
30話になりました


子供のいたずら

「さてイッチ、覚悟はいーい?」

 

「待て、話をしよう霧崎」

 

 

 熱烈なデートのお誘いを頂いた後、霧崎ともう一度落ち合うことになったのだが。

 少々ご機嫌斜めなご様子だ、なぜだ。

 

 

「問答は無用だよこのおバカっ!」

 

「何をそんなに怒ってんだよ、今回は俺そんなに捻じ曲げた覚えは    

 

「怪我の誤魔化し」

 

「……あ」

 

「覚え、あるよね???」

 

 

 ……oh。

 

 

「い、や……知らん。身に覚えはないな」

 

「あ、って言ったの聞こえてないとでも思ってんのかなー!」

 

 

「この頑固一徹曇らせ屋!」

 

「曇らせは趣味じゃねぇ」

 

 

 いや何でバレたし。

 それを知ってるのは他でもない俺自身と神崎親子……まさか。

 

 

「イッチに振られた後神崎さんと出会っちゃって。そこでちょーっとだけお話ししたんだよねぇ」

 

「振ってないが、そもそも付き合ってもないが」

 

「うん。そこで何かね、担当医相手に傷を誤魔化したとかいう不届き者のお話聞いちゃって……」

 

「聞いてねぇなぁ」

 

 

 最近、霧崎に怒られっぱなしな件について。

 これもう小説書けねぇかな、書けねえか。

 

 

「ただでさえ無理し過ぎるから、怪我くらいはちゃんと治して、限られた時間でしっかり休んでもらおうってこっちの配慮は無駄だったんだね」

 

「いや、そのだな霧崎」

 

「……もしくは、私の治療は当てにならなかったり?」

 

「それはねぇよ」

 

 

 なんかとんでもない自虐にまで発展してしまってんのならすまん、しかしそれはあり得ない。

 霧崎の技術以上に信頼してるもんはねぇぞ。

 

 

「逆だよ逆、霧崎の治療なら多少無理したって崩れやしないってのを理解してるからな。だからこそ無理できるってもんだぜ」

 

「……」

 

 

 ……何だ霧崎、その顔は。

 安心した様な呆れた様な、複雑な顔してやがる。

 

 

「はぁもうっ。……調子のいいこと言ってるけど、それってこれからも治りかけで無理しますって言ってる様なもんだよね?」

 

「まぁ、そりゃあ……」

 

「皆まで言わなくていいよ。医者として頭痛くなる言葉言われそうだし」

 

「悪いな」

 

「悪いと思ってんならこっちの心臓にも配慮してくれるとありがたいかな! 冷えっぱなしだよほんっとに!」

 

 

 軽い拳で小さく抵抗の意思を見せてくる。

 まあ、こればっかりは俺が悪いしされるがままにするしかない。

 

 

「そんなんだから出会う女の子に変な感情抱かれまくるんだよ」

 

「なんか言ったか?」

 

「なーんにも! ほら、ひとまず落ち着いたんだし武偵校に戻って傷のチェックするよ!」

 

「あいよ、霧崎先生の仰せのままに」

 

 

 神崎も心配してくれてんだろうし素直に受けないと、か。

 仲間には恵まれてるよ、ほんと。

 

 

 

 

 

 それから数日が過ぎて。

 

 

「ふぅ」

 

 

 俺は屋上にて心の整理をしていた。

 後3日で、峰との壮絶な殺し合い(デート)が始まる、と言ったところだからな。

 

 

「今の俺で、峰にどこまで喰らい付けるのか」

 

 

 いやぁ怖い怖い、恐ろしいね。

 何せ俺ってのは原作の水準に程遠い強さしか持ち合わせていないんだからなぁ。

 

 

「……俺一人じゃないんだ、落ち着け」

 

 

 ここまでも覚悟を決めて取り掛かって来たものの、今日は一段と気が張り詰めている。

 まだ本番じゃねぇんだから、今から気張ってちゃ持たないよな。

 

 

「常在戦場とは言えなぁ」

 

 

 未だ耳に残ってる爺さんの、道場の教え。

 ほらあれだよ、道場で師範代とかが座ってるとこの後ろにある、無駄に達筆な横長の掛け軸みてぇなの。

 

 あれの通り、最初に教わったのは心構えから……だったか?

 俺の場合、最初で最後のまともに習って覚えた技術になる筈なんだが……どうしたもんか。

 

 

「教えられたっても、油断ばっかりしてるんだがな」

 

 

 まあ道場なんてつまらない思い出の話は置いといて。

 今は目の前の問題に対処しよう。

 

 

「まーた、風のお導きか? つか、お前らことごとく俺の不意を突いてくるの何なんだ」

 

「……」

 

「レキ」

 

 

 戦場にて俺の背中を預ける頼もしきコンビが、俺の背後にいるんだわ。

 実際、レキ以上に背中というか後ろの空間を預けて頼もしい人材もそういないと思う。

 範囲(レンジ)は正義、はっきりわかんだね。

 

 

「パートナーです」

 

「はい?」

 

「……あなたの、コンビですから」

 

「意味不明過ぎるが」

 

 

 どういうこっちゃねん。

 前世の推しにそう言われるのは嬉しい限りだがね、状況が状況だけに素直に喜べん。

 

 

「風のお言葉かよ」

 

「はい」

 

「そうかい。……で、今度は何だって?」

 

 

 そう聞くと、レキは俺にスッ……と近付いて来た。

 何ですかね。

 

 

「風は、あなたを失うことも狂風が目覚めることも良しとしていません」

 

「風様とやらは、随分俺のことを買ってくれてるみたいで」

 

「……」

 

 

 分厚い本程度の空間を挟んで、俺が見下ろしレキが見上げている。

 

 ……これが噂のガチ恋距離って奴ですか、近え。

 推しのご尊顔をこんな距離で見られるってのはこの人生の中でも中々の幸福に当たるんじゃなかろうか。

 

 

「ヨリトさん」

 

「何だ」

 

「私はあなたのコンビです。つまり、あなたの戦いは私の戦いにも等しい」

 

「……何が言いたい?」

 

「つまり    

 

 

 この時、俺が言われたことについて感想を述べるのならば。

 

 ……ほんっと、神様の考えることってのはわからない、ということだ。

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