金田少年の生徒会日誌 作:珍明
明智警部の事件簿のネタバレがあります。未読の方はご注意ください
兄・
「オッサン、今日は何の用だよ。受験で忙しい桜樹先輩まで呼びやがって」
「頼みがあってな。先ず……不動芸術高校、映研を知っているか?」
「ハイッ! そこには天才高校生映画監督、蔵沢 光がいます! 去年、日本アマチュアシネマ祭で準グランプリを獲ったんス! しかもあの日本映画界の巨匠・蔵沢 明の孫なんデス!」
「……なら、詳しい部分は省くぞ。それで本題だが、そいつらが去年に作った自主製作映画『大追跡』について、調べて欲しい」
「それですヨ、準グランプリを獲った作品……何か、問題でも?」
「まさか、盗作か? オッサン」
剣持警部は物凄く言い淀んでおり、竜二は首を傾げる。
「……『大追跡』に、不審な点があると相談されてな。話を聞いた限りだと、俺は動けん。そこで、お前達に頼みたいんだ。出演者の生徒と……撮影場所、隈なく調べて……動ける証拠を掴んでくれ」
「私達に潜入捜査をしろと言うのね。面白そうだから、受験が終わった後にしたいわ」
「桜樹センパイ、来年の2月になっちゃいますネ」
「剣持さん、あたしも来週は部活の合宿があるの。せめて、そっちが終わってからで……」
「美雪まで……。オッサンが今、俺らに話してるってコトは急いでんだろ?」
真剣な雰囲気の中、桜樹センパイは日程調整を要求。七瀬センパイまで一緒になり、
「出来れば……七瀬君の合宿が終わるまでに、済ませて欲しいっ」
「「「ええ!?」」」
「あたし、木曜日には帰って来るのよ。急過ぎるわ」
剣持警部の無茶振りに全員絶句、七瀬センパイは慌ててスケジュール帳を開いた。
「……オッサン、その相談って演劇部の誰かだろ。緒方先生以外……有森も違うな」
「
「それなら
「佐木君、
「……ん~、合宿の後に……はじめちゃんの家へ泊まらせれば……」
意外な人物だが、どうにかなる。そう思ったのは自分だけ。桜樹センパイは眉間のシワが深くなり、七瀬センパイは違う方向で解決しようと目論んでいる。
「
「成程、剣持さんはそれを……不動芸術高校の映研について調べてくれと、解釈したんですね」
「あのお爺さん、
煙草臭い指先が、苦悩に満ちた眉間を解す。剣持警部が金田老へ負い目を感じ、刑事の立場抜きで相談事を何とかしてやりたい。そんな想いが伝わってきた。
金田老は本当に怖い。彼は竜二と言うより、父・
そんな人が準グランプリ作品『大追跡』へ不審を抱くなど、興味を惹かれる。
「にいみさん、何て言ってるんだ?」
「そっちはそっちで、ちょいと揉めてるらしい。マイルドに言わせてもりゃあ、母と娘の親子喧嘩ってトコだな」
(((マイルドで親子喧嘩……)))
「時間もないし、木根さんを頼ってもいいかしら?
「俺も、いつきさんに頼んでみるわ。んで、肝心の不審な点ってなんだ?」
「……足りないんだそうだ。パンフレットと本編後クレジットには、部員4人の名前しかなかった。だが、映像を観る限り……絶対、もう1人いるってな」
わざとではないだろうが、剣持警部の言い方は季節外れの怪談っぽかった。
「……そっか、クレジットで省略しないといけない大勢ならまだしも、部活の仲間よ。撮影中に転校していなくなったとしても、意図的に消したりなんかしないわ」
七瀬は哀しそうに、不審に思った理由を納得していた。
「私達も映像を観たいけど……佐木君、何処で観られる? 自主映画は疎くて……」
「ボクと兄さんは、不動芸術高校の学園祭で観ました。……シネマ祭の受賞作品って、公民館や野外上映会で流されたりするのに……あの作品、他で観た事ないデスネ」
「部室へ乗り込んだ方が早えな、そりゃあ」
桜樹センパイに聞かれ、竜二は口に出しながら違和感に気付く。
センパイ方の活躍が撮れると浮かれ、喜んだ。
「すまんな、恩に着る」
「よせやい、水臭せえ。オッサンが
剣持警部はちょっと笑顔になり、竜二達へ感謝する。まだ何も分かっておらず、照れ臭い気持ちになった。
でも、流石は
年齢と立場を超えた信頼関係を目の当たりにし、竜二は遠慮なくハンディカムへ撮った。
――結果として、5人目・
場所は無人団地の地下排水口、自称医療ジャーナリストとフリーライターが「この辺が怪しい」と勝手にマンホール下へ潜り、第1発見者となった。
評価の高かった名シーン、ビルとビルを飛び移る。万一の場合にマットが映り込むのを恐れて、
救命処置も行わず、遺棄したという。
突風に煽られただけと酷い言い訳を並べ、
後に、彼らは過失致死、死体遺棄、隠匿罪などの容疑で逮捕される。竜二は撮らずに新聞を読むのみ。
「まさか、本多 影行の妹さんが映研にいたなんてな」
「捜索願を出していても、警察が打ち切ったから……自力で探してたんですね」
「正直、あの子がいなかったら……アイツらも、観念しなかったわ」
事件は解決したが、やりきれない。金田老の心配は、当たっていた。
「……
「
「ねえ……2人とも、もう少しだけ調べない? このままじゃあ、受験に集中出来ないわ」
「! 桜樹先輩、俺も……そう思ってました。本多がただのスタントマンだったにしては、妙ですしね」
「ボクもお供しま~ス♪」
センパイ方の調査は、まだ終わらない。
失った命は戻らなくても、残された人へ『希望』を届けたのはちょっと先の話だ。
竜二のちょっと気になる点が、ひとつ。
「
「知っていますよ、竜二君。蔵沢監督のお孫さんが監督されました。……誰でしたっけ、不動芸術高校の映研にいるはずです。去年の学園祭、祖父と観に行きました」
思った通り、金田老が映画を観たのはその時。まさかのニアミスだった。
「どう思います? ボクとしては結構、好きなんです(あんなコトになったけど……)」
「主役の真田 コージさん、非常に良かったです。背水の陣と言いますか……これを失敗すれば、後がない。映るシーン全てが本当に追い詰められているご様子で、まさに迫真の演技です」
悲劇の遭った撮影だけれども、作品の完成度はプロにも通じる。
真相を知らぬ人からの忌憚のない意見。きっと審査員の心を鷲掴みにしたのも、そこにある。演技じゃなく、本物と教えるのは野暮だ。
もう少しだけ、黙っておこうと思った。
○●――……警務部広報課・
堅牢な城塞は検察官の領域と思われがちだが、刑事の取調室もある。自分は隅っこの席にて、調書取りを任された。
本日の被疑者・
元警視庁人事部長にして、刑事部長狙撃事件の首謀者。まだ初公判も始まらず、常に和装。堂々とした佇まいと相俟って、貫禄が段違い。
警視庁捜査一課の剣持 勇警部は卓上の横へちょこんと座り、向かい合うのは老齢な男・金田は只の一般人。
――どういう状況?
話を聞くに、藤原氏の兄らしい。全然似ておらず、気心の知れた間柄に見えない。寧ろ、今にも殴り掛かりそうな殺気立ち、こちらの肌がひりつく。
(何でよりによって、俺なんだよ……)
部署違いにも程があると言いたいが、百も承知。藤原氏の逮捕に関わり、尚且つ、どこぞのエリート警視の権限でどうにか立ち会えるのは、自分しかいない。
「……剣持君と言ったね、どうやら一般人が紛れ込んでいる様だ。すぐに帰れと伝えてくれたまえ」
「……いえ、その……」
「剣持さん、面会室で
お互いに手どころか、声も届く距離だが、剣持警部へ頼み合う。よく見れば、この兄弟……お互いに目を逸らしている。野生の猿が如き、防衛手段。
「剣持君、キミが何を聞いたか知らないが、こんな見ず知らずの赤の他人……一体、何を話せと言うのだね?」
「剣持さん、生きとる血縁がワシしかおらへんのや。やらかしたら、こうなるんは目に見えたんとちゃいますん?」
「剣持君、私にだって親戚くらいいるよ」
「剣持さん、支援してくれる身内がおらん言うて、弁護士さん困ってはったで。ワシもお断りや」
言い終わった瞬間、2人同時に席を立つ。さっと剣持警部が仲裁、また着席。小学校の放課後、クラスメイトと揉めた時を思い出した。
「声も聞きたくないねぇ」
「己が存在するだけで、血圧上がるわ~」
「「剣持君(さん)、そう伝えてくれ」」
敬称と語尾は違うが、もう命令だった。汗だくの剣持警部が、哀れに見えた。
ふと近付く高級革靴の足音、失礼のないノック音。期待に緊張感が薄れ、全員が扉へ注目する。
「失礼します」
((明智~!!))
整った顔に色素の薄い髪質、装飾のような眼鏡。ブランド品に身を包んだ若き警視・
明智警視の登場をこれ程までに、喜んだのは初めてだ。
「本命も来たトコですし、お暇しますわ。ご機嫌よ~……」
「金田さん、伝言を承りました。「話にならないなら、こちらが話すぞ」と……」
陽気に立ち上がり、金田氏は扉へ向き直る。明智警視の静かな伝言を聞き、彼の僅かな動揺を感じ取った。
「せやかて、明智さん。初公判の日程も決まっとって今更、何を話せ言うんや?」
「金田さん、ご説明申し上げたはずです。ご両親に先立たれ、お子さんのいない藤原さんにとって、最も近しい血縁は……アナタだけ。今後を、左右します」
不貞腐れた金田氏へ明智警視は忠告に似た口調で、着席を勧める。警視自身は剣持警部に席を譲られ、腰を下ろした。
(裁判の流れじゃなくて、
(藤原……元人事部長だけじゃねえ、金田さんの心配もしてんだろうな)
高木は剣持警部と視線で会話し、明智警視の意図を読む。藤原氏の戸籍を調べようとも、金田氏との兄弟を示す痕跡はない。
口に出さなければ、これ以上は広まらない。そして、広げさせない。規律に厳しいくせに、抜け道を使うのが巧い。相変わらずのお人好しだ。
「……明智君、私はこの男を兄とは認めない。だがね、話くらいはしようじゃないか……キミに免じて」
((ホッ、藤原が折れた……。後は……))
藤原氏は皮肉っぽく口元を曲げ、姿勢を正す。高木と剣持警部は金田氏を見やれば、不服そうに椅子へ腰かけた。
「……ワシかて、こんな弟知らんわ。せやから……お前を取り上げた産婆、家庭教師だった先生、親父の代に仕えた家令と庭師と運転手、どうにか連絡付いたんでな。弁護士さんに紹介しといたわ」
「……!? ……相当なお歳ではないか?」
「平均しても、百歳越えとったわ。情状酌量の余地のないお前さんに、やれるコトさせてもらいます~言うてたで」
「余計な事を……明智君に、
金田氏はツラツラと語り、藤原氏はビックリ仰天。彼の幼少期を知る人物らしく、探す苦労がありありと浮かんだ。
「剣持さん……とだけ、言うとくわ。ほな、今度こそ帰りますよって……晩飯の当番、ワシなんよ」
「十分です、ご協力ありがとうございました」
((明智警視……))
手間を考えれば、このままでは割に合わない。こちらと違い、明智警視の涼しい表情。その考えは本当、読み解けない。
「その下手な関西弁、……まだ続けるのかね。ご友人の死から35年、追悼の時期はとっくに過ぎたと思うが?」
藤原氏の言葉は、金田氏が軽い足取りで扉へ近付き、剣持警部がノブへ触ろうとした瞬間だった。
ゾクッとする感覚。背筋が凍り付いたとは、まさにこの事。
「……その友人の忘れ形見……一聖を
グルリッと振り返り、金田氏の関西弁が抜け落ちる。感情が沸点を超え、濁った目付きや口調は成程、藤原氏に似ていた。これまで相対した強者の中でダントツに、怖い。
話は見えないが、決別の決定打と察した。
藤原氏はすっと席を立ち、頭を下げる。高木はその動作に酷く、驚いた。
「……言い訳はしない。だからこそ、……頭ごなしに信じず、娘さんを悲しませて……すまなかった」
年相応の穏やかな態度、兄弟の事情は知らない。しかし、藤原氏はようやく『兄』と向かい合った。或いは、後顧の憂いを断っておきたいのかもしれない。
「謝ってすむんやったら、警察いらんわ。お前がどんなつもりで事を起こしたか知らんが……せめて、ワシが
「刑事にもね、定年退職がある。殺しても死なない人の寿命なんざ、待ってられんのだよ」
((金田さんが殺しても死なないと……信じてんだな))
関西弁に戻った金田氏は面倒そうに吐き捨て、藤原氏も本心か分からない物言いへ戻っていた。
相変わらず険悪だが、少しだけトゲが抜けた気がする。
「迷惑言うたら、お前の担当弁護士……山田さん。エライ熱心な人やけど、国選? 私選?」
「……
ふと思い付いた様に、金田氏は問う。藤原氏は嫌味を受けたと思い、何の含みもなく返事をした。
――明智警視の
金田氏の去った後、白々しく規定に沿った取調べを終えた。
「明智君」
刑務官に連れ出される直前、藤原氏は明智警視へ振り返る。高木達は反射的に警戒した。
「私の兄と名乗る不審者……その娘さんは、日本に帰って来たのかね?」
「……はい、伝言を預かっています。「パチ屋に新台が入った。また打ちに行こう」だそうです」
藤原氏の質問に明智警視から何とも俗っぽい伝言、高木と剣持警部はズルッとコケかけた。
「そうか……。私が
目尻を下げた顔は、どことなく心配性の親戚のおじさんに見える。彼もそんな表情をさせる人間がいるなど、失礼ながら意外だった。
藤原氏の切なる願い。高木は勿論、明智警視も返事をしなかった。
外の空気が、美味い。運転席で吸う煙草も、美味い。
ここへ到着してからの段取りは、全て決まっていた。
兄弟の睨み合いも、明智警視が遅れて入室してくるのも、金田氏が退室するタイミングも――。
こんなに動悸の止まらぬ役目は久しぶり過ぎて、ライターを持つ手は戦慄に震え上がった。
「剣持警部……俺、要らなくね?」
「いる、いる! 高木ぃ~、お前がいてくれて助かったぞ~!!」
「せやで、え~と……高木さん? アンタがおってくれて、剣持さんも仕事しやすかったはずです。間違いないて!」
剣持警部と金田氏も煙草を咥え、高木の背をバンバン叩く。人肌の感触にて、ようやく体が落ち着いた。
「金田さん、ご協力……感謝します」
「ええんやで、明智さん。どうせ……アイツとはこの先、一生口利きませんで。今生の別れですわ」
三者の煙に囲まれようと、明智警視の優雅さは損なわれない。されど、目上への敬意はしっかりと伝わった。
金田氏は笑う。
感情を殺した痛々しい笑い方、取調室の言動は本心。
脅迫罪並びに殺人未遂、犯人蔵匿に隠避罪……その他諸々の教唆。罪状が多すぎて、滅多に使われない制度、公判準備手続が必要になる程だ。
そんな藤原氏を逮捕したのは、剣持警部を除いた自分達とはとても言えん。
「しかし、金田さん……。藤原 玄道は、娘さんを気に掛けている様子でした。姪として可愛がっていたんじゃ……」
「……同情や、同情。ワシの娘になってもうた……。だから……海外におる隙を狙ろうて、事を起こしたんやろ。万一、ワシにまで捜査の手が伸びても……にいみだけは、守れる思うたんちゃいます? 知らんけどっ」
剣持警部が情厚く、藤原氏に親族への思い遣りを語る。金田氏はそれらを撥ね退け、灰皿に煙草を押し付けた。
長い歳月により、ひび割れた溝。もう修復不可能だ。
(35年前に亡くなった友人と、忘れ形見の一聖……。何の事か、知らん方がいいんだろうな)
但し、脳内で検索した情報にひとつ該当事件あり。北海道の背氷村、声なき犠牲者だ。
日本人男性なら、よくある名前。ここは、偶然と思い込もう。
「んで、明智さん。あの阿呆の担当弁護士が、山之内の顧問弁護士やったちゅう話……ホンマに偶然かどうかなんざあ。こないな回りくどい手、使わんで……素直に聞いたが、楽でっしゃろ?」
「いいえ、藤原さんは……必要以上の事は雑談でも語りません。金田さんだからこそ、話してくれたんですよ」
金田氏の素朴な疑問に、明智警視は深刻さを消さない。事前に聞いたミステリー小説家の名、剣持警部の眉がピクッと痙攣した。
「明智さん、嘘吐くん下手ですなあ。まっ、そういう事にしときましょ。ワシ、歩いて帰りますよって……ここで失礼しますわ」
金田氏はニカッと笑い、突然に車外へ出る。
どこに報道関係者が潜んでいるか、分からない。駐車場とは言え、1人での歩きは危険。と思えば、何と服の中からサングラスと帽子を取り出した。
用意が良い。
「金田さん! 送りますっ」
剣持警部は慌てて後を追い、車内には自分と明智警視のみ。彼とは捜査一課にいた頃から、2人きりになった事が無い。
数秒の間、沈黙。高木の性に合わない為、普段通りに行こう。
「明智……剣持警部と上手く、やれてっか? 小林と違って、色々と気が回る人だろ?」
「その点については、ノーコメントです。高木さん……今日は、本当にありがとうございました」
少々変わり者ではあるが、明智警視はどこだろうとへやっていける。最近は高校生とタッグを組み、『4億円事件』を解決したという奇妙奇天烈な噂も飛び交っているくらいだ。
あの頃には戻れないが、後悔なんかない。
ふと携帯電話が鳴り、お互いに確認したが違う。後部座席の隙間に、剣持警部の物が落ちていた。
周囲を見渡せば、どうにか姿を確認出来る距離にいた。
「ちょっくら、行ってくるぜ」
「ええ、お願いします」
高木は携帯電話を手に、外へ出る。明智警視が残ったのは、情報整理の為だと何となく察した。
要塞じみた建物だが、川に挟まれた土地。強風を遮る物なく、高木の耳元もバサバサと煩い。
「もう孫に、会わんでやってください」
しゃがれた声だけは、聞き取ってしまう。
「剣持さんと関わりよったら、あの子はいつまでも……立ち直れんのです。事件を忘れとうても、忘れられません。どうか、この通り……っ」
その願いを向けられた剣持警部よりも、こちらの胃が竦む。立ち竦んではならないと足を踏ん張り、わざとらしく手を振った。
「剣持さ~ん、お電話!」
誰が聞いているか、分からぬ場所。階級を控えた。
「婆さん、近くで待たせとるんで……」
「金田さん……っ」
金田氏は一礼と共に去り、剣持警部は躊躇った後に手を引っ込めた。
「余計……でしたかね?」
「いいや……いずれ、言われるだろうと思っていたさ。……なんだ、正野じゃねえか……はい、剣持っ」
詳細など聞かずとも、警察が何らかの形で求められる対応。
高木から携帯電話を受け取り、剣持警部は折り返す。電話向こうの話が進む度、神妙な顔になった。
「分かった……こっちから、連絡してみる」
通話を切り、剣持警部はため息を吐く。刑事としてのやり切れなさを感じ取った。
「……高木、聞こえてたんだろうが……金田さんに言われた事、警視に黙っといてくれ。これは、俺のメンドクセ~問題だ」
「……今度、飲みに行きましょうや。久しぶりに色々と、聞きますぜ」
剣持警部の口癖「メンドクサイ」は「逃げられないから腹を括ろう」という意味がある。
部署違いの高木には、飲みに連れて行くのが精一杯だ。
「金田さんの孫って、どんな奴スか? ……まさか、噂の高校生ですかい? 警視とタッグ組んで、事件解決しまくってる……」
「……タッグは、組んでない……」
酒を意識した途端、高木の口が軽くなり、気になった質問をひとつ。剣持警部は余計にしんみりした表情になり、貝の様に黙り込んでしまった。
飲みは、自分が奢ろう。そう決めた。
フミ「フミちゃんで~す♪ 公判準備手続は、今でいうところの公判前整理手続なんだって。それよりも、大事な話しよっか……あたしの活躍する貴重な場面……全部カットってど~ゆ~こと? さて、次回は『魔犬は静かに啼く』!! ポアロっ」
佐木 竜二
原作にて、登場。蔵沢の解説をしてくれる
蔵沢 光
高校生監督、ジッチャンの名を汚した孫
はじめちゃんの自由奔放さを羨んでいた風に思える。撮影の為なら、犠牲を厭わない様子を見せるが、罪を暴かれそうになり、強烈にビビっていた。結局、逮捕が嫌だっただけな気もする
作中にて、仲間にも見放され、主犯として責任を負った
真田 コージ
元陸上部、男優。本多を批判していたのは、二の舞いになりたくない追い詰められた心理から来ていたのかもしれない(許さねえからな)
作中にて、逮捕後は「逆らえば、自分も本多と同じ目に遭うかもしれないと思った」と保身に走った
本多 影行
原作にて、所属不明。家族が学校へ問い合わせる描写が無く、定時制高校か、年少労働者と思われる
高木 重史警部補
明智警部の事件簿レギュラー。30代半ば、ツッコミ役もしてくれる
藤原 玄道
明智警部の事件簿ラスボス、元人事部長。警察に正義を求めた男
作中にて、金田祖父の腹違いの弟(間に数人の姉がいた)。57歳の気持ちで書いています
金田祖父
穴埋めオリキャラ、元映画スタントマン。72歳くらい
先代・藤原氏の妾の子。認知してもらえず、私生児。召集した部隊の訓練中に終戦を迎えた為、戦場未経験
2人が出会うと、窓越しに威嚇し合う野良猫と飼い猫みたいな騒ぎになる