こっちは日記形式じゃなくて、普通の小説バージョンです。
今日も私は静かに外を見つめる。
病弱な私のために緑豊かなイギリスの片田舎に屋敷を構えて下さるお父様と会えるのは早朝と夕方のみ。交易会社は多忙だと爺やに聞いているけれど。エインズ家の乙女は先天的に心臓に疾患を患い、お母様もお婆様も心臓病で亡くなってしまった。
きっと、お父様も不安なのだ。
そう私は思って静かに本を見下ろす。
コレは数日前にお父様の経営する交易場に持ち込まれた古びた本。けど、この本は童話や伝承に存在する魔法の本であると私は不思議と確信している。
ゆっくりと本の表紙をなぞっていた、そのときだった。ガサリと私の寝室の外に生えた大きく百年近く生きているという大木に掴まっている少しヤンチャそうな見た目の少年ジョナサン・ジョースターを見つけた。
「今日も会えたね、アレクシア!」
「こんにちは、ジョナサン」
私の開けていた窓枠に飛び乗った彼は、にこやかに太陽の様な笑顔を私のアレクシア・エインズという名前を呼び、優しく語り掛けてきた。ジョナサンと知り合ったのは数年前の事だけど。
ハッキリと今も覚えている。
お父様の経営する交易場を視察していたジョナサンのお父様に寄り添っていた小さな男の子が彼だ。あの頃のジョナサンは可愛くて、おっちょこちょいだったのに今はすっかりヤンチャな男の子になってしまったわ。
「ほら、君のために摘んできたんだ」
「ふふ、綺麗な花をありがとう。ジョナサン」
「アレクシアのために探したからね。喜んでもらえると僕も嬉しいよ」
「それなら私と一緒ね」
ジョナサンは胸ポケットに挿していた赤くて素敵な花弁を開いた花を私の耳に引っ掛けるように挿し、あまり外を出歩けない私にプレゼントしてくれた。
とても嬉しいプレゼントだ。
それに、こうしてお父様やジョナサンのお父様が楽しく話し合っている間、私も彼と楽しく話して、彼の暮らす街の話、お友達と遊んだ事を聞ける。
ジョナサンを羨ましいと思う反面、彼の話を静かに聴いている事の出来る今の生活を喜んでしまう私は悪い子だとお父様はお叱りになるかしら?
そんなことを考えて、私ははしたないと思った。
「そういえば父さんが夕食のためにハンティングに行くと話していたけど。今日こそアレクシアも一緒に来るよね!」
「お誘いは嬉しいけど。今日もダメだわ」
「……そうか。僕はいつか君と遊びたいな」
「私もいつか遊びたいわ、ジョナサン」
私の返事にジョナサンは悲しそうに眉毛を下げ、軽々と木々の枝を伝って地面に着地する。いつかジョナサンと木登りをする約束を交わしたけど。
「出来ると良いなあ……」
そう私は呟くことしか出来ない。