【Fate×呪術】もしも虎杖悠二と東堂葵がカルデアのマスターになったら... 作:矛盾ピエロ
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燃え盛る瓦礫の街並みの中を不明瞭な奇声を上げて襲い来る人骨の化生。
「ヒィッ!」「所長、下がっていてください!」
「ブラザー」「応!」
特異点Fの元凶を探るため度々襲い来る怪物を撃破しつつ、一行はこの街の中心部を目指して歩みを進めていた。幾度目かの戦闘が終わり気を取り直して...という所で所長が虎杖へと恨みがましい視線を向けて、小言を呟いた。
「...そういえば今まで言い忘れていたのだけど、あなた何か私に言うべきことがあるんじゃないかしら?」
「? なんかあったっけ?」
考えを巡らせるも特に言いたいことが思い当たらず首を捻る。それを見て不機嫌になる所長と何かに気づくマシュ。
「――あぁ、あれですよ先輩。きっと説明会の際に中央管制室でレムレムしてた件についてです」
「あー...あったなぁ、そんなことも」
言われて思い出した。たしかにあれは怒るのも無理ないかもしれない。
「ちょっ、あなたねぇ...!
案の定、のほほんとしたこちらの様子を見て所長はさらにキレる。しかし、仕方ない事情もあった。東堂の作戦の仕掛けのためには必要なことだったし、そもそも話の内容がなんのこっちゃで右から左に流れていってたのだ。
「そうは言われてもなー。正直、俺は東堂より呪術師としても日が浅いし、魔術云々の話も全く分かんないからな」
「もぅ...!ミスター東堂?日本から連れてくる人員を間違えたのではなくて?カルデアの危機だというのに魔術のまの字も知らないようなずぶの素人を連れて来るだなんて...!」
怒りが収まらない所長の矛先が東堂の方に向くが――東堂は気にした様子もなく弁明した。
「そうカッカするなミス・オルガマリー。魔術のまの字も知らないブラザーだからこそ一般人枠として潜入が容易だったんだ」
「それは...」
「それに国内でも秘匿された存在である呪術師自体が希少そのもの、その中からさらにマスター適性を持つ人材なんて砂漠で砂金を一粒探すようなものだ。むしろ俺とブラザーの二人もマスター適性者がいたことを幸運に思うべきだろう」
東堂の言い分に誰もが納得した。だが、そこで新たな疑問が生まれる。
「たしかに...先輩方の経歴から考えるなら天文学的な確率かもしれません。しかし、そうであればよく許可が下りましたね?そんな貴重な人材を易々とカルデアへよこすなんて...」
「色々と事情があるのさ...詳しい話は時が来たらしてやろう。少なくとも未知の特異点に放り出された現状で語る話でもあるまい」
堂々と話を濁す東堂の清々しさにいっそ感心すらしそうになる。
「はぁ...まぁいいわ。それよりも魔術について素人という事は特異点についてもサーヴァントについても全く知らないという事よね?そんな状態でレイシフトするなんて自殺志願もいいところよ。仕方がないから私が説明してあげます」
話は振り出しに戻り、所長がどこか得意げな表情でそう言った。
「えぇ...?俺、難しい話は苦手なんだけど...」
『まぁまぁ、イタドリくん。言い方はキツイけど、要は「このまま知識がない状態だと、もしもの時が危ないから教えてあげる」ってことだよ。伊達に所長をやってるわけじゃないし、現状を知ることはそれなりに役に立つはずだ。聞いておいて損はない...少し話が長いかもしれないけどね?』
ドクターの助言を聞いてなるほどたしかにこのままだと取り返しのつかないミスをやらかすかもしれない。そのリスクを少しでも回避するためには知識はあって損はないだろう。
「一言余計だったけれど、そういうことよ、イタドリ。心して聞いておきなさい」
「オッス」
そうして焼け焦げた廃墟広がる街並みの中で所長の講義が始まった。
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「いいですか。まずは我々カルデアがいかにして今日の人類史に偉大な功績を残し、貢献してきたか――」
『あ、所長。巻きでお願いします』
さっそく躓いた。
「(イラッ)...簡単に言うと、今のカルデアの目的は“文明の守護”よ」
「文明の、守護...?」
「カルデアがこれまでに残した功績の中には、過去を観測する電脳魔ラプラスの開発、地球環境モデル:カルデアスの投影、近未来観測レンズ:シバの完成、英霊召喚システム:フェイトの構築、霊子演算機:トリスメギストスの起動などがあるわ」
「あー...うん、はい」
押し寄せる専門用語の怒涛に半ば考えることを放棄しながら続きを促すと、ジト目でこちらを見ながら所長は話を続けた。
「...そしてそれらの偉大な技術を総動員することでカルデアは百年先までの人類史を観測してきたの...これは本当に凄いことなのよ?不安定な人類の歴史を安定させ、未来を確固たる決定事項に変革させる。神の一手と言っても過言ではないわ」
「過言じゃないんだ...?」
「そう。その仔細がどのようなものであれ、人類は百年先までの未来が保証されている――いいえ、“されていた”のよ。問題なのはここから」
ゴクッ
「百年先までの保証がされていた人類史、その保証が唐突に途切れたの。私たちが手を尽くした結果、人類史が最後に観測されたのは2016年まで。でも、こんなの本来ならあり得ないことよ。経済崩壊でも地殻変動でもない。ある日突然、人類史が途絶えるなんて説明がつかない事象だもの。私たちがこの異常現象――未来消失について原因の究明を図った結果、発見されたのが...私たちが今いる特異点Fということよ」
「なんか...SFものの映画にありそうな設定だな」
今となっては久しい記憶、脳裏をよぎったのはいつかの修行の日々だった。呪力をコントロールするためにいろんな映画を見せられたっけ...と僅かばかりの感傷に浸る。
「設定言うな。コホン、次は特異点について説明してあげる。特異点とはそれまでの観測結果に存在しなかったもの。ようは突然現れた穴みたいなものね。そしてその穴は正常な時間軸から切り離されて存在しているの」
「つまり?」
「過去と未来から切り離されて存在している以上、前後の辻褄を合わせる必要がないという事よ。どれだけ無茶をしても最終的に修復してしまえばちゃらになるわ」
「なるほど...」
「まとめると、特異点とは人類史というドレスに染みついた小さな汚れみたいなもので、私たちの目的はその汚れを綺麗に摘出すること。そうすれば人類史はあるべき姿へと戻り、途切れた未来の保証も元通りになるのよ。これがあなたたちマスター候補の役割、いいわね?分かったなら改めて私の
「イエッサー、所長!」
思っていたよりも分かりやすくまとめてくれた。そして今回はその第一歩として特異点を解消するために具体的に何が必要なのか、どうすればいいのかを探るのが目標になるってことだな。今回の調査を活かして次回に繋げると。
「分かればよろしい。それじゃあ次はサーヴァントについても解説してあげるわ。サーヴァントについてはどれぐらい知っているのかしら?」
「えーと...たしか、魔術師にとっての使い魔みたいなもんで、戦うのが得意な歴史上の偉人?」
「雑ね...いいこと?サーヴァントというのは魔術世界における最上級の使い魔よ。召喚されるのは人類史に残った様々な英雄、だけじゃなくて偉業や概念などが霊体として召喚される場合もある」
「?」
「実在した英雄であれ、実在しなかった英雄であれ、彼らが“地球で発生した情報”であることは同じでしょ?英霊召喚というのは、この星に蓄えられた情報を人類の利益となるカタチに変換すること。どれほど現行の人類から逸脱した力を持っていようが人間に使える道具に過ぎない、と覚えていなさい」
「所長。その考えは極端が過ぎる、と私の細胞が抗議しています」
乱暴な言い方をする所長に何か言うよりも先にマシュが反論した。ただ...所長の様子を見る感じ、なにか...サーヴァントに嫌な記憶でもありそうだなと感じた。こう、雰囲気がね?うん、なんとなくだけど。
「フン。なにを言われようが私の考えは変わらないわ。過去の英雄を使い魔にしたものがサーヴァント。これと契約し、使役するのがマスター。そしてサーヴァントには基本となる7つのクラスがある」
「7つの、クラス?」
「一口に英雄と言っても多様な側面を持っているでしょう?策略に長けた軍師でありながら、戦場では一騎当千の
「へぇ...なんかゲームみたいだな。ファンタジーというか...」
『たしかに!クラス間でも有利不利の相性があるしね。そう考えると、ある種のゲーム性のようなものも感じなくはないね』
なんとなく思ったことを口に出したらドクターが共感してくれた。有利不利があるのか...じゃんけんみたいなもんかな?
「魔術があるんだからファンタジー云々は今更でしょう?――続けるわ、この7つのクラスは英雄としての名前、真名を隠すためのプロテクトでもあるの」
「? 隠すのか?」
「えぇ、どうして隠すのかと言うと...例えばギリシャ神話の英雄アキレウス。彼は無敵の肉体を持っているけれど、その弱点はあまりにも有名でしょう?」
「...あぁ!アキレス腱の!」
「英霊が再現である以上は強い部分だけでなく弱点も一緒に引き継ぐことになる。だからサーヴァントはクラス名で真名を隠して自らの弱点を隠蔽するのよ」
「ははぁ...よく考えられてるんだなぁ...じゃあマシュはなんのクラスになるんだ?」
サーヴァントについて基本的な知識を教えてもらって、それならと質問してみると全員黙り込んでしまった。東堂だけは見守るように静観していたけど。
『......』
「あれ?」
「私は...どのクラスなんでしょうね?」
マシュ自身も自分がどのクラスなのか分からないらしい。それに対して皆が消去法でマシュのクラスを割り出そうと意見を出し始めた。
「理性が残っているから
『それだけ大きく重たい武器だ、
「遠距離の有効な攻撃手段が不足していることから
「マシュの武器は槍って感じじゃないよな?...まぁ、剣って感じもあんまりしないけど」
大きく、重く、十字のついた円盤のようなマシュの得物。それは誰かを傷つけるための武器と言うよりも――――
「そもそもの話、先に説明された7つのクラスはあくまでも基本のものだ。それらに該当しない側面を持つ英霊は特殊なクラスで召喚されることもある。故にマシュのクラスを暫定的に付けるのなら...
東堂の言葉がしっくりときた。マシュもそう思ったのだろう。
「
『おぉ!たしかに剣や槍よりも盾の方がしっくりくるね!それじゃあマシュはこれから
「みんなを、守る...分かりました。マシュ・キリエライト、これより皆さんを守る盾として精進させていただきます!」
何かを噛みしめるように呟いて、やる気に満ちた目を向ける。真っ直ぐで純真な瞳。
「あまり気負い過ぎるなよ?マシュ。俺とブラザーもいる、お前が俺達を守ってくれるのと同じように俺達もまたお前を守ってやれるのだから」
「だな。背中は任せたぜマシュ」
「はい、先輩!」
きっと東堂も同じように思ったはずだ。これから誰よりも最前線で皆を守ることになるこの少女の背中を、隣に立って支えてやりたいと。