メス堕ちしなきゃ『救世』できないらしい   作:神崎せもぽぬめ

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 なんかすごく評価されていて恐縮な思いでいっぱいです。

 今後とも自分の自己満足文にお付き合い頂けると幸いです。

 では、溜め回ですが、どうぞ。




第三話 怪物友愛祭(モンスターフィリア)・序

 

 

 

 東の空より朝日が昇り、広大な迷宮都市(オラリオ)が明るく照らし出されている。

 長大な市壁を乗り越えて差し込む光は朝を告げ、鳥の囀りもどこか心地よい。

 

 今日も暖かな風が、吹いている。

 

 

「ん、今日はここまで」

「…………」

「お姉ちゃん、気絶してるから聞こえてないよ⋯⋯⋯⋯」

「あっ」

 

 

 ……………おかしい。アオハルの風を全く感じないぞ⋯⋯⋯?

 

 

 朝の秘密の訓練は今日で三日目。

 【ヘスティア・ファミリア】は結成一か月未満の超零細派閥—————誤解を恐れずに言うと、かなり貧乏なファミリアだ。

 

 冒険者稼業は武具の整備代や道具(アイテム)代で出費がかさむし、更には過酷も強いられる職業。駆け出しの団員一名が知識もノウハウもない状態で生き繋いでいくのは、困難極まりない。今日みたいな朝訓練の後に迷宮攻略(ダンジョンアタック)をするのは、結構リスキーだ。

 

 なので訓練は毎日ではなく、二日に一回のペースでのほほんとやっている。いやまぁ、ベルくんのぼこぼこ具合を見ると、のほほんなんて言えないが。

 

 

「【なんかいい感じに治れ(エアリエル)】~。よし、こんなもんかな」

「あ、ありがとございまひゅ…………」

 

 痛みを伴う訓練は精神的にも肉体的にも負担がかかる。肉体面、すなわち体力なんかは回復させられるけど、精神は当人にしかどうしようもない。

 その点で言うと、ベルくんはよくやってる方だと思う。お姉ちゃんの手加減も上手くなったのもあって、気絶しなくなった。その代わり、悶絶するようになったけど。

 

 

 そして、今日も今日とて顔を赤くした彼は、訓練の終わりを告げる朝日と共に、身体を引き摺って帰っていく。ダンジョンアタックは今日はお休みするらしい。

 

 

 それもそのはず。今日は怪物祭(モンスターフィリア)、当日だからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦───────♦♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまんなぁー、今日は皆でまわる予定やったろ?」

「大丈夫、どうせ後で合流する気がするし〜」

「風のお告げ、ってやつかいな?」

 

 そんな大したものじゃない───特にフィンの親指と比べれば───が、何となく直感が訴える時がある。明日に向かって吹く風みたいに、自由気ままに、だけども。

 

 でもロキやフィンらは、ぼくの出自的に無視できないとか言うから、何となく風のお告げって言ってる。こっちの方がかっこいいしね!

 

 そんな会話をロキとしながら向かうのは、オラリオの東区画。

 本拠(ホーム)の『黄昏の館』に通じる北のメインストリートを南下し、バベルが建つ中央広場(セントラルパーク)を出て、東のメインストリートに進む。

 

 やはりお祭り当日ということもあって、東のメインストリートは既に多くの人で混みあっていた。

 この日のために立ち並んだ出店、朝からお酒をラッパ飲みする冒険者たち、馬鹿騒ぎする神々。

 いっそ圧巻とも言うべき光景が、オラリオを世界の中心(オラリオ)たらしめているのだろうと、ふと思った。

 

 

「ここや、ここ」

 

 待ち合わせに指定された場所は大通り沿いに建つある喫茶店。

 

 人の群れを縫って、ドアをくぐり鐘を鳴らすと、直ぐに店員が対応してくれた。そのまま二階に案内され、素直について行く。

 

 

 二階に足を踏み入れた瞬間感じたのは、時が止まったような静寂。

 

 

「ロキ、ここよ」

 

 

 そして冒険者として鍛えられた五感が、その人物に吸い寄せられる。

 

 耳朶を打つ美声に振り向けば、そこには『美の化身』がいた。

 

 

「よぉー、待たせたか?」

「いいえ、少し前に来たばかりよ」

「なぁうち、まだ朝飯食ってないんや。ここで頼んでもええ?」

「お好きなように」

 

 

 【ロキ・ファミリア】と同等以上の戦力を保有し、一部の者たちから都市最強派閥と囁かれる【ファミリア】の主神。

 美の女神、フレイヤ。その人がそこにはいた。

 

 

「ところで────」

 

 フードの奥に光る、銀の双眸に引き込まれる感覚を覚える。ゾッとするくらい、綺麗な瞳と、ぼくの眼が合う。

 

 

「────いつになったらその子を紹介してくれるのかしら?」

「なんや、紹介がいるんか」

「一応、彼女と()は初対面よ」

 

 

 魔性の色香が放つ美貌と、紺色のローブの上からでも分かる抜群のプロポーションに魅入っていて、ぼくの紹介になっていることに気付かなかった。

 

 慌てて服を整えて、お辞儀をする。

 

「は、初めまして!アリス・ヴァレンシュタインです!好きなジャガ丸くんは、あんみつきな粉味!よろしくお願いします!」

「⋯⋯⋯ふふっ、聞いていた以上に面白い子ね。こちらこそよろしく」

 

 い、意味深だぁ⋯⋯⋯!!もうなんかこう⋯⋯一挙手一投足に色気がありすぎて、黒幕みたいな感じする!でも最後はころって堕ちそうな、チョロさも醸し出してる!エロかわいい!

 

 

 久しぶりに感じた神々の凄さに驚かせられつつ、ロキの隣に座る。そう考えると、ロキは安心する。どことは言わないけど平坦だし。

 

「なんか失礼なこと言われた気ぃするなぁ」

「気のせい気のせい」

 

 ロキのいい所は⋯⋯⋯うん、きっとあるよ!

 心の中でそうフォローしながら、フレイヤ様と相対する。彼女の銀の瞳はぼくを見ていて、やっぱり見てない不思議な感じだった。

 

「じゃあキリキリ吐いて貰おかァ。一つ目、()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「決まってるでしょ、神々(わたしたち)の気紛れよ」

「じゃかあしい。お前がそんな奴やないのは、うちかて分かっとる」

 

 口を吊り上げるロキは、うっすらと眼を開けてフレイヤ様をみる。それに対してフレイヤ様はローブの奥で可笑しそうに微笑むだけ。

 

「二つ目、最近になって、こそこそ宴やらなんやらに出てるんは何でや」

「さぁ?どう思う?」

 

 いつの間にか周囲の客の姿はなかった。

 睨み微笑み返す女神達の物騒な神威に気圧され、出て行ったらしい。唯一彼女らの傍に居るぼくは、ハラハラとしながら事の成行きを見守る。

 

 店外の喧騒が、この場に沈む沈黙を引き立てた。

 

 

「はァ、どうせ他所の【ファミリア】の男に目ェ付けたいつものパターンやろ?余計な気を使わされたんやから、それくらい白状しろや」

 

 溜息を吐いたロキは、やもすると強引な言い分を告げる。過程を通らない超然的な神の直感とは恐ろしく、フレイヤ様は微笑みながら口を開く。あ、お口かわいい。

 

 

「そうね⋯⋯⋯強くは、ないわ。些細な事で傷付き、簡単に泣いてしまう⋯⋯⋯繊細な子ね」

 

 ローブの中で、美しい銀髪の一房が首からこぼれた。

 

「でも、綺麗だった。今まで見てきた、どんな魂よりも綺麗で⋯⋯⋯透き通っていた。あの子は私も見たことのない色を持ってるの」

 

 幼い子を慈しむその声音に、次第に熱がこもる。言葉を立て続けに口にしたフレイヤ様は、窓の外を見る。モンスターフィリアで賑わう光景を、ぼくも横目で見下ろす。

 

 

「見つけたのは本当に偶然。あの時も、こんな風に⋯⋯⋯⋯」

 

 そして、ほんの一瞬。大勢の人の流れを眺めていたフレイヤ様の視線が、一点に止まった。

 

 反射的に視線の先を追い────真っ白な髪をした彼が、人波に流されているのを、見つけた。

 

 

「⋯⋯⋯ベルくん?」

 

 ハッとしたぼくは口を閉じる。

 慌てて正面に向き直れば、フレイヤ様は蕩けるような笑みで、思わず零れた言葉を肯定しているような気がした。

 

 

「ごめんなさい、急用ができたわ」

「はっ?ちょっ」

「この話は、また今度にしましょう」

 

 ロキの訝しげな声を無視して、フレイヤ様は立ち上がる。

 

 そして退店する前。ぼくに向き直り、呟く。

 

 

「─────あの子に、よろしくね?」

「────ッ」

 

 

 ゾクリと、背筋に何かが迸る。

 

 蠱惑的で、熱を孕んで、艶麗で、どこか畏怖すら感じるその声音。その笑み。フレイヤ様の神性とは別の顔を、今垣間見たように思える。

 

 分からない、分からないけど、ただ─────

 

 

「どないしたん、アリスたん?『あの子』?」

「⋯⋯⋯多分、こっちの話です」

 

 

────あれは女の顔をしていたと、風が告げてる気がした。

 

 

 

 胡乱げな視線を飛ばすロキには答えれず、この後の屋台巡りもなぜだか気分が乗らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦─────────♦♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯⋯貴方がいいわ」

『────!!』

 

 

 大小様々な規格(サイズ)の檻がある大部屋。

 その中央で、フレイヤは被っていたフードに手をかけ、絶世の美貌を露わにする。

 

 凶悪なモンスターが揃って釘付けになる中、女神の眼差しは一体のモンスターを捉える。

 真っ白な体毛、異常発達した両肩と両腕。野猿のモンスター『シルバーバック』である。

 

 

 そして解き放つ。

 

 

 自由奔放な女神の傍迷惑すぎる気まぐれに選ばれたシルバーバックは、鼻息を荒く、その瞳を大きく見開いていた。

 

 

(しばらくあの子の成長を見守るつもりだったけれど⋯⋯⋯)

 

 女神が想うのは白髪の少年。

 青臭くて、愚かなほどお人好しの男の子。

 

 冒険者の才能はないと思っていたが、何があったのか、見る見るうちに器を広げていっている。ゼウスとヘラの時代でもなかった、常識外れの速度で。

 フレイヤはその成長────否、『飛躍』を、銀の眼で見定めていた。

 

(ええ、そうね。確かに貴女たちが先に見つけたのかもしれないわ)

 

 想起したのは、早朝の密会。バベルの最上階から見下ろすフレイヤは、人知れずその逢瀬───逢瀬にしては、血なまぐさいけれど───を見ていたのだ。

 

 黄金の彼女たちの薫陶を受けた彼は、みるみるうちにその透明な魂を躍動させ、階を登ろうと泥臭く藻掻いていた。

 

 

(でも、私のほうが、彼を輝かせられるわ)

 

 

 見初めた相手に対する衝動が、身体を火照らせる胸の疼きが、『愛』が────そして一匙の女の嫉妬が、フレイヤを突き動かす。

 

 

 あの子の困った顔がみたい。

 あの子の泣きそうな顔がみたい。

 そして何より、冒険する彼の顔がみたい。

 

 

 美の女神が、見初めた相手の『勇姿』を求めるのは間違っているだろうか?

 

 

「さぁ、あの子を追いかけて?」

 

 

 結論、間違っていない。

 

 

 全てはフレイヤの、愛ゆえに。

 

 

 

 

 





 ポンコツTS娘「コイツ⋯⋯⋯⋯メスの顔だぁ!(大正解)お姉ちゃんの恋敵!?(大不正解)えっちすぎる!(それな)」

 美の女神(笑)「愛に順番はないけど、それはそれとして私のものですが???(後方腕組みン億歳お姉さん)」
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