もしも、テイワットに指輪の魔法使いが誕生したら。

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最近始めた原神をナタまで終えたので、書きたくなって書きました。どうも、放仮ごです。二ヶ月でナタは早いらしい。今回はさすがに短編。

題材はほぼ10年ぶりに書く仮面ライダーウィザードです。楽しんでいただけたら幸いです。


原神ウィザード テイワットの指輪の魔法使い

 七柱の神々が統治する大陸、テイワットの西に存在する戦争の国『ナタ』。その指導者である炎神マーヴィカは、現在困惑していた。

 

 

「これは、一体…?」

 

 

 ナタ及びテイワットの怨敵たる現象『アビス』の名に冠する邪教集団であるアビス教団が、ナタの郊外の秘境でなにやら誘拐した人間を集めて謎の儀式を行っているという情報を掴み、ナタの戦士たちに先んじて突入したマーヴィカ。太陽が月で隠された“日食”状態で闇が支配する中、そこで見たのは、濃縮され禍々しく変質した地脈のエネルギーと、倒れた人々。それはナタ人だけではなく、モンド人や璃月人、稲妻、スメール、フォンテーヌにスネージナヤと、多種多様な人間が百人以上も集められていて。

 

 

「これはこれは。炎神様がわざわざ何用で参られた?」

 

「お前が首謀者か……」

 

 

 その中心に立っていたのは、くぐもった声のフードで顔を隠した白いローブを纏った謎の人物。その周囲には、アビス教団に操られた魔物たちの指揮官たる色とりどりなアビスの魔術師が控えている。アビス教団の幹部、それに準ずるなにかなのは間違いない。そう断じたマーヴィカは、炎神の力を引き出し深紅の髪を煌々と燃え盛る炎髪へと変えて、拳に炎を集めて振りかぶる。

 

 

烈日(れつじつ)よ、私に従え!」

 

「おっと。私なんかに構っていていいのかな?」

 

 

 炎で加速し爆炎が破裂する必殺の拳を、アビスの魔術師を盾にしてひらりと宙返りで逃れるローブの人物。同時に、地脈のエネルギーが変化したのであろう、元素とは全く異なる禍々しく濃密なそれ……紫色の“魔力”ともいうべきそれが辺りを包み込み、倒れていた人たちが苦しげな声を上げて、よろよろと立ち上がる。その身体には、不気味に光り輝く亀裂が入っていた。

 

 

「なんだ?なにをした!」

 

「“サバト”は成功した!止めれるものなら止めてみろ炎神!我等が新たな力『ファントム』を!すべては殿下のために!」

 

「ファントム、だと?」

 

 

 大剣を向けるマーヴィカに意を介さず、そう言って一瞬で姿を消すローブの人物とアビスの魔術師たち。マーヴィカは振り向くと、信じられない光景が広がっていた。苦しむ人々の亀裂が完全に広がったと思えば人の姿が砕け散り、テイワットでも代表的な魔物“ヒルチャール”とは似ても似つかない怪物、否。二足歩行の人型をしているだけで様々な異形の姿を持つ怪人『ファントム』へと次々と変貌していったのだ。

 

 

「っ、待て!」

 

 

 あまりの光景に絶句していたマーヴィカだったが、ファントムたちが外に出ようとしているのを見てすぐに気を取り直し、愛車である炎を象った二輪車『双駆輪』を炎と共に召喚。ヘルメットを頭部に展開し、大剣を右手に握り左手でハンドルを握ってロケットスタート。龍の頭を模したフィールドを前方に展開して炎を纏ったドリフトを行い、ファントムたちを焼いて灰燼としていくが、あまりに数が多すぎた。

 

 

「グオオオオッ!」

 

「っ!」

 

 

 甲冑を纏った獣人の様な六本腕の巨人の姿をしたファントム『ヘカトンケイル』が手にした剣・槍・斧を同時に叩きつけてきて、マーヴィカは車体を盾に受け止めるも弾き飛ばされる。それを好機だと言わんばかりに次々と外に飛び出していくファントムたち。マーヴィカは吹き飛ばされながらも体勢を立て直し、双駆輪の側面に炎の翼を展開して飛翔。空から大剣を手にヘカトンケイルに突撃し、大剣を振るう。

 

 

「グオアアアアアッ……」

 

 

 盾にしようとした六種の剣・槍・斧ごと溶断され、真っ二つにされたヘカトンケイルは爆散。しかし、その間にファントムたちはすべて秘境の出て行ってしまった様だった。

 

 

「……私を弾き飛ばすほどの膂力を持つ怪物が、あれだけの数……アビスだけでも厄介だというのに。む?」

 

 

 双駆輪に跨り後を追おうとするマーヴィカだったが、あるものが目に入って停止する。そのヘルメットで隠れた視線の先には、十代後半の少女が、全身亀裂が走った状態で、蹲っていた。赤と黒の巫女服に黒髪と顔立ちからして稲妻人だろうか。するとそこに、ナタの戦士たちが数人入ってきた。伝達や斥候に長けた『懸木(かがりぎ)(たみ)』の若者、キィニチが告げる。

 

 

「炎神様!秘境から溢れ出してきた謎の怪物たちにムアラニやイアンサたちを始めとした者たちが抗戦しています!いったい何が……」

 

「待て、キィニチ。まだやることがある。伝達してくれないか。ファントムと呼ばれた奴らを一匹たりともナタから逃がしてはならない、とな」

 

 

 そう告げたマーヴィカは、キィニチたちが頷いて戻っていくのを確認してから蹲る少女に歩み寄る。

 

 

「う、ああああ……」

 

「しっかりしろ!私はナタの炎神、マーヴィカ。君、名前は言えるか?」

 

「……夢月(むつき)、です……くあっ!」

 

 

 夢月と名乗った少女の背中から、亀裂を突き破って竜の翼が生える。マーヴィカはそれを見て、夢月もまたファントムに変貌しようとしていることに気付きながらも、それでもまだ意識を保っていることに希望を見出した。

 

 

「そうか、では夢月。諦めるな。君はまだ生きている。希望を捨ててはならない。迫りくる絶望を跳ねのけるんだ!君は希望だ。あの絶望の儀式の中で、唯一生き残った希望だ。理由はわからない、だがしかし、君は生き残らねばならない。頼む、生きてくれ。君は、私にとっての希望でもあるんだ!」

 

「うう、ああああああああああああっ!」

 

 

 両手を突き破り巨大で鋭利な爪が、腰を突き破り長大な尻尾が伸び、それでも意識を保ち続ける夢月の亀裂の紫の光が、次第に黄金に輝いていって。翼や尻尾、爪が吸い込まれるようにして、人の形に戻った夢月の亀裂は完全に消え、倒れ伏しそうになったところをマーヴィカが受け止める。

 

 

「よくやった、夢月。もう大丈夫だ」

 

「…は、い、炎神、さま……」

 

 

 そう言って気絶した夢月を両手で抱えて外に出たマーヴィカは、手ごろな岩場にそっと降ろし、再び炎髪を燃え上がらせて上空を睨む。日食が、終わろうとしていた。

 

 

「間に合うかわからないが……逃がしはしないぞ、ファントム!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから半年後。マーヴィカの双駆輪も作った『こだまの子』の技術者、シロネンが制作した銀色の二輪車『マシンウィンガー』に跨り、一人の少女がナタを旅立とうとしていた。

 

 

「お前はナタの人間ではないから旅に出れるが……本当にいいのか?本来ならば、あの夜ファントムを逃がした私がやるべきことだ」

 

「いいえ、炎神様。これは、私だけがやれることです」

 

 

 心配そうに告げるマーヴィカにそう返すのは、薄手の黒いロングコートの下に赤と黒の巫女服を身に着けた、奇抜な格好のポニーテールの少女。その眼は赤と黒に輝いており、腰には奇妙な黒い手形のベルトが巻かれており、右手には掌が刻まれた銀の指輪が、左手には赤い宝石の指輪が輝いている。

 

 

「炎神様から授かったこの炎の『神の目』に誓って……テイワット各地に逃れたファントムを追い、倒す。必ずやり遂げて見せます」

 

「…そうか。達者でな」

 

「夢月ちゃん、頑張ってね!」

 

「私達、離れていてもずーっと友達だからね!」

 

「お前ならやれる」

 

『この偉大なるクフル・アハウのもとから離れるとは……どこへでもいくんだな!』

 

「お土産は期待しないでおくよ」

 

 

 マーヴィカに続くナタの人々に、夢月は笑顔を返してアクセルをふかし、ナタから旅立ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風と自由の国『モンド』にて。巷で噂の『闇夜の英雄』や『栄誉騎士』と共に吟遊詩人たちに語られる人物がいた。曰く、その顔は赤い宝石の様な仮面に包まれ。闇夜に隠れる黒衣に身を包んで。銀の剣を振るい炎と共に怪人を討つ戦士。曰く、その戦士は複数人に分身したり、手が巨大化したり、腕が伸びたりと魔法の様な力を扱うという。その戦士を人々はこう呼んだ。

 

 「仮面の魔法使いウィザード」と。




ウィザードなのにウィザードが全然でない小説があるらしい。主人公は「夢月」8年前ぐらいに書いてた過去作「東方ウィザード」シリーズの主人公の名前とビジュをそのまま流用してます。稲妻人です。

原神にウィザードを突っ込む方法で何かないかなと考えて思い至ったのが、ナタで登場した「アビス」や「地脈」の概念。あと月もあるっぽいので地脈を活性化させる儀式として「サバト」を用意しました。ちなみにアビスとアビス教団はあんまり関係ないらしい。

アビス教団が神にも対抗できる戦力を得るためにファントムを大量に生み出すべく、各地から攫った人々を生贄に地脈が集中するナタでサバトを行った、ってのが今回の顛末となります。謎の人物は誰じゃろね。

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