かつて王国に対して反旗を翻し玉座を簒奪せんとした元冒険者グループ「半グレ」。首領であった『半分』を含め仲間たちはただ一人を残して全滅し歴史の闇へと消え去った。
 半グレ最後の生き残りであり懸賞首である指名手配犯タケ=プラムパインは生き残ってしまった人間だった。
 仲間を失い、誓いを果たせず、ただ只管に空虚なセカンドライフを送るタケ。
 老いさらばえ、死という神の許しをまもなく得れると思っていた男は気づけば学園都市キヴォトスに居た。
 ──神はまだ、彼の人生を終わらせるつもりはない。

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 いくら死にたがってもムダ……ワタシ二次創作者……強いネ。


キヴォトスにチー付与のオリキャラをブチ込む暴挙

──ゼルージュ王国 第三門 タケ=プラムパイン──

 

『──国王と戦って玉座奪っちまおう』

 

 その言葉に従ったことに間違いはなかったと思う。

 

 深々と降る雪の日。タープのしたで焚き火を見つめながらふとそんな言葉を思い出す。

 もう、顔も声も思い出せないというのにかつての仲間の台詞を思い出してしまう。

 

「ケホッ……ケホッ……」

 

 痰が喉に絡まり、乾いたような咳が出る。

 寒い日は特にそうだ。咳が出て、胸の奥を刺すような痛みがする。

 

 歳を取ると感傷的になってしまう。

 それが良いことなのか、悪いことなのかは俺はわからなかった。

 それを教えてくれるやつはもういないのだから。

 

「半分……」

 

 若い時分、今よりもずっと身体が動いてた時。

 今よりもずっと愚かだった時。

 アイツは孤独な俺に手を差し伸べてくれた。

 

「コゲ…コージ…ミノル…エンディー…ソウタ……」

 

 馬鹿な仲間たちだった。俺も馬鹿だった。

 皆で馬鹿をやって、皆で冒険して、皆で悪いことをやった。

 

 もう、顔も声も思い出せなくなって……名前と楽しかったという思い出だけはきっちりと残っている。

 

「ヒュー……ヒュー……」

 

 息が苦しい。呼吸が浅くなり、肺に空気が回らない。

 

 もうすぐ……なのだろうか。もうすぐ、俺の罪は終わるのだろうか……。

 

 アイツらが全員死んで、もう二度と会えなくなって、死にたくても死ねなくて……ずっと空虚な毎日だった。

 

 神は許しを与えるのではない。ただ試練を与え、人の運命を操る存在だ。

 だから、俺はここまで生き延びてしまった。神は俺につまらない生涯を歩ませた。

 

 まるでそれが俺に対する罰のように。

 

 腕が枯れ枝のように細くなり、焼けた肌が白くなって、重力に負けて皺くちゃになった顔でそうなってもまだ生きていた。ただただ、生かされ続けていた人生だった。

 

「ゼェ……ゼェ……」

 

 苦しい。息がまともにできない。

 だが、それでいいのかもしれない。

 

 この苦しさが、俺が死に向かっていることを唯一感じさせるものだからだ。

 

 楽に死ねるなんざ、最初から思っちゃいない。

 何人も傷つけてきた。

 何人も殺してきた。

 

 奪って、殺して、殴って、嗤って。

 息を吸うように悪いことをした。

 

 だからまぁ、仕方ない。これが神の思し召しなのだろう。

 

 息が止まって──。

 

 意識がぼんやりとして──。

 

 嗚呼、やっと救わ(終わらせら)れる、と。

 

 ──そう、思ったんだ。

 

 

 

──アリウス自治区 白洲アズサ──

 

 最初にそれと出会ったとき、死体が転がっていると思った。

 見たことのない装いをした男であり、浅黒い肌に毛先が脱色したような真っ白な頭髪。

 白いマントと首元にはふわふわの毛皮がついた妙な格好をした男だった。

 

 近づくと男は浅い呼吸を繰り返しており、どうやら眠っているようであった。

 その男に対し、私はバケツ一杯に注いだ水を男に向かって勢いよくかける。

 

 この外界と隔絶されているアリウス自治区においてまず見知らぬ人間がいるという異常。

 外敵……あるいはスパイの侵入。少なくともまともな手合いではないはずだ。

 

「あ~……」

 

 水をかけられた男がまるで獣の唸り声のような声を出しながら、水滴を垂らして鋭い視線を私に送る。

 

「答えろ、何者だ。どこからここに入った」

「……天使?」

 

 ……寝ぼけているのだろうか。男は訝し気に周囲と私を見渡しやがて得心したかのように口を開く。

 

「最近の天使ってのは、ガスマスクを被るんだな……まぁちょうどいい、地獄はどこだ?」

「質問をしているのはこちらだ。名前は? 所属は? 何の目的でここにいる?」

「なんだァー? 死後の世界はそんなことまで聞かなきゃならないのか?」

 

 男は訝し気に眉をひそめてこちらを睥睨する。

 

「わけのわからないことを言わないでほしい。ここはアリウス自治区、知っててはいったんじゃないのか?」

「アリウス……?」

 

 本気でわからなそうな顔で男はじろじろとこちらをみる男。やがで男は自分が濡れていることに気づいたのか自分の服装に目を向ける。

 

「嗚呼、まったく濡れてるじゃねぇか……というか、この格好はまた随分と懐かしい……」

 

 そこまで言って、男は急に飛び出す。

 

「なっ、ま…待てっ!!」

 

 ものすごい速さで駆け出す男。

 私ですら追いつけないほどの健脚で駆け出し、どんどん引き離されていく。

 

「くっ……!」

 

 たまらず、男の足を止めるために発砲するが、弾丸は不思議なことに男に当たる直前にピタリと止まり、落下する。

 

「なっ……!?」

 

 信じられない。弾丸がまるで効かない。まるで魔法のような現象に困惑を隠せないがそれ以上にこんなわけのわからない男を野放しにすることに危険性を感じ、追いかけることしかできなかった。

 

 男はやがて、とある古びて朽ちた一軒家の前に立ち止まり、そこで立ち尽くす。

 

「……どういうことだ、若返ってやがる」

 

 そんな不穏な言葉を残して。

 ガラス戸の前で立ち尽くす男は呆然としていた。

 

「なぜ急に走り出したの? あなたはいったい……」

 

 何者なんだ。

 

「……天使」

「天使じゃない、私はアズサ……あっ」

 

 しまった、つい名前を言ってしまった。

 

「ち、違う……私は」

「……」

 

 男は訝し気にこちらを見つめる。

 なにか偽名……なにか言わなければ。

 

「──私はコーギー」

「ちげぇだろ」

「くっ……!」

 

 なんたる失態。やってしまった。

 男の様子を見るにごまかしは通じないだろう。

 

「と、とりあえず。あなたには聞きたいことがある。投降してついてきてほしい」

「そんな銃が俺に効くわけねぇだろう。それよりアズサ、聞きたいことがある」

「ち、違う……私はレトリバー……」

「ころころ名前変わってるじゃねぇか」

 

 なんだろう、男の目線がどんどんこちらに対して呆れたような目つきになっている。

 絶対、馬鹿にしてる!

 

「──俺は、死んだはずじゃねぇのか?」

「……? いってる意味が……」

 

 ──ビッ!!

 その瞬間、まるで思い切りテープをはぎ取ったかのような音がしたとともに、私の身体は宙に浮かび上がる。

 

「ん……あ、やべ。連れてきちまった」

 

 しまったというように男はぼけーっとこちらに視線を送り、

 一瞬だけ逡巡したかのような表情を浮かべた後に、まぁやっちまったもんは仕方ねぇか。といってまたしてもあのビッという音が耳を打つ。

 

 そして気が付けば、私たちはこのアリウス自治区で一番高い場所──バシリカの屋根の上に立っていた。

 

 男は自治区を遠い目で見つめ、左手の甲を強く噛んでうっすらと血の流れる様子を見る。

 突然の自傷行為に私は困惑しつつもこの男の強行の一挙手一投足に目を離せなかった。

 

「──ハハッ」

 

 男の口から、笑い声が響く。

 

「ハハッハハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

 男は笑う。心底おかしいように、それでいて心底辛いように、苦しいように、嗤いながら泣いていた。

 

 その様子を見て、私は……男の手を握った。

 

「……なんだよ」

 

 憔悴したかのような表情で、男は問う。

 その目は絶望しきっていて、諦観のなかにいて、まるですべてが投げやりになったかのような顔だった。

 

「……名前を教えてほしい」

「……なんでだ? 誰も呼ばない名前に意味なんざねぇよ」

 

 私は、この男のことを知らない。

 なぜ、この男がこんなにも疲れ切っているのか。なぜ、この男がこんなにも苦しそうな顔をしているのか。

 私は何も知らない。

 

 ── vanitas vanitatum. et omnia vanitas.

 

 この世界はすべてが虚しいもので、それが世界の真理である。

 

 でもそれが、この男に手助けをしない理由にはならない。

 

「私が知りたいから。そういう理由は駄目なの?」

 

 男は目を見開いて、まるで信じられないものを見るかのような目で私をみた。

 

 

 

──アリウス自治区 バシリカ屋上 タケ=プラムパイン──

 

 ろくでもない生涯を送ってきた。

 親は居なく、飯もなく、学もなく、ただこのクソみてぇな世界に負けたくない反発心だけはあった。

 

 生きるために必要なことをしてきた。盗みも暴力も殺しも、それこそ何でもだった。

 

 神は居ない。

 ガキの頃に神に祈りながら飢えて死んでいった友達がいたのに、神はそいつを助けてちゃくれなかった。

 生き残りたければ、強くならなきゃいけねぇ。強くならなきゃ生きている価値がねぇ。

 

『お前おもしれーなぁ~! 名前なんていうんだぁ~?』

 

 『半分』と出会ったのはそんな時だった。

 

『俺もなお前みたいに一人だった時があったんだ。でもよぉ、そんな時に手を差し伸べてくれる奴が居たんだ』

 

 『半分』はそういって、ナイフを突きつけた俺にそういった。

 そこには同情はなかった、見下しもなかった。

 

『だからよぉー、俺もそうしてぇんだよタケ。俺がそうやって救われたからよ、孤独な奴の手を俺が必ず取ってやるんだ』

 

 『半分』はそういったんだ。そういってくれたんだ。

 

『──俺と仲間になんねぇか、タケ』

 

 そんなあんただから、俺は命を賭けれたんだ。

 そんなあんただから、勝ち目の薄い勝負に乗ったんだ。

 そんなあんただから、俺は一緒に死ねれたんだ。

 

「私が知りたいから。そういう理由は駄目なの?」

 

 信じられないものを見たんだ、『半分』。

 背格好も違うし、性別だって違う。

 顔は見えねぇし、言ってる言葉だって違う。

 

 ──でも、このガキがお前と重なって見えたんだよ。『半分』。

 

 もう、会えないと思ってたんだ。

 知識を深めても、なんども思い出そうとしても。

 歳を取って、声も、顔も、記憶すらもかすれていったのに。

 

 お前が、居たんだよ。『半分』。

 

「……こんなところに、居たんだな」

「……? な、なんだ?」

 

 あれほど探してたお前が、あれほど求めていたお前たちが。

 

 こんな場所に、こんな近くにいてくれたんだ。

 

 視界が、ぼやける。あふれてくる涙が止まらない。

 

 ああ、クソ。だっせぇ……。

 なにガキの前で泣いてんだよ。いい歳こいた爺だぞ俺。

 

「──タケ」

「えっ」

「タケだよ、俺の名前。これでいいかアズサ」

 

 アズサは視線をずらして少しだけ沈黙し、やがてこちらに向き直る。

 

「タケ、か。うん大丈夫、理解した」

 

 アズサはそういうと、ゆっくりと顔に手を当てて、顔につけていたガスマスクを外す。

 

「アリウス第八分隊所属、白洲アズサだ」

 

 白髪に、紫水晶(アメジスト)のような透き通った瞳。

 つり目がちな目に幼さを感じさせる童顔。

 どことなく、ソウタもこんな感じだったような気がする。

 末っ子気質というか、半グレメンバーの中でもよく可愛がれるようなタイプだった覚えがある。

 

「タケの話を聞かせてほしい。どうか、頼めないだろうか……?」




 いずれ来るであろう、チー付与のタケの死の救いを横から奪い取ってキヴォトスにぶち込んでやるぜぇ……! という邪悪な発想から生まれた一発ネタなんだ。

 ブルアカ随一のガチテロリストアリウスと国家転覆を狙った半グレ一味の生き残りで相性はよさそうと思ってアズサをとりあえずぶち込んだら、アズサに半分みを感じ始めてばにたすだったセカンドライフからキヴォトスのサードライフを謳歌し始めたんだよね。

 粗野でふざけたノリが通常の原作(に登場しない漫画のオリキャラ)だけど、47話以降のタケちゃんだから能力研鑽を積んで若いころより知識と思慮を身に着けたクレバーな元一流冒険者だから、かなり強いぞ。

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