世界の隙間を埋める1%の閃き ~あるいはTSして手当たり次第にバッドエンドフラグを叩き折る天使~   作:信頼できる語り手

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『無理』に挑まなければ届かない景色がある。


【アイン・ディアーブル】の大罪

 宝石に価値が生まれるのはいつだと思う?

 

 発掘された時、鑑定された時、加工された時、展示された時……。身に付ける事で初めて意味を持つという考え方もある。

 

 だが、敢えて言うぞ。不正解だ。間違ってる。

 

 宝石には最初から価値があるんだ。美しいモノが何処かに存在しているという希望は、この世界に輝きを与える。

 

 私の宝石(きぼう)は空から降ってきた。

 

「君……! だ、大丈夫か……!?」

 

「ん、平気だけど」

 

 青い髪の男性が欠伸をする。高所から落下したはずだが、痛がる様子もない。

 

「樹に登って寝てた僕も悪い」

 

「あ、ああ……。まさか、大樹の上に人がいるとは思わなくて、思い切り蹴ってしまったぞ。そもそも、どうしてあんな場所に……? あっ……いや……」

 

 そこまで言いかけて、私は反射的に言葉を濁した。習慣が身を竦ませる。

 

 質問する事、疑問を言葉にする事、念の為の確認をする事、瞬時に意図を察せない事。

 

 私がそういう傾向を見せると、両親は不機嫌になるのだ。母は『この子は病気かもしれない』と心配するフリをし、父は『悪魔に憑かれた異常行動』だと舌打ちをする。

 

 ……分かっていた。彼らは私を慮っているわけではない。子供に口答えさせないように、自分達の非を糾弾されないように、私を『間違った存在』にしておきたいのだろう。

 

 どれだけ論理的に言葉を紡ぎ、得意な学問で成果を示したところで、彼らが私の言い分を認めた事はない。理解しようとしない人間に、言葉は届かないのだ。

 

「好きな劇でそういうシーンがあったから」

 

「……え?」

 

「それが、樹の上で寝てた理由。君は?」

 

 青年が樹に背中を預ける。

 

「どうして樹を蹴ったのか、教えて」

 

「……些細なストレス発散だ。上手くいかない事なんて、誰にでもあるだろう? あまりマナーが良い行為ではなかったし、次からは反省して気を付けるぞ」

 

「そんなに他人の顔色を窺って、楽しい?」

 

「……っ!」

 

 初対面の相手に本質を見抜かれて、息が止まりそうだった。

 

「……普通でいる為には、そうするしかないんだ。私は……異常者だと思われるのが怖い」

 

「じゃあ、僕には気を遣わなくて良い」

 

 青年が『しーっ』と内緒のジェスチャーをすると、昼間でもはっきり見える光が指先に瞬いた。

 

「僕も普通じゃない。君と同じ、天才だから」

 

「天、才……?」

 

 その輝きは私の知る何よりも優しくて。顔を上げて確認した彼の瞳は、宝石のように眩しくて。

 

「今、閃いた。君が人生に不足を感じてるなら、僕達は友達になれるかもしれない」

 

 仮に世界を繰り返したとしても、君は何度でも私を呪縛から解放してくれるに違いない。

 

 私の親友。私の運命。私の宝石。

 

「きっと、1人よりも生きやすくなる」

 

 私は舞台の主役ではない。彼を引き立てる小道具係。だが、その役割は私の誇りだ。

 

「それは……名案だな」

 

 ──君という宝石が隣で輝いてくれるのなら、それだけで未来に期待を抱ける。

 

 

 

「きゅふふ☆」

 

 涙印の化粧を施した道化装束の人物は、間違いなく黙示録だ。私には分かる。

 

「……出たな、魔王フォビア」

 

 サラート君の放ったナイフが、カランと音を立てて床に落ちた。

 

「さあ、道化芝居(サーカス)を始めましょう☆」

 

『隙だらけだぞ。失伝──悪戯な玩具箱(ジョーク・ボックス)

 

 器仗にマナを流し込むと、私の胸元に箱形のペンダントが出現する。

 

『模型──密着型キャットスーツ・地球仕様』

 

 黙示録への対抗策を模索していた『前の世界の私』は、レーシュ君と全面的な協力関係を結んでいたらしい。

 

 その時に得た『地球の発想』を取り込む事により、道具のシグネットは次の段階へと進化する。

 

 さあ、設計(デザイン)しろ。形のない概念に形を与えろ。存在しない道具を存在させろ。0から1を生み出すのが、原型師(わたし)の生き様だろう。

 

『模型──幻像【アインシュタインの十字架】』

 

 私の器仗(ペンダント)から輝く十字槍が飛び出した。

 

(初めまして、地球の天才。在界の天才(わたしたち)に力を貸して貰うぞ)

 

「何この槍……穂先が歪んで……?」

 

 魔王フォビアは槍を蹴り飛ばす。

 

「衰弱のディザイアでは防ぎ切れなかったか? どうやら、私の術式は魔王(きみ)に対して相性が良いみたいだな」

 

「危険ね、貴女……☆」

 

 フォビアが腰掛けていた窓枠ごと、付近の壁が板チョコのように脆く崩れた。

 

「また逢いましょう、ナサヤ。あたしはいつまでも、貴方を待ってるから☆」

 

『撤退する気か。幻像【チェーホフの……』

 

『改編──可能世界(ライクリフッド)D28☆』

 

 魔王の姿が消える。やはり、半終末での黙示録は反則的だ。後を追ったところで、どうせ足止めの偽典や烙印者が配置されているだろう。

 

「すまない。仕留め損なったぞ」

 

「あはは、惜しかったね。魔王がいる間は『熱の精霊』も弱体化してたし、私はあんまり力になれないかな」

 

「……やっぱり、直接攻撃は効果が薄い。プレイスホルダーが起きるのを待とう」

 

 私達が反省会をする横で、サラート君と杜鵑花君が顔を近付け合っていた。

 

「アインさんって、キャットスーツ姿でもノースリーブなのね……。脇が眩しいわ」

 

「袖のある服を着たら死ぬ呪いとかじゃないんですかぁ? 知りませんけどぉ」

 

「聴こえてるぞ、キッズ達」

 

 親に束縛されてた頃を思い出すから、露出の少ない服は苦手なんだ。わざわざ口に出すほどでもない、詰まらない話。

 

「はぁ? 私は大人ですけどぉ?」

 

「アダルトコーナーにも入れるわよ!!」

 

 猛烈に抗議してくる友人達をあしらいながら、私は志鳳君の方を見て呟いた。

 

「……まったく、孤独を感じる暇もないな」

 

 君達のおかげで。

 

 

 

「橋の建設、か」

 

 大広間。魔王襲来に怯える避難所の住民を宥めつつ、私達は今後の動きを打ち合わせる。

 

「あー、アンタらが敵の包囲網に穴を空けてくれただろー? 今の内に魔王の居城に攻め込む為の道を整備しようって案が出てなー」

 

 私達が何度か出撃した事で、魔王の手駒を減らせたのは事実だ。精霊世界の避難民は反撃の好機を逃したくないらしい。

 

「普通に空を走って行ったら駄目?」

 

「……一応ツッコミ入れとくが、空を走れるのは人類の『普通』じゃないぜー?」

 

 呆れ顔をするプリン髪のナサヤ君(リーダー)の半歩後ろで、執事服を着た緑髪の女性──エメラルド君がおずおずと手を挙げる。

 

「旦那様やアレキサンドライト様はともかく、わたくしの契約精霊が本領を発揮するには地上を進む道が必要でして……。代わりに、大幅な兵力増強をお約束します」

 

「あ……もしかして、私が大陸の一部を蒸発させちゃったから道が無くなったのかな……?」

 

「其方が責任を感じる必要はございません、幕楽様。元々、あの一帯は魔王の軍勢に支配されて通行不可能だった土地。侵攻状況をリセットできた分、総合的にはプラスかと」

 

 私も強く頷いた。

 

「それに、橋くらいなら私が直ぐに用意するぞ。サポート役に杜鵑花君と……要望を訊きたいからエメラルド君も来てくれ。手が空いた時で構わないが」

 

「いえ、こちらの都合はお構いなく。神格精霊持ちとは言っても自身の体に降霊できるだけで、霊能者(だんせい)のように器用には操れませんから。わたくしが抜けても、それほど支障は……」

 

 エメラルド君がしょぼんと項垂れる。彼女は力不足に悩んでいるのか。しかし、杜鵑花君との戦いを見た感じだと……。

 

「勿体ないな。君は己の素質を活かせていない」

 

「わたくしの素質、でございますか?」

 

「ああ、そうだ。おそらく、君には『道具』を扱う才能がある」

 

 とりわけ、遺物に対する適合は才能の比重が大きい。遺物の鞭を手足の如く動かしていた彼女には、まだまだ伸び代があるはずだ。

 

「わたくしに、そのような才が……」

 

「特に『眼』だな。君、何か人と違うモノが見えてるだろう?」

 

「……祖母は『未来視』と呼んでおりました。わたくしの一族は特別な精霊に気に入られているらしく、ごく稀に未来が見えるのです」

 

 狙って発動させられないので実用性は低いですが、とエメラルド君は付け加える。残体同盟(うち)の『預言のタヴ・モンド』を大幅にグレードダウンさせた感じか。

 

「まあ、詳しい事は作業を進めながら聞こう。橋造りに使えそうな資材があると助かるんだが……備蓄がないなら、道中で調達すれば良い」

 

「畏まりました。少々お待ちください」

 

 準備を始めるエメラルド君の背中を追って、私は友人達の横を通り過ぎる。

 

「こっちは任せたぞ、相棒」

 

「ん」

 

 

 

 1人の女性が海辺で歌っていた。 

 

「ラーララッタ……涙を、返して……」

 

 民謡だろうか。音楽は専門外ではあるが、心を揺さぶるような表現力を感じる。波の音に隠れた彼女の歌声は、聖女の祈りにも似た神聖な雰囲気を帯びていた。

 

「エメラルド君」

 

「……アイン様」

 

 ポニーテールに結んだ髪の先が揺れる。私と同じ緑色の髪。

 

「申し訳ございません。あの……喉が渇いたので、少し水分補給をしておりました。直ぐに作業に戻り……」

 

「歌、上手いじゃないか」

 

「……っ! 異界の神は聴覚も優れているのですね。お見逸れしました」

 

「ふふ、君は嘘吐きだな」

 

 他人の目を気にして取り繕おうとする姿は、まるで昔の自分を見ているようだ。

 

「君がどういう人間か当ててあげよう。自分に自信が持てない。でも、尊敬する人を支えたい。……どうだ? 合ってるだろう?」

 

「どう、して……」

 

「分かるとも。君は私と似ている。だから、お節介な助言をしてあげよう」

 

 少しだけ、気が向いた。他人の行く末を案じるほどお人好しではないつもりだが、友人達に影響されたのかもしれない。

 

「その未来視を使って、道具が内包する『進化の可能性(ポテンシャル)』を引き出すんだ。道具の意思を理解すれば、体は勝手に動く」

 

 こういう直感的なやり方は私の得意分野だ。杜鵑花君は非効率だの無駄が多いだの、散々に言ってくれるが。まったく、整備士は浪漫がない。

 

「わたくしに、可能なのでしょうか?」

 

「さあ、無理かもしれないな。私は天才だからできるし、才能フェチだから助言もするが、君の成功を保証する義理はない。ただ、1つだけ言えるとしたら」

 

 隣を歩くエメラルド君に人差し指を向けた。

 

「『無理』に挑まなければ届かない景色がある。才能の差を覆すのは努力ではなく狂気だ。私の友人にもそういう馬鹿が1人いる」

 

「……誰が馬鹿ですかぁ?」

 

「痛っ!」

 

 後ろから背中を蹴られて飛び上がる。

 

「格好付けてないで、働いてくださいよぉ」

 

「相変わらず、杜鵑花君は風情がないな……」

 

 この効率主義者め。

 

 

 

 長大な石材や金属塊を抱えた人形達が、一糸乱れぬ動きで前進する。

 

「『人形の神格精霊』は様々な人形を出現させる精霊でございます」

 

「うちの世界の『客体(アンドロイド)』に似てますねぇ」

 

 つまり、それだけ精巧に人間を模しているという事だ。機械オタクの杜鵑花君が認めるのだから、見えない部分の完成度も高いのだろう。

 

「数の多さが強みの精霊です。本体を宿したわたくしが倒されるか、人形を構成する部品が消し飛ばされでもしない限り、戦闘不能になる事はありません」

 

「なるほど。個々の力はそれなりだが、私が武器を提供すればかなりの戦力になるな」

 

 ウールーズには生物系のシグネット持ちがいないし、この精霊世界で眷属や隷獣が召喚できない事は確認済みなので、数を補える能力は非常に助かる。

 

「……本当に2人で橋を建設されるおつもりですか? 正直、幕楽様の空けた穴がこれほど巨大だとは思っておりませんでした。土台を作るだけでも相当な時間がかかるかと……」

 

「だから、2人でやるんですよぉ。悠長に作業を待ってる暇はありませんからぁ」

 

 杜鵑花君が目配せをすると人形達が運んでくれた資材の束が浮き、空中に整列した。私は剣の天才ではないが、ここまで完璧にお膳立てしてくれれば斬り損ねようがない。

 

『模型──幻像【ティドグリドの砥石】』

 

 私の手の中に黒光りする鞘が現れた。

 

『幻像【オッカムの剃刀】』

 

 武骨なナイフを鞘に納める。そして、律術によって辿るべき軌道を書き込んだ。

 

「柱は任せるぞ」

 

『口伝──存在の耐えられない軽さ(フリー・フォール)

 

 私が脳内設計図に従って資材を切り出すと、杜鵑花君の引力があるべき場所に持っていく。基礎となる杭を打ち、此岸と対岸に橋台を固定し、水中に橋を支える橋脚を埋め込んだ。

 

 普通の柱では野生の精霊の攻撃で壊れかねないので、私のシグネットで創り出した特殊な部品を要所に混ぜ込んでいる。よほどの事がなければ遥か未来まで残るだろう。

 

「材料が余るな……。もう少し広くするか」

 

「いつもの思い付きですかぁ? 付き合わされる身にもなって欲しいですぅ」

 

「仕方ないだろう。天才とは1%の閃きと99%の努力で構成される存在なんだ」

 

 アドリブで作業工程を追加して、大陸の穴を覆うように橋を分岐させる。

 

「……? 誰かの名言ですかぁ?」

 

「ああ。宇宙の向こうの天才が言っていた」

 

「また、訳の分からない事をぉ……」

 

 そんな軽口を叩く私達の間で、エメラルド君が口に手を当てて立ち尽くしていた。

 

「これが、異界の神の力でございますか……!」

 

 尊敬の眼差し。そう言えば、神智教の連中もあんな目で超越者(わたしたち)を見ていたな。まあ、この世界には精霊信仰以外の宗教がなさそうなので、その点は安心だ。

 

「そろそろ、避難所に帰りましょうかぁ」

 

「やだやだー! 噴水と海底トンネルも造りたいぞー! それから、それから……!」

 

「橋の上に国でも創るつもりですかぁ? 凝り性なのは結構ですけど、時と場所を選んでくれますぅ?」

 

 引力のシグネットに体を引き摺られる。エメラルド君から向けられる憧憬が少し冷めた気がするが、他人の目よりも自分のやりたい事が優先だ。

 

「ぐっ……サラート君なら浪漫を理解してくれるのに……! あ、せめて水圧エレベー……」

 

 

 

 私が自分から行動する時、そのほとんどは単なる答え合わせに過ぎない。

 

 超一流の思考と知識があれば、現実に限りなく近い『幻像』を導き出せる。天才の前に驚愕の真相なんてモノは存在しない。

 

「魔王の『正体』を教えてくれ、ナサヤ君」

 

「いきなりだなー。……俺に訊きに来た時点で、ある程度は目星が付いてるだろー?」

 

「勿論」

 

 それでも、確認しておくべきだろう。

 

「あまりにも不自然だからな。この精霊世界は私のいた異能世界に比べて戦力が少ない。黙示録が本気になれば、とっくに人類は絶滅しているはずだぞ」

 

 黙示録が在界侵略に手間をかけたのは、多数の超越者が世界中に分散している事が原因だった。1箇所を全力で潰して終わりとはいかない。

 

 だが、この世界は違う。人間側のキーパーソン……ナサヤ君達を殺せば終わりだ。

 

 ステファノスなら、サピエンティアなら、エンテンデールなら。私達が来る前に世界は終わっている。『1度目(おわり)』の記憶を共有した私だからこそ、断言できる。

 

「やる気が感じられない。まるで人類を滅ぼしたくないみたいじゃないか?」

 

 サラート君なら『舐めプが過ぎるわ!』と言うところだ。

 

「魔王は……」

 

 ナサヤ君が表情を隠すように額を押さえる。

 

「フォビアは……俺の妹なんだ」

 

 私は敢えて明るく返す事にした。

 

「『大罪のナサヤ』には書いてなかったな」

 

「世界間の結び付きを補強する為に、ヨフネが広めたっていう漫画か。アイツも大概、仲間に甘いな」

 

 彼は乾いた声で笑う。

 

「……フォビアは生まれ付き体が弱くてなー。自力では起き上がる事もできなかった。病気や怪我は日常茶飯事だし、喋るだけで激痛に悶える有り様だったぜ」

 

 ヨフネ……私の知る白河夜船は、そんな兄妹にとっての数少ない友人だったらしい。

 

「賢くて優しい奴だから。ごめんなさい、ごめんなさい、って泣きながら言ってくるんだよなー。俺もどうにかしてやりたかった。フォビアを治す方法を探して、探して……」

 

 執念の先で手に入れたのが、何でも願いを叶えるという不思議な靴。要するに、黙示録だった。

 

「本物だ、って嫌でも理解できたぜ。危険な代物だって事もな。それでも持ち帰っちまったのは、俺の情けないところだ。……あー、それから先は想像できるだろー?」

 

 私は首肯する。黙示録はフォビアの願いを叶え、彼女は世界の敵となってしまった。

 

「俺は罪深い人間だ。世界がこんな状態に陥って、その火種を用意したのが俺だってのに。今でも……妹が自分の足で歩いた瞬間の……あの嬉しさを忘れられないんだ……」

 

 それは大罪に違いない。しかし、私は責める気にはなれなかった。彼よりも私の方がよほど罪深い魂を持っている。

 

 あの滅び行く世界を前に、親友を輝かせる機会が巡ってきた事を喜んでいたのだから。

 

 

 

「で、そっちの思惑はどうなんだー?」

 

「おや、次は君の質問タイムか?」

 

「誤魔化すなよー。アンタ、わざとフォビアを逃がしたろ。何を考えてる?」

 

 ほう、そこに気付いたか。この世界の人間は精霊に頼らなければ未能者と同等の力しか持たない。それ故に、超常の存在を推し量る鋭敏な感覚を備えているのだろう。

 

「少しばかり、事情があってな。時間稼ぎと言うにはささやかだが……まあ、君達に関係する事じゃないから気にしなくて良い」

 

「アインさん、アインさん! プレイスさんが起きたわよ!!」

 

「ふふ、ようやくか」

 

 腕を持ち上げて肩を鳴らす。

 

「ナサヤ君。ウールーズの全員が揃ったからには、この終末は必ず解決される。だから、君は覚悟を決めておいてくれ」

 

「そうだなー……」

 

 さて、向こうの『私』はそろそろ目覚めた頃だろうか。色々と無茶な要望に応えてあげたからには、約束は守って貰いたい。 

 

「余、復活かえ! ここは何処か!?」

 

「異世界よ!」

 

「……???」

 

 瞬きの世界の『アイン・ディアーブル』。君は1つ、大きな勘違いをしている。

 

 自己中心的な天才の盲点。私が協力的な態度を見せたせいで、大事な本質を見落としている。

 

 君にとっての親友は『梧桐詩凰(シオン)』かもしれないが、私にとっての宝石は『梧桐志鳳』だ。それは決して、イコールでは繋げない。

 

「プレイスホルダー、待ってた」

 

「これでやっと、君の間抜けな寝顔を見守る当番をしなくて済むな」

 

「むっ、間抜け顔とは失敬な。……やはり、キリッと渋い顔で眠る練習をすべきかえ?」

 

「逆に笑うから、やめて欲しいぞ」

 

「アイン、意地悪しない」

 

 この瞬間が永遠に続けば良いのに。だが、無理に挑まなければ届かない景色があるのだ。

 

 志鳳君。元の世界に帰ったら、きっと。

 

 ──私は、君の敵になる。




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第1回ヒロイン人気投票

  • 赤:信桜幕楽
  • 緑:アイン・ディアーブル
  • 紫:山藤杜鵑花
  • 橙:サラート・シャリーア
  • 青:ナーヌス・バレンシア(梧桐詩凰)
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