バキ×神さまの言うとおり   作:夢中さん

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第二章
拾仇


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ迦楼羅ちゃん、梢江ちゃん、また☆」

 

「うん、またな」

 

「次会う時も連絡するね」

 

 

本郷姫奈に向かって手を振る、松本梢江と呉迦楼羅。

 

三人は神の子と呼ばれる、学校に出席した者たちによる選別を勝ち抜いた選りすぐりの高校生達。

 

最後の最期、運で定められた、運命の3人だった。

 

 

「梢江、一緒に帰ろう」

 

「うん....」

 

 

だるま───まねきねこ───こけし───しょんべんこぞう───うらしまたろう───うん。

 

何度も死にかけ、生きかけ、そして絶望してきた。

 

ただ何の変哲もない普通の自分が生きているのは、この二人がいたからこそだった。

 

それもまた、運が自分を生かした結果だったのだ。

 

三人は選別を終えてからも、しがない会話程度ではあるが、何度か集まっていた。

 

3人にしかない絆が、芽生えていたからだ。

 

そして今や全立方体の終了が、もう目と鼻の先であった。

 

夕暮れ時、二人は帰路を辿る。

 

 

「梢江、姫奈のこと、どう思う?」

 

「え?どう思うも何も.....良い子だよ、姫奈ちゃんは」

 

「それは分かる。信用は出来るんだ。けど信頼はできない」

 

「信頼....」

 

「....あ、ごめん梢江。こんな陰口言うつもりじゃなかったんだ」

 

「う、うん。でも何となく、迦楼羅ちゃんの言うこと、分かる気がする」

 

「あの子は、きっと何か大事な事を隠してる」

 

「....そうだ。今度二人でうちに遊びに来なよ!」

 

「迦楼羅ちゃんの家?」

 

「あぁ!私の友達なら皆大歓迎だ!」

 

「で、でも確か迦楼羅ちゃんの家って暗殺一家じゃ....」

 

「大丈夫!身内には優しいから」

 

「そ、そう。じゃあ、お邪魔しようかな....?」

 

 

梢江は彼女の明るい笑顔に押し負け、渋々承諾をした。

 

TELで姫奈も呼びかけると、彼女も喜び勇んで参加するとのことだった。

 

次の日───迦楼羅から送られた住所に足を運ぶと、そこは一般人には決して足を踏み入れることは敵わない、『呉の里』と呼ばれる地であった。

 

 

「どう?凄いだろ!」

 

「ひゃぁ~☆迦楼羅ちゃんと同じ眼の人が沢山!」

 

「い、いいの?私達がこんな....」

 

「大丈夫!みんな私の我儘には弱いから!」

 

「迦楼羅」

 

「「!!!」」

 

 

三人の背後に、忽然と立ち現れるその男。

 

姫奈と梢江は、全く気配を感じ取れなかった。

 

まさに暗殺一家、しかし暗殺だけではない、対等にやり合ったところで───

 

 

「(勝てるかなぁ?この人に)」

 

「本当に連れてきたのか....お前は本当に....」

 

「いいじゃんホリス。二人はとっくにこっち側だよ」

 

「はぁ....ひとまず、ついてきなさい」

 

 

男の後を追うと、一際目立つ大屋敷へと踏み入れる。

 

相も変わらず、通りすがる者皆全て、瞳が黒く染まっていた。

 

明らかに我々人間と、種族としての格の差を感じた。

 

 

「老若男女、皆さん強そうですね~☆」

 

「代々強者の遺伝子を受け継いできた賜物です。一人一人が高名な暗殺者ですので。」

 

「っ.....」

 

 

黒い瞳がこちらの顔を覗く度に、命がすり減るような感覚が梢江を襲う。

 

姫奈は誰一人『遅い』者がいないことに初々しくワクワクさせていた。

 

男がある襖を開けると、視界に飛び込んできたのは、今まで見てきた者とも一線を画す、生物だった。

 

 

「ホリス。ご苦労じゃった」

 

「あぁ」

 

「ただいま!おじいちゃん」

 

 

駆け寄る迦楼羅を置き去りに、二人は目の前の老人に目を奪われていた。

 

老いこそ感じるものの、雰囲気、空気、威厳はある意味『年相応』。

 

梢江は唾を飲み込み、姫奈は不敵な笑みを抑えきれずにいた。

 

 

「呉恵利央と申す。お主らが迦楼羅と共に生死を分かった友じゃな。」

 

「は、はっ、はい。松本梢江です。よろしくお願いします」

 

「本郷姫奈です☆にしても、おじいちゃん凄いですねぇ。もしかしなくても貴方が此処の長ですか?」

 

「左様。二人には幾度も命を救われたと迦楼羅が言うておった。礼を言うぞい」

 

「いえいえ♪迦楼羅ちゃんには死なれちゃ困るので☆」

 

「(.....この小娘....)」

 

 

幾許の会話が恵利央に姫奈の異変を察知させる。

 

例の選別で頭をやられた訳ではなく、元から常人とはかけ離れた性質を持っていると。

 

そして何より、得体が知れなく、佇まいを見ればすぐに分かる程の力量。

 

相当の修羅場をくぐってきたのだろう、20歳にも満たないこんな少女が。

 

 

「ほぅ.....経験は迦楼羅より上か」

 

「うん。姫奈は戦乙女(ヴァルキュリア)っていう女子専門の裏格闘技で闘ってるんだって。」

 

「ヴァルキュリア....聞いた事のない名じゃのぉ」

 

「まだまだ駆け出しらしいですから☆」

 

「覚えておこう。さて、用は済んだ。爺抜きでゆっくりしていきなさい。」

 

「おっ、お構いなく...!」

 

「ほほ、儂はちぃと出かける。迦楼羅、頼んだぞ」

 

「うん!」

 

 

迦楼羅の頭を優しく撫でると、恵利央は襖を開けて出て行った。

 

どっと肩の力が抜けた梢江は、冷や汗を溜息と共に拭った。

 

 

「寿命っ、縮んだぁ~~~....」

 

「凄かったですね。ゾクゾクしちゃいました☆」

 

「爺ちゃんはまだまだ現役だよ。全盛期には程遠いらしいけどね」

 

「か、迦楼羅ちゃんと友達で良かったよ」

 

「ははっ!んよしっ、ちょうど昼ごはんの時間だし、食べてきなよ!」

 

「さんせ~~~い☆!!!」

 

「ちょ、ちょっとぉ~....」

 

 

遠慮のない姫奈に呆れながらも、梢江はさながら大宴会のような呉一族との昼食に参加した。

 

当たり前の、人々の笑いがこんなにも幸せなことを初めて知った。

 

否、それが当たり前ではないことを梢江は痛感する。

 

戦場に初めて足を踏み入れた彼女の価値観は、以前の甘い考えを塗り替えていた。

 

人といれることは、普通じゃないんだ。

 

元来人は、一人が普通なんだということ。

 

身に染みて、骨身に染みて、そして感じていた。

 

 

「───へぇ~、ここがヴァルキュリア....新しく出来たとは思えないくらい立派だ!」

 

「い、いいのかなぁ一般人の私達が....いくら姫奈ちゃんの紹介でも....」

 

 

そして舞台は変わり、数日後、梢江達は姫奈が所属する裏格闘技『ヴァルキュリア』の観戦へと出向いていた。

 

新規団体とは思えないほどの会場の広さと、観客の量に二人は気圧されていた。

 

そして戦場へ登壇する、一人の少女は、大きく両手を上げて叫ぶ。

 

 

 

「革命のッッッ時間だよォーーーーッッッ!!!!!」

 

「「「オォオオオォォォォォォッッッッッ」」」

 

 

武舞台にて姫奈が会場全体を震わせる。

 

彼女がこの地の星、スーパースターであると嫌でも分からせる。

 

迦楼羅と梢江は打ち震え、次第に裏格闘技特有の熱気に包まれ、いつしか彼女を全力で応援していた。

 

その間、ヴァルキュリアの『運営陣』が彼女ら二人に近付いていた。

 

 

「よお、君らが姫奈の紹介の子?」

 

「!、あ、はい!皆さんは?」

 

「私は『天馬希望(のぞみ)』。此処のオーナーだ」

 

「そんでこっちが『伊織いちか』『美谷はな』。昔からの腐れ縁ってやつさ」

 

 

裏格闘技オーナー、ギザ歯の悪徳警官、美麗な弱小ヤクザ組長。

 

三人ともに普通とはかけ離れた経歴を持つ、ヴァルキュリア創設者たちの登場だった。

 

 

「普通のガキじゃねぇかと言いてぇところだが、今じゃテメェら(高校生)はVIP扱いだ。歓迎するぜ」

 

「二人ともべっぴんさんやねぇ。よろしゅう~」

 

「いやいやっ....私は松本梢江です」

 

「呉迦楼羅だ。よろしく三人とも!」

 

「「「っ!?」」」

 

 

呉の名を聞いた時、三人の体が固まった。

 

薄々分かってはいたことだが、やはり彼女は裏を生業にする者達からしても、特別中の特別。

 

呉一族のビッグネームに、三人は一目散に飛びついた。

 

 

「く、く、くく呉!?まさかあの呉一族かッ!?」

 

「うん。そうだよ!」

 

「オイオイマジかよッ!!....お前、今金に困ってないか?」

 

「別に!」

 

「ひぇ~~~!恐ろしや恐ろしやぁ....」

 

「そんな大したもんじゃないってば。それにホラ、試合始まるみたいだよ」

 

 

姫奈の対角線に立つ一人の女。

 

漂わせるオーラは強者のそれだが梢江はその姿をどこかで見た気がした。

 

 

「あの人どこかで....」

 

「一昔前に一世を風靡したフライ級MMA王者....になるハズだった奴だ」

 

「『桜田伊織』別名壊し屋伊織。肝心の試合前に路上で男3人を半殺しにした。速攻干されて豚小屋行き。まあよくある話っちゃ話なんだが....」

 

「確かその半殺しにした相手が三人とも、ロードワーク中のプロボクサーだったらしい。しかもその全員がフェザー級だ」

 

「怖いのはそれだけじゃねぇ。やられた全員、二度とリングに立てないように膝をへし折られてる」

 

「まさに壊し屋ってワケかよ。相当へし曲ってんな」

 

 

『準備はいいですかッ!!?』

 

 

レフェリーが構えると、桜田は左手を差し伸べた。

 

彼女は穏やかに笑い、姫奈と握手を求める。

 

 

「よろしくね、お嬢ちゃん♡」

 

「.....『遅いなぁ』」

 

「あ?」

 

「そんな見え見えなお誘い、乗ると思います?☆」

 

「へぇ、あぁそう。悪い話じゃないんだけどねぇ....」

 

 

互いに構える。

 

天馬は桜田の経緯を口にしながらも、普通の女子高生である梢江には少しショックが大きかったかと苦笑いを浮かべた。

 

しかし、天馬は梢江の顔を見るなり、目を疑った。

 

ほのかに、まるで不安など感じさせない眼差しで姫奈を見ていたからだ。

 

 

 

 

ドゴォッッッ

 

 

 

 

「ごッッッッッ!!!?」

 

 

開始直後、単純な右ストレートが、桜田の鳩尾に深々と突き刺さる。

 

軽量級を思わせない姫奈のパワーとバネは、姫奈よりも明らかに大柄な体格を、ものの一発で沈み込ませた。

 

 

一発KO、試合時間脅威の2秒である。

 

 

大盛り上がりの会場に反し、天馬は顔に手を当て落胆していた。

 

 

「はあ...やると思った」

 

「やっぱ柚葉クラスじゃねぇと話になんねぇな」

 

「あの子も十分強いんやけどねぇ....ほんま異常やわぁ」

 

「へへ、アイツの思いっきりさには、私達は何度も助けられてきたんだ。あの程度の相手に負けるはずないよ」

 

 

自信満々に迦楼羅はそう言った。

 

そうは言えど、天馬たちは迦楼羅の放つ異常な気配に勘づいていた。

 

迦楼羅の生まれ持ってきたモノがどれだけ膨大で、そして悪魔的でかつ末恐ろしいものかを。

 

闘う姿を見なくとも分かる。

 

姫奈が怪物なら、迦楼羅は化物そのものだった。

 

 

「迦楼羅は....こういう場に出る気はないのか?」

 

「の、希望ちゃん!?」

 

「....そうだなぁ」

 

 

迦楼羅は怪しげな笑みで、天馬と目を合わせた。

 

その黒い瞳はまるで蛇に睨まれた蛙のよう、天馬の体をピクリとも動かさなかった。

 

 

「もし"困った時"があったら、いつでも呼んでよ」

 

「!...ハハ...期待してるよ....ッ」

 

 

姫奈の試合は第一試合の前座。

 

その後、すぐに姫奈が皆の元へ合流し、共に後の試合を観戦した。

 

表格闘技には得られない熱気と魅力に、熱狂し、人々は裏から表の世界へと、密かに戻ってゆく───。

 

 

 

夕焼け、夜はまだまだ始まったばかり。

 

プリクラ撮って、歌を歌って、夜食を食べる。

 

視線など気にする必要がなかった。

 

ナンパや無法なキャッチは警官の伊織が喉を鳴らしてくれたが、そんな邪魔など気にする余裕が無いくらい、少女達は笑顔が絶えずにいた。

 

大人の女達は、そんな彼女らを前に、穏やかに笑ってやることしか出来なかった。

 

 

「───そういや梢江、気になってることがあってよ」

 

「はい?」

 

 

夜の街を歩む最中、天馬は梢江に問いかける。

 

極めて普通の女子高生に見える、彼女に対するほんの些細な違和感。

 

聞くまでもないとも思ったが、会話の延長がてらに問いてみた。

 

 

「試合見てる時、案外落ち着いてるなと思ってな。まさか経験済みだったりする?あーいうところ」

 

「あ....え~~~っと....まあ、多分大丈夫かな...」

 

「ん?」

 

「いや、その....実は私の.....その、友人の試合を、一度だけ観たことがあって...」

 

「へぇ~!ほんとに。因みになんてとこ?」

 

「えっと、確か.....地下闘技場....だったかな?」

 

「「「地下闘技場ッッッッッ!!!!????」」」

 

 

周囲の人々が思わず振り返るほどの声量で、天馬達は叫んだ。

 

キーンと耳鳴りで呆然とする梢江たち。

 

耳を痛そうにしながら、姫奈は問う。

 

 

「希望さん。その地下闘技場ってなんですか?☆」

 

「ッ.....地下闘技場は、東京ドーム地下にある古の闘技場。全試合ノーギャラ、その代わりにリアルな地上最強の称号が手に入るとさえ言われる伝説の裏格闘技団体だ....」

 

「ノーギャラ?なのに人が集まるんですか?☆」

 

「そこだよ。金目的じゃなく、最強の称号しか頭にねぇ男達がうじゃうじゃいるんだ。レベルも高いに決まってる」

 

「しかも観戦には特別な手順が必要で、その手順はどの情報網にも手をつけられてねぇくらい徹底されてる。会場自体は大きくはないから、たとえ手順をクリアしても即満員札止めの超鬼門だぜ」

 

「確か、拳願会とも旧知の仲で、少し前に交流試合をしたって聞いたぞ!凄いな梢江!」

 

「はぇ~、地下闘技場かぁ....詳しいんですねぇ希望さん☆」

 

「そりゃそうさッ。この界隈で地下闘技場を知らねぇ奴は皆無だよ...ッッ」

 

「(そ、そんなに有名なんだ、あそこ.....)」

 

 

唖然とする梢江。

 

薄々勘づいてはいたものの、そんなにこの界隈が奥深く、そしてあの地が大それた場所だと初めて知った。

 

そもそもが、他にああいう場所があること自体驚きだったのだが、お構いなしに梢江は質問攻めにあっていた。

 

別に自分はただの女子高生なのに───苦笑を強いられるなか、ふと遠目に人だかりが出来ているのを見つけた。

 

目的地までの近道は無いため、ここを通り抜けるしかないのだが。

 

皆は恐る恐る、そこへと近付く。

 

 

「───オイ爺さん、下ろしたてが台無しだよ。え?」

 

 

高級そうなスーツを身に纏う、恐らくはヤクザ者の3人に囲まれている一人の老人がいた。

 

毛髪は不精に伸び切り、顔は髭に塗れて素顔が見えない。

 

衣服もボロつき、雰囲気はこの上なく暗い。

 

まるで絵に描いたようなホームレスそのものだった。

 

 

「あれは仁和組の方達やね....日本最大の暴力団や。災難やなぁあのお爺さん....あ、乗り込みとかカンベンよ!?」

 

「ちッ....ちょっと待ってろ。ヤクザモンがカタギに手ェ出したらどうなるか、ポリの私がしっかりと...」

 

「待て、いちか」

 

「あ?」

 

 

天馬は伊織を止める。

 

姫奈と迦楼羅も、何故かその様子をただ見ていた。

 

何故か?

 

ホームレスの年寄り───とは、思えないような"佇まい"だったからだ。

 

 

「え?ジイさん。どうすんの」

 

「....すみません」

 

「あはは違う違う。そゆことじゃねぇんだジイさん」

 

「10万。それだけ置いてけぇんな」

 

「......」

 

 

老人は黙ったまま、ポケットから財布を取り出した。

 

ヤクザはそれを奪い取り中身を見ると、そこには数千円程度しか残っていなかった。

 

 

 

 

 

バッッ

 

 

 

 

 

掴み取った胸倉。

 

大勢は歯に力を込め、目を薄めた。

 

 

 

 

───次の瞬間には、ヤクザ二人が倒れ込む。

 

 

 

 

「見たかよ希望ッッ!!!?」

 

「す.....スゲェ....ッッッ」

 

 

見える者には見えていた、その瞬間を。

 

掴み取った胸倉を媒介に『合気』で横方へ体勢を崩す。

 

手が離れた瞬間、左のショートアッパーでそのサングラスごと叩き割る。

 

そして間合いに踏み込んでいたもう一人を、芳醇な、それでいて豪快な、綺麗な狐を描くハイキックで仕留めた。

 

一呼吸、十分な余力でその場を制した。

 

 

そしてその攻撃の一つ一つが『先の先』。

 

相手が動く前に制する術。

 

超高等技術にして、理論上最強の技術を目の当たりにした。

 

 

「あの.....」

 

「ッ....は、はい!?」

 

 

一応無事だったヤクザの一人に老人は声をかける。

 

どうやらそのヤクザからは酒の匂いがせず、恐らくは運転手だったのだろう。

 

やや放心状態であった男に、先程の俊敏さの欠けらも無い和やかさで接した。

 

 

「もう....いいよね」

 

「は、はいぃッ!!」

 

 

名も無き武人は、その場から去った。

 

暫く皆はそこに立ち止まっていた。

 

 

「ふぉーーーーッッ!!!!!☆☆ 速い速ーーいッ!!あんなに速い人、初めて見ましたよ~~ッ!!!」

 

「.....強い......梢江?」

 

「.....」

 

 

既視感。

 

梢江の頭に、訴えかけてくる既視感。

 

しかしそれは杞憂であると、皆と共に梢江は先へゆく。

 

 

 

 

 

 

「────....もしもし....あ、はい、俺です」

 

「....あー、詳しいことは後で話すんで、その....今晩泊めてもらったりとか、出来ます?」

 

「....助かります。じゃあ、また」

 

 

 

 

 

フッ───夜の闇に消える老人。

 

今はまだ潜む、その時まで。

 

 

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