ボーダーの休憩スペースで俺、村上、荒船の3人で菓子をつまみながら、荒船が目指すパーフェクトオールラウンダーについて聞いていると、突然電話がかかってきた。
「すまん、添から電話だ。」「おお、大丈夫だぞ。」
『もしもし。どうした、添?何かあったのか?』
『何かあったどころじゃないよ〜。影が暴力を振るったんだよ。相手はメディアの根付さん。一緒にいたユヅルは理由は分からないけど意気消沈してるし。』
『なるほど…。添、とりあえずユヅルは隊室にいるはずの光に預けてくれ。今は明るい雰囲気の奴と一緒にいた方が気が紛れるはずだ。預けたら影と一緒に今から送る場所に来てくれ。事情を聞く。』
俺が難しい顔をしていたのが気になったのか、村上が話しかけてきた。
「どんな要件だったんだ?」
「雅人が根付室長を殴ったらしい。」「「はぁっ?!」」
「ユヅルが一緒にいたらしいから、おそらく二宮隊、鳩原さん関連だ。鳩原さんはユヅルの師匠だからな。」
そんなことを話していると、俯いて気まずそうな雅人とその腕を引っ張る添がやって来た。
「雅人、何があった。」
俯いていた顔を上げて、驚いた顔をしていた。
「あ?何で俺を責めないんだよ。」
「ユヅルに何かあったんだろう?どうしてこうなったか理由を知りたい。話してくれ。」
「…。鳩原さんが突然ボーダーを辞めたらしい。そのことをユヅルが気になって、上層部に聞きに行くから隊長の俺に着いてきてくれって言ったから一緒に向かった。」
(((人選ミスでは?)))
「それで聞きに行ったら柿崎さんと話してる狐ヤローに会った。それでユヅルが鳩原さんのことを聞いたらアイツが憐れみと同情の感情を向けてきたから思わずぶん殴った。これで全部だ。」
「なるほど…。」
鳩原さんはユヅルのことをかわいがっていた。それなのに挨拶をせずに辞めるか?それに鳩原さんは最近遠征選抜に落ちたことで落ち込んでいたらしく、ボーダーでは見かけていない。チッ、情報が足りな『ピコン!』
(メール?誰から…!)
《最近、住宅地で突然小さいですがゲートが開いたそうです。近く住んでいる人がネットの鍵垢で呟いていました。それと二宮隊が最近B級に降格したらしいですよ。ボーダー隊員の掲示板で割と話題になっています。偶々見つけたので鴉さんに伝えておこうと思いました! 律より》
ーナイスだ律!
「最近ゲートが住宅地で開いたらしい。」
「はぁ?突然どうしたんだよ?」
「鳩原さんが居なくなり、二宮隊は降格。噂になる前に処理された小さなゲート。そして…、A級部隊風間隊の監視。」
「「「「はぁ?!」」」」
村上side
墨山鴉。俺と同期のスナイパーで荒船のクラスメイト。太一からは新人なのにバンバン的に当てるすごい人だと聞いていたが、まさか荒船の師匠になるとは思わなかった。本人は使い方を教えているだけと否定的だったが、俺が荒船に教わっていた頃を思い出して笑みが溢れた。それに目敏く気づいた荒船には小突かれたが。影が根付さんを殴ったと聞き、話しを聞いていたがまさかこんなことになるとは思わなかった。
一瞬だった。会話が終わった瞬間、予備動作もなく立ち上がり、トリオン体と遜色ない程のスピードで通路の角まで走り出し、姿が見えないが人を拘束したような体勢でいた。突然のことで驚いたのかカメレオンが解除されて菊地原がそこから出てきた。
「菊地原!なぜここに…。」
菊地原は荒船の問いかけに答えずに、悔しそうな顔をしながら何か会話をしているようだった。通信先に報告しているのだろうか。俺達が動揺している中、鴉だけが冷静だった。
「鳩原さんのことだろう。鳩原さんはおそらくボーダーにとって多大な損失を被ることを行った。例えば、秘密裏にネイバーフットに密航するとかな…。」
「えぇ!どうやってそんなこと…。」
「添、静かにしろ。鴉、さっさと続きを話せ。」
「…あぁ。だから鳩原さんを追って、同じ事が起こらないように監視が付いた。それが風間隊。影浦隊に菊地原が付いたのは雅人のサイドエフェクトのせいだろう。」
「なるほど。確かに菊地原の聴力なら離れた所からでも聞くことができるし、音に集中しているから影には気づかれにくい!」
「おそらく、二宮隊にも監視が付いているんだろう。」
そんなことを話し合っている間にふとした疑問が浮かんだ。
「なぜそこで影達なんだ?関わりがあるのは絵馬だろう。なぜこっちを選んだんだ?」
「それは隊室に入ったのもあるだろうが、一番の理由はまだ子供だからだろう。資金も行動範囲も高校に入ると大きく変わる。」
「チッ。だから17歳が三人いて、バイトもしてるこっちに狙いを定めたわけか。」
「光はアルバイトしてないしね〜。」
「動かれるのは厄介だったんだろう。サイドエフェクトは強力だしな。」
「ちょっと。僕を拘束したまま会話に花を咲かせるのやめてくれる。っていうかなんで分かったの。こっちはカメレオン起動してたんだけど。」
「…。確かに姿は消えていた。だが、残念だったな。気配が消えていなかったから丸分かりだったぞ。」
「気配?なにそれ、ファンタジーみたいなの。もしかしてサイドエフェクト?」
「さぁ?どうだろうな?」
「チッ。城戸司令達が呼んでるよ。会議室まで来いってさ。荒船さんと村上さんも一緒に。」
「「はぁ?!俺達も?!」」
「当然でしょ。ここまで話に首突っ込んだんだから。」
最悪だ。まさか巻き込まれるとは。これじゃあ鈴鳴隊に迷惑がかかる。だが、三人が心配なのは事実だ。どうするべきか…。
「俺は行く。」
「荒船!?」
「ダチが心配だしな。それに…、師匠の危機を助けるのも弟子の務めだからな!」
「師匠じゃないけどな。」「ケチケチすんな。」「してない。」
荒船達がそんな会話をしているのを見て、決心がついた。すみません、来馬さん。
「俺も行く。」
「鋼まで!鈴鳴支部は大丈夫なのか?」
「ここに来馬さんが居たら、行ってこいって言った筈だ。それに俺もお前達が心配だからな。」
俺達がそんな遣り取りをしていると、いい加減痺れを切らしたのか、菊地原が苦虫を噛み潰したような表情で話しかけてきた。
「早く向かってくれない。青春ごっこしてないでさ。っていうかいい加減拘束解いてくれない?」
「あぁ、悪い。忘れてた。」
やっと気づいたのか鴉は菊地原の拘束を解き、自由にして、俺達は荷物を片付け始めた。
「会議室まで案内するから着いてきてね。遅れたら置いていくから。」
「こいつさっきまで捕まってたくせに図々しすぎるだろ。」
「まあまあ、落ち着いて。まずは向かうことを優先しよう?」
「菊地原が生意気なのはいつも通りだからな。」
「それよりもどんなことを聞かれるんだろうか…。」
「おそらく何が起きたかの事情説明と注意喚起だと思うけどな。」
そんなこと話しながら廊下を歩く。今までこんなに楽しく話せる友達は出来なかった。サイドエフェクトでズルをしていたか。周りよりも強くなり、飽きられて、グループから外された。だけど、こいつらは違った。同じつらさを共有できる奴がいた。そんなこと気にしない奴がいた。ただの人の個性の一つだと言ってくれる奴がいた。だから俺はボーダーに入って良かったと思う。
「お〜い。鋼?どうした?置いていくぞー。」
「チッ。別に置いていっていいだろ。」
「も〜。影は素直じゃないんだから。」
「ツンデレだからな。」「うるせぇ!!」
「フッ。あぁ、スマン!今行く!」
この話ではゲートは住宅地に開いたことにしました。独自設定なのであまり気にしないでいただければ幸いです。