バズスティンガーたちが5体に増え、森は一気に絶望的な状況へと変わった。ビーとブルームが木々の間を高速で移動しながら矢の雨を降らせる。キズナレッドたちは追いかけつつも防戦一方、息もつかせぬ攻撃に追い詰められていた。
『レッド!お前たち…無事だったか!』
「悪いドラグ…1体も倒せなかったんだぜ…」
ドラグレッダーが巨大な身体で合流してきたキズナレッドたちを守るように立つ。しかし、その声には焦りが滲んでいた。
『こちらも同じ状況だ。いや、むしろ1体増えた。』
「さっき言っていたホーネットってやつか?」
赤い個体『ホーネット』が、残る4体を統率するように背後で構えていた。5体が連携し始めると、森全体が彼らの狩場と化したかのようだった。
『そうだ…しかし…俺の活動時間の限界が近い。』
『どうやら私もです。』
メタルゲラスが苦しげに声を漏らす。長時間の現実世界滞在が、ミラーモンスターである彼らの身体を蝕み始めていた。
「マジか…ん?ドラグ、バズスティンガーたちはまだ戦えるように見えるけど…」
『…俺たちよりも此方の世界に適応しているというのか!全員、撤退だ!』
ドラグレッダーの言葉に、誰もが息を飲んだ。6対5と数で勝っていた筈が、味方の2大戦力が撤退せざるを得ない状況。絶望が一瞬、龍騎たちの表情を曇らせる。
「そんな選択肢はもう無いんだぜ!」
しかし、キズナレッドだけは双刃剣を強く握りしめ、仲間たちを見回した。顔には疲労が色濃く残っていたが、仮面の奥の瞳はまだ燃えている。
『だが俺抜きでは…』
「ドラグがいなくても勝ってみせる!」
『…っ!?』
キズナレッドの声が、森に響き渡る。ドラグレッダーは一瞬言葉を失い、メタルゲラスも驚いたようにキズナレッドを見つめた。
『ドラグレッダー様。ここはレッド様に任せましょう。私たちは契約しただけのミラーモンスター…彼らの保護者ではありません。』
『…絶対に死ぬなよ。』
ドラグレッダーの声にキズナレッドは力強く頷き、笑みを浮かべる。
「あぁ、ちゃんと見といてくれよドラグ!」
その直後、ドラグレッダーとメタルゲラスはキズナレッドの手鏡からミラーワールドへと戻る。
「いくぞ皆!」
「「「あぁ!」」」
【SWORD VENT】
「剣なんて使ったこと無いけど…やってやるわ!!」
『コイ!ニンゲンガ!』
龍騎はドラグセイバーを手に取るとがむしゃらに振りながらホーネットへと迫る。
「借り物の力だとは分かってる!けど…それでお前らをぶっ倒せるならそれでいい!」
『ミラーモンスターナシデヒトリデクルカ!』
『ナンダッテイイ…アイツヲコロスノハオレダ!』
ガイはメタルホーンを盾にしつつ、ビーとブルームの矢の雨へと突っ込んでいく。
「トビー、一緒にいくぞ!」
「あぁ、レッド!」
『フタリデクルカ…!』
『ダガ、オレタチノホウガツヨイ!』
キズナレッドとインペラーは2人がかりでワスプとフロストに迫る。
木々の中で4対5の混戦とした戦況…それをドラグレッダーとメタルゲラスは苦々しくミラーワールドから見守っている。そして、数の差も有り、徐々に圧され始めていた。
『ソコダッ!』ビュンッ
「くっ…毒か…、けど、関係ねぇ!」
「ザッツ!」
メタルホーンのみで攻めていたガイだったが…ついに鎧の薄い所にビーの痺れ矢がかする。身体に痺れを感じたものの手を緩めることはない。しかし、それが長く持たないことは全員が理解していた。そして、ここで龍騎が動く。
「脳幹震わす、水精の絶叫…ウンディーネ・スクリーム!レッド!トビー!」
「「おうっ/分かったよ!」」ゲシッ
『グオッ!?』
キズナレッドとインペラー、ワスプとフロストの混戦している所へ水流を放ったのだ。龍騎の意図を理解したのかキズナレッドとインペラーはワスプを同時に水流へと蹴り飛ばす。その結果…ワスプはミラーワールドへと姿を消したのだ。
『ナッ…ワスプ!!』
『ヤバイヨ…ミラーワールドニハアノリュウガイルヨ…』
『リーダー、ドウスルノ?』
『アセルナ、セナカヲアワセロ!アイツラヲコロシテワスプヲタスケルゾ!!』
『『『アァ!!』』』
ホーネットの一声に集合したビー、ブルーム、フロスト。4体のバズスティンガーが背中を合わせ、巨大なバリアーを貼り…キズナレッドたちへと迫る。
「アイツらまさか…バリアーで僕たちを押し潰す気だ…」
「【FINAL VENT】でも弾かれるって話だったし…何か逃げ…」
「おいおい…あれが…あっただろ…なぁ、赤い兄ちゃん…」
「その通りだぜ!来い、ビクトリー・キズナバスター!」
キズナレッドは必殺武器を呼び出し…正面からの対処を選択した。迷わず龍騎とガイが自分のポジションへと付く。
「え?えーと…?」
「トビー、俺の後ろに来てくれだぜ!」
「掴むだけでいいから早く!」
「りょ、了解!」
「
【ぺっTURN!】
インペラーも同じく必殺武器へと手を取った。そしてキズナレッドは自身の絆装甲を窪みへと貼り付ける。
「「「束ねた絆で勝利を掴む!」」」
「え?えぇ?」
「ぶち抜け!」
「「「ビクトリー・キズナバスター!!」」」
「バ、バスター!!」
ドゴーーーン!!
インペラーが戸惑っていたものの必殺武器よりVの字のビームが飛ばされる。それはバズスティンガーたちのバリアーとぶつかり合った。
キュイィィィン!
「そんなっ!?」
「圧されてる!?」
しかし、バズスティンガーのバリアーの方が勝っており、徐々に徐々にキズナレッドたちへと距離を詰め始める。
「レッド!もっと威力を出せないの?」
「俺たちの絆エネルギーは充分だが…絆装甲1枚だとこの出力が限界だぜ…!」
「つまり、本来の力を出しきれてないってこと?でもこのままじゃ圧しきられるわよ!」
「なら…お前らだけでも…逃げろ…」
「アンタはどうする気よ!痺れで満足に動けないでしょうが!」
「くそっ!どうれば…!」
絶体絶命の状況の中で…不思議なことが起こった。龍騎、インペラー、ガイのVバックルより1枚のアドベントカードが光り…手元へと飛んできた。
「このカードは…?」
「分からない。けど【LINK VENT】って書いてあるんだぜ…!」
「でも…今は…」
「これに賭けるしか無いみたいだね!」
3人は自身のバイザーへとカードを入れる。
【LINK VENT】【LINK VENT】【LINK VENT】
その音声と同時にバイザー内のカードが光へと変わり…必殺武器の窪みへと収まった。
【ぺぺぺぺっTURN!!】
ドドドドゴーーーン!!
「ビクトリー・キズナバスターの出力が上がったんだぜ!!」
「これなら…!」
ピキッ…ピキピキ…バリンッ!!
『『『『ギャーー!!』』』』
Vの字ビームの威力が大きく上がり、バリアーが破壊される。その衝撃により、各バズスティンガーが散り散りと飛ばされた。
「止めだぜ!ターボ円陣・フォーメーションβ!」
「いくわよドラグレッダー!」サッ
「メタルゲラス……俺に力を…」サッ
「強化魔法…はあっ!」ダッ
【FAINAL VENT】【FAINAL VENT】
4人はそれぞれのバズスティンガーへと狙いを定めた。
「キズナ・ターボキック!!」ゲシッ
『グアァァ!!』
先ずはブルームへとキズナレッドの必殺の蹴りが当たる。
「おりゃ!はっ!はっ…はぁぁ!!」ブブン…バキッ!ゲシッ!
『ガッ!アッ…アァッ!』
次に魔法で肉体強化をしたインペラーによる剣の連撃と名もないメリケンサックのアッパー…そしてバイザーによる膝蹴りがフロストへと当たる。
『イドラよ、腰を下げ、左手と右膝を上げて飛べ!』
「やぁ!」ピョンッ
『身体を捻って蹴りの構えだ!』
「こうこう…こうね!」ぐねぐねっ
『はっ!』ボッ
「食らいなさい!!」
『ギャアァァァア!!』
そして、龍騎が背後より現れたドラグレッダーの指示に従い足を向けると、必殺技『ドラゴンライダーキック』をホーネットへと当てた。
「はぁ…はぁ…!」
『もう少しの我慢ですザッツ様。その武器の先端を相手に向け、地面と水平に…かつ私の肩に足を乗せるようにジャンプしてください。』
「あぁ…頼む…」ピョン
『いきますよ!!』ダッ
ドドドドッ!
『ガァァア!!』
最後にガイがメタルゲラスの指示により必殺技『ヘビープレッシャー』をビーへと当てた。
4人の攻撃が同じタイミングで各バズスティンガーへ当たる。それにより…
ドドドドカーーン!!!
4ヵ所同時に爆発が起き、それぞれから光の玉が現れ宙へと浮かんだ。
「やったぜ!」
『あぁ!これであと1体だ!』
「……え?ドラグ、そっちで倒してないのか?」
『何の話だ?』
『ドウホウヨ…アトハオレニマカセロ!』
バク…バクバクバクッ!
爆発が起きる中、唯一生き残ったワスプの姿がそこにあり、4つの光の玉を食らう。そして…
『オ…?オオオオオ!!』
「何だ?何が起きてんだ?」
『俺にも分からぬ…!何がどうなってやがる?』
「ワスプが…巨大化してる!?」
ワスプは身体全体が…特に顎が肥大化し、背中より4枚の翅も生え、周囲の木々を破壊しつつ空を飛ぶ。
『…我が名は『バズスティンガー・メガララ』。同胞たちの無念を晴らす者だ。』
新たなミラーモンスターへと進化した。