バス停にて、俺、カヨコ、セリナ、イオリ、ヒナ、シロコは他愛もない会話をしながらバスを待っている。とはいえ、俺とカヨコ以外はバスに乗る必要はなく、ただ雑談をするためだけについてきた。俺とカヨコが乗ってきた車のタイヤに弾が当たってパンクしたせいで、シャーレ行きのバスに乗ることになった。
イオリはしかめっ面になりながら頭を掻いて、期限が明日までのワークシートを見やる。「つまりマイナスで割るから…」
「プラスになりますね。」とセリナが微笑みながら説明する。ヒナは二人の様子を見守り、シロコは自転車に、俺は標識に寄りかかっている。
「本当、大変だったね。」カヨコはため息をついて、俺に少しの同情を向ける。「しばらくは先生も忙しくなりそう。」
“どうしてそう思うんだ?”
虚ろな目をしながらそう尋ねる。カヨコはそれに驚いて顔を背けて、俺もそれに合わせて視線を逸らす。
「カメラの故障、目撃者が口を開かずにただ恐怖に怯えるだけで…あまり良いとは言えないから。」
“痕跡は完全に消されていた。”
そう指摘してため息をつく。
“今、俺たちがやれることとしては警戒を怠らないだけだ。できれば、元々入っていた爆破作業の時に何か見つかるといいが。”
カヨコはうなずき、シロコが俺の隣に来ると、「先生」と声をかける。「明日も忙しくなりそう?もしそうなら私もシャーレの当番に行けるよ。」そう尋ねられて俺はため息をつく。
“忙しくはならないはずだ。”
シロコに向きながら俺はそう答える
“改めて、協力してくれてありがとう。助かった。”
「どういたしまして。」シロコはそう答えて、なぜか耳を動かしながらマフラーを整える。「サイクリングの途中だったから特に断る理由がなかった。」
“それでも助かった。”
そう言ってシロコの頭を撫でる。また耳が動き、俺は近づいてくるバスに目を向ける。ブレーキ音が甲高く鳴り、徐々に減速していけば、イオリは宿題を片付けて立ち上がり、俺に歩く。
「ありがとう、先生。」とイオリがため息をつく。「ごめん、急に行くことになって。何か妙に連邦生徒会が妨害してくるってアコちゃんから聞いて。すぐに大きな問題にはならないと思うが…」
“それを癖しないようにな。”
そう指摘して、イオリはため息をつく。
「アコにも伝えておくわ。」とヒナが割り込み、俺に向かってうなずく。そして立ち止まって、バッグから一冊のファイルを取り出す。「あと、先生にこれを。キヴォトスで起きている怪奇現象をまとめたもの。もしかしたら探している情報が見つかるかもしれない。連邦生徒会のものと照合するのもいいけど、中には向こうの…いやこちらの手にも負えないものもある。」
“ありがとう。”
そうヒナに伝えながらファイルを開ける。シロコがつま先立ちになって中身を覗き込もうとして、俺はファイル少し傾ける。
「これは風紀委員会と万魔殿が確認した公的な情報。それ以上でも──」と諦観したような顔を浮かべる。「それ以下でもないの。確固たる証拠がないから噂程度のものしかないの。」
“スランピア…”
そう呟きながら内容に一通り目を通す。
“まあ、色々と考えないといけない事が多いな”
バスが音を立てて停車し、ヒナとイオリが互いにうなずく。「それではまた。」とヒナが言ってイオリは手を振る。
俺も手を振り返して、シロコ、カヨコ、セリナと一緒にバスに乗り込む。その時にふと何かを思い出して、シロコに向かって尋ねる。
“シロコ、自転車はどうした?”
「ん」と彼女は答え、バスの前方に設置された自分の自転車を指さして、俺は納得してうなずく。
“分かった。”
そう答えながら、比較的空いているバスの座席に腰を下ろす。しばらくシロコとセリナと話をしていると、カヨコも加わる。そして特にトラブルもなく、頭にヘイローが浮かぶ少女たちと重武装した男は穏やかな午後を過ごす。
これが今の新しい日常となっているのが不思議だ。
それでも、何か違和感がある。
「あら、ユウカちゃん?」ノアはしげしげとホワイトボードを眺める会計に声をかければ、目を見開き、ペンを頬に当てる。幸い、キャップは閉めてある。
ボードには5318008と書かれ、その周囲には様々な方程式が書き込まれていた。全てこの数字を中心に据えており、ユウカは興奮した様子でノアの方に向き直る。しかしそれはすぐに疲労へと変わる。「あっ、ノア、今何時?」
「そろそろ学校が終わる時間です。」とノアは友人の元へ歩み寄りながら答えました。「一日中ぼーっとしながらこれを考え込んでいたんですか?」
ユウカはうなずき、ため息をつく。「そうなの。美しい数字って先生が言っていたけど…どうしても分からないの。」
「へえ…」とノアは考え込む。数学者ではない先生が"美しい数字"と口に出すのは興味深いことだ。一瞬だけその数字を見たが、すぐには分からなかった。だとしても、一日中ユウカはこの数字に考え込んでいたとは…
そしておもむろに、ノアは黒板消しを手に取ってホワイトボードを消す。「ノア──!」
「今日はここまで。まだやることがたくさんありますし、特にユウカちゃんは──」と意味ありげに笑う。「ここ一週間は先生と一緒に過ごしてきましたので、ゆっくり休むのはどうでしょうか?」
ユウカはため息をついて、うなずいて同意を示す。「わかった。少し休むとするわ…」そして再びため息をつく。「でもまた考え込むことになりそう…」
「明日一緒に考えましょう。」とノアは微笑みながら手を叩く。「数字に関することで助けを求めるのは久しぶりですね。先生に一目見てもらいたいのですか~?」とノアが言えば、ユウカはすぐに顔を赤くして否定しようとして、二人は帰路につく。
俺は椅子にもたれかかり、今シャーレにいる数少ない生徒であるカヨコの横で、俺は勝利の雄たけびを上げる。
“また書類仕事に勝ったぞ!”
「お疲れ様。」とカヨコは淡々としながらも、僅かに微笑んで、立ち上がってソーダ缶を渡す。「はい。記念の。」
“ああ、ありがとう、何記念なんだ?”
そう尋ねると、カヨコは肩をすくめる。
「お仕事お疲れ様記念。あと今朝のことも。それに先生はコーヒーもエナジードリンクもお酒も飲まないから、ソーダがいいかなと思って。」
俺はうなずきながらそれを受け取り、指でフタを開けて炭酸を一口のみ、息を吐く。
“ああ、それで合ってるぞ。何か飲むか?”
カヨコは首を振る。「大丈夫。あと…」と言葉を濁し、俺はソーダを一口飲む。
“弾のことか?”
そう尋ねて肩をすくめる。
“受け取ってくれ、今日は積極的に手伝ってくれたから、その報酬だと思ってくれ。まあ、君が受け取らなくても他が受け取ることになるだろうから。”
「あっ──」とカヨコは言葉を途切れさせるが、うなずく。「ありがとう。」
“どういたしまして。”
そう言って椅子にもたれかかる。
“それはさておき、必要以上に長く付き合わせることになってしまった。もう帰っていいぞ。適当にビルをぶらついてもいいし、居住棟の部屋を予約して寝てもいいし、便利屋の皆と一緒に帰ってもいいぞ。”
「ありがとう。」とカヨコは言ってため息をつく。「今日は本当にクタクタになった。またオフィスに戻るね。」
“それでいいのなら。”
マスクの下で微笑む。
“身体には気を付けてくれ。”
「先生も。」とカヨコはうなずいて出ていき、俺は彼女の後ろ姿を見送る。
最後に、シャーレの勤務スケジュールを確認し、顔見知りの部員を割り当てていく。その後、着替えと身支度を整え、クラフトチェンバーへ向かい、その中にある唯一のソファに腰を下ろす。
睡眠に身を委ねながら、明日はどんな一日になるのかと思いを巡らせる。
[作者あとがき]
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[訳者あとがき]
ちなみに5318008は数字をひっくり返すと
現時点ではChapter23までしか出ていないため、更新は一旦ここまでとします。
次のChapterが更新次第、投稿を行う予定です。
一年間、拙訳を読んでいただき本当にありがとうございました。
とはいえ3日にまた別の作品の投稿をします。