※更新お待たせしました。仕事に忙殺されたり構成の練り直しで時間頂戴してました。
※今後週一更新で投稿させて頂きます。最終話まで書けたら毎日更新します。
※エタらせる気はないです。マリトキのアニメのクオリティーも高いのでモチベーションは消えてません。引き続き気長に読んで下さると嬉しいです。
「胡蝶、お前は俺の後ろをついてこい。一瞬たりとも気を抜くなよ。」
「はい。冨岡さん。」
草木も眠る丑三つ時。私たちは郊外の廃病院の中を静かに歩いていた。
私は現在、産屋敷家直属の護り手の仕事着である上下黒スーツに蝶の羽織を着込んでこの任務に臨んでいた。
そして目の前を歩くのは、教員と護り手のお仕事を兼業している冨岡義壱さん。
彼は私の知る冨岡さんと瓜二つの顔立ちに全く同じ意匠の羽織を着込んでいるが、年齢はもうじき三十になるのだとか。
日頃は中高一貫校で体育教師をしてるらしいが、もうじき赴任先の学校に溺愛している甥の子が入学するらしく、今はそれをモチベーションに昼夜問わず休みなく働いてると仰っていた。
今は裏の仕事中なので、大正の頃の冨岡さんと見紛うような姿で歩いているが、何でも普段は上下青ジャージでホイッスルを片手に生徒指導をしている中々に独特な立ち振る舞いをしている方らしい。
大正の頃の冨岡さんもある意味かなりの変わり者だったけど、こっちの冨岡さんも負けて劣らずの方のようだと私は時折笑みを溢していた。
「はあ・・・お館様の頼みでなければこんな任務引き受けなったんだがな・・・」
「まあそう言わないで下さいよ冨岡さん。今回の任務、かなり厄介らしいですし。」
「確かに・・・護り手になって日の浅い胡蝶一人に任せられる任務内容ではないな。京寿郎さんも今遠征任務中で、不死川も本業で帳場が立ったからと多忙なようだし仕方がなかったのかもしれない。」
「そうなんですね。」
しれっと不死川さんの名前が出て来た。まだ一度も会ったことはないのでわからないが、この時代のあの人はどういった感じなのだろうか。
帳場が立つという言い回しからして、本業は警察関係者なのだろうか。
冨岡さんも不死川さんも、表では公僕のお仕事をされてるのに副業なんてやってていいのだろうかと、一瞬そんな人並みな考えが頭を過るが、そもそも護り手は裏家業のお仕事で公的には認知されていない職業だった。
ならいいのかと一人勝手に納得する。もしかしたら他にも私の知る人たちの子孫で大勢護り手と兼業しながら日夜頑張っているのかもしれない。
「では頼りにさせてもらいますね冨岡さん。一緒に悪い奴らをやっつけましょう。」
「・・・俺の仕事は依頼主を守ることだ。」
すると私たち二人の後ろを黙ってついて来ていたもう一人の人物が不意に笑い声をあげた。
「HAHAHA!! アンタら二人には世話にならねぇぜ!! 『真・銃使い』*1の残党共は、全部このレオ様に任せておきな!?」
そう高笑いと共に豪語しているのが、本日の任務で護衛対象者となっている銃使いの別府さんだ。
私はそんな別府さんに営業スマイルとも言うべき愛想笑いで適当にあしらいながら、この任務を引き受けた時の経緯を思い出していた。
「『銃剣使い』ですか?」
「そうだしのぶ。実はこの任務、少々特殊でね。『銃使い』組合から依頼されたものなんだ。」
「『銃使い』組合?」
私は産屋敷邸の和室にて、当主を引き継いだばかりの
「『銃剣使い』は『銃使い』組合前会長の白金マサト氏が、『真・銃使い』を結成するのを契機に引き入れた者でね。なんでも有馬家を破門になった『鉄使い』の出身者であることを買って強引に勧誘したとのことだ。」
「っ!!」
私は驚き目を見開く。有馬家と言えば五大名家随一の実戦闘に長けた使い手の人達だ。破門になったとは言え、そんな家の出の者が今回の仕事で関わってくる。私はその事実に内心激しく動揺した。
「元『鉄使い』であり、
そこで昇哉様は一度言葉を切る。ここからがどうやら本題のようだ。
「最近になって『真・銃使い』の数少ない残党が彼を頼り、雇い始めたことが明らかになったらしい。規模はまだ小さいものの、奴らは表社会で強盗紛いの活動もしており、現に私たち産屋敷家が表向きで経営している警備会社の仕事でも被害が出てしまうほど精力的に活動しているようだ。加えて彼らが近々表社会で大々的な仕事をしようとしている情報がリークされてね。いよいよ放ってはおけないと『銃使い』組合現会長の白金ミユキ史*2は社会秩序の為にこれの鎮圧に動いたんだ。彼女たちにとっては先延ばしにはできない悪しき因縁でもあったからね。」
「けど結果私たちに依頼が舞い込んだということは・・・その鎮圧はうまくいかず失敗してしまったということですよね?」
「ああ・・・残念なことに・・・『銃使い』組合の戦力では『銃剣使い』率いる『真・銃使い』の残党を殲滅しきれなかった。結果苦渋の決断で私たちに残りの仕事を依頼せざるを得なかったのだろう。」
「成る程・・・それで具体的に私は何をすれば・・・」
私が疑問の声をあげると同時に昇哉様は一枚の書類を差し出してくる。私はそれに目を通した。
「今回の任務は『銃使い』組合の『使い手』別府レオを護衛すると共に、『真・銃使い』の残党を彼と共に完全に殲滅することだ。
別府氏は他の組合員が根こそぎ負傷させられたと聞いて、『銃剣使い』を単独で仕留めに行くと言って鉄砲玉のように飛び出してしまったらしくてね。慌てて入院中の白金ミユキ氏から依頼の連絡があったんだ。通常の護衛任務とは勝手が異なるが・・・頼めるかな? しのぶ。」
「わかりました。私で良ければその任務お引き受けいたしましょう。ところで気になったのですが・・・」
「ん?」
私は依頼を引き受けると同時にある疑問を口にした。
「その別府さんは何故一人だけ『真・銃使い』残党の殲滅戦に参加しなかったのですか?」
「ああ、なんでも彼はその時山籠もりをして修行中だったらしいんだ。結果圏外で連絡が取れず、仕方ないから彼だけ置いて殲滅戦に向かったとミユキ氏は言ってたよ?」
「山籠もり? なぜそのようなことを。」
「ん~・・・何でも彼曰く『ヤベェ敵に噛みつける獣のハートをゲットするためだ』とのことらしいよ?」
「は???」
「アハハ・・・気持ちは凄く分かるよしのぶ。正直私も彼が何を言ってるのか初めはさっぱりわからなかったかな。」
「・・・その別府さんという方はだいぶ癖の強そうな御仁ですね。」
「まあ使い手なんて皆一癖も二癖もある人達ばかりだよ? 中には戦闘中にドラム缶風呂焚きだして湯舟に浸かりだす猛者も居るみたいだし。」
「すみません。ちょっと何言ってるかわからないです。」
私は呆れ果てる。成る程。どうやら下呂さんは使い手の中ではかなりまとも寄りに分類される人みたい。正直女性に免疫がなかったり遊具菓子にのめり込んでる程度、寧ろ可愛げがある方だと今では思えてくる。
「さて、とは言え護り手の経験が少ないしのぶ一人に任せるには少々重めの任務だからね。今回は特別に彼にも仕事を協力してもらうことにしたよ。だいぶ待たせてしまったが、さあ入ってくれ。」
すると昇哉様は不意に手を叩く合図を送る。すると部屋のふすまが開いてある人物が姿を現わす。
「お呼びでしょうか。お館様。」
「と、冨岡さん!?」
「・・・誰だお前は。」
その場に現れたのは、私が大正時代で何度も顔を合わせた冨岡義勇その人だった。しかし、
「ああ、済まないしのぶ、義壱。君たちの顔合わせは初めてだったね。私から説明しよう。」
そうして昇哉様から私のこと、義壱と呼ばれた冨岡さんのそっくりさんの説明がなされる。彼は私の知る冨岡さんのひ孫のようで、隔世遺伝なのか容姿がそっくりとのことらしい。
上下黒スーツ姿とは言え、あの半々羽織を着込んでいるせいで私のよく知る冨岡さんを幻視してしまうくらいにはよく似た姿形をしていた。
昇哉様の説明が一通り終わると、やがて冨岡さんは私に視線を移す。
「大正時代からタイムスリップ? そんな非現実的なことがあり得るのですか?」
「義壱。君が驚くのも無理はない。けど本当のことなんだ。今回の任務では彼女と同伴しなさい。しのぶは腕っぷしこそ君達と同格かそれ以上だが、護衛任務についてはまだ経験が浅いからね。今回の仕事ではしっかり面倒を見てあげるんだよ?」
「・・・お館様の頼みとあらば・・・」
そうしてその日はお開きとなった。数日後、お館様の鎹烏による捜索の下、あっさりと『真・銃使い』残党の根城は見つかった。
私たちはそのことを今回の護衛対象である別府さんに伝え、現地に来るよう促した。
「アンタが別府か。武装した集団と元五大名家の『使い手』相手に一人でカチコミに行こうとするなんていい度胸してるな。命知らずにも程がある。」
「WHAT? ミユキ姐が協力を頼んだ連中ってアンタらのことか? 言っておくがこれは俺が
奴らのアジトを調査し教えてくれたことについては有難ぇけどよ、もし俺の敵討ちを邪魔するってんなら先にテメェらから片付けるぜ?」
「やってみろ。俺が防御に徹すればライフルの弾とて防ぎ切る。」
「まあまあ冨岡さん。別府さんもそう邪見にしなくてもいいじゃないですか。そもそもそのミユキさんが別府さんのことを心配してこうして私たちに依頼してきたんですよ? だから皆で仲良くしましょうよ。」
現在私たちは、産屋敷家の情報網により場所が明らかになった、『真・銃使い』残党が隠れ住む郊外の廃病院前に集合していた。
現地の廃病院の傍には一人、別府さんらしき人が拳銃の手入れをしつつ突入の準備をしていた。
彼は金髪のオールバックに黒のワイシャツとブーツ、ベージュのベストとズボンを着用しており、腰には銃弾や弾薬を格納してるであろうベルトとホルスターが見て取れた。
如何にも銃撃戦を想定した装いだった。大切な人たちを傷つけられて冷静さを欠いてるように見えるものの、戦闘の準備は抜かりないようだった。
最初冨岡さんが持ち前のバットコミュニケーションをかますものだから、すかさず私がフォローに入った。すると別府さんは私の存在に気づき一度大きく目を見開いた。
「HEY! なんでこんな危険な場所にレディが居るんだ? まさかとは思うがアンタもこの依頼で派遣された『護り手』なのか?」
「はい。私は胡蝶しのぶと言います。つい最近、産屋敷家直属の『護り手』になった者です。以後お見知りおきを。」
「WHAT’S!? 胡蝶だって!? アンタまさか・・・相棒のフィアンセかっ!?」
「ん? 相棒?」
すると別府さんは途端に息を吐き、何故だか決め顔で私に微笑みかけてくる。
「紹介が遅れたぜ! 俺は別府レオ! アンタのフィアンセとは何度も一緒に死線を潜り抜け、背中を預け合った旧知の仲だ。
もし式を挙げる時は遠慮なく招待状を送ってくれ。誰よりも早くはせ参じてやるぜ? BANG!!」
色々ツッコミたいところがあるのだが、ひとまず私は一番気になる部分だけを質問することにした。
「え~と・・・もしかしてその相棒って・・・下呂さんのこと言ってます?」
「YES!! そうだぜ!! 因みに相棒は元気にしてるか? 以前巨大ロブスターを共に命懸けでぶちのめした時以来会ってねぇからな!!
しかしあの時は本当に死闘だったぜ!! 相棒がもう少しでやられるところをこのレオ様が間一髪で援護射撃して・・・」
「『銃剣使い』はあの廃病院の中だな? お前は話が長いみたいだから俺が代わりに殲滅して来てやる。夜が明けるまで胡蝶相手に自慢話でもしていろ。」
「WHAT’S!? おい待てふざけんな!! これは俺の敵討ちだぜ!? 横取りは許さねぇ!!」
「うるさい。俺は早く帰って表の仕事の準備がしたいんだ。無駄話はするな。時間が勿体ない。」
そう言って冨岡さんはてちてちと廃病院の中に入ってしまった。別府さんも憤慨しながら後を追うので私も苦笑いしながら続いていく。
こうして冨岡さんと私の共同任務が始まったのだった。
続く
以下おまけ:
「HEY! そういや相棒はアンタと婚約した訳だがよ! 今ハニーは何してるんだ? もし今フリーならまためげずにプロポーズしにいくぜ!! BANG!!」
「ハニー??? えっと・・・一体誰のことを言ってるんですか? そもそも下呂さんの近くにそんな女性っていましたっけ?」
「HAHAHA!! ハニーって言ったらMs.城崎に決まってるだろ!? 俺はハニーの為に人生捧げるって決めてんだ!! BANG!!」
「あの・・・城崎さんは男性ですよ? もしかして知らなかったんですか? だとしたら大変にお気の毒です・・・」
「HAHAHA!! ノープロブレムッ!!!! 男だろうが女だろうが構わない・・・大事なのはでっけぇLOVEを胸の内に抱えてるかだぜ!? BANG!!」
「え・・・それは一体どういう・・・」
「別府。少なくとも日本では同性婚は法的に認められていない。男同士で本気で結婚したいのなら外国籍を取って海外のLGBTQのパートナーを探した方が早い。その城崎とやらは諦めろ。」
「WHAT’S!? 勘違いすんなよ!? 俺は何も男が好きな訳じゃねぇ!! ハニーだからこそ俺のハートは鷲掴みにされたんだ!!!! 誰に何て言われようとこの気持ちは変わんねぇ!!!!」
「そうか。なら残念だが結婚は諦めろ。どうしてもと言うならその城崎とやらを説得して二人で外国籍を取って向こうで叶えるしかない。」
「HAHAHA!! ならやってやるぜ!! 寧ろでっけぇ困難が二人のLOVEをより育てるってもんだ!! BANG!!」
「あの~・・・もの凄く聞きにくいんですけど、城崎さんは何と? そもそも交際の申し込みについて返答とかはあったんですか?」
「YES!! 初めて求婚した時、年収ピー千万無いと落とせねぇぞって言われたぜ!! だから俺はハニーに振り向いてもらうためにビッグになっていつかまた迎えに行くんだ!! BANG!!」
「え~と・・・つまりそれは別府さんが一方的に好意を抱いているだけですよね? 見込み無しの相手に拘るより他の方に切り替えた方が成婚まで早いんじゃ・・・」
「・・・胡蝶。アンタは本気で心に決めた相手のことを、そう簡単に諦められるような奴なのか?」
「・・・っ!!」
「俺はハニーが良いんだ。他の誰でもない。ハニーとさえ心を通わせられたら俺は今持ってるもん全部捨てたっていい!! 胡蝶はそんな風に思った事がねぇのか?」
「・・・・・・ありますね。何なら私も一度全てを捨てた身ですから・・・」
「WHAT?」
「ふふっ。わかりましたよ。そこまで別府さんが本気ならもう何も言いません。どうぞ好きになさってください。
でも城崎さんのハートを掴むのは並大抵のことではありませんよ? 結婚詐欺師もしてたくらいですし目だってかなり肥えてると思います。
そもそもあの人は今でもきっと下呂さんのことを・・・」
私はそこまで言いかけて口を噤んだ。別府さんは怪訝な様子で私の様子を見ている。私は言いかけた言葉を一度飲み込んで目線を落とした。
「・・・何でもありません。そもそもどの立場で言ってるんだって話ですし。下呂さんと婚約した身の私が城崎さんの胸中を推し量ろうなどと・・・」
「WHAT? 胡蝶は何が言いてぇんだ?」
「・・・兎に角・・・城崎さんの心を奪うのはこれ以上なく難しいってことです。苦労しますよ?」
「HAHAHA!! ノープロブレムッ!!!! 言ったはずだぜ!! 寧ろでっけぇ困難が俺のLOVEを育てるってな!! BANG!!」
「そろそろ静かにしろお前ら。『真・銃使い』に逃げられるだけなら兎も角不意打ちでもされたらどうする? 俺は狙撃くらい難なく凌げるがお前らは無理だろう?」
「私も躱すだけなら何とかできると思います。」
「レオ様も余裕だぜ!! なんせ俺は相棒と何度も肩を並べて強敵と戦ってきたからな!?」
「そうか。ならせいぜい殺されないよう努めることだ。お前に死なれると任務失敗になる。お館様の頼みには応えねばならん。」
「冨岡さん。私も居ますから頼ってくださいね? みんなで力を合わせればきっと大丈夫です。」
そうして私たちは『真・銃使い』のアジトへと足を踏み入れていった。
構成をあれこれ練り直した結果、本章は『銃剣使い』というオリキャラとバトる話になりました。現状三話+α構成の予定です。当初は桃壱君や鳴子が敵として登場するストーリー展開も考えたんですけど、現状しのぶさんが敵対する理由がないんでボツにしました。本章が終わり次第、いよいよ本作の佳境に移りたいと思ってます。
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