鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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しのぶさん視点です。個人的にはお姉さんエミュしてるしのぶさんよりも素のやんちゃで怒りっぽいしのぶさんの方が好みです。少数派かもしれませんが・・・


18話 片羽の蝶、亡き姉の影に没頭する

「アハハ! さっきのお化け屋敷楽しかったわね! 姉さ・・・じゃなかった! カナメ!」

 

「そうね~! グルグル巻きのミイラ可愛かったわ~。」

 

「確かに! でもあれじゃ全く怖くないわよ! どうせならもっと血塗れにしといた方がきっと凄みが出るわ! 姉さ・・・じゃなかった! カナメもそう思わない!?」

 

「まあ私は可愛い方が好きだけどね~?」

 

 

私たちは遊園地をこれでもかと言うくらい満喫していた。

 

加えて私のテンションは徹夜明けすらも遥かに凌駕するくらいに爆上がりしていた。

 

なぜなら死に別れた姉さんの生き写しとも言えるカナメとの時間は、私にとって何事にも代えがたいものだったからだ。

 

まるでこれまでの我慢や寂しさを埋めるように、童磨に奪われた姉さんとの時間を取り戻すかのように、私はカナメと過ごす時間に没頭していた。

 

恐らく今まで生きて来た中で一番歓喜してる。故に最高のひと時を周囲の目も憚らずひたすらに味わっていたのだ。

 

 

「うぅ・・・僕とカナメさんの初デートが・・・」

 

「災難だったな竈門。」

 

「冨岡先生・・・誰のせいでこうなったと思ってるんですか・・・そもそも先生がしのぶさんを連れてこなければ今頃僕らは二人で・・・」

 

「とは言え胡蝶は凄まじいな。もう蝶野しか眼中にないんじゃないか? それに胡蝶の奴・・・過去最高にハイになってる。」

 

 

なんだか遠目に呆れる視線を感じるが私はそれを一切気にしていなかった。

 

今はただ、姉さんそっくりのカナメと過ごせることに感謝を。今は彼女と居られる事実に歓喜が溢れて止まらない。

 

 

「さて、そろそろ俺は失礼する。早く帰って夜間の仕事の準備をしなければならない。竈門もいいところで切り上げろ。」

 

「冨岡先生・・・公務員なのに副業やってていいんですか? 学校にバレるとまずいんじゃ・・・」

 

「頼む竈門。内緒にしておいてくれ。俺はどうしても甥の大学費用の為に金を貯めなければならない。」

 

「冨岡先生の甥ってまだ小学低学年ですよね? 少々気が早いんじゃ・・・」

 

「何を言っている? 学費と言うのは馬鹿にならない。義一が何不自由なく学生生活を満喫できるよう、今のうちに貯めておかなくては・・・」

 

「あ、冨岡さん。まだ居たんですか? 何か用事あるならもう帰っていいですよ?」

 

「おい、胡蝶。鮭大根の件忘れるなよ? なぜわざわざ俺が休日を返上してまでお前についてきたと思っている? いいな? 忘れたら只では済まさんぞ?」

 

「わかってますよ冨岡さん。それじゃお疲れ様です。さよなら~。」

 

 

私が適当に冨岡さんをあしらうと、彼は鮭大根の恨み言を呟きながら一人去っていった。私はそんなことはすぐに忘れて隣で笑う彼女に振り返る。

 

 

「ねえカナメ! 次はどこに行く? 私、カナメが行きたいところならどこにでも行くわ!」

 

「そうね~。でもそろそろ炭彦君の相手してあげないと彼拗ねちゃうし・・・」

 

 

ふと私はその言葉に反応し一人取り残される炭彦君を見る。彼はバツが悪そうにその場で立ち尽くしていた。

 

 

「いや・・・いいよカナメさん・・・カナメさんはしのぶさんと過ごす方がきっと楽しいだろうし・・・」

 

「あら? そんなことないわ。私、炭彦君とも一緒に居たいわよ? 私、貴方が行きたいところに行きたいわ~。」

 

「え・・・ホント? 僕邪魔じゃない?」

 

「も~! 邪魔な訳ないじゃない! しのぶは意気投合したお友達で、炭彦君は私の恋人なのよ? 私、貴方とも一緒に過ごしたいわ~。」

 

「っ! カナメさん! 僕嬉しいよ! じゃあ早速あれに一緒に乗ってみたいんだ! どうかな?」

 

 

彼が指さしたのは、遊園地内でも一際大きな観覧車。それを見て私もカナメもぱちくりと瞬きする。

 

 

「あら? いいわね~。じゃあ三人で一緒に乗りましょう?」

 

「そ、そっか・・・そうだよね・・・三人だよね・・・仕方ないか・・・」

 

「だってしのぶ一人だけを仲間外れなんてできないわ~。乗るなら三人一緒よ。ダメかしら?」

 

「いや、ダメじゃないけど・・・うんいいよそれで・・・」

 

「もう! そんなに拗ねないの! また来た時に二人きりで乗ってあげるから!」

 

「うう・・・カナメさんとの初めてが・・・」

 

「炭彦君? 今何て? まさかとは思うけど姉さ・・・じゃなかった。カナメと二人きりの個室でいかがわしいことでもする気? もしそうなら今この場で・・・」

 

「ちょっ!? 違う違う! 違うよしのぶさん! だからそんな怖い狂犬みたいな目で睨まないで!?」

 

「そう。ならいいわ。行きましょう。」

 

 

私は一瞬炭彦君があわよくば姉さ・・・じゃなかった。カナメにそういうことをしようとしたのでは勘繰ったが、どうやら私の思い過ごしだったようだ。

 

気を取り直して私たちは観覧車の入場口まで歩いて行く。すると突如炭彦君はカナメの手を握り、震えながら私に啖呵を切る。

 

 

「い、言っておくけど! カナメさんは僕の彼女だからね! しのぶさんには渡さないから!」

 

「はあ・・・? 炭彦君・・・貴方は何を言って・・・」

 

「もうっ! しのぶやめなさい! 炭彦君もそんなこと言わないの! みんなで仲良く楽しもうとは思わないの?」

 

 

私は炭彦君の言葉に一瞬青筋を浮かべそうになったが、即座にそれを収めた。姉さ・・・じゃなかった。カナメから宥められ冷静になれたからだ。

 

確かに炭彦君の言い分もわかる。彼は姉さ・・・じゃなかった。カナメとお付き合いしている恋人なのだ。

 

いくらカナメが姉さんにそっくりの生き写しだとしても、本来なら私は赤の他人。どうこう言う筋合いはない。

 

けどどうしてか、無性に姉さ・・・じゃなくてカナメに他の男が寄って来るのが許せない自分がいる。

 

これは頭でどうこう考える問題ではなく、骨の髄にまで染みついた条件反射のようなものだった。

 

 

「わあ! 観覧車なんて幼稚園の時にお父さんに連れられて来た時以来だわ! ねえ! 凄いわよ二人とも! 都内の景色が一望できるわ~!」

 

「わあ! 凄いねカナメさん!」

 

「・・・凄い・・・」

 

 

私は現代の街並みの様子を見て改めて驚く。私が生まれ育った明治大正の街並みとは似ても似つかない。

 

高層ビルにアスファルトで整備された道路。無数の信号機と数えきれない程の自動車と歩行者の群れ。そして時折空を飛んでいく飛行機。

 

 

「あらあら、どうしたの? しのぶは観覧車乗るの初めて?」

 

「・・・うん・・・初めてよ・・・姉さん・・・」

 

「あ! また姉さんって言ってる。こらしのぶ~? 私は貴方のお姉さんじゃないわよ~? もう、そんなに似てるのかしら・・・」

 

「・・・うん・・・まるで生まれ変わりみたい・・・本当に・・・嘘みたいに・・・」

 

 

私の頬に再び一筋の涙が伝う。観覧車のゴンドラのガラスに張り付く私は、泣き顔を見せたくなくてそのまま振り返らずに外を眺め続けた。

 

 

「ねえねえ! 折角だからしのぶのお姉さんのお話聞かせて? しのぶがそんなに大好きなお姉さんなら、きっととっても素敵な人だったってことよね?」

 

「・・・うん・・・本当に素敵で・・・立派で・・・自慢の姉だった・・・だけど・・・っ」

 

「あっ・・・ご、ごめんなさい・・・私ったら・・・」

 

 

私は嗚咽を漏らしそうになるが必死に堪える。その様子をカナメも炭彦君も心配そうに見守る。

 

 

「けど姉さんは、あの日、あいつに、酷い目に遭わされて・・・夜道で身体を斬り裂かれて酷いキズをつけられて、痛かったはずなのに、無念だったはずなのに・・・それなのに私には普通の女の子として生きろってそう涙を浮かべたまま・・・っ」

 

「・・・えっと・・・しのぶさんのお姉さんは事故じゃなくて他殺だったの? その時の犯人は結局どうなったの?」

 

 

心配の視線を向けてくるカナメとは対照的に、炭彦君は引っかかった部分について質問してくる。私はつい感情任せに厄介なことを口走ったなと自戒した。

 

 

「ええ・・・そいつはもういません・・・ちゃんと裁きを受けこの世を去りましたから。」

 

「つまり、死刑になったってことかな? なら良かった。もしそいつがまだ生きていたら、見た目が良く似ているカナメさんを狙ってたかもしれないし。」

 

「そうね・・・ストーカー被害に遭った挙句、私、殺されてたかもしれないわ・・・」

 

「・・・かもしれませんね。」

 

 

私は落ち着いてきたので再び二人に向き直りゴンドラの中で腰掛ける。正面には二人が顔を見合わせていた。すると炭彦君が意を決してカナメの手を握りしめる。

 

 

「でもっ! もし仮にそんな奴がカナメさんに近寄ってきても! 僕が命懸けでカナメさんを守るよ! 約束する!」

 

「えっ!? す、炭彦君・・・/// いきなりそんな・・・///」

 

「カナメさん・・・///」

 

 

すると二人はまるで私が目の前にいることを忘れ去ってしまったかのように、二人の世界に没頭し、互いに見つめ合い距離を徐々に縮めていく。二人とも顔を朱色に染めて互いに少しずつ近づいて行きそして・・・

 

 

「え? ちょっと待って。二人とも何してるの? 私の目の前で一体何する気っ!?」

 

 

私も二人に釣られて顔が真っ赤になる。慌てて二人の間に入って距離を引き離し、私は全身から大汗を浮かべる。

 

 

「あ、ご、ごめんなさい! つい二人きりだと錯覚しちゃって・・・!」

 

「わ、私もごめんなさい・・・炭彦君の言葉でつい・・・///」

 

「ついじゃないっ!!!!」

 

 

私は癇癪にも似た大声を出す。そしてそのまま炭彦君に掴みかかる。

 

 

「私言いましたよね!? 姉さ・・・じゃなかった! カナメに手を出したらその時は許さないって!!」

 

「えぇ!? そこまで言ってたっけ!? そもそもなんで僕、しのぶさんにそんなこと言われなきゃならないの!?」

 

「だってそれは私が姉さんの・・・っ!」

 

 

ふとそこで私は我に返る。違和感。底知れぬ違和感を感じる。一体なぜ・・・

 

 

「あら? そう言えばさっきから全然ゴンドラの位置が変わってないわ。どうしてかしら?」

 

 

カナメがそう疑問の声を上げた瞬間、私たちの乗るゴンドラの天井から『ドンッ』と何かが飛び乗ったような音がした。

 

 

「きゃっ!?」

 

「わっ!」

 

 

二人が驚きの声を上げる中、私は静かに拳を握り、ゴンドラの天井を殴り叩いた。するとその音に反応するかのように、上から聞き覚えのある声がした。

 

 

「騒ぐな。別に取って食おうって訳じゃない。暫くの間、この場所で待機してもらうだけだ。『あの人』から許可が出たら帰してやる。だから悪く思うなよ?」

 

「なっ!? どうして貴方がこんなところに・・・!?」

 

 

私は窓に張り付くように頭上を見上げてをその人物を確認した。そこには薄赤色に淡く光る両の瞳と十字に切った瞳孔の目で見下ろす、『銃剣使い』がゴンドラの上で立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




しのぶさんのシスコン描写書けて大満足です(え)。
さて、冗談はさておき今話で竈門家の縁壱編終了です。次回より人形使い編に入ります。そろそろ原作時間軸進めないと完結しなさそうなのが理由です。また、人形使い編を最終章に据えるかは現在検討中です。

次回7/25(土):9:00投稿予定です。もし宜しければ感想、高評価、お気に入り登録よろしくお願いします。
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