アークナイツ サイドストーリー ~源野落陽~   作:丸・ぱそ男

17 / 19





「ようガンマンさん」

 黄金掘りから酒場へと戻って来たガンマンはカウンターの向こうでグラスにビールを注ぐ猫耳を生やしたマスターと、既に引っ掛けて顔を赤くした犬耳の老人に出迎えられた。
 座席には座らずにカウンターに凭れ掛かり、差し出されたビールへ口を付ける。

「今日も収穫は無しかい?」

「ああ。爺さんところの息子の具合はどうだ?」

「フランクの奴ならお陰様で大分快復してな。今はリハビリがてら駄獣の世話をさせてるよ」

 酔いの回った赤ら顔に笑顔を浮かべた老人はジョッキを呷り、はたと表情を曇らせて言った。

「しかし、かれこれ一カ月以上も金鉱を掘り返しているが、黄金なんて本当にあるのかねぇ」

「頼(・)ん(・)で(・)た(・)件(・)はどうだ?」

 彼の疑問には触れず、出されたビールのグラスを手に取り、酒場のホールの真ん中で鳩らしき羽を生やす少女と立ち話するピンカートンのご同業の女たちを暫し眺めてから、ガンマンはマスターと老人を一瞥した。

「ああ……その件ならコレだよ。ほら」

 マスターがゴソゴソとカウンターの下に手を忍ばせ、取り出した一冊の手帳をカウンターへ置いた。
 ガンマンは何も言わずに手帳を開き、目を通す横でマスターがカウンターに両手を着いて補足を入れる。

「過去の住民名簿は保安官の事務所で保管してるもんで、ジルに頼んで引っ張り出してもらってな。そこからあんたの要望に沿う名前をある程度俺の方で目星を付けて、墓地にはマークの方で確認してもらったよ」

「おうよ。特定の名前に該当しそうな墓石の位置。それから古い墓石の名前を、その手帳に書き留めてあるよ」

 説明を耳に入れながら一通り目を通し終えたガンマンは手帳を閉じ、持っていたグラスへ口を付けてビールを口に含んだ。

「……上出来だ。礼を言うぜ」

「しかしガンマンさん、あんたも変な人だ。一体何だって町の墓地に誰が眠ってるかなんて気にするんだ?」

「そうだな」

 ガンマンは怪訝な表情を浮かべるマスターと老人へ振り向き、真っ直ぐに見据えると口の端を吊り上げた。



「ソイツに黄(・)金(・)の(・)在(・)処(・)を(・)聞(・)く(・)た(・)め(・)、とか」



「何だって?」

「何、冗談だよ」

 手帳を軽く振って見せてから嘯いたガンマンは怪訝そうな二人とビールのグラスを置いてけぼりにして、カウンターから身を離して二階へと続く階段へと足を向けた。
 しかしガンマンは足を止め、先程ピンカートンのご同業たちがいた方へ振り向く。そこには保安官の娘の姿だけがあった。

「よう嬢ちゃん」

「こんばんはガンマンさん。何か用かしら?」

「ピンカートンの二人組はどこ行ったんだ? さっきは嬢ちゃんと話してたと思ったんだが……」

 会釈をした彼女へ帽子の庇を軽く下ろしながらガンマンは周囲を見渡すが、酒盛りに興じる住民の姿しか見えない。

「リスカムさんとフランカさんならお風呂よ。だって坑道での黄金探し埃塗れでしょ? お風呂くらいは沸かしてあげないとね」

「そうか……嬢ちゃん、あの二人に言付けを頼めるか?」

「良いけど、何を?」

「後で俺の部屋に来るように伝えてくれ」

「? 分かったわ」

 立ち去ろうとしたガンマンだったが「そうだ」と少女に呼び止められ、片眉を吊り上げながら振り返る。

「フランカさんが言ってたわ。あなた、黄金を探すお手伝いをあんまりしてあげてないんでしょ? 力仕事をリスカムさんたち任せっきりはどうかと思うわ」

 両手を腰に当てて苦言を呈した少女の小言に、ガンマンは何も言わずもう一度帽子の庇を下げて応じた。
 階段を上がって充てがわれた部屋へと戻り、ドアノブへ椅子の背もたれを噛ませてから鍵を閉めたガンマンはポールハンガーへ帽子とポンチョを放るように掛けると、シャリシャリとブーツの拍車が微かに回る音を立てながら部屋の隅へと向かう。

 荷物置きと化しているそこにしゃがみ、ガンマンは木箱を持ち上げた。縦一フィート(約三十センチメートル)、横ニフィート(約六十センチメートル)、高さ七インチ(約十八センチメートル)程の大きさをした、重厚な二つの木箱をそれぞれの脇に抱えてテーブルへと移動させる。

「依頼の品に手を出すのは気が引けるが……」

 ガンマンは独りごちると、それぞれの木箱に厳重に施された留め金を外して上蓋を開き、中に納められたものを見下ろした。







第十五話 戦略大作戦

 日が昇るよりも早い時刻。薄暗い部屋の中、リスカムは神妙な面持ちで身支度を整えていた。

 防弾ベスト、これまで使わずに済んできた予備の弾薬、レイジアン工業製(ストライカー・シリーズ)のその他諸々の装備を身に着ける。といっても、装備品の点検と着用は常日頃から行っているが、今日は不備が無いかを入念にチェックする。

 フランカも自分同様、黒を基調としたストライカー・シリーズに身を包んだ後、鞘から愛用するテルミットレイピアを半ばまで抜き出し刃に曇りがないかを確認していた。

 相棒から視線を一度離し、最後にホルスターから愛用の拳銃を手に取り、掌の重みを意識しながら外観を確認。弾倉を抜き銃弾が込められているのを把握すると弾倉を銃把(グリップ)の底へ叩き込み、遊底(スライド)を引いて薬室(チャンバー)へ初弾を装填する。

 

「フランカ、準備は?」

 

 リスカムが問いかければ応じる様に、彼女は目元に持ち上げていたレイピアを鞘へと収めた。

 

「問題ないわ」

 

 キンッ、と心地良い納刀の残響音の中で瞳に静かな闘志を秘めたフランカへ頷きを返し、扉の横に立て掛けていた盾を手にリスカムは部屋を出る。

 階段を降りれば、人気のない酒場のホールのカウンター席で彼は一人、細巻き葉巻を呑んでいた。

 

「すみません、待たせてしまいましたか?」

 

「てっきり寝坊したのかと思ったぜ」

 

「あら? 女の子の準備は時間が掛かるものでしょう?」

 

 こちらへ背を向けたまま皮肉を述べたガンマンへフランカが軽口で応じれば、彼は肩を竦めるだけで何も言わずに立ち上がる。

 ポンチョの下に覆われたガンベルトの位置を調整するように腰元へ手を伸ばし、咥えた細巻き葉巻を口端へ追いやるとガンマンは見下ろしながら告げる。

 

「そんじゃあ、行くか」

 

「ええ──向かいましょう」

 

 頷いたリスカムは気を引き締めるように鋭く踵を返し、酒場の入り口へと歩んでいった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

「あ"あ"〜……生き返るわ"ぁ"〜」

 

 『ミランディージャ』の一階奥に併設された浴場。湯に浸かったフランカが喉の奥から絞り出したような呻きが、体を叩くシャワーの音越しに鼓膜を叩いたのでリスカムは思わず突っ込みを入れてしまう。

 

「ちょっと止めてよ。おじさん臭い」

 

「こんくらい良いでしょ〜。坑道の奥まで行ってはツルハシ振るっては、また別の坑道へってその繰り返しで埃と汗でベットベトなのよ? 疲れやら何やらが抜けていくってワケ。大体リスカムだって体中汚れまみれなのは一緒じゃないの」

 

「それはそうなんだけどさ……」

 

「ジルちゃんには本っ当に感謝しかないわぁ〜」

 

 それには全面的に同意だった。ジルは黄金探しで自分たちが疲れているだろうからと、フェリーンのマスターに許可を取り、酒場の風呂場にお湯を張ってくれているのだ。

 山脈の麓という地形もあり水源には困らないこともそうだが、毎日の汚れを落として一日を終えることが出来るのは、一重に彼女の心配りのお陰である。

 そのジルの善意にあまり甘えないよう釘を差そうとして、湯気の向こう側で溶けたような表情のフランカが目に入り、流石のリスカムも小言をいう前に思わず苦笑してしまった。

 

「フフッ、ちょっとだらしなさすぎじゃない?」

 

「いーじゃなーい。普段の外勤任務ならお風呂に入るなんて贅沢、絶対に出来ないんだもの」

 

「はいはい。ホラ、私も入るから詰めて」

 

 否定はせず、バスタブの縁に両腕を乗せて凭れ掛かるリラックスしきったフランカを押しやってリスカムもバスタブへと浸かる。

 浴室に設けられた雲獣足のバスタブは基本一人用を想定しているので、自分が身を沈めた分のお湯が溢れ出る。

 その音を耳に入れながらリスカムは横並びに浸かる──ただし反対方向を向いている──フランカの額へチラと視線を送った。

 

「その様子なら傷はもう大丈夫そうだね」

 

「本当、傷も大方塞がって、お風呂にも入れるようになってウォルツ先生の処術のお陰でね」

 

「うん。後遺症も無さそうで本当に良かった」

 

 そこで会話が途切れ、無言の時間が出来る。

 

「…………」

 

「…………」

 

 湯気で白く靄掛かった視界。少しの身動ぎで湯船の水面が揺れ、肩まで浸かった体からじんわりと疲れが抜けていく。

 心地良さに心が安らぐリスカムだったが、今この時もナイジェラ一味に拘束される住民たちが金鉱に残っていることが嫌でも脳裏を過ぎった。

 

「……リスカム」

 

「っ、何?」

 

 フランカの不意の呼び掛けに肩が跳ね上がる。

 胸の内を悟られたかと思わず身構えたが、続いた言葉は違っていた。

 

「心配かけさせたわね」

 

「え?」

 

「あたしのワガママで開拓地の端の端まで来て、そのせいで遭難しかけて、怪我したあたしを見捨てずに運んでくれたのよね」

 

 リスカムは思わず振り返ってフランカをマジマジと見つめる。斜め後ろから覗く彼女の表情には申し訳なさからなのか、普段のあっけらかんとしたものとは違い、どこか気落ちしているようにも見える。

 

「まったく、受け身も取れずに怪我するなんて……マヌケにも程があるわね。あたしも」

 

「それは違う!」

 

 珍しく自嘲するフランカの姿に、リスカムは思わず声を張り上げた。

 

「リスカム……?」

 

「ここまで来るのには私も同意したでしょ? つまり私にも遭難した責任があってフランカだけのせいじゃない。それに、あの時私が運転をミスしてなければフランカが怪我することもなかったんだし──」

 

「リスカム。見えてる見えてる」

 

「……ともかく! らしくない態度は止めて。調子が狂うから」

 

 興奮して無意識に立ち上がってしまったことを指摘され、リスカムは素直にそのまま湯に浸かり直す。

 

「それにさ。経緯はどうあれ、目的地には到着到着出来たし、フランカが任務の後にここへ来たいって言ったから、こうして苦しんでる町の人たちに手を差し伸べられてると思えばこれって怪我の功名だと思うんだ。それに──」

 

「それに?」

 

 言葉がつっかえてしまい、妙に思ったフランカが覗き込んでくる。普段見せない純真な表情にリスカムは躊躇したが、息を吸って続けた。

 

 

 

「そ、そもそも。私も、フランカと観光するのは、別に嫌じゃなかったし……」

 

 

 

 言いながら、あまりの気恥ずかしさでリスカムはプイっと顔を背けてしまう。入浴とは異なる理由で火照って赤くなった顔を見られたくなかったからだ。

 

「だっ、だから! ナイジェラ一味の件が片付いたらジルさんにお勧めの景色が見える場所を教えてもらったり、マスターにお勧めの料理を聞いたり、マークさんに道案内を頼んで山並みを巡ってさ……フランカのやりたかった大地周遊の続きをしようよ」

 

「…………」

 

「……フランカ?」

 

 相棒からの反応がないことを怪訝に想い、名前を呼ぶ。

 

「フランカどうしたの──」

 

「…………リスカム〜っ!」

 

 突然、フランカが喝采を上げながら抱(・)き(・)着(・)い(・)て(・)き(・)た(・)。

 

「なっ!?」

 

「あなたってばそんなこと考えてくれてたのね〜!」

 

「ちょっ、フランカ! 引っ付かないでよ!?」

 

 派手に水しぶきを上げて湯船からお湯が溢れることも構わず密着してくるフランカを引き剥がそうと、顔を真っ赤にしてリスカムは抗う。

 抗うのだが、どこにそんな力を秘めてたのか頑として引っ剥がせる気配がしない。

 

「ここに来てからもずっと澄ました顔してたのに、内心じゃあたしのことをこんなにも想ってくれてたなんて〜!」

 

「ちょっ、待って。お互い服着てない──」

 

「本当にいじらしいわ〜! お姉さんがヨシヨシしてあげるわね〜!」

 

「フ、フランカ、あ、当たって──!」

 

 濡れてスベスベとする諸々の部位が直に密着してくることにリスカムの頭が瞬間的に沸騰し、終いには頭を撫でながら頬を擦り合わせてくるフランカへ痺れを切らした。

 

「い、いい加減に──」

 

 バチッ、とリスカムの角の間に青白い静電気が走る。

 

「はえ?」

 

「──してって!」

 

 咄嗟に放電(アーツ)を放ってしまったリスカム。

 湯船に浸かったまま発動するべきではなかったと、フランカだけでなく自分も感電しながら後悔するのだった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

「ナイジェラの話した黄金の隠し場所を示した暗号についておさらいしよう」

 

 風呂から上がり、汚れを落とし終えたリスカムは脱衣所を出る間際に口火を切った。

 

「『ジャクソンの腕に抱かれた南十字の元、金色(こんじき)の二羽の鷲は我らがマースと共に羽根を休める』──だったかしら。南の空に浮かぶ十字星の下端がジャクソン渓谷に遺ってた金鉱跡を指し示してる、ってナイジェラは推測したのよね? そんなに都合良く星の配置ってハマるものなのかしら」

 

 脱衣所の扉を後手に閉めながらフランカが真面目な顔で疑問を呈する。

 ……浴室内での一件のせいで入浴したはずなのに顔が少々黒く煤けているため少し間が抜けて見えた(それはリスカムも同じなので指摘するつもりは無いが)。

 

「うーん……詳しくは知らないけど、星も太陽や月の様に季節によって見えたり見えなかったりするみたいだし、暗号の内容に則ればそう当てずっぽうでもないと思うんだ」

 

「そんなものかしら……あとは駄目元で、マースって名前の住民が過去に金鉱で従事してた記録があっりしないかジルちゃんに頼んで町の人に聞いて回ってもらったんだけど、これも空振りだったわ」

 

「……答えには近づけてなさそうだね。二人のリーベリって部分もやけに引っかかるし……」

 

 うーん、と二人して首を傾げるが、これといった気付きも閃きも浮かびはしなかった。

 暗号の解明については完全に暗礁に乗り上げてしまい、お手上げ状態である。

 一旦酒場のホールへと戻り、酒を呷っていた住民たちも家路へと着き既に人気の無い中後片付けをしているジルがこちらに気付いて顔を上げた。

 

「あっ! おかえりなさい。お風呂加減はどうだった──って二人とも何か焦げ臭いような……」

 

「匂いについては気にしないでください。お陰様で今日もゆっくりと浸かれました」

 

「そ、そう? ならいいんだけど──そういえば、リスカムさんたちをガンマンさんが呼んでたわ」

 

「おじさまが?」

 

 ジルの伝言に驚いてかフランカが声を上げた。

 

「うん。お風呂から出てきたら部屋に来るよう二人に伝えてって」

 

「彼は用件を言ってましたか?」

 

 リスカムもこんな遅くに何でまた? と頭を捻る。

 ジルも困った様に首を横に振るも、思い当たる節があるのかポンと手を叩いた。

 

「ううん……でも、彼、戻ってきてからマスターとマークさんと何か喋ってたわ。それに関係してるのかも。内容までは分からないけど……」

 

「オーケー。分かったわジルちゃん」

 

「この後、彼の部屋に行ってみますね。そうだ」

 

 ガンマンの部屋へと足を向けようとしたリスカムだったが、はたと一つ思い至り、改めてジルへと向き直った。

 

「ジルさん、一つ質問があるのですが」

 

「質問って?」

 

「はい。黄金の在処を示す暗号について一つ。お父様はどうやってその暗号……もとい言い伝えを知り得たのか、ご本人に聞いたことはありましたか?」

 

 「聞き辛いことで申し訳ないのですが……」と断りを入れつつリスカムは遠慮がちに尋ねた。

 父のことを思い出したのだろう。リーベリの少女は一瞬悲し気な表情を浮かべたが顎に手を当てて記憶を辿る素振りを見せる。

 

「んー……いつだったかお父さんが言っていたかも。アーチーズタウンの保安官に代々受け継がれてる言い伝えがあるって」

 

「保安官にだけ、ねぇ」

 

「今思えばそれが黄金の隠し場所を示す暗号だったのかもしれないわ」

 

「なるほど……何故、それが保安官にだけ受け継がれているのかお父様は何か?」

 

「ごめんなさい。そこまではちょっと……」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

「あまり役に立てなくてごめんなさい。お休みなさい」

 

 リスカムはジルと別れ、階段を登りながら彼女との会話について思考を巡らせる。

 

(一部の住民にだけ伝えられ、それが何を意味するかも当人たちは知らなかった。だとするとどうしてナイジェラは例の言い伝えが黄金の隠し場所を示す暗号だって知ってたんだろう?)

 

 そもそも、ナイジェラはどうやってこの黄金が隠されていることを知りえたのだろうか?

 そんなことを考えていると、背後からフランカが声を掛けてきた。

 

「にしてもおじさまからお呼び出しなんて意外よね〜。もしかして、お宝の隠し場所を見つけたり、とか?」

 

「いやいや、まさかそんな……」

 

 それが本当ならどれだけ良いことか、と思いつつリスカムは彼が借りている部屋の前まで来ると扉をノックすると、少しして扉の向こう側で何かを引き摺る音──ドアノブに噛ませていた椅子をずらしているのだろう──の後に扉が開かれた。

 

「よう」

 

「こんばんはおじさま」

 

「待たせてしまいましたか?」

 

「女が長風呂好きってのはコ(・)ッ(・)チ(・)でも変わらないもんだな」

 

 帽子とポンチョを脱いだベスト姿のガンマンの皮肉に出迎えられ、リスカムはフランカと顔を見合わせ苦笑し合う。目的が多少異なるとはいえ、協力関係を取る彼の人となりは少しは理解してきたからだった。

 

「女の子はキレイ好きなのよ? 当然じゃない」

 

「そう言うあなたは入浴しないんですか?」

 

「風呂ぐらい俺も入る」

 

 ガンマンに手振りで入室を促されて部屋へ入るが、以前お邪魔した時とほとんど代わり映えしなかった。強いて挙げるなら、部屋に置かれた椅子の数が増えているのと(別の空き部屋から拝借したのだろう)、テーブルの上には大型の銃器でなく、蓋が閉じたままの木箱が置かれていることだろうか。

 フランカが増えた椅子の内の一つにそそくさと歩み寄って腰掛け、ガンマンへ流し目を送った。

 

「もう、こんな美人を夜中に呼び出すなんておじさまも大胆なんだから」

 

「私たちが美人かどうかは置いておいて……どういった用件で私たちを?」

 

 クスクスと冗談めかす相棒の軽口を脇にやりつつ、リスカムも率直な疑問を述べる。こちらから訪れることはあっても、彼自身から招かれることは無かったからである。

 ガンマンは直ぐには答えず、開いていた窓を閉め、カーテンを引いてニ歩三歩と部屋を横断して──

 

 

 

 

 

「黄(・)金(・)の(・)在(・)処(・)の(・)目(・)処(・)が(・)つ(・)い(・)た(・)」

 

 

 

 

 

「……?」

 

 

 

 

 

「は?」

 

 彼の言葉の意味が一瞬理解出来ず、思考が追いついた途端リスカムは口をあんぐりとさせてしまった。

 

「何ですって? 嘘でしょ?」

 

 あまりに唐突に切り出された衝撃で開いた口が塞がらないリスカムの代わりに、フランカが椅子から立ち上がる勢いで身を乗り出す。彼女も彼女で目を丸くしてガンマンを凝視している。

 

「と、解けたんですか? あの暗号が」

 

「まぁ。そんなところだ」

 

「そんなところって……」

 

 我を取り戻したリスカムは信じられない思いでガンマンへ問うも、はぐらかすような返答にで驚きが少し薄らいだ。一方フランカは興奮した様子で、彼の曖昧な態度に気づかずに隠し場所を問い質した。

 

「それで? お宝の隠し場所は?」

 

「そりゃあ悪いが言えないな」

 

「えーっ、どうしてよ!」

 

「情報が漏れないとも限らないんでな」

 

「しないわよそんなこと! ねぇ、金鉱のどの辺りに隠されてるの? 教えてちょうだいよ〜」

 

「ちょっとフランカ……」

 

 必死に聞き出そうとする邪な企みをしとるんじゃなかろうか?

と不安になったリスカムは相棒をなだめようとするが、キッと怒った様な顔付きで睨まれてしまう。

 

「だって悔しいじゃない! あたしたちや町の人たちが汗水流して掘って探しても見つけられらなかった黄金の場所を、そこら辺をブラついたりナイジェラとよろしくやってたおじさまが突き止めたのよ? 何だか納得出来ないわ……」

 

 椅子に座り直したフランカは少し不貞腐れた様子で、立てた片膝の上に顎を乗せた。

 そう言われるとリスカムも否定出来ず言葉に窮するが、ガンマンが黄金の隠し場所を見つけたことで、金鉱に残る住民たちの解放にも目処が着いた。

 

「と、とにかく。これで金鉱に残る人たちも解放出来ますね」

 

「そうだな。で、ここからが本題なんだが」

 

「? 黄金を見つけた以外で本題があるの?」

 

「嬢ちゃんたちは傭兵だったよな」

 

「その通りですが……それが一体?」

 

 今更の質問に首を傾げながらもリスカムは首肯する。

 肯定を確認したガンマンはテーブルに一番近い椅子に腰を落ち着け、リスカムととフランカを交互に見やって置かれていた木箱に手を添えながら髭に覆われた口元で微笑を作った。

 

 

 

 

 

「なら──ゴ(・)ミ(・)掃(・)除(・)は(・)得(・)意(・)だ(・)ろ(・)う(・)?」

 

 

 

 

 









本日の更新に併せてオマケ:小ネタ・元ネタ解説集に九話、十二話中での小ネタに関する解説を追記しました。




……今回の副題が戦略大作戦と大層なものとなっていますが、話の内容は全然『戦略』でも『大作戦』でもないですが多めに見てください(汗)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。