もし鬼滅の刃に本物のガチ鬼がいたら   作:物体Zさん

28 / 28
風が気持ちええな

 

 

 藤の屋敷の朝は、変わらず静かだった。

 

 鳥のさえずりと、風にそよぐ藤の葉擦れの音。

 珠世は縁側で茶を淹れ、うたは庭の小花に水をやる。

 陽は縁壱の背中にぴったりとくっついて、読み書きの練習をしていた。

 

 そんな朝の空気を切るように、タケシがのそりと立ち上がった。

 

 

 

 「……ちぃと、歩いてみんか」

 

 

 

 その一言に、縁壱が顔を上げた。

 珠世もうたも、不思議そうに目を向ける。

 

 

 

 「どこへ?」

 

 

 

 うたの問いに、タケシはにやりと笑った。

 

 

 

 「決まっとるやろ。……あの庵よ。わしらが昔、暮らしとったとこじゃ」

 

 

 

 その言葉に、うたは少しだけ目を見開いた。

 

 

 

 「……あの山の庵?」

 

 

 

 「そうじゃ。そろそろ藤の花も咲き終わるころやし、なにか残っとるかも知れん」

 

 

 

 縁壱は何も言わずに頷いた。

 陽が「庵ってなに!?」ときらきらした目で食いついてくる。

 

 

 

 「小さい家のことじゃよ。縁壱と、うたと、わし、そんで陽が産まれたところ。昔、暮らしとった場所じゃ」

 

 

 

 「へえー! おうち? 見たい見たい!」

 

 

 

 陽のその一声が決定打となった。

 こうして、四人はひさびさに、あの庵を目指すこととなった。

 

 

 

 道中は、昔と変わらぬ草木が迎えてくれた。

 

 木の枝には山鳥がさえずり、川のせせらぎは涼しげな音を奏でる。

 

 うたは歩きながら、何度も深く息を吸い込んだ。

 

 

 

 「……変わらない匂いですね。草の香りも、土の感触も、あの頃のまま」

 

 

 

 縁壱はその言葉に小さく頷いた。

 タケシは「いやぁ、ちぃと木が増えた気ぃせんか? わしの背ぇが縮んだんかのう」と、いつもの調子でぼやいた。

 

 

 

 やがて、木立の間から見えてくる――庵の影。

 

 懐かしさが胸を突く。

 

 だが、そこに見えたのは、かすかな炊煙だった。

 

 

 

 「……誰か、おるのか?」

 

 

 

 タケシが足を止めた。

 煙は、庵の囲炉裏から真っ直ぐ立ち昇っている。

 

 そっと近づき、茂み越しに覗くと、縁壱が小さく息を呑んだ。

 

 

 

 そこには、一組の夫婦がいた。

 

 男は質素な身なりの農夫。無骨な顔立ちだが、どこか穏やかな眼差し。

 女は優しげな顔立ちで、髪をきちんとまとめている。

 

 二人は囲炉裏に湯を沸かし、素朴な食事の準備をしていた。

 

 

 

 「……住んどる、んじゃな」

 

 

 

 タケシがぼそりと呟いた声に、男の耳がぴくりと動いた。

 

 

 

 「……誰か?」

 

 

 

 声を発して、男が立ち上がる。

 その後ろで、女が「炭吉さん」と囁く。

 

 

 

 縁壱が前へ出る。

 茂みを抜けて姿を見せると、男の表情がぱっと明るくなった。

 

 

 

 「お客さんかい? こんな山の上まで……!」

 

 

 

 「驚かせてしまい、申し訳ありません。少し昔……この庵に縁がありまして」

 

 

 

 縁壱の言葉に、女――すやこがにこやかに笑った。

 

 

 

 「まあ、そうだったんですか。きっと、この庵も喜んでますよ。どうぞ、中へ」

 

 

 

 タケシ、うた、陽も順に顔を見せる。

 炭吉とすやこは少し目を見開いたが、すぐに柔らかな笑みに変わる。

 

 

 

 「ようこそ。わたしたち、竈門炭吉と申します。こちらは妻のすやこです」

 

 

 

 タケシはしばしその名を反芻し、ふっと目を細めた。

 

 

 「ほぉ……竈門、ねぇ。なんや……ええ縁の巡り方しとるやないか」

 

 

 

 

 囲炉裏の湯がくつくつと音を立てる。

 

 木造の庵は古びていたが、丁寧に手入れされていた。

 床には布が敷かれ、干し野菜の香りが天井からゆるく漂っている。

 

 タケシ、縁壱、うた、陽は四人並んで座し、竈門炭吉とすやこ夫婦に向き合っていた。

 

 

 「ほい、たいしたもんじゃないけど」

 

 

 炭吉が茶碗に熱い湯を注ぎ、湯飲みを皆に配ってくれる。

 

 

 「このあたりは山が深いけど、水と薪は豊富でね。わたしらにはちょうどいい場所なんです」

 

 

 すやこが、どこか恥ずかしそうに微笑む。

 

 その腹元は、膨らんでいた。

 

 布の奥にしっかりと命の形があって、少し動けば分かるくらいには張っている。

 うたがふと目を留め、すやこの手をそっと取った。

 

 

 「……もう、すぐですか?」

 

 

 「はい。あと……たぶん、十日もないかと」

 

 

 すやこはお腹に手を当て、優しく撫でる。

 

 その仕草に、うたの目元がふっと緩んだ。

 

 

 「……初めての?」

 

 

 「はい。でも、不安はあまりないんです。炭吉さんがいてくれますし……それに、この山に来てから、ずっと穏やかですから」

 

 

 その言葉に、タケシがふと目を細める。

 

 

 「……穏やか、のう」

 

 

 「ええ。風も、音も、人の気配も。ここに来る前は、村にいて……ずっと息苦しかったんです。でも、山に入ってからは、どこか懐かしいような、温かいような……」

 

 

 すやこの言葉は、まるでこの庵そのもののようだった。

 

 優しく、素朴で、そして“生きようとする”力が、そこにあった。

 

 

 陽が目をぱちくりさせながら、すやこのお腹を見つめて言った。

 

 

 「ここに、赤ちゃんいるの?」

 

 

 「ええ。あなたくらいの子よ。元気に出てきてくれたら、きっとすぐ仲良しになれるわね」

 

 

 「わー! 赤ちゃん、会いたい!」

 

 

 陽の無邪気な声に、すやこはくすっと笑った。

 うたの表情も、どこか懐かしさと切なさが混ざっている。

 

 その横で、縁壱は言葉もなく、庵の隅をじっと見つめていた。

 

 

 そこには、かつて彼とうたが使っていた織り機があった。

 今は埃が払われ、すやこの手で新たな布がかけられている。

 

 時間は流れ、命は継がれる。

 ただそれだけのことが、こんなにも胸に沁みるとは思わなかった。

 

 

 「……この庵が、誰かの暮らしに役立っていることが、うれしい」

 

 

 ぽつりと漏れた縁壱の声に、炭吉が頷く。

 

 

 「不思議なもんですね。何十年も経っているのに、この家が壊れもせず残っていてくれて。

  ……まるで、誰かが“見守っていた”みたいだ」

 

 

 タケシがごく僅かに口元を緩める。

 

 

 「まあ、そうかもしれんの」

 

 

 「え?」

 

 

 「ここは、わしらの“始まり”じゃったからな。

  どこにも行けんくて、ただ生きとって、……けど、それが良かった。

  おんしらも、よう似た顔しとるわい」

 

 

 炭吉は少し驚いたような顔をして、照れたように頭を掻いた。

 

 

 「……よく言われます。似てるって。特に……妻が、どこか昔の人に」

 

 

 すやこが眉を上げて小さく笑う。

 

 

 「わたしは気にしてませんよ。似ていても、似ていなくても。

  今の私たちが、ここでちゃんと暮らしているのが、いちばんですから」

 

 

 言葉が、芯に染みる。

 

 新しい命を抱える母の言葉は、どこまでもまっすぐだった。

 

 タケシは湯を啜りながら、ふっと呟いた。

 

 

 「……こりゃあ、ええもん見たわい。まだ世界は、大丈夫そうじゃ」

 

 

 

 それから暫く—

 囲炉裏の火は、徐々に小さな橙を灯しはじめていた。

 日は山の稜線に沈みかけ、庵の中には少しずつ夜の匂いが漂いはじめる。

 

 湯気のたつ茶碗を手に、縁壱は無言で座していた。

 

 すやこはまだ赤子を抱いてはいない。けれど、その腹の中にいる小さな命が、時折ぴくりと動くのが見てとれる。

 そのたびに、静かだった空間に、誰にも聞こえぬ脈がひとつ、確かに打たれていく。

 

 

 「……命がある」

 

 

 ぽつりと縁壱が呟いた。

 囲炉裏を囲む全員が、自然とその声に耳を傾けた。

 

 

 

 「ただそれだけで、こんなにも安心するとは思わなかった」

 

 

 

 その声には、どこか遠い自分への驚きが混じっていた。

 今は剣を抜かず、ただ隣に座ることを選んでいる。

 

 

 

 「守る、というのは……剣を振るうことだけではないのだと、今なら分かる気がします」

 

 

 

 「ほぉ?」

 

 

 

 タケシが低く唸った。

 

 その声は咎めでも、茶化しでもなく、ただ純粋な興味だった。

 

 

 

 「斬ることで、救えるものもあった。けど……剣を納めることで、守れるものもある。

  この手で赤子を抱かずとも、こうして見ているだけで、命が灯るなら――」

 

 

 

 縁壱はすやこの腹に、そっと目を向ける。

 すやこもまた、その静かな視線を受けて、優しく頷いた。

 

 

 

 「あなたのような方が、そう言ってくださるだけで、心が落ち着きます」

 

 

 

 「わしにはわからん」

 

 

 

 ぽつりと、タケシが言った。

 その顔は笑っていたが、ほんのわずか、眉間に皺が寄っていた。

 

 

 

 「わからんのじゃ。こうして目の前に命があって、こやつらがええ顔しとるのを見とってもな……“わしはここにいてええんか”って、時々思うんじゃ」

 

 

 

 誰も、それを否定しなかった。

 けれど、うたがそっと口を開く。

 

 

 

 「……でも、タケシさん。わたし、思うんです」

 

 

 

 彼女の声は柔らかく、けれどまっすぐだった。

 

 

 

 「あなたがここにいてくれるから、安心できる人がいる。

  縁壱さんが刀を置こうと思えるのも、陽が無邪気に笑えるのも――

  あなたが今ここに、生きているからです」

 

 

 

 タケシはうたを見て、それから陽の顔を見た。

 

 陽は彼の大きな手を握って、無邪気に笑っていた。

 その手は小さくて、けれど力強かった。

 

 

 

 「……ほうか」

 

 

 

 しばらく沈黙が流れたあと、タケシはぼそりと呟いた。

 

 

 

 「ほんなら、わし……なんか、残さんとなあ」

 

 

 

 「残す……?」

 

 

 

 縁壱が尋ね返すと、タケシはぐっと背を伸ばして言った。

 

 

 

 「そうじゃ。あの腹ん中の子にな、何かひとつ。わしらが“生きた”ってことが分かるような、な。言葉でも、物でもええ。けど、忘れられてまうのは、ちぃと寂しいわい」

 

 

 

 「……それは、いいですね」

 

 

 

 すやこが微笑んだ。

 

 

 

 「もし男の子なら、いつかその子に話します。“あなたが生まれる前の日、こんな人たちが庵にいてね――”って」

 

 

 

 その言葉に、タケシは唇を引き結び、ちょっと照れくさそうに鼻を鳴らした。

 

 

 

 囲炉裏の火が、ぱち、と音を立てて弾けた。

 

 その音に陽が軽く跳ね、縁壱がそっとその背に手を当てる。

 

 赤子はまだ、母の腹の中。

 けれど、そこに確かに“今を生きる”命があった。

 

 

 

 “何もしていないのに、満ちている”――そんな夜だった。

 

 タケシが火の向こうを見つめながら、静かに言った。

 

 

 

 「命が繋がるっちゅうのは、ええもんじゃの……」

 

 

 そして——

 

 夜明け前、庵に微かな呻き声が落ちた。

 

 うたが最初に気づき、炭吉を起こす。

 すやこは汗ばんだ額を押さえながら、ゆっくりと浅い息を繰り返していた。

 

 

 

 「……来ました、ね」

 

 

 

 布団に横たわりながらも、すやこの声はどこか落ち着いていた。

 うたがそっと手を握る。

 タケシと縁壱、陽は囲炉裏の火を絶やさぬよう、少し離れた場所で静かに座していた。

 

 

 

 庵には、蝋燭の火と、命の鼓動だけが灯っていた。

 

 時折、呻く声。

 それを支えるような、炭吉とうたの落ち着いた指示と手当て。

 

 

 

 やがて――

 

 

 

 「……おぎゃあっ……!」

 

 

 

 甲高く、透き通った産声が庵に響いた。

 

 その瞬間、すやこは静かに目を閉じ、涙をひとすじこぼした。

 炭吉がその小さな命を抱き上げ、何度も頷く。

 うたは震える手で、へその緒を拭った。

 

 

 

 「元気な……男の子です」

 

 

 

 誰も言葉を発しなかった。

 ただ、皆の胸の中に、確かな熱が灯っていた。

 

 

 

 縁壱は、その命を見つめながら思った。

 剣を置いてなお、守るべきものはこんなにも近くにあるのだと。

 

 

 

 タケシは腕を組んで、いつものように胡坐をかきながら、空を見た。

 東の空が、うっすらと白んできていた。

 

 

 

 「……そろそろ、わしらも帰るかの」

 

 

 

 すやこと炭吉に礼を告げ、うたと陽を伴って一同は庵をあとにした。

 

 山を下りる途中、縁壱がふと足を止める。

 

 

 

 「……タケシ」

 

 

 

 「なんじゃ」

 

 

 

 「さっきの子を見ていて、思いました。……お前の名を、残してもいいと思った」

 

 

 

 タケシは驚いたように縁壱を見て、それからふっと口元を緩めた。

 

 

 

 「わしの名ぁ? そりゃ、あの子には重すぎるわい」

 

 

 

 「そうかもしれない。けれど、お前は……生きていた。確かに、ここにいた。それを、誰かが覚えていればいい」

 

 

 

 「……そんで、ええんじゃのう」

 

 

 

 タケシは静かに頷いた。

 そして一同を振り返り、唐突に言った。

 

 

 

 「なあ、ちょっと寄り道せえへんか? ……わしが昔、封じられとった場所がある」

 

 

 

 縁壱とうたが目を合わせる。陽は「行きたい!」と元気よく手を挙げた。

 

 

 

 山道を外れ、さらに谷を下っていく。

 木々が深くなり、空が狭くなっていく。

 やがて、黒く滑らかな岩が連なる崖の奥――そこに、その場所はあった。

 

 

 

 大地の裂け目。かつて封印の札が貼られていた、冷たい岩の洞。

 

 誰も来ぬ、誰も知らぬ、静かな地。

 

 

 

 タケシはしばし黙って、そこに立ったまま空を仰いでいた。

 

 

 

 「……よぉ、寝とったのう。ここでずっと、黙って……」

 

 

 

 彼の声は、懐かしむでも、憎むでもなかった。

 ただ、“終わった”と、受け入れる声だった。

 

 

 

 陽が岩のそばに寄っていくと、柔らかな風が草を揺らした。

 その風が皆の間を吹き抜け、そっと肌を撫でていく。

 

 

 

 タケシがぽつりと言った。

 

 

 

 「……風が気持ちええな」

 

 

 

 誰も言葉を返さなかった。

 

 けれど、皆の顔にあたたかな光が差していた。

 

 

 

 風が渡り、蛙が鳴いた。

 

 

 

 岩にうつる影が、四つになった気がしたんじゃ。

 

 

 

 わし、縁壱、うた、陽。

 

 

 

 たったそれだけが、この世の全てのように思えた、あの日のことよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは遠い、遠い昔のこと――

 

 鬼が人を喰らい、夜が長く続いていたころ。

 人の世にはまだ“理”が根付ききらず、禍と神秘が渦巻いていた時代。

 

 その地に、一体の《鬼》がいた。

 

 名を持たぬそれは、かつて岩より生まれし“真なる鬼神”にして、

 神仏さえも恐れる膂力を持つ存在だった。

 

 《大嶽丸》――と呼ばれたこともある。

 

 彼は数多の戦を生き、やがて坂上田村麻呂に封じられ、

 幾星霜の眠りについたという。

 

 時が満ちたその先。彼は再び歩き出す。

 

 目覚めた鬼は、人を見守った。

 少年を見つけ、育て、時に手を貸し、笑い、怒り、そして戦った。

 

 その少年の名は、《継国縁壱》。

 

 この世に生まれし最後の“神の子”。

 陽の呼吸を身に帯び、太陽の如き剣を振るった剣士である。

 

 ふたりは時を重ね、やがて《偽りの鬼》――鬼舞辻無惨を討ち果たす。

 

 人の形を成しながら、人を喰らうその怪異を。

 赤き鬼の拳と、太陽の剣が斃したと伝えられている。

 

 だが、それは終わりではなかった。

 

 人の世はなお移ろい、恐れと争いを孕み続ける。

 鬼は滅び、光が差し込んだ後も、闇は姿を変えて忍び寄る。

 

 それでも伝えられているのだ。

 

 《赤黒き肌を持ち、角を有する鬼》と、

 《陽の剣を振るう若き剣士》のことを。

 

 ふたりは名を欲せず、語られず、祀られず。

 ただ、ひそやかに《人の傍ら》に在った。

 

 

 

 ――ゆえに、今も伝わる。

 

 火急の地にて、子を守る者あり。

 

 戦火の陰にて、闇を照らす剣あり。

 

 その姿を見た者は言う。

 

 「紅き鬼が、風に乗って現れた」と。

 

 「眩い陽を背に、剣を構える男がいた」と。

 

 

 

 名もなき《鬼》と、陽を継ぐ《剣士》。

 

 彼らの伝承は風に溶け、炎に宿り、血の記憶となって今も残る。

 

 やがて、人が再び“闇に触れる”とき――

 

 ふたたび、鬼が歩き、太陽が降る。

 

 

 

 《ただの鬼じゃ。けんども――守りたいもんくらいは、あるんじゃ》

 

 

 

 ――これは、名もなき鬼の、在りし日の記録である。

 

 

 

 火は、まだ消えていない。

 

 

 

 ──終──

 

 

 

 






【大嶽丸(タケシ)】

太古、理の定まらぬ時代――
天より降る神に抗い、岩より生まれし鬼がいた。

名を持たず、呼ばれぬままに彷徨い続けたその鬼は、
やがて《大嶽丸》と畏れられ、神仏さえも忌避する“禍”となった。

その肉体は灼熱の血潮を巡らせ、
黒き肌の下に、炎の如き力を宿す。

角を戴き、声は雷鳴のごとし。
拳は山を砕き、足跡に雷鳴が響く。

人の世を彷徨い、鬼としての己を見失いかけたそのとき、
彼は出会う――《桃太郎》と。
《坂上田村麻呂》と。
そして、《継国縁壱》と。

鬼でありながら人に寄り添い、
“災い”でありながら“護り手”ともなった者。

かつては“封”じられし存在、
されど今は“在”る者。

その拳は怒りに震えるのではなく、
誰かのために振るわれる。

されば、問う者よ。
汝、鬼を恐れるか? 神を信じるか?

ならば知るがよい。
この世には、鬼より深く、神より古きものが在ると――

彼の名は《タケシ》。
されど、名は不要。

ただ、彼は《傍に在る》。

──「わしゃあ、ただの鬼じゃ。けんども……守りたいもんくらいは、あるんじゃ」






これにてお終いです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

アクシズで頑張るシャアのクローン(作者:すも)(原作:ガンダム)

エルピー・プルのクローンがいるならシャア・アズナブルのクローンがアクシズで造られていてもいいじゃない


総合評価:8855/評価:8.52/連載:53話/更新日時:2026年02月15日(日) 12:00 小説情報

狼っぽいのになった…タスケテ(作者:富竹14号)(原作:原神)

▼ 原神のげの字も知らない男が獣域ハウンドになってやってきた(馬鹿)。▼ 帰ろうとしても帰れない、帰れないならここに永住するしかねぇ!(割とある) 満足するしかねぇ!!(アホ)。▼ 待ってろ異世界(仮)! 待ってろ美味い食い物!▼ なお、道中に金髪美少女と空飛ぶホワイトロリに追いかけ回される模様。▼


総合評価:2769/評価:7.24/連載:46話/更新日時:2026年01月11日(日) 20:25 小説情報

鬼舞辻無惨になった男が生き抜く話(作者:野生の生蛇)(原作:鬼滅の刃)

究極生命体無惨になった男がクロスオーバー世界で生き抜く話です。▼二週目大正鬼殺隊も無惨を追う模様▼息抜きの息抜き作品なので更新完全未定、多分未完結で終わります▼誰にも見られず朽ちるのがもったいないと思ったのでネットに公開するだけです。


総合評価:3864/評価:8.03/連載:6話/更新日時:2026年01月30日(金) 21:34 小説情報

ダンジョンに正義の味方がいるのは間違っているだろうか(作者:ラブコメは正義マン)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

聖杯戦争終結から一年。衛宮士郎は遠坂凛の下で、魔術の修行をしていた。▼だが、ある実験の最中に意識を失い――目を覚ますと、そこは神々と冒険者が集う迷宮都市オラリオだった。▼ダンまちとfateのクロスオーバー小説です▼Fateメンバーは基本的に士郎しか出てきません▼ダンまちの最新刊までのネタバレを含む可能性が有ります▼UBW後の士郎を想定▼描写されていない間では…


総合評価:3415/評価:8.47/連載:21話/更新日時:2026年05月05日(火) 21:00 小説情報

俺、転生先はチートハーレムって言ったよね??(作者:むにゃ枕)(原作:ガンダム)

チートハーレムしたかったのに宇宙世紀に転生ですか? え? ここから入れる保険って有りますか?▼なお、普通にチートハーレムする模様


総合評価:2072/評価:7.45/連載:6話/更新日時:2026年01月31日(土) 18:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>