別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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ディース姉妹②

「このっ! このっ!」

 

「どうして、当たらないの……!?」

 

 姉のディナが二振りの短刀(スティレット)を巧みに操る近接戦と同時に、妹のヴェナが魔法や魔剣を駆使する遠中距離戦をやっている。

 

 普通なら二人の連携に翻弄されてもおかしくないのだが、それを受けている隆誠は仮面や外套にも掠らず全て紙一重で躱し続けていた。

 

(ふむ。この姉妹、表面上はキレてても連携は見事だな)

 

 隆誠は微塵も焦ってないどころか、分析するようにディース姉妹の実力を測っていた。

 

 ここまで息の合う連携攻撃は小人族(パルゥム)のガリバー兄弟に匹敵すると評価しながら、今まで戦っていた末端(ざこ)共より遊べる相手である事に内心笑みを浮かべている。

 

 ディナが振るう短刀の連続攻撃を見切ったように避けた瞬間、隆誠は反撃に移ろうと左手で文字を描く動作をした直後、彼の手から爆炎が放たれる。

 

「ッ!?」

 

 直撃寸前の所、ディナは隆誠が魔法を使うと察知したのか、咄嗟に距離を取って回避に成功する。

 

 自身から離れたのを見た後、彼はヴェナの方へと視線を移す。今度は右手で文字を描く動作をすると、彼の周囲から無数の鏃状の雷弾が放たれる。

 

「嘘、何でその魔法を!?」

 

 見覚えがあるからか、ヴェナは信じられないように驚愕しながらも、放たれた雷弾を辛うじて回避していた。

 

「今のって!?」

 

「どういう事だ……!?」

 

 二つの魔法を目にしたヘグニとヘディンも過敏に反応していた。

 

 それもその筈。隆誠が放った爆炎と雷は彼等が使う魔法と全く同じだったから。

 

 ヘグニの魔法――【バーン・ダイン】は、超短距離の射程だが効果範囲内の敵を根こそぎ吹き飛ばす程の威力を持つ爆炎魔法。

 

 ヘディンの魔法――【カウルス・ヒルド】は、弾数と速射性があるので広域殲滅に優れている雷属性の攻撃魔法。

 

 詠唱もせず指で文字を描く動作をしただけで、持ち主にしか使えない筈の魔法を他者が発動させるなど普通はあり得ない。隆誠はあくまでルーン魔術で再現させているに過ぎないが、七年後の未来で某エルフの少女が(エルフの魔法限定でありながらも)他者の魔法を再現する事が可能になる事を補足しておく。

 

「どうしてヘグニとヘディンの魔法を使えるの!?」

 

「しかも詠唱もしないで発動させるなんてあり得ないわ!」

 

 ディース姉妹は150(セルチ)の小柄な少女の姿だが、ヘディンやヘグニよりも年上であり、魔法に関する知識もそれ相応に持っている。

 

 しかし、隆誠が見せたルーン魔術は彼女達の知識には一切無い為、未知の技術を見せられた事で困惑してしまうのは無理もなかった。

 

(ならばお次は――)

 

 男女のエルフ達の反応を見た事で少々悪戯心が湧いたのか、ルーン魔術を――

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

 発動させながら小声で口にした直後、以前に戦争遊戯(ウォーゲーム)で使った音の衝撃波――【福音(ゴスペル)】がディース姉妹に襲い掛かろうとする。

 

「「キャァァァァァァッッ!」」

 

 広範囲かつ不可視の衝撃だったからか、ディース姉妹は躱す事が出来ずに直撃する。

 

「えっ、ちょっ!? あの魔法は!」

 

「今度は【ヘラ・ファミリア】か!」

 

 嘗て君臨していた【ヘラ・ファミリア】幹部――【静寂】アルフィアの魔法を再現させた事に再度驚愕するヘグニとヘディン。当時の苦い記憶を思い出したかのように、大変忌々しそうな表情になっている。

 

 彼等とは別に、【福音(ゴスペル)】を受けたディース姉妹は揃ってうつ伏せで倒れている。

 

(威力はあの時と同じなんだが……)

 

 以前に相手をした『Lv.6(未来)』のヘディンが受けた時は辛うじて立っていたが、『Lv.5』だと耐え切れない事に少しばかり落胆する隆誠。

 

 彼としてはもう少し遊びたかったが、終わってしまった以上は仕方ないと諦めて、倒れているディース姉妹を拘束しようと――

 

「「……………許さない」」

 

「ん?」

 

 近付こうとしたところ、二人の声が聞こえて思わず足を止めてしまう。

 

 声を発したエルフの姉妹はゆっくりと起き上がり、隆誠に憎悪が籠った視線を向ける。

 

「許さない許さない許さないィィッ!」

 

「貴方はっ! お前はッ!! 壊す!!!」

 

 【福音(ゴスペル)】を受けた事で平衡感覚が狂っているにも拘わらず、まるで関係無いと言わんばかりに叫ぶディナとヴェナ。

 

「愛してもやらないし殺してもやらない!!」

 

「私達の部屋の中で切って裂いて抉って癒して壊し続けてやる!!」

 

 そう断言するディース姉妹が――

 

(悪いが俺にそんな趣味は――無い!)

 

「「がっ!!」」 

 

 魔法の弾幕を張って逃走を図ろうとするも、させないと言わんばかりに超スピードで接近し、二人の腹部に少し強めのパンチを当てた。

 

 突然の激痛を受けたディース姉妹は何とか耐えようとしていたが、身体に急な脱力感が走った所為で意識を失い、再び倒れてしまう。

 

(さて、コイツ等をギルドに引き渡すか)

 

 流石に名のある幹部と思わしき者達を人任せにする訳にはいかない為、今回ばかりは自身が責任を以って連れて行こうとする隆誠。

 

 ディース姉妹の首根っこを掴んだ後、未だに呆然としているヘディンとヘグニを無視するように、この場から去ろうとした。

 

「き、貴様っ!」

 

 すると、ヘグニが勇気を振り絞るかのように声を掛けた。

 

 去るつもりだった隆誠は、【フレイヤ・ファミリア】の中で数少ない友好に接していた者だったからか、つい足を止めて振り向いてしまう。

 

()の救済の(かいな)、聖なる福音に値する……! しかしてその鬼の形相と漆黒に纏いし力……汝が妖精を狩る者か……!?」

 

「……我が魂が導かれた結果に過ぎん、気にするな。それと汝が追う影は、確かに我の歩んだ残滓(ざんし)だ」

 

「!!!」

 

 隆誠は咄嗟に彼と同じ厨二病語で返した事で、ヘグニは思わず固まってしまう。

 

 因みに二人の厨二会話を――

 

『助けてくれてありがとう、ところで君はあの『仮面の狩人』なのかい?』

 

『どういたしまして。それとお前達が噂してる『仮面の狩人』は確かに俺の事だ』

 

 ――日常会話として訳せばこうなるのだ。

 

「汝とは……魂の波動が共鳴しているようだ。再会の運命があるならば、混沌が鎮まった後、深淵(アビス)の語らいを交わそうではないか(訳:お前とは気が合いそうだ。もしまた会う機会があれば、その時は闇派閥(イヴィルス)の騒動が収まった後、ゆっくり語り合いたいな)」

 

 即興で考えた厨二病会話をする隆誠は、固まっているヘグニに踵を返した瞬間、ディース姉妹と一緒に一瞬で姿を消す。

 

 

 

 

 

「…………………………」

 

「見ず知らずの不届き者のくせに、我々の魔法を再現するとは……」

 

 固まっているヘグニとは別に、隆誠がいなくなってから忽ちに不快な表情になっていくヘディン。

 

 本当ならすぐにでも問い詰めたかったが、迂闊に手を出せば此方も徒では済まないと思い、敢えて静観する事にしたのだ。

 

「『仮面の狩人』……つくづく不快な奴だ。おい阿呆、最後に何を話していた? なにか情報は――」

 

 正体不明の相手と話していたヘグニから情報を聞き出そうと彼に近付きながら話しかけるが――

 

「かっ……。カッコいい! 『仮面の狩人』、凄くカッコいい~~~~!! ああ、どうしよう! もしまた会えたら、あのカッコいい喋り方教えて貰えないかな!?」

 

 自分以上に流暢な厨二病言葉を使う『仮面の狩人』に憧憬の念を抱くどころか、ヘグニは教えを乞いたいように物凄くはしゃいでいた。

 

「………………………………………………………………………クソカスがッ!」

 

 汚物を見るような目をしながら、心底如何でも良い事をほざく相方(ヘグニ)に容赦の無い罵倒と一撃を与えるのであった。




隆誠が中二病言葉を使ってましたが、どうでしょうか?

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