抜きゲーみたいな島に住んでいた狂犬はヒロアカ主人公に憑依したらどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
僕がこの世界に戻って来てからは驚きの連続どころか重複してやってくる時もった。一人を除いた2-Aの皆が僕に雄英高校のアレコレを親切に教えてくれたおかげで日常生活は問題なかったけど、休日が問題だった。
麗日
「ねえねえデクくん!」
緑谷
「うひぇ!?」
麗日さんが僕に抱き着いてきたからものすごく変な声が出てしまった。それに気付いて麗日さんが咄嗟に離れる。
麗日
「せやった……たまに忘れてしまうけど、こっちのデクくんは女性経験がないんだった……」
緑谷
「うぐぅ……!」
そう、2-Aの女の子の距離がものすごく近い。土口さんが綴った日記を読んで判明したけど、僕の体で最低でも7人の女性と……その……体の関係を持っていた。女の子とまともに話したことがない僕からしてみたらありえないどころか、想像もつかないような関係だ。
蛙吹
「それじゃあ私達が異性交際を教えてあげるべきね」
八百万
「そうですわね! あの出久さんにしっかり教えてもらいましたもの!」
芦戸
「そうそう! この出久は何も知らないから私達の理想の出久にしちゃおう!」
耳郎
「それじゃあまず……歯形から着けようかな……」
葉隠
「響香ちゃん出久とそんなことしてたの!? ロック過ぎるよ!」
こうして僕の休日はスパダリ出久再建計画に振り回されることになった。
峰田
「……流石にアレは羨ましくねーわ」
上鳴
「だな。そう考えると、素でガールズの要望全部に答えてたあの緑谷は本当にすごかったんだな」
全く扱った事のない"個性"を自分の物のように扱って、それとコスチュームを組み合わせた戦法まで考えて、それを僕にもわかるようにノートにまとめていた……どう考えても土口さんは只者ではなかった。
爆豪
「アレに及ばねェ様じゃその程度だってことだ。まァ、クソデクじゃその程度がお似合いだろうな」
そんな土口さんと渡り合ったかっちゃんは以前にも増して僕に苛烈に当たって来る。ただ、暴言が多くなった代わりに直接手を出してくることは無くなった。恐らく、土口さんと僕について話して何か変わったんだと思う。
爆豪
「精々頑張れやクソデク。アイツぐらい強くなったてめェを倒さないと真のNo.1には成れねェからな」
切島
「アイツぐらいって……アイツは人生経験豊富で知識も────」
爆豪
「"個性"の経験がゼロだったのに1年であそこまで上り詰めた……そのすべてが記されたノートに、クソデクのナードっぷりがありゃ────1年で追いつくだろ」
かっちゃんは僕に期待しているんだ。だったら僕はその期待に応えないと────
相澤
「緑谷、休日中に悪いが話がある。来てくれないか」
寮にやってきた相澤先生に呼ばれて一室に案内される。
相澤
「元の世界に戻ってきて色々と大変かもしれないが、心して聞いてくれ」
相澤先生の真剣な表情に思わず背筋が伸びる。一体どんな話だろうか。
相澤
「……まずはお前のヒーロー仮免許関係だ」
なんとなく分かった。アレは土口さんの意思で取得したものだから、このまま僕が取得した事にはできないはずだ。
相澤
「その顔だと話は早そうだな。今年の夏休み明けに再試験になる」
ヒーローを目指す以上避けては通れない道だ。幸い、"OFA"の使い方は歴代継承者の方々や土口さんのノートである程度掴んでいる。後は知識と実戦経験を積めば問題ないはずだ。
相澤
「……あと、あまり土口を参考にしすぎるな。アイツを基準にしたらほとんどの奴が見込みなしで即除籍になる。アイツにはアイツの良さがあるように、お前にはお前の良さがある。それを活かしたヒーローを目指せ」
相澤先生が頭を抱えるほどの問題児で、特待生で、何より優秀だった土口さん。一度戦ったから分かるが僕はあの人になることは出来ない。でも、土口さんになることは出来なくても、超えることは出来るかもしれない。
緑谷
「もちろんです……だって、"
相澤
「……お前も良い問題児になりそうだよ」
この後、仮免許試験に受かってミッドナイト先生の所でインターンを受けたけど、そこで起きた一騒動はまた別の機会に話そうと思う。
そんなこともあって、かれこれ8年が経った。2-Aの皆がプロヒーローとして活躍していくる中、僕はプロヒーローと雄英高校の教師を兼任でやっている。今日はとある科の先生に用事があってその科の職員室にやってきました。
緑谷
「九玉さん、1年生の
呼びかけたが椅子と同時にくるりと回転した。黒い肌に黒いスーツに黒いネクタイの姿はまるでヴィランの大黒柱のようで、紫のフレームの丸縁眼鏡から覗く紫の瞳はアメジストのようで、綺麗に三つ編みが施された髪は絹のようで、いつまでも若々しく、結婚したい女教師ランキング連続1位の貫禄があった。
九玉
「すまないな緑谷……成程、人質を取って立て籠った事件を想定し、人質の救助と犯人の逮捕までの時間と方法を測るか……良いと思うぞ」
九玉さんは柔らかくニコリと笑って受け取った資料を────ボッと灰にした。
緑谷
「何で!?」
九玉
「甘いからだ。すでに人質の命が目前で危機にさらされている状況を想定しろ。そこからの交渉、あるいは奪還の一手を考えさせろ」
緑谷
「い、一年生の段階でそれをやらせますか!?」
九玉
「最近はヒーローは当然、ヴィランも活躍の場が少なくなってきている。どちらを目指すにせよ、質とパフォーマンスを上げる機会は多く用意しておけ。ハメドリくんを一人やるから一緒に考え直してこい」
そういって九玉さんが両手をパンパンと鳴らす。すると奥に座っていた人型の青い鳥の群れから一体、あるいは一羽がガシャンガシャンとやってきた。
ハメドリくん
『お呼びハメ?』
九玉
「緑谷と合同授業を考えてこい」
ハメドリくん
『了解ハメ! それじゃあ、授業の膣とンホォーマンスを高める快議をあっちの仮眠室でするパコよ♪』
このエッチな言葉が流れるように紛れる会話も、日常で聞き続けると違和感を覚えることが出来なくなってしまう。とりあえず仮眠室に行ってハメドリくんと話し合う。
ハメドリくん
「……それで、さっきの案なんだが」
緑谷
「ぶふっ……」
変声機能がオフになって僕の声が聞こえる。そのギャップに毎回吹き出してしまう。
ハメドリくん
「毎回笑うよな出久……いい加減慣れろって」
緑谷
「す、すみません……ヴィラン科の生徒のどれぐらいがハメドリくんの正体が土口さんの入っている僕、というのを知っているんでしょうね」
ハメドリくん
「多分職員しか知らねえと思うぜ? その職員も実質二名しかいないがな」
"職業としての敵"改め"ヴィラン"が認められてから数年後、試験的に雄英にヴィラン科が出来た。しかし、ヴィランに対しての良質な見解を持つ人が少なく、今は九玉さんと十数羽のハメドリくんが教員をやっている。生徒もヒーロー科ほど多くなく、1クラスしかない。それでもヒーローとヴィランの共存を目指して僕達は頑張っている。
ハメドリくん
「とりあえず特別講師に理の会から呼んでくるか? 本来の俺を人質に取ったコンプレスさんとか良いと思うぜ?」
緑谷
「うーん……どうしよう……実績があるのに躊躇うってなかなかない経験だな……」
僕が悩んでいる間にハメドリくんのスマホが鳴る。
ハメドリくん
「ちょっと失礼……もしもしお茶子ちゃん? デート? 遊園地でクレープ半分ことかどう? それとも安定のおうちデート? おうちデートね了解。お茶子ちゃん担当の俺に伝えておくよ」
切り終わると同時に再びハメドリくんのスマホが鳴る。
ハメドリくん
「もしもし梅雨ちゃん? 家族への挨拶のめどが立った? 水羊羹も作って欲しい? 任せて。とびっきりの奴作っておくように梅雨ちゃん担当の俺に伝えておくよ」
いつの日かのスパダリ出久再建計画は女の子たちの"出久の数が足りない"というとんでもない課題によって頓挫した。その代わり、"ハメドリくんの中身は私達が惚れた出久である"ということに気付いてしまった。それによって、かつての2-Aの女の子たちは皆ハメドリくんと交際している。それに伴ってか、轟くんのお姉さんはすでにハメドリくんと結婚していて、ミッドナイト先生に至っては十数羽のハメドリくんを侍らせてミッドナイトキングダムを築き上げた。その他にもハメドリくんと交際している女性ヒーローは少なくなく、女性ヒーローの間ではハメ婚が流行っているらしい。様々な女性への電話をしているハメドリくんはその明るい表情とは裏腹に、ものすごくしんどそうな溜息が漏れてきた。
ハメドリくん
「……交際管理担当がここに来たのはミスだったな。別のハメドリくん呼んで来るわ」
僕は苦笑いをしながらハメドリくんを見送る。ヒーローとヴィランが手を取り合っていくこの世界で、僕はヒーローとして人を救い、教師としてヒーローやヴィランとは何かを学び教えている。この先に続いていく未来に平和はまだまだ訪れないだろう。でも、少しずつでも確実に平和が近づいている。その時が来るまで僕はヒーローであり続けたい。ここからは僕がヒーローとして、教師として、何より緑谷出久として歩んでいく物語だ。
次の番外編を書くのにヘンプリ編の設定が必要になったのでヘンプリ編を書きます。ご了承ください。