「異なる世界の六つの物語、そして至るは大団円」
「最後の物語を今こそ紡ごう──」
暗い舞台の中心に照らされた、紫の悪魔の合図で幕が開ける
「とある吟遊詩人が居た、彼は己の本質を知らなかった」
舞台上に新たにフードを被った悪魔が現れた。
顔はわからず、ただそこに立っていた
「そうして彼は世界を旅して詩にする事で他を知ることで己を知ろうとそう決めた」
吟遊詩人は進んでいく、世界の色が変わっていった。
「一つ目、夜闇に広がる収穫の行進」
悪魔の列が、全てを呑み込み進んでいった。
そしてその先頭には黒い悪魔がそこにいた。
「それは"強欲"、全てを欲した」
黒い悪魔が、全てを手に入れるために手を伸ばす、その手は吟遊詩人に添えられた
「お前も俺の列に加われ」
「俺にはその選択が出来ない」
吟遊詩人はそう言うとひらりとかわし旅をつづけた
「二つ目、相反する
激しくギラギラとした印象を受ける悪魔と流麗なるすらっとした悪魔が現れた
「それは"嫉妬"、故に相手をねじ伏せる」
「俺の音こそ最強だ」
「私の音こそ崇高だ」
そして結果は第三者でもある吟遊詩人にゆだねられた
「さあ」「どっちだ!?」
「あいにく答えは持ち合わせていない」
吟遊詩人はそう言うと答えを保留に旅をつづけた
「三つ目、龍に恋したお姫様」
龍の悪魔と少女の悪魔が現れた
「それは"色欲"、運命を見つけた終着点」
少女と吟遊詩人に問いかけた
「貴方はどうして悲しそうなの?」
「己の運命を知らないからだ」
吟遊詩人はそう言うと、哀しい背中で旅をつづけた
「四つ目、音霊住まう恐怖の館」
惹かれる音に魂が誘われる
「それは"怠惰"、試されるのみは時の運」
A1 01<=25 クリティカル/決定的成功
「ここには惹かれるものが無い」
吟遊詩人はそう言うと、囚われる事無く旅をつづけた
「五つ目、魔神の裁罰」
魔術と魔具が入り混じる音楽隊、表現するは音の魔神
「それは"憤怒"、罪深き者への裁きの一撃」
魔神の音は吟遊詩人を身勝手に裁く
雷鳴の如き怒りの音は、吟遊詩人に降り注ぐ
「己を知った時、真なる裁きの音を奏でよう」
吟遊詩人はそう言うと、神より身勝手に旅をつづけた
「六つ目、恋より愛しい美悪魔」
多くの男を魅了して、その全てに満足出来ない美悪魔が居た
「それは"傲慢"、究極の愛しか相応しくない」
美悪魔は吟遊詩人に問いかける
「貴方は私の愛かしら」
「それは俺が決める事ではない」
吟遊詩人はそう言うと、愛を知らずに旅を続けた
「旅は終わり、吟遊詩人は詩を紡ぐ」
「己の欲は何処にある」
「その心に夢は無いのか」
「愛する物は得られないのか」
「安らぐ時はどんな時か」
「自分を許せるそんなもの」
「最初からきっとわかっていた」
全てを喰らった旅人は、詩を……歌う事こそが己の本質と知った
「歌はいつもそばにあった、それが俺の本質だ」
「それは"暴食"、多くの世界を喰らい己の血肉とする生き方だった」
「今はただ感謝を、この音楽たちに全てを捧げる」
吟遊詩人は音を奏でた、音は混ざり虹となる
追ってきた大罪もそれに加わる、自我の強い彼らでも今だけ、この時だけは音に敬意を表した
それは音への感謝祭──すなわちそれは音楽祭
音の祭典は、永遠にも永く続くのだった
A組 再演
終演
音楽祭
そして、ジャスト10分。
A組の発表が真に終了した。
突然の出来事に理解が追い付いていない者もいたし、最初は憤慨して怒鳴りつけようと思ったが演目に圧倒されて何も言えなくなった者もいた。
しかし、全員が理解した。
理解してしまった。
何もかも全て持って行かれたと
「こ、これは……」
「なるほど……そういう事ね そのために"HALLOWEEN RAID"を途中で終わらせた、というわけね」
「え?それはどういう事で……というかこれはどういう事でしょうか!?」
ロビンも含め、全員がその事を気になっていた。
何故なら、この演出は全て他のクラスの演目がありきの物であり、更に各世界での話では
「それについてはあの子たちに説明してもらいましょうか、問題だらけの演目ですもの、本人たちからの説明が必要でしょう?」
「そうですね、それに納得できないでしょうしね、こんな特別扱い」
そう言ってレイラはクラスを代表して話し始めた
★★★★★★★★★★★★★
「じゃあ、説明を始めます 事の始まりは5月、"
俺はあの時からこの時のことを考えて行動して来た、まず初めに行ったのはカルエゴ卿との対談だった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
時は5月に遡る
カルエゴ卿にアポを取り、俺はバビルスの職員室に来ていた。
「
「そうですね、単刀直入に言います。 音楽祭で私たちを特別扱いしてください」
「……待て、聞き間違えたようだ。 もう一度頼む」
「私達、A組だけ演目を2つ出来るようにしてください」
「~~っ!! 貴様は何を言っているんだ!!」
頭痛がするようで、頭に手を抑えながらも怒鳴りつけられる。
俺自身もイかれた事を言っている自覚はあるのだが、ちゃんと勝算があっての事だ。
とはいえ俺も彼らに負けていられないし……それに、彼ら
だが、それは俺の欲。
今は理論的に、この交渉を押し切るしかない。
「まず、音楽祭のルールとして各クラス20分の演目を発表するという事は間違いないですね?」
「あぁ、そうだ。 これは毎年の出来事であり、変わることが無いルールだ。」
「では、一度の演目に20分という表現ではないんですね?」
「……そうだな」
「なら簡単ですね、私たちのクラスだけ10分の演目を2回行います。 音楽祭の初めと最後にね」
「駄目だ、それは公平性を損なう」
「公平性? そんなものありますか? だって、
審査員による、得点の合計値が各クラスの得点となり、それを競うのが音楽祭だ。
収穫祭は中間発表と最後に得点が発表される辺り、まだ問題は無いが、音楽祭はそうはいかない。
それも優勝クラス以外は評価されにくいというのだから猶更だ。
「何故それが公平性を損なうのだ、得点は各審査員が責任を持って発表するのだ」
「最後にまとめて評価ならそれも問題ありませんが、各クラスの演目直後に評価を行うのでは、
「……何?」
簡単な話だ、これは得点を競うタイプの競技ではよくある事、最も演技や漫才、音楽のような芸術関連に限るのだが。
最初の点数というのは全ての基準となる、良くも悪くも中心値となるのだ。
それがどれだけ良くとも、もしかしたらこれよりいいものが出るのではないかというのが脳によぎった結果、通常では満点の評価だとしても10点中6~8点になるなどもざらにあるのだ。
勿論それ以外にも理由があるのだが、今はこれで問題ないはずだ
「確かに一理あるが、だからと言って特別扱いする理由にはならない。 そもそも貴様らは「特別扱い、既にしてますよね?」」
「問題児クラスの事を良くも悪くも特別扱い、それって本当に公平なんですか? ま……もちろん悪魔ですからね、自分たちの力でそれを勝ち取るのであれば納得ですが」
「……何が言いたい」
「簡単な話です。 "バビルス一年生全員分の署名を音楽祭までに集めきります" それで私たちのクラスを特別扱いしてください」
「……そう言う事か、
条件を訂正しようとしたカルエゴ卿を止める。
俺は行き当たりばったりでの戦いなんてしない、交渉だってそうで最初からここまで計算に入れてここに来た。
「音楽祭は確かに重要なイベントです、ですが"バビルス全員の許可"なんて条件にしたら、たかが音楽祭が
「っ!! 貴様……そこまでして認めさせたいか」
「もちろん、だってムカつくじゃないですか 私達一般生徒は決してモブなんかじゃないんですよ」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「……と、まぁそんな感じでカルエゴ先生の許可を取りました」
「待てガイスト、私はその署名などしていない。 なのになぜこれが実行されたんだ」
「ん? 確かにしたよ、アスモデウス君。 これでも私一人で問題児クラスの大半の署名は集めたんだからさ」
そうして説明していく。
「まずはアスモデウス君、君については勉強会だよ 私と二人でしたアレ、覚えてる?」
「勉強会……? 入間様とそこのエイコが行ったあれか?」
「その後だよ、その時に約束してやった勉強会だ。 お互い貴族だからね、色々手間がかかったけどさ、その一環でちょいと細工したのさ」
「なんっ……!?」
まぁアムちゃんに言ったらなんか簡単にいったので驚きなのだが。
意外とこういう感じに身内でも危険が無ければ嵌めたりイタズラするのに協力してくれる
「他だと、入間くん、リードくん、アンドロくん、サブノックくん、ガープくんの5人は皆でご飯を食べた時だ、魔具への警戒足りなかったね?」
あのとき使った箱型魔具にはコピー機能だってある、それを利用すると署名くらいなら簡単に手に入るのだ。
そもそも紙自体【チェルーシル】を使用した署名書なのでより簡単だった。
「クララ、エリちゃん、ケロリ、カイムくんは収穫祭の時の契約書だよ」
俺が契約があると安心するのはそうなのだが、契約書をわざわざ書かせたのはこのためである。
別に学生間で契約を挟むなんて面倒なことはしないし、したくない。
「ソイくんは収穫祭での共同提出用紙に細工してたんだ」
カーボンコピーのようなものである、悪魔の世界ではあまり使われないからか警戒されづらくて助かる。
「アガレスくんはそもそも会えなかったからね……ちょっと上級生に頼んだんだよね」
若本……わたくし? わ……なんだったかの何でも屋的な
「アロケルくんに関しては私じゃなくて、ボボ君だよ。 騙されつつも騙した形になったらしいよ」
収穫祭で騙されたときに多少はやり返していたらしい。
ちょっとドヤ顔をしているので、まぁやり返せてよかったねと思っておく。
他にも自己紹介シートとか終末日でクラスの皆に手伝ってもらったりとした結果、音楽祭の前に署名を集めきることが出来たのだった。
「と、まぁこんな感じで1年全員の署名を集めきったんだよ。 どうだい?A組も結構やるだろう?入間くん」
「……っ」
「ま、後は順番が固定されているからってので前半を"HALLOWEEN RAID"の初めだけ、収穫祭から音楽祭に切り替わる初めを演出したんだよ」
「じゃ……じゃあ僕たちの発表を真似したのは……!」
「まぁそれはね……」
「確実にこの音楽祭で優勝するため、でしょう?」
アムドゥスキアスに俺の声が遮られた、だがまぁその通りだ。
「この子たちは、音楽祭を支配していたのよ。 初めと終わりをどちらも行えるってことを最大限利用した形になるわね」
「はい、その通りです。 私たちはこの音楽祭の他のクラスの演目を全て取り込んで一つの作品とすることを目的としました」
「だから演目名が、"音楽祭" 全く、傲慢だけど……してやられたわね でも、勘違いしないようにね、この子たちは
そうなのだ、俺達A組は全員が音楽祭準備期間であった日にちで家にちゃんと帰れた回数は殆どない。
ただでさえハロウィン・レイドをプロ級にまで練習しなければならないのに、他のクラスの演目を同じくプロ級にまで仕上げなければならなかったのだ。
そのかいあっての出来だが、2度と同じことが出来る気はしない。
「持ち時間が20分、そしてこのクラスの演目は他のクラスの演目を巻き込んだことでその真価を発揮した。 つまり、音楽祭合計120分全てがあなた達の演目だったのね」
「……はい」
ここまで長かった、友情も親愛感情も何もかもを利用してきての一回きりの大勝負、その結果が今ここに出る。
「わかったのじゃ、物足りなさの正体。 そしてそなたたちが行ったことの重大さが。 これは[6]点満点を与えねばならないじゃろう」
まずはキュパが札を上げる。
観客としての顔ではなく、芸能界での社長としての面での評価、正しく最大評価であった。
「全てをまとめ上げたその手腕、それに加えてそれに応えた全体。 これは[6]点以外ありえない」
続いてメーメーが札を上げる。
プロとして、音楽で戦ってきた彼女にとってもここまでの演出は初見だった。そしてそのプロとしての賛辞の意味での最高得点だった。
「……あなた達には音符はあげられないわ、でもね 今回の音楽祭で最も偉大な事を成し遂げたのは間違いなくあなた達よ。 誇りなさい」
そしてアムドゥスキアスが上げたのも[6]点。
[6]+[6]+[6]=18点。
音楽祭的最高得点として言うのならば666点。
それが俺たちの努力の結果だった。