カゲカゲの能力を持って生まれた件   作:カワンチャ

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第4話 脳無の素材

「パワーローダー先生!」

 

「お前達は1-Aの生徒だな。俺に何か用かい?」

 

「コスチュームのことで相談したいんです」

 

 俺達は開発工房にいるパワーローダー先生に話しかける。

 相澤先生曰く、彼ならば相談に乗れるとのことだ。

 

「私のコスチュームって手袋とブーツだけなんですよ」

 

「まあ透明人間の性質上、活かそうとすると布地が減るのは当然だろうな」

 

「はい……でも裸だと冬場や舗装されてない道で活動するのが難しいんです。だから3年のルミリオン先輩みたいに自分の毛髪でコスチュームを作れるのではと思い相談しに来ました」

 

「クケケ、出来ないわけじゃないぜ。ただ特殊な作り方をしないといけないから時間はかかるだろうな」

 

「それでも構いません!」

 

 その言葉を聞いた透は全身で喜びを表現する。

 裸でも平気そうにしてたが、ちゃんとしたコスチュームを着たいと思っていたらしい。

 

「……ちょっと残念だな」

 

「変態! エロ! 峰田!」

 

 流石に峰田呼ばわりは言い過ぎじゃないか?

 

「じゃあ毛先を10㎝ほど切って容器に入れな。必要ならサーモグラフィーを貸すぜ」

 

 パワーローダー先生が何処からか容器を持ってきた。

 そして透はサーモグラフィーを参考にして自分の髪の毛を切り始めた。

 

「それで自分はコスチュームにライトとハサミを追加したいんですが……」

 

「構わないぜ。簡単な改修だから数日で終わるはずさ」

 

「ありがとうございます!」

 

 後は透が髪を切り終わればミッションコンプリートだ。

 

「髪の毛を切るなんて始めてだよ~」

 

「まあ普通の美容院だと切って貰えないだろうからな」

 

 透曰く、毛髪などが体から離れると透明化が解除されるらしい。

 なので普段のコスチュームは色付きで彼女が着た時のみ透明になるとのこと。

 個性を伸ばしていけばアブサロムのように自分以外も透明できるようになるだろうし、それまでの繋ぎだな。

 

「出来ました!」

 

「ご苦労さん。コスチュームは数週間ほど待てば完成するはずさ」

 

「かなり早いですね」

 

「雄英の設備は超一流だからな。プロになったらコスチュームを製造する事務所とのコネは重要になるぜ」

 

「な……なるほど!」

 

 俺のコスチュームには特殊機能がないのでコネは特に必要ないだろうが、透の場合は死活問題だろうな。

 とはいえサイドキックに特殊なコスチュームが必要な場合を考えると、ある程度のコネはいるよな。

 

「一応、髪の毛を20㎝ほど切れば製造期間を短縮することもできるぜ。毛の細胞を増殖する手間が減るからな」

 

「いえいえ、十分です! ありがとうございます!」

 

 透明なんだから見た目を気にする必要がないとはいえ、流石に髪をバッサリとカットするのは女の子として嫌なのだろう。

 

「では失礼します!」

 

 というわけで俺達は開発工房を後にして下宿へと帰宅する。

 そして雄英での学校生活が始まって数日が経った。

 学級委員長決めやマスコミが侵入するなどのイベントもあったが、これから起こる事件に比べれば些事だろう。

 原作との差異も委員長決めの時に俺は透に投票し、透は俺に投票したくらいだし。

 

「今日のヒーロー基礎学だが……俺とオールマイトと13号の3人体制で見ることになった」

 

 相澤先生が俺達に説明を行う。

 USJの警備を大幅に強化しても良いのだが、それだとヴィラン連合の動きが変わるかもしれないからな。

 コッソリ警備を強化するにしても、それだと青山が裏切者としてAFOに殺されるかもしれない。

 だからこそ教員の数は最低限だ。

 まあ最初からオールマイトがいるので大丈夫なはずだ。

 

「なにをやるんですか?」

 

「今日は災害水難なんでもござれ。レスキュー訓練だ」

 

 瀬呂の質問に相澤先生はRESCUEと書かれたプレートを掲げて返答した。

 影法師(ドッペルマン)は変幻自在なのでどんな場所にも入れる。

 だから救助にも割と使えるはずだ。

 

「コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上、準備開始」

 

 というわけで更衣室で着替えてからバスに乗り、救助訓練を行う施設へと向かう。

 ちなみにバスは観光バスではなく路線バス形式だった。

 なので委員長に就任した飯田が俺達を整列させた意味はない。

 

「テーマパークみてぇ!」

 

 施設内には山岳やウォータースライダーや燃え盛る街などがある。

 最高峰のヒーロー科である雄英なだけあって設備も超一流だな。

 そんな事を思っていると今回の救助訓練を担当するスペースヒーロー『13号』先生が紹介を始めた。

 

「水難事故、土砂災害、火事……etc、あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も……嘘の災害や事故ルーム、略してUSJ!」

 

「「「USJだった!?」」」

 

 著作権とか大丈夫なんだろうか?

 まあ某ネズミーランドよりは寛容だと思うけど。

 

「えー、始まる前にお小言を1つ、2つ……3つ……4つ……」

 

 段々と増える小言の数に、みんな「増える……」と言いたそうにしている。

 そんな困惑が広がる中、13号先生は諭すように話し始めた。

 

「僕の個性は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込んで塵にしてしまいます」

 

「その個性で、どんな災害からも人を救い上げるんですよね!」

 

 13号先生の言葉に緑谷が反応し、その横で麗日がコクコクと物凄いスピードで頷き続けている。

 好きなのは分かるけど笑いそうになるからやめて欲しい。

 

「ええ、しかし簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう個性を持つ人がいるでしょう。超人社会は『個性』の使用を資格制にし厳しく規制することで一見成り立っているように見えます。しかし一歩間違えれば容易に人を殺せる『いきすぎた個性』を個々が持っていることを忘れないでください」

 

 それに関してはその通りだ。

 クラスメイトの殆どは個性で人を殺すことが出来る。

 俺だって太陽光が照っている状況で相手の影を奪えば簡単に殺せるもんな。

 

「相澤先輩の体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では……心機一転! 人命のために『個性』をどう活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。救けるためにあるのだと心得て帰ってください」

 

 ここまで話した13号先生は、まるでショーの後かのように優雅にお辞儀をした。

 

「以上! ご清聴ありがとうございました!」

 

「ステキー!」

 

「ブラボー! ブラーボー!」

 

 クラスメイト達は13号先生に拍手を送る。

 自分の個性が単なる便利な力ではなく、他者を傷つけうる武器であることを自覚して、どのように扱うべきが考える必要がある。

 当たり前のことだが忘れてしまいがちな大切な事だ。

 

「そんじゃ、まずは……」

 

 相澤先生が授業の段取りについて話を始めようとした瞬間、USJの中心に位置する大きな噴水前に黒い靄が現れる。

 そしてソレは瞬く間に大きく広がり、そこから大量の人間が出てくる。

 

「一塊になって動くなっ!! 13号、生徒を守れッ!」

 

「なんだアリャ!? また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

 

「あれはヴィランだ!」

 

 奇しくも命を救う為の訓練に現れた命を脅かす存在。

 この先、雄英のヒーロー達を幾度となく脅かすヴィランとの邂逅が始まった。

 原作通り死柄木と黒霧、何より脳無がいるな。

 

「透、俺の傍から離れんなよ」

 

「へ?」

 

 オールマイトがいるので大丈夫だとは思うが万が一があるからな。

 俺は影法師(ドッペルマン)を実体化し、いつでも戦えるようにする。

 

「ヴィラン!? ヒーローの学校に入り込んでくるなんて、バカすぎるぞ!」

 

「先生、侵入者用のセンサーは?」

 

「もちろん、ありますが……」

 

「現れたのはUSJだけか学校全体か、何にせよセンサーが反応しねぇなら無効にそういう事ができるヤツがいるって事だ。校舎と離れた隔離空間、そこにクラスが入る時間割り……バカだがアホじゃねぇ。これは用意周到に画策された騎衆だ」

 

 轟の冷静な指摘でクラスメイト達の緊張感が増していく。

 

「13号避難開始! 学校に電話を試せ! センサーの対策も頭にあるヴィランだ。電波系の個性が妨害している可能性もある。上鳴おまえも個性で連絡試せ!」

 

「っス!」

 

「俺ら2人でヴィランを倒しますよ」

 

「ああ!」

 

 そしてオールマイトは一瞬で木っ端ヴィランを倒していく。

 残るヴィランは死柄木と脳無2体と黒霧だけだ。

 

「雑魚じゃあ話にならねぇよな。脳無ども! オールマイトを殺せ!」

 

 相澤先生は死柄木とオールマイトは脳無達と交戦を開始する。

 

「さあ、逃げますよ!」

 

「させませんよ」

 

 俺達が出入り口の前まで到達しようとした時、突如として黒いガス状の身体を持つヴィランが立ちはだかった。

 

「始めまして。我々は(ヴィラン)連合。この度、ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは……平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 

「は?」

 

 それは緑谷の声だった。

 平和の象徴を殺すなんて不可能な目標を掲げている事に脳の理解が追い付いていないのだろう。

 

「そして私の役目は……」

 

「でやァッ!!」

 

「死ねェッ!」

 

 13号先生がブラックホールを発動するよりも早く、切島の手刀と爆豪の爆破が黒霧を襲う。

 

「危ない危ない……生徒とはいえど優秀な金の卵」

 

「ダメだ……どきなさい2人とも!」

 

 前にいる2人のせいでブラックホールは使えない。

 その隙をついて黒霧はモヤを広げて俺達を囲む。

 まあ原作通りだから大丈夫だろう。

 

「私の役目は……貴方達を散らして、嬲り殺す!」

 

 ……本当に大丈夫か?

 生徒達が飛ばされたエリアに強豪ヴィランがいない保証はあるのか?

 俺という異分子のせいでバタフライエフェクトが起こっているかもしれないぞ。

 疑問が湯水のように湧き上がる。

 

 せめて透だけでも助けたい。

 だから彼女の手を握る。

 そして俺達はモヤの中に飲み込まれた。

 これで自由に行動できるな。

 


 

 妙な浮遊感からの落下、そして着地。

 ……ここはUSJの土砂ゾーンか。

 そして近くには轟と透がいる。

 彼と同じ場所に飛ばされたのは幸運だな。

 

「オイオイ、どっちも男だぜ」

 

「つまんねぇな!」

 

「まあ2人だけなら余裕だろ」

 

 ヴィランの数はざっと30人くらいだろうか。

 そして明らかにヤバい雰囲気を放っているのはいない。

 

「轟ィ、数人くらいは残せよ」

 

「ゲームじゃねぇんだぞ」

 

「いや、割と真面目な話だ」

 

 明らかに相手を舐め腐った態度はヴィラン達の癪に障った。

 

「なッ……舐めやがって!」

 

「ブッ殺せ!」

 

 怒りのままにヴィラン達は俺と轟へと一斉に襲い掛かるが、足場が不安定な土砂ゾーンなだけあってスピードは遅い。

 故に轟は確実にヴィラン達の身体を凍らせていく。

 

「コイツ、ただのガキじゃねぇっ!」

 

 そりゃあ雄英に通っている生徒が普通の子供なわけないだろ。

 

角刀影(つのトカゲ)!」

 

「おりゃー!」

 

 そして俺と透もヴィランを数人ほど撃破した。

 残りは轟の半身から広がる氷によって飲み込まれていく。

 

「散らして殺す……か。言っちゃ悪いが、あんたらどう見ても『個性を持て余した輩』以上には見受けられねぇよ」

 

「本命は中央広場にいたヴィランだろうな。加勢にいくか?」

 

「もちろんだ」

 

「じゃあ、その前に準備するか」

 

 俺は気絶したヴィランをライトで照らす。

 すると影が地面にクッキリと映った。

 そしてソレを実体化させてハサミで切り取る。

 

「なにやってんだ?」

 

「影を奪った」

 

「……そうか」

 

「その一言で流しちゃダメでしょ!」

 

 透からツッコミが入ったが緊急時だから仕方ない。

 というわけで俺達は中央広場へと急いだ。

 そこではオールマイトが脳無と殴り合っていた。

 相手の個性が消せれば楽なんだが、残念なことに相澤先生は死柄木と戦闘中だ。

 じゃあ、やりますかね。

 

「轟、足止めを頼んだぞ」

 

「ああ」

 

 轟はオールマイトを巻き込まず脳無の下半身を的確に氷漬けにした。

 その隙に俺は脳無に奪った影を投入した。

 

「さあ、動きやがれ!」

 

 俺が指示を出すと脳無は自分の身体ごと氷を砕いた。

 そして超再生の個性で身体が回復する。

 

「身体が再生した!?」

 

「コイツは超再生の個性だ。オールマイトを倒す為だけに作られた超高性能サンドバックさ。さあ、子供を殺せ!」

 

 死柄木の指示で脳無は動かない。

 なぜなら影を入れられたことで俺の支配下にあるからな。

 脳無の素材は人間の遺体、つまりはゾンビに出来るのは道理だろう。

 要するにパシフィスタの威権順位を無視して乗り物にしたブルーグラス中将みたいなもんだ。

 まあカゲカゲの能力と相性が悪すぎたな。

 

「キシシシ! 脳無! そこのヴィランをブッ飛ばせ!」

 

「腐れ了解!」

 

「は?」

 

 脳無は自慢の超パワーで死柄木を殴り飛ばした。

 これには、この場の全員が困惑している。

 そういやオールマイトに個性の詳細を話してなかったな。

 

「コイツは敵じゃねぇのか?」

 

「今は俺の支配下にある」

 

 それを聞いた脳無はピースサインをした。

 

「死柄木弔!」

 

 出入り口付近にいた黒霧は急いで死柄木の下へワープし撤退を開始する。

 脳無が遠くにブッ飛ばしたせいで撤退を止めることは出来ないし、そもそも捕まえたらAFOが計画を変更する危険があるので何もしない。

 

「相澤くん、生徒たちの保護を優先しよう!」

 

「ええ!」

 

 オールマイトと相澤先生は各エリアへと散らばっていく。

 そして俺達は13号先生の下へと急ぐ。

 

「皆さん無事でしたか!」

 

 13号先生は傷1つ負っていない。

 これは根津校長が裏で情報共有したのかな?

 

「それで彼は……」

 

「後で影を抜くんで安心してください。それと脳無、クラスメイトが怖がっているから遠くで待機してくれ」

 

「腐れ了解!」

 

 脳無は命令に従い遠くで正座する。

 なんというかシュールだな。

 

「じゃあヴィランに飛ばされた人達が来るまで待機しますか」

 

 こうしてUSJ襲撃事件は怪我人0で幕を閉じた。

 その後は警察と教師陣が駆けつけ次々とヴィランを逮捕し、俺達は取り調べを受けることになった。

 なお校長の手回しにより取り調べを担当したのは原作知識が共有済みの人間だ。

 なので『なぜ脳無が死体だと分かったのか』『なぜ影を入れたら死体が動くのを知っているのか』などの疑問は聞かれていない。

 

 怪我人は出さずに脳無を捕縛したわけだし悪くない結果だろう。

 正直、オリジナル脳無が出るんじゃないかとヒヤヒヤしてたのは内緒だ。

 この調子でAFOの悪だくみをプチプチと潰しましょうかね。

 それが知る者の責任だ。

映画編を入れるかどうかのアンケートをさせてください!

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