全てを飛ばして完結編です。
もしかしたら間のことを書くかもしれませんが、とりあえず未完のままにするのは無責任かなと思い書き綴りました。
中身は薄く、この作品が誰かの記憶にのこっているとも思っていませんが、もしよければ暇つぶしに最後まで流し読みしていってください。
───数年後。
「よー日向、差し入れ」
「……!?夢斗先輩!お久しぶりです!」
「はん、見違えたなぁお前」
場所はリオデジャネイロ。
日本からすれば地球の裏側で、夜中。
砂の上で、こんな時間帯に身体を動かしてるとか正気じゃない。
だが、そのイカれたバレー愛が変わってないようで何よりだ。
「納豆にうどんの麺に、米だ。あとレトルトのカレーにカップラーメンだ」
「神…!いや、お母さん…?」
「俺に母性求めんじゃねえ海に蹴り落とすぞ」
ただ、それでも日向は変わった。
きっときっかけはあの日、全国。
鴎台に勝って、梟谷に負けたあの試合だ。
「先輩は…なんか…」
「なんだよ」
「なんかまた綺麗になりましたね?」
「最近は姉貴より口説かれる量が増えたよ、結婚したからなあいつ」
「すげぇ!」
身体を壊しながらするバレーを横で見てきた日向の体調管理は万全だった。
それでも、全国レベルで戦えるメンツの少ない烏野は各選手の負担は大きくて。
俺達の翼は途中で羽ばたけなくなった。
全国ベスト4。
素晴らしい結果だ。
…素晴らしい、結果だと思う。
誰も謝ってない、全員が出すもの出し切った敗北は新鮮だった。
「俺はお前らの方が羨ましいよ」
「……?」
「楽しいか、バレー」
「おす!!…先輩もやります?」
「ビーチバレーって俺のなかでバレーじゃないからなぁ…別競技じゃん」
「そん…な、ことはありますけど!」
「はは、おいおい。そんな必死になんなよ。バレーなら日本でいくらでもやってやるから」
だけど、敗北は敗北だ。
次の年で普通に全国への切符をもぎとったものの、準決手前で負けたのもクソだ。
そんな俺の負け惜しみはさておき、その後の烏野の選手一同、進路はバラバラだ。
日向は高校卒業後リオデジャネイロに飛び、影山はプロ入り。
先輩方とは今も連絡を取り合っているのであらかた近況は把握しているが、一番の衝撃は姉貴が田中と結婚したことだろう。
おかげで実家に帰るときはタイミングを見計らわなくてはいけなくなった。
一度普通に実家に寄ったら家族の団欒に田中が混じってて普通に気まずかったんだよな…。
普通に同窓会とかで外で会うぶんにはイイんだけど、どうしても実家にいる田中という絵面に慣れるにはもうしばらくかかりそうだった。
で、まぁある意味仕事の一環で俺はリオデジャネイロにいるわけだけど。
「───うん、やっぱ見違えたよお前」
日向は変わった。
育った、と言ってもいい。
「筋肉、無事ついてるようで何よりだよ」
バレーボール。
コートの中央のネットを挟んで、2チームでボールを打ち合う。
ボールを落としてはいけない、持ってもいけない。
三度のボレーで攻撃へと繋ぐ球技。
それを自分以上に愛するバカが世界にいるのを確認できて、俺は嬉しくなった。
「それで、先輩はなんでここに?」
「んなもん、ニンジャショーヨーを勧誘に決まってんだろ」
「勧誘?」
「清水夢斗。日本バレーボール協会公認コーチやってまーす。お前みたいな選手がいつまでも野良だと困るんで、さっさとどっかのチームに所属してくれ」
●
にへら、と笑うその先輩の笑顔があまりにも眩しくて日向は思わず目を覆った。
髪の毛1本から爪先まで、その先輩の所作は美しい。
磨き上げられている。
日向をして自分よりもあると思われた飢えは、その先輩を完璧美人へと昇華していた。
小さいからこそ、日向翔陽が、星海光来が、鷲匠監督が高さへの飢えを得たのだと言うなら、その人の飢えはすべてに向いていた。
───目の前に全部を自分でできるようになった人がいたから、日向はリオデジャネイロに来たのだ。
…そんな人からの勧誘を断れるはずもなく。
日向は日本のジャッカルで妖怪大戦争に参加することになる。
まぁもともと参加するつもりだったし…と、誰ともなく言い訳しながら日向は影山と数年ぶりの公式戦へと挑んだ。
そして。
「ようこそ、俺よりヘボで雑魚な日本代表ども」
───昨日の敗者たち。
今日のお前は何者だ?
「お前らに、バレーボールってのを教えてやる」
敗北の天才に見上げられ、誇らしそうに見送られる選手一同は、振り返ることなく
その少年には才能がなかった。
コートに長時間立ち続けるという才能が。
誰よりも長くコートに立っているのが勝者だとするのなら、彼は間違いなくいつだって敗者だった。
だが、彼は天才だった。
あらゆるポジションを完璧にこなす、パーフェクトオールラウンダー。
欠点は、虚弱体質であること。
出場可能時間は1セット目のおよそ30分のみ。
彼のプレーには神が宿る。
なら、その教えを少しでも吸収するのは、プロの選手として当然のこと。
───これは虚弱体質の天才が、それでも大好きなバレーボールを笑顔でするだけの物語だ。
というわけで、まぁプロにはならんわな、という話でした。
今のところリハビリがてらリゼロの小説を書いたりと、創作活動を思い出しながらネットの隅っこでダラダラしている感じなので、たぶん全国大会編を書くことはない気がします。
この小説は自分のなかではなかなか珍しいタイプの小説で、取り扱いは難しいところがあったのですが、こうしてだいぶ遅ればせながら完結できてよかったです。
それでは、もしまたどこかで見かけるようなことがありましたらその時はよろしくお願いします。