時は過ぎる。悲しみしか生まなかった犠牲も命をかけた戦いの日々も、いつかは過去となり次の時代が訪れる。
命ある限り逃れられぬ運命。生まれて育って大人になって、また新たな命を紡いで次代へと託していく。
大正から昭和へ、平成を経て更に未来。和暦は令和、鬼を巡る戦いは遠い過去のものになり、平穏を当たり前とする時代。
この辺りには二つ、有名な飲食店がある。
一つは蛇の置物とメガ盛りが特徴的な定食屋。ピンクの三つ編み髪の奥さんと少々無愛想な店主さんが切り盛りする温かいお店。
そしてもう一つはやたら漬物や野菜が美味い和食屋。筋骨隆々の店主と養子として引き取ったという二人の娘と一人の息子達が働いている。
今日も今日とて両店共に人気。片や食べ盛りが腹を空かせて乗り込み、片や仕事に疲れた大人達が癒しを求めて来店している。
「梅ちゃーん、お漬物オカワリしていい?」
「いいよー!あ、100円ね!」
「俺も俺も!」
「
「今揚げてっから少し待ってくれ。ちょっとデカいの揚げてっからなぁ……」
「おっ、マジで?よっしゃ!」
「父さんごめーん!お皿一個割れたー!」
「…………!?」
「ああ、いいよ親父。俺が行くから……
「うん……」
都会のど真ん中にあるとは思えない、馴染みのある客だけでなく初来店の客でさえ頑張っている子供達を見て微笑ましそうにしている。
元々この店は
僅かな常連客を持て成すだけの細々とした経営で、お世辞でも人気の店とは言い難い有様だった。
そこに飛んできた親族の訃報。しかも複数。
両親を亡くした双子の兄妹と一人娘を放っておくなどできるはずもなく。管はすぐに彼らを引き取る事を決意した。
金銭?FXと株でバカ勝ちして道楽で店をやってるようなものなので問題なし。
家?金があるんだからいくらでも増設したるわい。一人一部屋ずつ与えてもまだいけるぞ。
子育て?ンなもん自分が死ぬ気で頑張れば何とでもなるやろがい!
というわけで唐突に四人暮らしが始まった。
当然ながら最初は打ち解けられなかったし、夜中に泣き始めたりすることもあったけれど。
様々な紆余曲折を経て四人はちゃんと家族になれた。ついでに義太郎が『俺がお兄ちゃんだ』と何かに目覚めた。
彼らのことを心配していた常連客も子供達の成長を喜び、時折手伝いにくる子供達を見守っては微笑ましげにしていた。
いつかは自分達がこの店を継いで、ずっと先まで父親の名を残していくんだと張り切っているご様子。管は盛大に泣いた。いい子。
「ちわーっす、三人なんですけど席空いてます?」
「おお、
「うす。おら、行くぞカス」
「そのカス呼びやめてよ!?」
「アンタの日頃の行いが悪いんじゃない」
「なんだとぅ……」
今となってはその子供達も立派な従業員。一々父親に確認を取ったり慌てふためいたりすることもないのだ。
ちなみに今来たのは我妻家の三兄妹。捻くれた長男の岳人に強気な長女の燈子、そして感情豊かな次男の善照。いつでも賑やかなので遠くからでもわかるし、来店してもすぐに気づける。
まあギャーギャーと言い合いが酷くなると義太郎か管あたりに睨まれてスンッ……と大人しくなるけれども。公共の場では静かにしようね。
最初の方にも言ったがこの辺りの飲食店はこの店ともう一つの定食屋が人気。沢山食べる人は定食屋の方を選びがちなのだが、そうでない人や気分を変えたい大食いの人もこちらに来店する。
今日はいつにも増して学生が多い。さては映画を見に行く前の食事をしに来たな。超人気なアニメの三部作映画の第一章が公開されてるもんな。
「む!今日は一段と人が多いな!」
「あれ?桃寿郎?こっちに来るの珍しいね」
「定食屋でも食べたのだが少し足りなかったのでな!二人なのだが席はあるだろうか!」
「あるよー。カウンター席だけど」
「構わない!」
「へー……こんな感じなんだ」
「お前来たことなかったのかぁ?」
「うっす、向こうの定食屋しか行ってなかったんで……」
「ここはヘルシーな飯が美味ェぞぉ。昼からもパトロールあるからしっかり食っとけェ」
「うっす!ゴチになります!」
「はーい、二名様ごあんな〜い!」
「もう、姉さんったら……」
「あ、あはは……だってぇ……」
「あ!えーと……鶺鴒女学院の!」
「ん?ああ、はい。二名ですが席はありますか?」
「あります!さっき空いたばかりだからちょっとだけ待っててくださーい!」
あれからも客足は途絶えず、しかし子供達のこともあるので二十一時で営業終了。最後に店のシャッターを下ろして店内で一息ついていた。
「はー……疲れたー…………」
「今日はやけに人が多かったなぁ」
「ほら、映画もですが少ししたらお祭りがありますし……それで多くなってるんじゃないですかね?」
「「それだ」」
本人達にはいつもの光景なのだが、妹二人の見目が麗し過ぎることだけは自覚がない。お兄ちゃんは不安である。
梅は降り積った新雪のような白い肌と輝くように綺麗な銀髪。強気に見える顔立ちも絶妙なバランスによってどこか幼げな可愛らしさを残している。
零はアルビノという先天性の特徴があり、こちらも美しい白肌と白い髪。加えて梅と違い血のように赤く美しい瞳が神秘的な美しさを生み出している。
そんな見た目をしているものだから当然死ぬほどモテる。梅は強気なのでナンパ野郎が何人寄って来ようが股間に蹴りを入れられるのだが、零は少々臆病なもので不安が残る。
過去には父親の管と兄の義太郎二人で不埒者に天誅を下したこともあったっけ。不埒者はどうなったのかって?そりゃ勿論、ねぇ……?
「…………」
「あ、はーい。今行くねー」
「作ってばっかだと自分の飯のこと忘れちまうなぁ……」
「お兄ちゃん少食だしね。ちゃんと食べなさいよ!」
「……おう」
客が帰ったら今度は自分達の分。客に提供していたメニューにない料理を用意した管に呼ばれ、晩御飯の時間となった。
「…………?」
「ん……調理師免許と製菓衛生師取るつもりだぁ」
「……国家資格では?」
「お兄ちゃんは凄いから取れるでしょ」
「おう、頑張るぜぇ。親父の店、もっとデカくしてやるからなぁ」
「…………!」
「ちょ、お父さん泣くの早いですって。涙腺どうなってるんですか」
「そのうちマンガみたいな泣き方しそうよね」
「流石にねぇだろぉ…………ねぇよなぁ?」
管家は今日も平和。強盗の二、三人くらい返り討ちにできる家の平和を乱せるものなら乱してみやがれってんだ。
「おとーさーん!」
「…………?」
「明日皆で映画見に行かない?ほら、今話題になってるヤツ!」
「…………」
「何か凄い面白いんだって!学校でも皆凄かったって言ってたし、私も行きたい!」
「……梅、お前あのアニメ知ってんのかぁ?」
「え、知らないけど」
「…………原作を履修してから行きましょうか。そっちの方が楽しめますよ」
「ええー……わかった」
以上をもちまして『体が生えたディ〇ダみたいな鬼』を完結とさせて頂きます。最後までお付き合いくださりありがとうございました。
映画公開からどハマりして自分も何か書きたい!と衝動的に書き始めた本作でしたが、皆様から頂いた感想と評価のお陰で最後まで書き切ることができました。
また気が向いたら変な作品を匿名でぶん投げていると思うので、その時はまたよろしくお願いします。
ありがとうございました。
ほぼ原作沿い部分は大幅カットしてもいい?
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ええんやで
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駄目、全部書け