彼と、彼女の後ろ姿を。
この物語は東方Projectの二次創作です。
ぽっと出の男がいます(言い方)
でも視点主は女の子だし、一応原作の子です……えぇ。
突発的に書きてーって衝動に任せて書いたので、変なとこあるかも。
ある日。人里で、彼と彼女の後ろ姿を見かけた。
だから気になって、こっそり後をつけた。
⸺数時間前の私に、言いたい。今、後をつけるなって。
*
「⸺……っ///」
「……♡」
あぁ……見てしまった。
少しだけ、期待をしていたんだ…でも、駄目だった。もっと早く行動していれば、だなんて、彼女への僻みだ。BBS、だったろうか……奇しくも私は、それと同じ状況になった形となるのか。
私が好きだった彼は、外来人の少年だった。
私が行きつけの小道具屋に向かう途中、魔法の森蹲っていたのを、保護したのが出会い。
それから、彼の様々な出先について回った。
そんな日々から暫く経った頃、幻想郷全体が大規模な異変により、荒れに荒れた。博麗の巫女も白黒の魔法使いも、私が知らない強い人たち皆が、異変を解決する為、奔走していた。
優しい彼も異変を解決する為、方々を走り回っていた。そんな忙しい中でも、彼は人助けの手を止めなかった。そんな場面を何度も見て……私は彼を、好きになった。
⸺異変の元凶が、彼の手によって討たれたと、話が回ってきた。それを聞いて私は……彼は私の手が届かない程、遠い存在になってしまったのだと、気づいてしまった。…………なのに。なのに私は、必死になって彼との交流を続けている。
私は彼に相応しくない。
私なんかが手を伸ばしていい存在じゃない。
私みたいな女の嫉妬なんて、彼が選んだ女性に失礼だ。
あぁ、嫌なのに…嫉妬なんて、したくないのに。
私の羽根は、彼女に劣って。
私の速さは、彼女に劣って。
私の強さも、彼女に劣って。
……今、彼女の座を奪おうとしても、撃退されるだけ。でも、だからと言って、強くなって奪おうとすることも………出来ない。
だって、彼の顔は……⸺。
「⸺………へへっ///」
⸺見たことも無いくらい、嬉しそうだったから……。
私じゃあ彼を笑顔にすることなんて、出来なかったんだなって、心が…苦しいよ……。
*
「いらっしゃ………おや、久し振りじゃないか。ここまで顔を見せないのは、初めてのことなんじゃないかい?」
「そう、ですね…あはは」
ここ暫く、外に出る気も動く気も出なかった。だけど流石に私が妖怪といえど、食事や外出をしないのは不健康極まりない。だから半ば無理やり身体を動かし、小道具屋⸺香霖堂へと来た。
「ふむ……そういえば、君が来店していないうちに、新しい本が入ったのだが…見てみるかい?」
「……はい、見てみます」
いくつか手渡された本の表紙と数ページをパラパラと流し見していく。その中の一冊……『男の恋と女の恋の違い』という本が、無性に気になった。
代金を払い、読みすすめていく。
「おーっす、こーりん。八卦炉の定期メンテナンスに来たぜ……あー後、霊夢のヤツが「香霖堂に行くなら、頼んでた夏服貰って来て」って言ってな…」
曰く、男と女で脳の使い方が違う。
曰く、男の恋は名前をつけて保存。
曰く、女の恋は上書き保存。
曰く、恋と愛は同じようにみえて、全く違う。
………多分、男は恋の記憶を書いた紙を大事に大事に保管して、女は恋の記憶を木簡に書いていたのを削り取って新しい恋の記憶をする。コレが、外の世界の誰かの認識なのだろう。
あぁ…確かに。思い返してみれば、私が彼に向けていたのは恋心。でも、彼女が向けていた視線は……少なくとも、私と違っていた。
「なるほど…じゃあ、八卦炉を預からせてもらうよ。それと、霊夢の服なら用意が出来てるから、今取ってくる」
⸺バッサリと、諦めるのが……一番賢いのだろう。
でも、彼女の新聞を見ると……あの日、甘味処で見てしまった光景を、思い出す。思い出して、頭の中がぐしゃぐしゃになる。
「おう! ⸺あ! 八卦炉は、いつも通り三日後か?」
何度も、何度も。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も………⸺、考えて、考えて。
頭を振って、馬鹿な考えを捨てる。
捨てているのに、何度も戻ってくる。
「あぁ、いつも通りだ……では、少し待っていてくれ」
「分かったのぜ!」
⸺彼女を押し退ければ、彼を私のモノに出来るって。
そんな訳がない。彼は、彼女の隣が一番幸せなんだ。私程度じゃ、彼の全てを吐き出させて、受け止めてあげられないんだ。だから、こんな考えなんて………ダメ、なんだよ。
「⸺………ん? どうしたんだ朱鷺子。いつも以上に暗い顔してないか?」
「……ぇ、ぁ…まり、さ……? 来てた、んだ…?」
「おう! あー……なんかあったのか?」
なんと答えようか……いや、迷わず全てを正直に、あったことを全て言おう。そうしたら、私のダメな考えを否定してくれるから。
「あのね、実は……⸺」
*
「⸺……だから、その…失恋、しちゃってるんだよね…」
「朱鷺子……」
「勇気を出せなかった、臆病者の醜い嫉妬でしょ…?」
「……朱鷺子。泣きたい時は思いっ切り泣くと、軽くなるぞ」
「……ぇ?」
泣く……? な、いて…軽く……ぁ……。
⸺ボク、最初に朱鷺子お姉さんと出会えてよかったよ。ありがとう、お姉さん!
⸺あの人の羽根、凄く綺麗……あ、勿論朱鷺子お姉さんの羽根も綺麗だよ! 嘘じゃない、ホントだって!
⸺朱鷺子お姉さん、いつもボクにご飯くれるけど…大丈夫? ちゃんと食べてる?
⸺朱鷺子、大丈夫か……?
過去の言葉が脳裏に浮き上がる。
彼の優しさが、嬉しかった言葉達。
「ぅ…あ…ぁあ…あぁぁぁぁああぁっ⸺」
泣いて初めて、心が軽くなっていく様に感じた。
***
「有難うございます、文さん。俺の話を聞いていただいて」
「いえ。此方こそ、幻想郷の英雄である貴方の取材が出来てありがたいです」
本当に有り難い。
何せ、彼の事を書いた新聞は飛ぶように売れるのだ。
「それにしても……す、好きな人の話、とか…無くてもいいのでは……?」
「いーえ! 残念ながら、読者は英雄の色恋沙汰に酷く興味がありましてぇ……想い人への愛、聞いている此方も幸せになりましたよ」
「うぅ……///」
前半部分は嘘だ。
私の個人的楽しみ用に聞きたかっただけである。
「ちゃ、ちゃんと、個人の特定がされない様にしますよね…?」
「えぇ、勿論です。記者として、許可を得ていない方を特定する様なことは書かないと約束します」
これは本当。
代わりにエピソード盛るけど。
「それでは…本日はお忙しい中、此方の取材を受けて頂き、有難うございます」
「いえいえ! コチラこそ、未熟な若輩者の話を真剣に聞いて下さり、ありがとうございました!」
………それにしても、彼は気づいていなかったようだ。
件の想い人が、我々の会話を盗み聞いていた事を。
それに彼女は途中で、逃げるように退店してしまった。恐らく、私と彼の会話が途切れ途切れに聞こえてしまい、勘違いしてしまったのだろう。
⸺面白い。私が当事者の一人になってしまったのは、記者として少々悔しいが……次の英雄号の話が決まったのだ。喜び、結末を知ろうじゃないか。
おかしいなぁ……。
最初は終始失恋したぁ……的な文を書きたかったのに、唐突に生えた文屋視点が純愛カードを切り出してきたんだよ…()