キヴォトスに来たおカシな先生   作:ナリカオル

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 仮面ライダーマイス、始まってますね。
 つまりはガヴが終わって直ぐに始まったこの小説も、ゼッツを通して1年が経過したという訳です。

 1 年 経 っ て ま だ パ ヴ ァ ー ヌ 編 ?



仮面ライダーガヴとレトロチック・ロマン
第1話「ミレニアムに来たおカシな先生」


 

 

 

 

 

 そのむかし、ひとつのへいわなせかいがありました。

 

 

 

 

 

 おいしいものがたくさんあって、みんななかよしで、しあわせがいっぱいにみちあふれている、そんなせかいが。

 

 

 

 

 

 ところがあるひ、そのせかいにとてもわるいひとたちがやってきました。

 

 

 

 

 

 そのひとたちはほかにもいろいろなせかいをめちゃくちゃにしてきた、とてもこわいひとたちでした。

 

 

 

 

 

 このままだと、このせかいもめちゃくちゃにされてしまいます……だから、そんなことはぜったいにさせないと、ひとりのゆうしゃがたちあがりました。

 

 

 

 

 

 ゆうしゃはたたかいました……たとえ、ゆうしゃにとってたいせつなひとがころされてしまっても、みんなでちからをあわせて、あきらめずに、さいごまで。

 

 

 

 

 

 やがてゆうしゃによってわるいひとたちはたおされ、せかいはふたたびへいわになったのでした。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『先生、次の信号を左に曲がってください。その後直進距離3km地点に目的地です。』

「アロナってカーナビも出来るのね……。」

『わ、私だって好きでやってる訳じゃありません!』

 

 キヴォトスの公道を、ウィーループを除いてバイク型(二輪駆動)となったブルキャンバギーが駆ける。

 その背にショウマと、当番の生徒たるセリカを乗せて車体が向かうはD.U.地区から最も近く、かつキヴォトスでもその名を知らぬ者は居ないと言える学区。

 

「着いた……ここだよね?」

「ええ、ここがミレニアムサイエンススクールよ。」

 

 ミレニアムサイエンススクール……これまでにも何度か語ったがキヴォトス三大校の1つであり、最も機械技術が進歩している学園でもある。

 その影響力は凄まじく、他に三大校として数えられているゲヘナ学園やトリニティ総合学園と比べて歴史は浅いながらも、既にキヴォトス全土にその名と実績が浸透している程。

 そしてサンクトゥムタワーを奪還する為、アビドス砂漠でカイザーグループと一戦交える為に、この学校の生徒である早瀬 ユウカにはかつて大変世話になったものである。

 

「午後16時ちょうど……流石、時間きっかりですね。ようこそいらっしゃいました、先生。それにセリカさんも。」

「お久し振りです、ノアさん。」

「初めまして、ノアちゃん。S.C.H.A.L.E(シャーレ)の井上 ショウマです。」

『同じくS.C.H.A.L.E(シャーレ)のアロナです、よろしくお願いします。』

「はい、よろしくお願いします。ふふっ……話には聞いていましたが、成る程……後でじっくりとお話をしてみたいですね。」

 

 そして裏では彼女……生塩 ノアにも。

 事前に校門前で待ち合わせの約束を取り付けていた為、ショウマ達はバイクから降りた矢先でノアと早速の合流を果たし、そのまま彼女の案内の下にミレニアムサイエンススクールの敷地内を進み始める。

 

「それでは、ご案内致しますね。確か、ゲーム開発部にご用事が有るとか……?」

「うん、その子達から相談を受けてね。」

 

 レッドウィンター連邦学園の夏至祭、イワン・クパーラ……その準備状況の視察を終えて帰路に着く中で、S.C.H.A.L.E(シャーレ)の相談窓口に今しがたノアが名を口にしたゲーム開発部から依頼(メール)が来て、そして以下のような文章が綴られていたのだ。

 

 

 

 

 

─ゲーム開発部は今、存続の危機に陥ってます。生徒会からの廃部命令により破滅が目前に迫っている中、助けを求められる相手はあなただけです……勇者よ、どうか私達を助けてください!

 

 

 

 

 

「あらあら、あの子達ったら……。」

「ノアちゃんは、ゲーム開発部の事は知ってるの?」

「そうですね……私はまだそこまで深く関わった事は有りませんが、ユウカちゃんがよく。」

 

 あの問題児達は~ってしょっちゅう言ってますねと、ノアは苦笑を浮かべる。

 ゲーム開発部とはその名の通り1からプログラミング等の作業を行って新しいゲームを作る事を活動目標としている部活動であるらしく、その活動内容の特徴として、所謂レトロゲームの開発に主眼を置いている事が上げられるそうだ。

 ミレニアムと言えば常に最先端、最新鋭を突き詰める場所……今も頭上では小型ドローンが資材を運び、遠くでは整備中のロボットが試験運転の音を響かせていたりと、他の学区では見られない近未来的な光景が拡がっている。

 そんな中でそこまでの古い時代の産物を取り扱おうとするのは中々の異端児だとして、密かな注目が集まっているのだとかそうでもないのだとか、というのがノアの見解だそうだ。

 

「それにしても生徒会からの廃部命令って……ミレニアムの生徒会って確か……。」

「はい、想像なさっている通りセミナーです……ユウカちゃんや私が所属している。」

 

 ゲーム開発部は今のミレニアムにとって、ちょっとした特異点……もしかしたら何か新しい風を吹かせるやもしれない存在として聞こえなくもない。

 ユウカからすれば問題児という評価らしいが、そんな部活動をどうして廃部になんてするのか。

 それを問うて、ノアが答えようとした時だった。

 

「だあああもうッッッ!!やってられるかこんなクソゲー!!」

「「『え?』」」

 

 突如として聞こえてきた怒鳴り声。

 それは中々に物騒なワードであったが故に強く気を引かれるものであり、一同は足を止めて声の聞こえた方を見てみる。

 すると一同の視界に何かの影が上空から間近に迫り……。

 

「いっっっ!?!?」

 

 次の瞬間、セリカの頭部にその影が衝突した。

 

「た……ぁ……!?」

「セリカちゃん!?」

 

 どうやらぶつかった衝撃は相当のものだったらしく、セリカは少しの間たたらを踏んだ後に仰向けに倒れてしまう。

 そしてぶつかったという事実から分かる通り何かの物体だったらしい影が音を立てて地に落ちたのを、ノアが拾い上げて観察する。

 

「ちょっ……大丈夫セリカちゃん!?」

『セリカさんのバイタル……正常値!気絶してるだけです!』

「あら、これはプライステーション1(ワン)……それにさっきの声は……。」

 

 プライステーションとはキヴォトスで販売されている家庭用ゲーム機であり、年代を重ねる毎にバージョンアップを繰り返して、今は6(シックス)までハードウェアが進化している。

 つまりプライステーション1……通称プラステ1は既に過去の産物、レトロゲーム機に分類される。

 そんな古びた品が空から飛んでくるなんて事態を起こせるのは、この学園に於いて彼女達しかいない。

 

「ちょっとお姉ちゃん!何回も負けて悔しいからってプライステーション投げないでよ!」

「うるさいうるさぁい!!大体何さこのキャラ!?攻撃力も防御力も体力もスタミナもスピードも全部余裕でステータスカンストしてて!!仮に攻撃ガードされても下手すりゃ35Fも有利取れるとかアホなの!?極め付けに必殺技は回避も防御も無効!!発動したら文字通りの確殺!!勝てる訳無いでしょうがぁ!!」

「お姉ちゃんがやるって言ったんじゃん!最高難易度の隠しキャラ相手にこのゲームで一番弱い必殺技当てて勝つんだ~って!そんな1回や2回でクリア出来る目標じゃないんだから!プライステーションに罪は無いし、もし誰かに当たってたらどうするの……って……。」

 

 ノアが見上げた先、部室棟の一角。

 開け放たれた窓から見える、桃色と緑色の双子姉妹の姿。

 

「成る程、やはりあの子達でしたか……これはユウカちゃんに報告しないとですね。」

「わ、わあああ!?!?お、お姉ちゃん!!の、の、の、ノア先輩がぁ!?!?」

「え、何?ノア先輩がどうした……って、ぎゃあああああ!?!?ノア先輩が居るぅ!?!?しかも隣で誰か倒れてるしぃ!?!?」

「絶対お姉ちゃんが投げたプライステーションの所為じゃん!?!?ご、ごめんなさいぃぃぃぃぃ!!」

「終わったぁぁぁぁぁ!!ゲーム開発部の冒険はここでおしまいだぁぁぁぁぁ!!」

『す、凄いですね……まさか来て早々こんな事になるだなんて……。』

「えぇ……!?ちょっ……セリカちゃん起きて~……!」

「きゅう……。」

 

 午後16時11分。

 ゲーム開発部の部員が投げたゲーム機が、他校の生徒の頭部に直撃。

 生徒は今も意識を失って昏倒中……ノアはしっかりと、手元のタブレットにそう記したのであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「えっと……取り敢えず、自己紹介からするね。俺はショウマ、S.C.H.A.L.E(シャーレ)の先生だよ。」

『シッテムの箱のAIのアロナです。それで、お2人がゲーム開発部の……。』

「えっ、凄!?対話型AIってやつ!?ちょっと見せて!」

「お姉ちゃん!!」

 

 午後16時30分を少し回った頃、ゲーム開発部の部室にて。

 気絶したセリカの事はノアに任せ、ショウマはその元凶にして今回の依頼人でもあるゲーム開発部の生徒2人と向き合っていた。

 双子故か見た目は勿論服装まで似た姿をしていてパッと見では分かり辛かったが、どうやら身を乗り出してまでアロナに興味を持っている、服のパーソナルカラーを桃色としている少女が姉の才羽(さいば) モモイで、そのモモイを制止している緑色を服のパーソナルカラーとしているのが妹の才羽(さいば) ミドリだそうだ。

 

「それで、メッセージ見させてもらったよ。2人が居るゲーム開発部が廃部になるのを防ぎたいって事なのかな?」

「そう!今ゲーム開発部はセミナーから廃部命令を出されてて、それを何とか取り消したくて先生に連絡したの!」

「ネットのHP(ホームページ)の紹介文からして、S.C.H.A.L.E(シャーレ)は色んな学校に介入出来る存在だから、きっとそういう事にも融通が効くだろうっていうのがお姉ちゃんの言い分なんですけど……。」

 

 2人の話を聞いて、ショウマの表情が僅かに顰まる。

 確かにS.C.H.A.L.E(シャーレ)はあらゆる学園への立ち入りや問題への着手が認められている……問題と称せば部の設立や解体等、通常の学校の運営に対しても口出しは可能だ。

 だが下手にそれらを行ってしまえば、目指している先生像からは遠く離れてしまう……何にでも口を挟み、場合によっては有無を言わさず己の思うがままにしようとするなど、それは支配の第一歩に他ならない。

 かといって、何事にも例外は存在するもの……頭ごなしに突っぱねるのも適切な答えでは無いだろう。

 

「うーん、どうだろう……ちょっと難しい話かもね……。」

「えぇ!?何でさ!?」

『こちらにも色々と事情が有りまして……そもそも何故そのような事態になってしまったのですか?廃部を通達されるだなんてよっぽどの事が無い限りは……。』

 

 何れにしても、今はゲーム開発部が生徒会(セミナー)から廃部の通知を言い渡されたという事実しか分からない……もっと詳しく話を聞く必要が有るだろう。

 そう思い至り、その旨を2人へ伝えた矢先だった。

 

「或いは、何も無さすぎてもそういう事になるのよ。」

 

 聞こえてきた、第三者の声。

 振り返ると、部屋の入り口に見覚えの有る生徒が立っていた。

 

「ユウカちゃん!」

「うわ出た!!生徒会四天王の1人!!冷酷な算術使いの異名を持つ生徒会の会計ユウカ!!」

「勝手に変な渾名付けないでくれる!?相変わらず失礼な子ね……!」

 

 早瀬 ユウカ……彼女はモモイからの評価に怒っているような、或いは困っているような複雑な心境を八の字にした眉に乗せながら、もう1人の生徒と共に部室の中へ入ってくる。

 

「それにしても、まさかこんな形で再会する事になるだなんて……すみません先生、彼女にも迷惑を掛けてしまったみたいで……。」

「セリカちゃん!大丈夫なの?」

「まあ幸い、軽いたんこぶ程度で済んだわよ……それで?あのゲーム機をぶん投げてきたのは一体どっちなのかしら?」

 

 ユウカの後に続いて入ってきたのはセリカ……ノアによって保健室へ運ばれていた彼女であったが、どうやら到着して間も無く目を覚ましたようであり、怪我も今しがた本人が申告した通り大事には至らず。

 同時にユウカもそのタイミングでノアに呼ばれて事の経緯を知り、彼女とバトンタッチをしたのだそう。

 

「で、話を戻しまして……アロナも久し振りね。それでアロナが言ってた事なんだけど、確かに廃部の通達だなんてよっぽどの事が無い限りはまず起こらない事よ。何かしらの大損害を引き起こして多方に迷惑を掛けたとか、活動内容が著しく常軌を逸しているだとか起こらない限りはね。」

 

 努めて笑顔を浮かべながら、しかし己が受けた仕打ちに対して明確に怒りを露にしていると分かる程にピクピクと眉を震わせているセリカにモモイとミドリが気圧されるという構図が出来上がって数秒、話が進展しないとして軌道修正を図ったユウカの説明。

 言うに、そのよっぽどの中には逆に何の問題も起こさない、かといって何の音沙汰も無いというケースも含まれているらしい。

 要は活動実績を上げていない部活がそれに該当し、ゲーム開発部がまさにそれに該当するのだとか。

 

「あなた達も本当に懲りないわね、まさか先生まで巻き込もうとするだなんて……でも部活動の運営は基本的に各学校の生徒会に委ねられているんだから、先生を頼っても無駄よ。ゲーム開発部の廃部は、覆せる事じゃないの。」

「そんな事無い!言ってたでしょ!?部員が規定人数に達するか、ミレニアムの部活として見合う成果を出せれば……!」

「ええ、それが出来れば良し、出来なければ廃部。部費は勿論、部室も没収する……そこまでちゃんと、今まで何度も、言ってきたわよね?ゲーム開発部は部員も足りなければ、部活動としての成果も証明出来るようなものも無い……そんな状態で2ヶ月経とうとしてるのよ?他の学校ならいざ知らず、効率と合理性を突き詰めるうち(ミレニアム)では廃部になったとしても、何も異議申し立ては出来ないわよ。」

 

 さらに話を聞いてみれば、そもそもゲーム開発部はミレニアムが指定した部活動結成に必要な初期人数である4人に満たっていないながらも無理矢理申請を押し通そうとして仕方が無いから仮で活動を認めた部活である事、そして正式な任命の為の条件である部員の増員かゲーム開発に関する成果の提出、どちらにも進捗が見られない事から今回の判断に踏み切ったという事が判明した。

 

「異議有り!凄く有り!私達だって全力で部活動してる!」

「部屋に籠ってゲームしてるだけでしょう?」

「それだけじゃない!ちゃんとゲームも作ったもん!」

「作ったゲームってあ(・)れ(・)の事でしょ?確かに成果と言えば成果ではあるけど……あ(・)れ(・)を部活動維持の為の指標には出来ないわよ。」

 

 しかし会話の流れの変化にショウマとセリカ、アロナは疑問を感じる。

 成果として上げたものがそうとして扱われないのは、下手をすれば審査の不正を疑いかねない情報であるが、それがユウカの目下であるとするならば首を傾げざるを得ない……まだそれ程時を共にした訳では無いが、彼女の誠実さは3人も既に十分に知る所であるからだ。

 するとその様子から考えている事を察したのか、「その様子だと、先生方は知らない様ですね……。」と、今度は明確に困ったという心境を眉に乗せてユウカは語ったのだ。

 

「確かにこの子(モモイ)が言う通り、ゲーム開発部は部活動発足の為に1つだけゲームを作り上げて、それを最初の成果として提出してきたんですが、それがまあ何と言いますか……酷い出来でして。」

 

 テイルズ・サガ・クロニクル……それはゲーム開発部が開発した王道ファンタジーRPG。

 1GBにも満たない容量ながら数々の名作RPGのノウハウを取り入れた事で、RPGゲームの新たな金字塔になるとさえ豪語していた程の力作であったらしいのだが……。

 

 

 

 

 

─私がやってきたゲーム史上ダントツで絶望的なRPG。いやシナリオの内容が~とかじゃなくて、ゲームとしての完成度が。

 

─このゲームに何が足りてないのかを数え出したらキリが無いけど……間違いなく一番足りてないと言えるのは開発者の正気だろうね。

 

─あなた方を詐欺罪と器物損壊教唆罪で訴えます!理由は勿論お分かりですね?あなた方が皆をこんなクソみたいなゲームで騙し、ゲーム機を破壊するよう促したと言っても過言では無いからです!覚悟の準備をしておいて下さい!近い内にカチコミます!ヴァルキューレに逮捕してもらいます!連邦生徒会にも問答無用で来てもらいます!慰謝料の準備もしておいて下さい!あなた方は○○○(見せられないよ!)です!矯正局にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!良いですね!?

 

 

 

 

 

 ……等々、尽くの酷評を叩き出してしまったらしい。

 モモイ曰く、試行錯誤の過程を楽しんでほしいという意向の下にゲームの仕様を組んだらしいのだが、中にはこのゲームをやってから数日体調を崩したり、ゲームそのものに嫌悪感を抱くようになってしまった人も居る等、確かにこれをミレニアムの部活動の成果ですと示されても、とてもそうだとは言えなさそうだ。

 

「そういう事だから、あなた達(ゲーム開発部)が今のまま活動を続けても却ってこの学校の名誉を傷付けるだけなの。それにその分の部費を他に回す事が出来れば、きちんと意義の有る部活動をしている生徒達の為にもなる……だからもし自分達の活動にも意義が有ると言いたいのなら、証明してみせなさい。その為の場所だって、お誂え向きに有るでしょう?」

 

 それでもまだ、挽回のチャンスが有るというユウカ。

 そしてその為の場所というのを、モモイとミドリは言われずとも理解していた。

 

「ミレニアムプライス……。」

「そう、ミレニアム中の部活動が互いの垣根を越えて成果を競い合うコンテスト……そこで受賞する事が出来れば、流石に私も文句は言わないわよ。」

 

 ミレニアムプライス……それは年に一度開催される、ミレニアム最大級のコンテスト。

 科学技術、工学、芸術、スポーツ……分野を問わず、各部活動が各々の成果を持ち寄ってその価値を競い合う祭典であり、受賞した部には多額の予算や活動支援が約束される等、部にとって計り知れない恩恵が与えられるのだ。

 

「で、でもミレニアムプライスはそんな簡単なコンテストじゃ……!」

「ええそうよ、運動部がインターハイに出場するとかそんなレベルじゃない……言ってしまえば高校球児がいきなりメジャーリーグに出るような、そんな雲を掴むような話ね。」

 

 しかしそれ故に、審査基準も極めて厳しい……何せこのコンテストには、外部の企業の役員も視察をしに来るのだから。

 彼等の主な目的は、将来有望だと判断出来る人材へ目星を付けたり、部活動そのものとの技術提携を結ぶ事……そのお眼鏡に掛かる為、出場する生徒はたとえ1年生であろうと皆斬新かつ革新的なアイデアを携えている。

 ゲーム開発部が作ったゲーム(テイルズ・サガ・クロニクル)もある意味では斬新かつ革新的な代物かもしれないが……ある意味という世辞を付けなければいけない時点で既に論外である。

 

「そんなの初めから無理ゲーだって言ってるようなもんじゃん!?」

「言ってるよう、じゃなくてそう言ってるのよ。私の方でも調べてみたけど、今から応募出来るようなゲームの品評会とかも無いし、企業に直接ゲームを持ち込んでPRっていうのも現実的じゃない……チャンスが有るとしたら、もうここ(ミレニアムプライス)しか無いの。だからこれが最終通告よ。ミレニアムプライスの受付(エントリー)終了、そこからコンテストの結果発表までの間は待ってあげる……そこで受賞出来なければ、或いはそもそもエントリーする事が無ければ、本当にそこでおしまい。その時は問答無用でこの部屋から出て行ってもらうわ。」

 

 ミレニアムプライス……それは参加権こそ誰にでもあるが、実際は天才同士がしのぎを削ってぶつかり合う場。

 そこらの有象無象が安易に立ち入ってどうにかなる所では無い……賞を取るとなったら尚更で。

 そして自分達(ゲーム開発部)は、例え天地がひっくり返ったとしても有象無象の側だ。

 

「……分かった。でも約束して!絶対だからね!」

「ええ、約束するわ。でも同時に、こっちからも約束よ?」

 

 モモイは悔しそうに唇を噛み締めながらも、ユウカの掲示した条件に同意する……隣に居るミドリも、言葉に出さないながら姉と同じ意見のようだ。

 

「すみません先生、内輪揉めなんて恥ずかしい姿を見せる事になってしまって……次はもっと落ち着いた状況でお話ししたいものです。」

 

 2人からの承諾を得て踵を返したユウカは、ショウマへ軽く頭を下げながら扉に手を掛け部屋を出る。

 開閉された扉の音は決して大きくは無かったが、それが耳障りに感じてしまう程、部屋の中を包み込む沈黙は痛くて重いものだった。

 

「……むがー!!大魔王ユウカめぇ……ほんっと血も涙も無い……!!」

「もう時間が無い……早くユズちゃんにもこの事伝えないと……。」

 

 さらっと四天王から大魔王へ昇格させるなど、どうにか空気を変えようと無理したモモイのコミカルな振る舞いが逆に空しさを生む中で、続けて言葉を発したミドリの台詞に気になるワードが含まれていた。

 ユズとは誰の事だろう、とショウマとセリカ、そしてアロナが疑問に思っていると……。

 

「だ、大丈夫……全部、聞いてたから。」

「え……?」

「い、今の声どっから……?」

『待って下さい!ロッカーが開いて……!』

 

 不意に細々とした声が聞こえてきた。

 そしてそれと同時に、部家の隅に置かれているロッカーの扉が独りでに開き始める。

 3人が訝しんで、或いは警戒をしていると、驚く事に中から1人の少女が姿を表したのだ。

 

「あ、ユズ!そこに居たんだ!」

「ユズちゃん……え、待って、ユズちゃんいつからそこに居たの?」

「えっと……部屋に戻って来たら、モモイがプライステーションを投げてて、それで凄い騒ぎになってたから、つい……怖くなって……。」

「それってほぼ最初からじゃん!?」

 

 彼女の名は、花岡(はなおか) ユズ……ゲーム開発部の部長を務めている少女であり、しかしながらモモイがプライステーションを投げてから部室に見知らぬ人(ショウマやセリカ)やらユウカやらが来てといった一連の流れに恐怖を感じて閉じ籠ってしまう程の引っ込み思案な性格をしているものの、そんな彼女が浮かべている表情にはそれよりも遥かにモモイとミドリに対する懺悔の念が込められていた。

 

「ごめん……私がもっとしっかりしてれば、こんな事には……。」

「ううん、ユズちゃんの所為じゃないよ。」

「そうそう、悪いのはぜーんぶユウカだから!」

 

 ユズも含めて、納得など出来る筈が無かった……廃部寸前まで追い詰められ、残された道は到底実現出来るとは思えないような大舞台で結果を出す事だけ。

 それでも、これしか道が無いのだから。

 

「でも、実際どうするの?」

『一応ユウカさんが出した条件には1つ抜けが有るように思えます。ゲーム開発におきましてはミレニアムプライスという高い壁を設定されてしまいましたが、部員の勧誘については特に言及はされていませんでした。』

「それなら部員さえ集める事が出来れば、コンテストに参加しなくても部活動発足の条件は満たせる……コンテストで受賞するより全然狙える話じゃない!」

「いや……それ一番現実的じゃない話。」

「今まで何度も部員の募集はしてきたんですけど、結局それで人が入る事は無くて……。」

 

 道を示されて、でもその道は茨どころではない道。

 それを厳しい優しさと捉えるか、それとも遠回しの窮追と捉えるかは、人によって判断が変わる所だろう。 

 

「……でも大丈夫。私達にはまだ、切り札が残ってる。」

「切り札……?」

 

 何にしても、今は進むしかない……それに上手く行けば、敷かれた道はたちまち棘無しの欠伸が出るような道に変わるやもしれない。

 モモイはそう、ショウマとセリカにずいと迫りながらとあるワードを口にした。

 

 

 

 

 

「ねえ2人共……G.Bibleって、知ってる?」

 

 

 

 

 




 遅スギィ!
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