「金色のガッシュ!!」に転生。
なので華麗なるビクトリーム様にメロンを与えてみた。

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第1話

 これは興味本位だ。

 俺は別に、主人公たちを助けようとか思っていたわけじゃない。もちろん作品が好きだから主人公ペアのことは好きなんだけど、この状況になったのは流れっていうか、必死だったし、洗脳されるのが嫌であーだこーだ必死に言ったからに過ぎない。

 

 今になってみれば棚からぼた餅。奇跡的にいい状況になっている。その上で俺は、みんなを助けるとか原作の流れを守るとかじゃなく、ただ興味本位で動こうとしている。

 仮にそれを言ったらどうなるのか。単純にそれが知りたかった。

 

 幸い俺たちは待機組。これも俺があーだこーだ言った結果である。

 そして目の前には、なんと偶然にも超人気キャラのあいつが居たのだ。

 

「華麗なるビクトリーム様。メロンがありますぜ」

「どうしたカルーラのパートナー、ヤイチよ。メロンとはなんだ?」

 

 俺の目の前には頭がV型の魔物の子、ビクトリームが居る。

 そして隣にはモヒカンエース。こっちは洗脳されてるが。

 どうやらまだメロンには出会っていない様子。それなら渡してみるしかない。

 

「メロンは人間界の果物の一つで、みずみずしくて甘くておいしいやつです。ちょうど外に出る用事があったんでついでに買ってきたんだ。どうぞ」

「ほほう? メロン……なぜかはわからんがい~い響きじゃないか」

 

 予想通り、なぜかは知らんが異様に興味を示している。

 お皿に乗せたメロンの切り身を差し出すと、じっと眺めて、異様に間を作って接近してこようとしている。意味があるのかはわからないが長くなりそうだ。

 

「レイラとダルモスも食べな。パートナーの分もあるから。カルーラは……もう食べてるか」

 

 俺のパートナー、毛先がくるんとカールしたロングヘアの女の子、カルーラは普段物静かで無口だけどたまに突飛な行動を取ることがある。

 俺が言う前に自分の分のメロンを勢いよく食べていた。大口なんて開けて魔物っぽい。

 

「フムッ! ホムホムグムッ! ブグジャグジャッ! ウィイイイイイイッ! カッ! カッ!」

 

 おっと、すでにビクトリーム様がメロンを食べ始めていた。

 そして一瞬で終わった。

 皮に残ってる身の欠片すら残したくないのか、歯を立ててこそぎ取っていた。

 食べ終わると一瞬の静寂。

 

「キャッチ・マイ・ハートッ‼ ベリーメロン‼」

 

 全くもって予想通りのリアクションだった。

 頭だけじゃなく全身でVのポーズを決めて大声で叫ばれる。

 これだ。これがビクトリームをビクトリームたらしめる重要な名ゼリフだったりする。

 

「んなんだこの味はァ⁉ ヤイチこんちくしょう! こんなおいしいものをなぜ今まで私に黙っていたのだァ‼」

「いや黙ってたわけじゃなくて、教える機会とかなかったし……」

「素晴らしいッ‼ 完璧だ! 今まで食べた人間界の食い物の中で一番うまいっ‼」

 

 予想通り、いや、むしろ予想以上のリアクションになった。

 今までにないくらい声がでかくてうるさい。あと動き出したせいで見てるだけでうるさい。

 

私は! 今! メロンに心を掴まれて離されないでいるッ‼ あぁなんなのだこの感情はァ! 頭の中はメロンでいっぱいだ! まだまだもっと食べたいのに! あんなかけらを一つ食べただけなのにィ!」

 

 一応、そんなに薄くもしてない一人分だったんだけど、要するにおいし過ぎて食べたりないってことらしい。

 そんなに感動する? とは思ってしまうが、まあ、喜んでるなら何より。

 

おかわりだァ‼

「あ、ごめん。もうないな」

ベリィイイイイイイイシット‼ なぜない⁉」

「メロンって結構高価なものだから、たくさんは買えなくて」

「んんんんんっ、ぬぬぬぬぬっ……!」

 

「もぉ~我慢できないぞ! 私にはメロンが必要だ! もっと! もっとだァ!」

「華麗なるビクトリーム様。日本にはおいしいメロンがたくさんありますぜ」

 

 

 

 

 

「着いたぞ! 日本だ!」

 

 すごい行動力だ。

 これはもう完全に俺の予想を遥かに超えている。

 ちょっと面白がって言ってみた、くらいのきっかけだったのに。まさか、ゾフィスを裏切ってまでメロンを欲するとは。

 

 俺のパートナー、カルーラ。

 原作で人気のビクトリームとレイラ。そしてレイラと一緒に登場して敵になったダルモス。

 彼らは、千年前の魔界の王を決める戦いの参加者だ。

 

 とある魔物の術によって、自分の魔本ごと石化させられて、石になったまま人間界で千年間過ごしたのが彼ら。

 彼らを解き放ったのが現代の魔界の王を決める戦いの参加者、ゾフィス。

 ゾフィスは石化を解いた恩と言葉巧みな誘導によって、千年前の魔物たちを配下にし、他の参加者を倒して自分が魔界の王になろうと画策している。

 

 千年前の魔物たちは再び石化するのが怖くて仕方ないから、ゾフィスに従うしかないのだ。

 なんて思っていたらビクトリームはあっさり裏切って、勝手に拠点を飛び出してきたのである。

 

「さあメロンだ! どこに行けば食べられる! 育てているところも見たいなァ!」

「魔界に種を持って帰ったらメロン畑作れるもんねぇ」

「天才か貴様はッ⁉ その手があったかァ‼」

「華麗なるビクトリーム様。北海道の夕張に有名なメロンがありますぜ」

 

 

 

 

 

「ブラララララァボオオオオオオオオオオッ‼」

 

 俺たちは北海道に来た。

 旅行を楽しんでいるカルーラやレイラ、呆れているダルモス、彼らの言うことには素直に従う洗脳済みのパートナーたちと共に、結構な大所帯の大旅行。

 誰よりも楽しんでいたのがメロンを食べて騒ぐビクトリームだ。

 

「キャッチ・マイ・ハート‼ ベリーメロン‼」

「はーいベリーメローン」

「うおおおおっ、おおおおおっ……⁉ ちくしょう、涙が止まらねぇ……! メロンってやつァ、メロンってやつァ……!」

 

 夕張メロン。値段が高いけどそれだけはあるっていうか、食べてみたらめちゃくちゃうまい。

 ビクトリームは号泣していた。多分感動だと思う。

 

「しかしオレンジのこいつも愛おしいが緑のあいつも羨ましい! どっちもメロンだと⁉ 魔界よりも神秘ではないか! 私はどっちかを選ぶつもりなどなァァァい‼」

 

 俺たちはただ北海道とメロンを楽しんでいただけだが、ビクトリームはそうじゃないらしい。

 メロンはもちろん、メロン味のアイスやお菓子なんかも道中買って楽しんで、その都度絶叫していた彼だ。面構えが違う。

 

「ンなァらばァアアアアアッ‼ 私が新しい魔界の王となり! 魔界一面に美しいメロン畑を広げて育てようではないか! 私ならばそれができるッ‼」

「やめなさいよビクトリーム。私たちの戦いは千年前に終わっているのよ」

「知ったことか! であればどうして! なァぜ! この感動を形にできようか! 王になるくらいでしか伝えられないのだよ! 私のベリィイイイイイメロンへの(アァイ)はァ‼」

「あなた、メロンを食べてから人が変わったみたいにうるさくなったわね」

 

 レイラもすっかり呆れている。いや、レイラはクールだからどう思ってるかはわからないけど、少なくともビクトリームのあれこれは別として旅行を楽しんでいるのは間違いなかった。

 パートナーのアルベールにもしきりに話しかけたり、メロンを食べさせたり、洗脳されているのに一緒に楽しもうとしている姿は健気だ。可愛い。

 

 で、なんだかんだで同行することになったダルモスも実は楽しんでいるっぽい。

 原作じゃ敵になってほぼ戦闘シーンだけだったけど、やっぱり千年間石になってた経験がそうさせているのか、態度とは裏腹にずいぶん楽しんでる。

 

 俺のパートナーのカルーラは常に好きなようにさせていた。

 だから誰よりも楽しんでいる気すらしてくる。今も花畑に向かって頭から突っ込んでいってた。

 

 なんだか、原作の流れとはどんどん離れて行っちゃってるけど、これはこれでいい流れになってるんじゃないかって気がしてくる。

 なんせ千年前の魔物の子たちが本当に楽しそうにしているのがいい。

 きっかけはしょうもなかったとはいえ、俺の超絶ファインプレーなんじゃないだろうか。

 

「魔界いっぱいにベリィイイイメロンを作るのだァ! ハーッハッハッハッハァ‼」

「私はいやよ。そんな魔界」

「なぜだッ⁉ この夕張メロンを食べておいて!」

 

 ファインプレー……だと思いたいんだが。

 まあ、いつかは主人公のガッシュたちを手助けできる展開になるって信じよう。

 大丈夫だきっと。俺たちには、人間界にはメロンがあるんだから。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 次の魔界の王を決めるため、人間界に送り込まれた百人の魔物の子によるバトルロイヤル。

 魔物の子は自分の本を読めるただ一人の人間、パートナーを見つけて本を渡して、人間が本に書かれた呪文を唱えることで魔物の子が術を発動する。

 人気漫画作品「金色のガッシュ‼」。

 俺が転生したのはその世界だ。

 

 しばらくは自分がどこの世界に生まれたんだか知らなくて、ただ人生をやり直すだけかと思っていたんだけど、話が変わったのは原作における「石板編」が始まってから。

 俺は石板から解放された千年前の魔物の子のパートナーに選ばれ、この物語に参加したのだ。

 

 そして軽い気持ちで原作ストーリーを変えてしまって今に至る。

 後悔はしていない。ただ申し訳ない気持ちはあった。

 

 なんだかんだあって俺たちは主人公チームに合流することができた。

 うろ覚えの原作知識を使った結果、間違いなく原作ストーリーを壊してしまったわけだが。

 消えるはずだった魔物の子が生き残ったことを嬉しく思う反面、俺たちが手助けしてしまったことで大変な事態を招いてしまった。

 

「キャッチ・マイ・ハート‼ ベリーメロン‼」

 

 そう、華麗なるビクトリーム様の躍進だ。

 この子は千年前の戦いの参加者だっていうのに現代で魔界の王を目指し始めてしまった。

 理由はたった一つ。メロンだ。

 

 何が彼をそこまでかき立てるのかは知らないが、メロンを食べておいしさに感動して、ただ魔界に帰ってからもメロンを食べたい一心で、ビクトリームは強くなってしまった。

 まだ一ヶ月も経っていないのにメロンを食べる度にバンバン新術を覚えているのだ。

 元々が強めなのにさらに強くなってしまって、マジで魔界の王になる可能性がありそうで怖い。

 

「さあ~お前たちも一緒にィ!」

「「「キャッチ・マイ・ハート! ベリーメロン!」」」

ベェリィイイイイイイグゥウウウウウッドォ‼ 諸君らも知るべきだ、メロンの素晴らしさを! 我々が知らなかった人間界の素晴らしさを! 我々が戦う意味を、我々が魔界に持ち帰る栄華を、我々が知らしめるべき幸福を!」

 

 パワーアップした結果、ビクトリームは、そして俺たちは、普通に強かった。

 特にチームで戦った時のガッチリハマる感じは自分でも驚いたくらいだ。

 

 最大呪文は出が遅いとはいえ、基本的に高火力なアタッカー、ビクトリーム。

 術のバランスが良くて現状の最大呪文がサポート特化かつデモルトを完封するレイラ。

 ツタや花を操り、自分や対戦相手の移動・援護・トラップ・拘束と手数が多いカルーラ。

 肉体強化術が基本で、近接戦闘を得意としながら陽動やデモルトの膝裏を攻撃するなどの小技まである、巨体のダルモス。

 

 俺の勝手と原作通りの組み合わせ、なんやかんやでできたチームだけど、かなり強い。

 いやそもそも千年前の魔物がほぼみんな強い。なおかつ千年間も石になってて寂しかったから、現代に蘇ってめちゃくちゃエンジョイしてる。

 あまり多くを言わなくても、ちょっと旅行しただけでチームワークは完璧だった。

 

 俺は原作漫画が好きだ。

 アニメや劇場版だって見たことあるし、自分じゃ普通にファンだと思ってる。

 だから本来の主人公であるガッシュ・ベルや高嶺(たかみね)清麿(きよまろ)を応援したい。

 

 だっていうのに、もしかしたら、ものすごく強烈なライバルを生み出してしまったのかも……。

 本当にそんなつもりはなかったのに。

 

「ありがとう弥一(やいち)さん。みんなが来てくれたからなんとかなった」

「いや、言うほど俺は大したことしてないよ。流れに身を任せただけで」

「それでも俺たちは助かったんだ。ただ……」

「あー……あれね」

「ブルルルルルルラァアアアアアアッ‼」

 

 なぜかは知らないがビクトリーム様がハイテンションだ。

 基本バカだが術が強いのは確かで、戦闘に関してだけは頭が回るからバカだとも言い切れない。そのせいで俺とカルーラのペアじゃ止めるのはちょっと難しくなってる。

 

 この世界に転生してまでやったことが、ビクトリームを調子に乗せることでよかったのか。

 もしもビクトリームが最後の一人まで残って魔界の王になったら。

 そんな未来については考えたくない。

 まあ、言ってもメロン作るだけなんだろうけど。

 

「弥一さん……もう少し協力してもらっていいか?」

「うん……俺の責任だからな。頑張るよ」

ハッハッハッハッハッ! イーッヒッヒッヒッヒッ! オホホッ、オホホホホホホッ!

 

 ただでさえ清麿はツッコミだから、ノリのいい周りのみなさんより心労は大きいだろう。

 しかしビクトリーム、この世界の人々はかなりノリが良かったりするから、魔物の子も人間も問わずにあっという間に味方を増やしている。

 あれをカリスマ性って言うんだろうな。

 そういう意味じゃ漫画的な人気もすごかったし、改めてすごいやつだ。

 

 もしこのまま最後まで勝ち残るようなことがあったら、案外いい王様になるかも?

 いや……メロンのことしか考えなさそうだな。

 流石にそれはないか。

 

 そうは言っても魔界の王を決めるのはバトルロイヤルで、戦いが全てを決めるわけで。

 実力と運がなきゃ勝ち残れないからな……流石に、それはない、よな?


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