叢雲、天より根差す光   作:聖徳王の笏

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九十四話 希望を手繰り寄せる者

 

「……ッ! アイツ、やり過ぎよ! 今すぐにでも止めなきゃ!」

 

 

「まぁまぁ、良いでは無いですか。朝斗彦さんは今までの異変に主力として加担したことがないのでしょう? あれくらいはやらせてあげましょう」

 

 

「ハァッ!?

……アンタの勤め先って妖怪の駆け込み寺じゃなかったの? 庇護対象が目の前であんなにやられるってのにそんな感想が出てくるなんて、正直オドロキだわ」

 

 

 

「……いや、彼女の言う通りだ。あれくらいは目をつぶった方がいい。何せ、アレは私が復活した時にはしていなかった表情だからな。

私が引き出せなかった物を、あの妖怪はいとも容易く引き出した。全く、教えを受けたひとりとしては妬ましい限りだが、我らには見守るべき義務がある」

 

 

そう言うと、義務なんてないでしょうが……という霊夢から漏れ出た心の声を自慢の耳で拾いながら、神子は彼女に目を向けることなく腕を組んだ。

 

 

 

「アンタまでわけの分からないことを……。

でもね。言っておくけど、ヤバくなったら私は遠慮なく行くわよ!」

 

 

「いいだろう。但し、それが焼け石に水とならない事を願うよ」

 

 

 

 

……

 

 

 

 

蹴り、弾幕、そして再び蹴りの連撃に加えて掌底を織り交ぜるなど、暴れに暴れる刀女比売。

 

彼女からしてみれば、自らの戦い方を受け継いだ目の前の存在に対する力試しをしているに過ぎないのだが、それにしてははっきり言ってかなりやりすぎである。そんな行いはもはや、所謂可愛がりと言うやつに成り果てていた。

 

 

「どうした! アレで終わりか!? 今のお前からは初めの威勢が全く感じられないぞ!」

 

 

「……く、くそ……。やられるもんか、私は皆の希望なんだ! 誰からも必要とされずとも、必ずやこの力を抑えなければいけないんだ……!

だがしかし、もう私に勝てる道筋は残っていない。こうなったら、少しでもアンタに抗ってみせる! そして、その白い柔肌に必ず傷を与えてやる!

 

───────"モンキーポゼッション"」

 

 

変わらぬ表情の中に確かな力強さを魅せながら、こころは自身のラストスペルを行使。

たとえ客入りのない空の舞台であっても沸かせられそうな、そんな自信に満ちた表情の彼女の勇姿は、それを見逃さぬように視線を送り続ける客達の心へと深く刻まれることとなった。

 

 

 

 

「……その心意気、大変結構! ならば、こちらも全力で相手しようではないか!」

 

 

 

 

内なる反骨心を面で露わにするこころを見て、刀女比売はコレだ! とでも言いたげな表情を浮かべながら腕を組み、そして首をぐるりと回した。

 

ほかの八百万の神々には心延びたる者などと呼ばれたものの、何処か変なところで捻くれている八坂刀女比売。

そんな彼女は、かつて仕えた国が敗れて間もない頃の自分のように反骨の心を抱き、それを乗り越えんとする者と手合わせすることが何よりも好きなのだ。

 

 

こころは光に包まれながら何処かで見覚えのあるポーズ*1を取る。そして、あまりにも眩しすぎる弾幕を四方八方へとばら撒くと、有無を言わさずに両手に持った扇子をよよいのよいと振り回し、その動きに合わせて刀女比売へ向けて弾を放つのであった。

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「むっ、私の持つ"救世観音の光後光"*2に似たスペルだな」

 

 

「貴女と同じ匂いを感じますね〜。戦い方といい、やはり彼女は神子さんや朝斗彦さんの縁者でしょうか」

 

 

「そうかも。こうなったら朝斗彦軍団の結成も近いわね。神子、アンタは少なくともトップスリーには入れそうね?」

 

 

「……人を勝手に軍団構成員にしないでもらえるかな」

 

 

「なによ、嬉しくないわけ? ……ほら、大好きなお師匠様と一緒になれるのに」

 

 

「……それは良い! だが! そこに入れば最後、良くて二番手までにしかなれないじゃないか!

 

私は道の教えをもってこの現世をまとめる伝道者にならなくてはならないんだ! 皆を導くお天道様のようにあらねばならない! 故に二番手に甘んじるなど、絶対にあってはならないのだ!

 

……師に楯突くなど有り得ない。いや、ああ……私は既に、もう……」

 

 

うへぇ……と、霊夢が感じるほどに傲慢なセリフを吐くも、その言葉一つ一つからは妙な焦りを感じさせる神子。その変に頑固で、どこか強迫的な様子は、まさにこの弟子あってあの師匠ありである。

そんな様子で急激に顔色を真っ青にした神子。そんな彼女のことなど露知らず、聖による痛恨の一撃が運悪くこのタイミングで炸裂してしまったのだ。

 

 

「これだから傲慢な王族というものは……。一国の王子という恵まれた立場にありながら出家し、悟りを開かれたお釈迦様を見習うべきです」

 

 

「私は興味無いけどそうよそうよ!神仏習合! 道教は回れ右!」

 

 

戦いが始まってからというもの、もはや恒例になりつつあるやり取りをやんややんやと聖と霊夢がしていると、なにかと標的になりがちな神子は胸を張る訳でもなく、まるでメッキが剥がれたオモチャのようにガックリと項垂れる。妙な様子でブツブツと呟き続けているので聖と霊夢が顔を覗き込みながら彼女を心配すると、神子は大層機嫌を悪くした様子で怒声をあげたのであった。

 

 

「……うるさいッ! うるさいうるさい!

お前に何がわかるんだ! 大王の跡取りとして、男として! 只管に自らを鍛えぬいたのにも関わらず跡を継げずじまいだった私の事を……。

 

だいたい! かく言うお前こそ仏法の教えに背いて不老不死の身体を手に入れているくせに、何自分の事は棚に上げているんだ! ……もしあの時、お前のような術を身につけることが出来たのなら、私だって……」

 

 

その駄々を捏ねる子供のような姿は聖人とは程遠いものであり、彼女の叫びは周りにいた者がギョッとするほどであった。

 

その後もぶつくさと何かを呟き続ける神子を見て、まさか神子さんの逆鱗に触れてしまうなんて! と驚く聖に対し、便乗していた霊夢はというとどこか他人事な様子。なんだかんだ言いつつも、人ならざる者達に対しての博麗の巫女というのはそんなものなのである。

 

 

 

「申し訳ございません神子さん……。

と、とりあえずあちらに行きましょう?」

 

「嫌だ、まだ観る」と、まるでイヤイヤ期の子供のように駄々を捏ねる神子の腕を引っ張って聖はそのまま彼女を物陰へと連れて行き、残ったのは霊夢のみである。

視線を老人達から争う二人の方へと向け、彼女は袖の下に隠し持っていた相棒こと、なんだか最近自我を感じる幣をひっそりと握りしめたのであった。

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「流石にこのままじゃあ近付きづらいな。ちょっとこちらも頭を冷やすべきか」

 

 

 

依然として弾幕をばら撒き続けるこころに対し、刀女比売は彼女から大きく距離を取った後に目を閉じ、深く深呼吸を行う。そして、飛んでくる弾幕を気配で躱しながら十秒ほどの時間をかけて息を吐き切った後に瞼を開くと、その眼は再び深い青色へと戻っていた。

 

 

 

「……よし! なんだか普段の調子が戻ってきた気がする」

 

 

 

妻の神奈子が見たら、

 

「そんな、たかが目の色変えただけで馬鹿じゃないの……」

 

とでも言いそうなモノであるが、自身の人気が最高潮を迎えんとする今、鬼の神ではなく人々の神として信仰を集めた方が彼女にとって有利になるのだ。

鬼の神としての畏怖、そして人々の神としての尊敬を集めた彼女は最強無敵なのである。

 

 

 

「……あっそうだわ。ねぇ、あなた天之波波矢みたいに自由に動けないの?」

 

 

刀女比売は相変わらずスイスイと弾幕を躱しながら、ふと突然腰に掛けた付喪神になった刀に向けてそう話しかけた。

当然、いきなり質問を投げられた愛刀からは、

 

『えっ……いきなり何無茶なことを言いだすんだ……?』

 

と、言わんばかりの困惑の意思が漏れ出ていたものの、その後彼女の身体に掛けられた弓、そして何処からともなく飛んで戻ってきた矢からも無言の圧を加えられた事で、観念した叢雲剣は自ら鞘より抜き出ると共に主の周りを回り始めたのである。

 

 

 

刀女比売が携える武器達の中での苦労人枠の存在が皆にバレたところで、彼女はそんな愛刀を触媒にして反撃に打って出た。

相手が放つ弾幕の軌道や、それを避けた上での最適解の攻撃経路を頭に思い浮かべながら、刀女比売はまるで楽団の指揮者のように刀と矢へと思念を送り、彼等の特性を活かした攻め方を見せ始めたのである。

 

 

主が甲高い指笛を鳴らすと共に、矢は戦場を駆ける騎兵のように遊撃しながら矢弾を生成し続け、刀はそれまで主に付き従っていたところを離れ、その場に残ると同時に弾幕を放ち始めた。そして、刀女比売は刀の反対方向まで弾幕の雨を掻い潜って移動すると、自らも敵へ向けて両腕を伸ばして弾幕を放ち始め、こころを二つの方向から攻撃したのだ。

 

 

一方でこころはというと、もうラストスペルを行使している為にその場から動くことも叶わない。その為、千四百年以上の付き合いである国津神と付喪神のベストコンビによる挟撃をまともに受けてしまうこととなったのである。

うぐぐ……と、声なき声を漏らしながら彼女は必死の抵抗を見せたものの、もはやスペルによる弾幕は敵の攻撃をかき消す為に放っており、この戦いもいつしか終演の時が近づいてきた。

 

 

 

「ケリをつけよう」

 

 

 

既に両手から弾幕を放っているにも関わらず、更に追加で背中にある注連縄からも交差する様に追加の弾幕が伸び始め、戦いを見つめる博麗の巫女の脳裏にはかつて自身が経験した八坂神奈子との争いの光景が過ぎる。

もっとも、まだ常識的だった風神に比べ、こっちは明らかにやりすぎなのであるが。

 

こうして、過剰ともとれる刀女比売の強攻が休むことなく続き、爆風が辺り一面を包むことになった。

 

 

 

「……参った! 降参する。お前の勝ちだ」

 

 

 

渾身のラストスペルでも有効打が打てぬままに終わってしまったことで、こころは爆煙の中から姿を表してふよふよと地面へと降りると共に、立膝をつきながら息を切らした状態で敗北を宣言した。

 

そして、対する刀女比売は素早く左足から綺麗に着地すると、まずはその白い歯を出して笑いながら周りの者達に向けてVサインを見せつけた。

 

 

「皆! 東神の回顧録を読んでちょうだいねー! 鈴奈庵で借りられるわよ!」

 

 

「斗神さまー!」

そう自身の異名を叫ぶ観客の声援を受けながらちゃっかりと自著を宣伝した刀女比売は、盛り上がる観衆を他所に俯くこころのもとへと近づくと、その腕を伸ばして手を差し伸べたのだった。

 

 

「……なに、勝者のヨユーってやつ? 言っておくが、そんなのは私には必要ないよ」

 

 

「まぁ、端的に言えばそうね。でもね、貴女は確かに良く戦ったわよ。だからこそ、勝者は敗者を讃えるべきだと感じたの」

 

 

「……私には言ってる意味が全然分からない。何故勝者がそんな振る舞いをするんだ? 敵に土をつけて、それで全て終わりなんじゃないの?」

 

 

「それは違うわ。いい? 良い戦いというのはね、実力が不足していようが、拮抗していようがそんなものは関係ない。戦いを通して、互いに少しでもピンと来ればそれでいい話なのよ。

 

なら逆にこちらから聞くけれど、貴女は私と干戈を交えた時、手応えは感じたかしら? 予め言っておくけど、私は感じたわよ? どう?」

 

 

そう言いながら差し出さなかった方の左手で髪の結びを解き、そのまま髪を指で弄る刀女比売に対し、こころは彼女の顔を見つめながらこう言った。

 

 

「……むーん……。感じた、とは思う。だけど、私にはそれ以上の気持ちをどう表現すればいいのかが分からない」

 

 

「成程。……今浮かんでいるもの、それだけでも私に伝えてくれるかしら?」

 

 

刀女比売にそう促されたこころは明後日の方角を見つめ、「ふむ……」と、思案したあとに語り出す。

 

 

 

「……初め、私はお前に対して薙刀を振るっていた時に……うーん、なんだろう。嫌? な感じ? はしなかった。むしろ、コレなら勝てそうだと胸の内が熱くなるような、そんな気分になったんだ」

 

 

「その嫌な感じというのはきっと苦手意識のことね。確かに、あの時の貴女はその一つ一つの動きから余裕が感じ取れたもの。……ごめんなさい、続けて?」

 

 

「分かった、続けるね。

……それでも、私は次第に追い詰められた。そして、お前に薙刀を叩き斬られた時に感じたんだよ。なんていえばいいか分からない、行き場のない感情をね」

 

 

こころがゆらりと顔を前へと向け、当時感じた気持ちについて吐き出すと、刀女比売は顎を指でなぞりながらこう言った。

 

 

 

「……それは恐らくだけど、悔しさ……もしくは歯痒さじゃないかしら?

 

ひょっとしたら勝てるかもしれない、という心の片隅に浮かんだ慢心と、その気持ちが呆気なくへし折られた時に浮かんだ、あの時こうしていればこうはならなかったかも……という後悔。

そういった感情が束になった時に人は悔しさを感じ、それをバネに成長するのよ。だからこそ、貴女にはまだ伸び代がある……そう私は思ったワケよ」

 

 

「……ほー。ほー! そうか! そういう事なんだな! なんだか、分かってきた気がする!」

 

 

 

互いに目的を忘れた二人はすっかり良い気分になりながらペラペラと話し続け、場はすっかり和やかなムードである。

騒ぎを聞きつけてやってきた"幻想風靡の新聞記者"射命丸文の声掛けで肩を組みながらツーショットを撮るなど、仲良さげな二人の様子はまさに昨日の敵は今日の友といったものだった。

 

 

そんな中で、一人浮いた存在感を放ちながら刀女比売とこころへと鋭い視線を送るのは博麗霊夢である。

 

彼女は初めこそ何も思わなかったものの、よくよく思えば、本来自分がこころと戦っていたはずなのだ。

 

おまけに、保護者の代わりとも言える二人組がどこかへと去っていったこともあってか、手柄を横取りされたと感じた彼女はすっかり虫の居所が悪くなっていた。そう、それこそ前回起きた神子の復活騒ぎに関連した異変でも、霊夢は珍しく功を上げられずじまいだった。そしてそれを終わらせたのも……、目の前の刀女比売その人である。

 

そんなこんなで、積もりに積もった納得できない気持ちが爆発寸前であったのだ。

 

 

もはや自らの素性を隠す必要性すらない為に頭の頭巾をとっぱらってズカズカと人混みを割って入ると、彼女はピシッと幣を刀女比売へと向けてこう言った。

 

 

「何終わらせようとしてんのよ。アンタのせいで私の株が上がらないじゃない!」

 

 

「……あら? あっ、霊夢。見てくれてたのね」

 

 

「見てくれてたのね、じゃないわよ!

いいから! アンタは私と戦いなさい!」

 

 

「え?」と、呆気にとられる刀女比売と、流石に眠くなってきたのかまばらになった観客達の視線など一切お構いなく霊夢はそう言い切ったものの、冷ややかな視線とともに文やこころからツッコミを受ける。

 

 

「ちょっと霊夢さん、何水差しに来てるんですか」

 

「そうだそうだー」

 

 

「チッうるさいわね……。で、アンタはどうするの!? やるの、やらないの!?」

 

 

「……いや、あいにく様だけどやらないわ。今日はもう十分満足したから山に帰る」

 

 

協調性ゼロ同士の会話など、あまりにも見るに堪えないものである。当然霊夢は更なる逆恨みで怒りを露わにするし、刀女比売は刀女比売で、

 

「もう皆も帰って寝なさいな、夜更かししすぎると身体を壊すわよ」

 

と、そんなの何処吹く風といった様子で周りの心配をしていた。

 

結局、勝者である刀女比売の言うことを素直に受け止めた観客達が各々の帰る場所へと戻り始めたことで、もはや勝負などする雰囲気ではなくなってしまった。

当然そんなことな納得など出来るはずもなく、霊夢が掟破りの不意打ちをかまそうとした瞬間、彼女の背後から気の抜けた呼び声がかかった。

 

「ねぇねぇ、朝斗彦の場所わかる?」

 

 

「……あっ! こいしちゃん! なんでここにいるのよ」

 

「……はっ? こいし?」

 

 

腕の中に能面を抱えながら現れたのは"空想上の人格保持者"古明地こいし。

散歩中、やたらと鹿やら猪やらを見つけるのが上手いタイプである刀女比売一人だけが彼女の存在に気が付き、その言葉につられて皆もこいしの存在を意識したのであった。

 

 

「おねーさん、誰?」

 

 

「あっそうか……ほら、これでどう?」

 

 

「!? え、なに? どういう事!?」

 

 

「……ほう。噂には聞いていましたが、まさか本当に両性具有の神だったとは……」

 

 

こいしと文の反応を見てニヤニヤする朝斗彦。

驚きを隠せない様子のこいしが、

 

 

「あ、そーいえばコレ、返しに来たんだよ!」

 

 

と、彼が暴れる原因となった若女の面を手渡すと、朝斗彦はすっかり忘れていたと目を丸くしながらそれを受け取った。

すると、体格差が広がった彼の横でぴょんぴょんと飛び跳ねながら、「見せてくれ」と、こころがせがみ始めた。そんな彼女に朝斗彦が面を手渡すと、こころは両手に持って何も言わずに見つめ続けた後、相変わらずの無表情ながらどこか感慨深そうな雰囲気を醸し出していた。

 

 

「私と同じ匂いだ……。

私は上宮太子の命を受けた父とも言える存在によって造られた。これは……私の姉妹みたいなモノだ」

 

 

「……! そうか、なるほど。それであの戦い方を……。初めは若女の面が君に変わったとばかり思っていたが、そういう事だったのか……」

 

 

路地裏で人知れずウジウジとしている弟子の存在など、鈍感な彼は気付いていない。

なるほど合点がいったと言わんばかりに納得した朝斗彦は、流れでさりげなく名前を尋ねてこころの名をこのタイミングで初めて知ると、まるで孫と会った爺のような嬉しそうな面持ちのまま彼女に、

 

「もし鍛えて欲しい時は何時でも妖怪の山にある守矢神社へと来てくれ。その時は必ず、僕が面倒を見てやろう」

 

と言い残し、そのまま自慢の黒髪を靡かせながら山へと帰っていってしまったのだった。

 

 

 

 

「……ホント、自由気ままですねぇあの方は。あ、霊夢さん? 後を追わなくていいのです?」

 

 

「……ふんっ、別にいいわ。アイツにはいつか絶対に痛い目見せてやるんだから」

 

 

「あ、そうですか。なら、私も陰ながら応援しますよ? 私にとっても、アレは天狗にとっての仮想敵の親玉ですし。

 

……おっと、これはオフレコでお願いしますよ?

何せ、私は清く正しい新聞記者ですから!個人のイデオロギーに振り回されては記者の名折れです!」

 

 

「……鴉天狗の名の通りにやかましいわね、アンタは。こんな所で道草食ってないで、さっさと崖の家に帰って撮った写真の現像でもしてればいいのよ」

 

 

「うーん酷い! ……けどまぁ、それもそうですねぇ。それでは、私はお先に失礼いたします」

 

 

 

 

そう言い残すと、文は翼をはためかせて猛スピードで帰っていく。

気付けばこいしの姿はなく、面霊気も路地裏から漂うどこか懐かしい聖人オーラに導かれて去っていったので、一人置いていかれた霊夢は不完全燃焼な様子で神社へと帰ることとなったのだった。

 

 

 

 

"風雲の如き鮮烈デビュー!? 謎多き女神に勝利が微笑む"

 

 

 

 

*1:
いわゆるグリコポーズ

*2:
神子のスペルカード。アドレナリンが限界を迎えがちな6面ボス戦に相応しい、凡人には目で追うのがちょっと大変なスペル。





筆が進まなかったので更新遅れちゃいました。すみません!
一応その間に過去に書いた話の校正や、生じた矛盾点などの細かい設定の擦り合わせなんかはしておりましたので、よろしくお願いします!
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