イキテマス
「…いきなり訪ねてきたと思えば、昔みたく口述筆記してくれなんて言うから仕方なくやってますけどね。言っておきますけど、こんなのは世に出せませんよ。
なんですかコレ。第二のヴォイニッチ手稿でも目指してるんですか?あと書かせている本人の名誉を毀損させるのはやめてください」
「え?なんて?」
洋風な屋敷、地霊殿の書斎にて僕と比売と向かい合うように安楽椅子へと腰掛けているのはサトリ妖怪の古明地さとり。かつて地底で采配…ならぬ鑿と槌を振るっていた頃の側近であり、現在の旧地獄の管理人である。
何故僕達夫婦がこんな所にいるかと言うと、たまには夫婦水入らずな時を過ごしたいと思っていたところ、なんの偶然かは分からないが、同じタイミングで勇儀から旧都に遊びに来ないかと誘われたのだ。
「折角だから行こうよ!」
僕がそう言うと比売は目を細めて怪訝な表情を浮かべていたものの、詳しく勇儀より受け取った手紙を読んでみると、どうやら旧都の大社が僕達がこちらに移住してきてから初の遷宮の時を迎えたのだそう。
曰く、『主祭神が地上に居るのに声を掛けないのはおかしいだろッ!』と街の有力者達の間で満場一致で決まったらしく、こうして僕の元に手簡が届けられたのだ。
こうして、旧都をしっかり堪能した後にかつての現世側で地獄を管理した時の職場、地霊殿へと訪ねたという訳だ。
「うーん。守矢神社か鈴奈庵で出そうと思ったんだけど、ダメかね」
「スキマ妖怪に発禁されるわよ」
「…間違いなく多方面に喧嘩を売る事となると思うのですが。それに、貴方だけならまだしも、私まで悪評を被ってしまうでは無いですか。
地底のサトリ妖怪は民の信仰厚き守矢の神に便所穴掘らしたらしい〜…なんて、知らぬ間に地上で広められたら流石に傷だって付きますよ、私の名声に」
「…」
「…アンタよくこんなのとつるんでたわね」
「いやまぁ…器用だし手際は良いんだよ、僕と違ってさ。だから頼りにはなるんだけど…ちょっとね」
「貴方がここの主だった頃から一体どれ程の月日が経ったと思ってるんですか。私だって成長してますから。そうよねぇお燐…お燐?」
「火車娘の事?彼女ならさっき抜き足で出ていったわよ」
「……はぁ、あの子ったら。
まぁいいです。兎に角、とっちらかった地底の記録を纏める良い機会だと思って始めましたが、あんまり酷いようでしたらもう筆は置きますよ?」
「そんなに酷いかなぁ。どうせ今って観光業的な面で旧地獄の歩き方みたいな雑誌作ってるんでしょ?こういう裏話的なのがあってもいいじゃん」
「…」
「…でも、穴掘らせた云々を置いておいたとしても、朝斗彦が色々してたってのは事実なんでしょう?実際、貴女は見るからに力仕事出来なそうよね?」
「"出来ない"のではなく、"やりたくない"のです。そこを履き違えられてはこちらも困りますね」
「なんでそこで比売がしゃしゃり出てくんのさ…。それにさとりちゃんも張り合わなくていいから…」
どうどう。利害が一致しているから間欠泉センターの運営とかは出来てるけど、今の二人は全てが真反対過ぎて互いが水と油のように反目しあってるのが感じられるので、挟まれるこちらとしては中々厳しめなものである。
コレ、僕が居るからこんなことなってんだろうなぁ。さとりちゃんは僕の事苦手だろうし、比売はその逆だから噛み合うわけがないのだ。きっと二人だけだったらお互い猫被って穏便になるはずだけどね。
「私は猫なんて被りませんからね。あと嫌いでしたらそもそもこの余興も引き受けませんよ」
「ホントに?」
「??なによ急に、変なこと言い出さないでほしいものね。…全く気味が悪いわ」
サトリ妖怪との会話に慣れた身である僕と、そのサトリ妖怪本人の会話は傍から見れば訳の分からないやり取りである。
それを見た比売は自分がついていけないことに対してムカついたことで悪態をつき、そしてさとりちゃんはその心情を見透かす事で彼女を煽っていく。そうなれば比売が怒り出すのは時間の問題であり、青筋を浮かべた彼女の肩に手を置いて立ち上がらないように押さえ付けた。
「全く…これではどちらが奥方で、どちらが殿方なのか分かりませんね。コレでは朝斗彦さんの方がまだマシです」と、さとりちゃんは煽って来たけれど、まぁ順当に行けば比売が殿方で僕が奥方だろうなぁ。
実際此処に越してくるまでの表向きの役割はずっとそうだったし、昔から比売は目立つの好きで僕は後ろにいるのが落ち着くタイプだからね。
けどさ、こんなズボラな奥方じゃ捨てられそうだよな〜。さとりちゃんもそう思うよね?
「知りませんよ…。あと、私が読心出来るからって思い浮かべた事で直接語りかけてくるのはやめてください」
「…朝斗彦アンタ、妙な事考えてないでしょうね?」
「そんな訳ないよ、ねぇ?」
「ええ。別に朝斗彦さんを擁護する訳ではありませんが、この元上司は何百年も前から四六時中…いついかなる時であろうとも神奈子さん、貴女の事ばかり考えていますので、貴女が心配される必要はないですよ」
「…なんか恥ずかしい!」
「ふっ…。どうやら今の貴方には私の
「してやられたなー」
そんなやり取りをしていると横では比売が目を細めていた。そして、僕らの顔をチラチラと見た後にこう言うのである。
「……アンタ達、本当は仲良いわよね?」
『そんなこと無い(です)』
…
「ずっと筆を走らせていては疲れます」
さとりちゃんがそう言うので、一度筆を置いて優雅なティータイムと言うやつの最中である。
彼女の忠実な部下二人に加え、さとりちゃんのペット軍団も揃ったこのなんとも言えない獣臭い部屋の中でとりあえず出されていた焼き菓子を食べていると、横に座っていた比売から
「ちょっと、がっつかないでよ」
と言われた。いや、自分の手元に数枚取っただけなんだけど…。
「神奈子さんは我々と一悶着ありましたからこちらの目が気になる様ですね?大丈夫ですよ。もうこちらにとっては済んだ話ですし、なんだかんだ言いつつも我々は皆朝斗彦さんの世話になってますから、彼から多少の無礼があってもこちらも少しぐらいは目を瞑りますよ」
「いやあの…別にボロボロ散らかして食べたりとかしてないし、普通にお菓子取らせてもらっただけだからね…?嵌めようとしてるよね?」
「そうだよ!みんな厳しすぎる!」
「お空、アンタはお構い無しに全部食べちゃうからでしょうが!」
「だってさー、しょうがないじゃん!さとり様の作るお菓子美味しいんだから」
「お姉ちゃんの作るお菓子は美味しいよねー」
長年の勘が随分と間の抜けた陰謀の香りを感じ取りつつも、特にそれ以上さとりちゃんが変なことを言ってくることは無かった。きっと彼女なりのジョークだったのだろう。
比売も安心したのか、さとりちゃんと間欠泉地下センターの話だとかそういう実務的な部分で会話を交わしていたので、ひとまず安心である。
そして、こちらにはお空ちゃんやらこいしちゃんやら賑やかし要員が寄ってきて話しかけて来る。やれ石桜は見た?とか、旧都の温泉入った?とか、とにかく色々とである。
「
「ヤマメっちってば朝斗彦のこと見た途端に正座してたよね〜」
「あ、なんだ見てたんだ。全然気付かなかった」
「良いなー!私も灼熱地獄の管理がなかったら一緒に行きたかった!!」
「うーん…アタイはあの時期の旧都には近寄りたくないなー。皆ピリピリしてて怖いしさ」
「えー、それは別に普段からそうじゃん」
「…いや、アレはヤバい!アタイらさとり様の部下は行く先々で鬼の殺気浴びることになるし!」
えっそうなの?と思って聞けば、どうやらさとりちゃんは僕の右腕だったことから有象無象の鬼達から妬まれているとか。勿論、勇儀や萃香を始めとする賢い者たちからは真っ当な評価を受けているが、その逆恨みの根は随分と深いらしい。
まぁ色々とあったらしいけれど、お燐が言うにはどうやら郷が外界と隔てられた後、血気盛んな連中が旧都の事は俺たちがやる!と主張した直後に問題を起こしたとかで、それに対してさとりちゃんが迅速に対応したことなども一因だとか。
「もし嫌な目に遭うようなら僕が言っておくよ?君らは旧地獄にとってなくちゃならない存在だからね」
「い、いやいや!朝斗彦様に手間かけさせるのは…。そ、それにさ!アタイもアタイで勝手に旧都の死体持っていったりしてるし!」
「…おいおい、昔から変わってないね」
「そりゃだって…アタイ火車だもん」
「…私も変わってないよー!山の神のお陰でちょっと強くなったけど!」
「お空、アンタは大分変わったじゃん!神々しくなって、おまけにごっつい飾りに装備まで身に付けちゃってさ!」
うん、その節は申し訳なかった。
比売と諏訪子を引き摺って謝罪に来た時、あまりの様子の変わりようにビックリしたのを今でも覚えているくらいには罪悪感がある。
けど大昔に比べると今の彼女は僕に懐いてるんだよな。もしや八咫烏の力を経由して伯母上の念が届いてるのかもしれない。
「ねぇねぇお燐、折角朝斗彦様が地底に来てくれたんだから私も山に遊びに行きたい!」
「アンタは無理に決まってるでしょ!居なくなったら灼熱地獄どうすんのさ!」
「………うーん?たしかに…確かにっ!?ねぇお燐、そうしたら私はどうすればいいの?」
「知らないよ。アタイに聞かないでよねっ、もー…」
「堅洲の川は…流石に無理か。
そうだ、三途の川でも流して鎮めたら?あれなら地獄の業火も少しくらいなら落ち着かせられるでしょ」
「なにそれ!?大胆!!!」
「閻魔様達も今の川を渡って行ってから随分久しいのに、そんなの出来るわけないでしょうに…。というか、そんな事したら怒り心頭の映姫様が山の上までロケットダイブしてくるでしょーが…」
「そうなの?」
「あー、そりゃあ不味いな。映姫さんの説教は避けられれば避けられるほどにいいからね」
「…そう言うなら、そうなんだね?」
「間違いないよ…。そうだ聞いてよ朝斗彦様、この前もさ〜…」
そんな流れでお燐の話を聞いてやると、どうやら彼女が人里で死体を取ろうと様子を伺っていた所に映姫さんが現れて半日説教されたらしい。
…まぁ、映姫さんにしてもお燐にしても、二人とも色々苦労があるのだろう。
お燐は死体探しのついでによく周りを見てるから苦労も多いのは知っているので、外野なりに話を聞いてあげた。大体はしょうもない話だったけれど、そういう話は好物だから別に気にしない。
「さて、一息ついた事ですし作業に戻りましょうか。
お空、食べたかったら食べちゃっていいわよ」
「いいんですか!」
「えぇ、残してしまったらもったいないもの」
「うわぁーっ!やったやった!」
飛び跳ねるお空ちゃんをお燐が必死に落ち着かせようとする様子を見ながら、僕達は再び部屋を出て廊下を進み、さとりちゃんの書斎へと足を運んだ。
昔と違って綺麗に整理整頓され、幾つもの巨大な本棚に収まった書物の数々は、きっと見るものを驚かせるに違いない。かくいう僕も、彼女に勧められたことで読み物に手を付け始めたので興味をひくものは沢山である。
「…どこまで話したっけ?」
「貴方が鬼と接触したところですね」
「ああそうか。いや…最近物忘れが酷くてね」
「…嘘つかないの。アンタ、ついこの前早苗にもっと昔の時代の話してたじゃない」
「いやー、長期記憶は自信あるんだけど短期記憶がね〜」
そんなやり取りをしていると、さとりちゃんからは「仲がよろしいのは結構ですが、さっさと進めたいので夫婦漫才はしないでください」と、一言突っ込まれた。
…
「終わりきらなかったわね。どうするのよ」
玄関からさとりちゃんたちに見送られ、のんびりと旧都の宿泊先まで歩いて帰っている時、比売がそう聞いてきた。
「そうだなー。明日の昼には地上に戻らなきゃならないからそれまでにやるのも難しいし、隙を見てこっちから地霊殿に行って進めようかな」
「なら、もう貴方だけ地底に残って私だけ山に戻った方がいいんじゃないかしら?」
「…それ本気?それじゃあ比売と一緒に居られないじゃん」
僕がそう言うと、比売は恥ずかし半分呆れ半分といった様子でため息を吐き、そしてぶつくさとなにかを呟き始めた。
「アンタね…。
そもそも山からここまで来るのに時間だってかかるし、旦那が何百年も前からフラフラどっか行っちゃうからそういうのはもう慣れっこなのよ、コッチは」
「え?…いや、それに関しては問題ないよ。だってほら、僕ら自分らの社にはすぐ戻れるじゃん。今回は旅行だからその気分を味わう為にわざわざ縦穴通ったりしたけれど、その力を使えば地底にもすぐに来れるよ」
「あ…そ、そうね。私としたことが旅行気分で浮かれてたのかすっかり忘れていたわ…。私も貴方が言う、物忘れとやらが酷くなったかしら…」
背中の後ろに浮いた注連縄も相まって先程まで存在感抜群であった比売はみるみるうちに小さくなっていき、俯いた彼女はスカートの袖をぎゅっと握りしめる。その様子がなんだか愛おしくなり、ニマニマとしながら見つめていると、その視線に気付いた比売は「何見てんのよ…」と、いわゆるジト目と言うやつでこちらを見てきた。
「…いやぁ、可愛いなと思って。やっぱり僕にとっては比売こそが唯一無二の存在なんだな〜って思うよ」
「やめて頂戴、恥ずかしいわ…。
ほ、ほら…はやく宿に戻るわよ!こんな所でちんたらしてたら神としての面目が立たないわ」
顔を赤らめて恥ずかしがる比売。
こちらとしてはずっと見ていたいけれど、もう旧都の南端に入ってしまっている。それに、人目も多いこの場所で軍神である八坂神奈子がテレテレモジモジしているというのはなんか嫌だ。
彼女のそういう姿は僕だけが見ていたいのだ。
そこで、僕はちょっと待って!と、早足気味になっていた比売を呼び止め、ある提案をすることにした。
「……比売、気分転換に宿までひとっ走りしようよ!」
「えっ…?ばっ、馬鹿じゃないの!?そんな事したら変な噂になるわよ!」
「おいおい、考えてみてよ。ここにいる連中は守矢の信徒とは違う、どちらかと言えばかつての中つ国に近い信仰なんだよ?…まぁ多少野蛮だし、大国主様を差し置いて僕が主祭神になっちゃったけど。
それに、今はお祭の真っ只中だからきっと皆も喜ぶさ。神湖の明神と堅州国の大神が競走なんてしたら伝説になるに違いないよ。
どうする?比売。やるなら手加減はしないけど」
「……やるに決まってるじゃない。アンタに負け越したままなの、正直嫌だったのよね。ここで勝って、アンタと並ぶ!朝斗彦、覚悟なさい!」
そう言うと、比売はびしぃっと音がなりそうな程にこちらを指差してきたので、僕も胸を張ってそれに応える。
「よし、いい心意気だ!流石は比売!無敵の軍神、八坂神奈子!」
「ふっ、そのまま我が威光に恐れ慄いているがいいわ。二千と三百年ぶりに連勝するのはこの私よッ!
…さぁ朝斗彦、アンタが合図を出しなさい。あの時のようにね」
拳を握りしめ、右脚を後ろへと踏み込む比売は、皆がよく知る気炎を燃やす山の明神まさにその人。元気になってくれて良かった。
「さぁ皆、道を空けろ!七年ぶりの本殿遷宮を祝い、我ら祭神二人が堅洲大社まで駆け抜けようではないかー!皆、道を空けるんだ!」
僕が張り上げた一声を聴いた事で街道を往く者たちが一斉にこちらへと振り向くと、彼等はなんだなんだ?と、戸惑いつつも路肩へと寄って行く。
そして、まず初めに鬼達が歓声をあげ、他の妖怪達もまたその熱気に押されて興奮したのか思い思いに叫び始めた。
「…へっ?アンタ、さっきと言ってることが違うじゃない!」
「ふっ、いいのいいの。鬼は兎も角、牛鬼や土蜘蛛みたいな異種の住人達には何か理由付けた方が受け入れやすいでしょ」
「そ、それはそうだけど…まぁいいわ。折角皆が空気を読んでくれたのだから、乗らない手はないわね!」
「その通り。
よし、それじゃあ今から一つ弾幕を撃つから、ソレが弾けたら勝負開始だ。ゴールはあの社だからね?宿には向かわないように宜しく頼むよ」
「わかってるわよ。アンタこそ気をつけるべきじゃないかしら」
「ふっ、そうかもね」
そう言ったあと、僕は左脚を後ろに動かして踏み込むと、右手より大玉の弾幕を一つ放つ。そして、安全な場所まで飛んだのを確認した後、左手を握りしめて神通力を作用させるとたちまち弾幕は弾け、まるで花火のように旧地獄の空へと花開くこととなった。
どーん!という大きな音が鳴り響き、腕を組む橋姫がビクッと飛び跳ねたのを見るやいなや、僕達は脇目も振らずに社へと走り出した。
背中に浮く注連縄をぶつけ合い、両者ともに一歩も譲らない僕達の勝負は鬼達の心にも火をつけたのか、競い合いを邪魔しない程度に追いかけてくる者たちが続出した。…主に未婚の男達である。良縁をもたらすとされる我ら二人の神徳にあやかろうとする彼らもまた、ここで目立つ事で一花咲かせたいのだ。
地霊殿の対角線上に存在するあの社までは長い街道が一直線に敷かれているので、僕達はそれを目指し、ひたすらに走り抜けた。そして、社の鳥居を初めにくぐったのは僕ではなく比売である。それに半身ほど遅れて僕が鳥居をくぐることとなった。
その後を着いてきていた鬼達は崇め奉る存在が敗北したという事実に対して項垂れていたものの、皆酒が入った陽気な酔っ払いであるため、やがてそれぞれが思い思いに勝者である比売を讃え始めた。
「…よっし!まだまだ私も現役ね!」
「…負けたか。やっぱり最近出不精だったからなー、身体が鈍ってるや」
「アンタ、昔から速さがウリだったんじゃなかったかしら?最近ちょっと寝過ぎなんじゃないの?」
「否定出来ないのが悔しい。でも、どんなに勇壮な松だって、初めに笠から飛び出た種は身軽だけれど、一度根を張ればたとえ相手が岩だろうがしがみついて離さないからな。長い月日を経て僕もそうなっただけだよ」
「その割には随分とフラフラ出歩いているそうじゃあないか。ええ?萃香から聞いたよ、東神サマ」
「あっ勇儀」
現れたのは着物をはだけさせ、艶かしい雰囲気を纏った地底の鬼の元締めこと、星熊勇儀。周りの男どもが彼女の姿に鼻の下を伸ばしているのを見て思わず笑いかけたものの、それ以上に感じるのは嫌な予感である。
「そうなのよ。朝斗彦ったらいっつも目を離した隙に人里とか博麗神社に行っちゃうのよ?
せっかくこうして幻想郷に来て力を取り戻したのだから、神様らしくどっしりと構えていて欲しいというのに…ほんと、困ったヒトだわ」
「…なぁ、東神サマ。人里は良いとしても、博麗神社は一応商売敵じゃあないのかい?見た所、奥方だってウンザリしてる様子じゃあないか」
「…いや博麗神社にはウチの分社もあるしそれを言うなら早苗だってよく遊びに…うーん、あーいや…そうだなー。根を張った木であろうとも、多少の能力があればちょっとばかし動くこともあるよ。ほら、うん…」
ギャーギャーと騒ぎ立てられる事については普段から女子中心の生活を過ごしているのでもはや慣れっこだが、こうやって静かに呆れられるのが僕は何よりも苦手である。結局苦し紛れの言い訳をしたものの、目の前のふたりは呆れた表情を浮かべ、腕を組んでいた。
「それ、どういう言い訳なんだ?」
「…アンタ、ホントにバカね」
強さの象徴みたいな二人に冷たい視線を送られ、正直めちゃくちゃショックである。後ろの追いかけてきた皆、縁は結ばれても僕みたいに羽目外して怒られるような男にはなるんじゃあないぞ。
この後、宿に戻って温泉に入ったものの、考え事に考え事を重ねて湯に浸かりすぎた結果、見事に逆上せてしまった。褌一枚で比売に介抱されるわ、勇儀には「あんまり奥方に迷惑かけるんじゃあない」と、笑われることとなったので僕としては恥ずかしい事この上ないのだが…。
それだけでは飽き足らず、地底にて鬼達によって書かれる
こんなに書くつもり無かったのに見直し挟む度にどんどん増えていく、何故