『死』となった男の話   作: 燃える空の色

6 / 6
変革の時代、二つの分かれ道

 

 幾星霜と月日が流れ、世界は限りのない変遷を迎え続ける。

 しかし、世界が如何様に姿かたちを変えようと、生々流転と相成らず、万物の法則に逆らい、本質をほとんど変えぬモノもある。

 それはこの世界の本質であり、生命の本質であり、神話に及ぶ全ての話。

 例を挙げれば、『魔法』と名のつく存在たちは、進化や進歩とはほんの少しばかり縁遠い存在だった。

 

 竜あるいは龍、彼らの中でも旧き者はその本質を不朽のものとした―――、

 不死鳥あるいは鳳凰、彼らは幾度死したとて蘇り死を遠ざけた―――、

 精霊あるいは妖精、彼らはその性質を持って生物の理を超えた―――、

 

 そんな『生』を超越した存在たちは、今なお世界のどこかで羽ばたいている。

 

 そして、もう一つ。

 この世界に『生』ある限り、決して変わらない法則というものがある。

 それは終わりだ、それは終演だ、それは終焉だ。

 生物としての幕引き、肉体的な意味での『死』。

 それは本来遍く生命に訪れる平等な最期。

 

 けれども、不朽不滅の彼らでさえ、永遠に座す『死』でさえも、その精神は如何様にも移り変わる。

 

 最もわかりやすい話として、『死』はその名前を変えた。

 正確に言えば、新たな名前を得た。

 その名を『モルス』。

 最初の友に与えられた名をもって、そしてその姿かたち或いは精神は大きく変化した。

 その精神は、かつて『人』であった頃のモノに近づき、その外見は、形だけなら『人』と言って差し支えないものとなった。

 

 そして『死』が『モルス』となってから、『モルス』は前よりも多く、一つ一つの生命に触れ、時折関わるようになった。

 

 そして『死』とは、『モルス』とは一体何かという、友――イグノタスが最後に遺した疑問についてを考えていた。

 『モルス』は元より、遠く彼方果ての果て、あるいはその更に向こうから、僅かに繋がった縁を頼りに辿ってきただけの魂が『死』という器に収まっただけにすぎない。

 『死』となってから、『モルス』は尽きぬ疑問を抱えながらも、途方もない時間をすごし続けてきた。

 そうした疑問も、月日が流れるうちに溶け消えてしまった――けれど、今こうして、溶けた疑問は固形となって浮上する。

 

 『死』とは、何か。

 死では無く、終わりではなく。

 『死』とは、一体何なのか。

 

 その答えを探すために、『モルス』は多くの人と触れ合った。

 力を持たぬ者は、力持たぬが故の知恵を持ち、個々によって差の激しい独特の世界を『モルス』へと見せた。

 力持たぬ者は、力持たぬが故に団結し、『モルス』が不可能と断じた奇跡を人の身で実現させた。

 

 力持たぬ者が文明を発展させ、技術を進歩させ、叡智を蓄え、そのカタチを変えていく中で。

 力持つ者もまた、ある種の発展を迎えていた。

 力持つ者はその殆どが市井に紛れるようになり、ある者は宮廷魔術師あるいは王や貴族の相談役として権力を獲得した。

 またある者は救国の英雄として称えられ、またある者は恐ろしき悪魔として降臨した。

 

 力持つ者が力持たぬ者と共存を図り、双方ともに利益を得るようになった時代。

 

 

 けれども、生物とは理解出来ぬ力を恐れ区別するもの。

  

 

 ある島国では、力持つものを天狗や神と崇め奉り、恐れた。

 ある国では、力持つものの起こした奇跡によって栄え、その者を神の子として宗教を興した。

 ある国では、力持つものを『魔女』あるいは『魔法使い』と呼び、排斥の時代が訪れた。

 

 

 それにより『魔女』あるいは『魔法使い』は力持たぬ人々から離れ、自分達独自の社会と生存圏を造り出し、力持たぬものと自分たちを明確に差別化し始めた。

 

 

 そんな、変革の時だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(必須:5文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。