なんか新作やるらしい(もうやってる?)ので供養ということで投稿。
「葉月さん、もうまもなく到着します」
呪術高専から車でおよそ1時間。心地よい揺れに身を任せ、助手席で眠りこけていたわたしは伊地知さんの声で夢の世界から現実に浮上した。
「すみません、眠ってしまっていたみたいで」
未だズキズキと痛む頭を無視し、ハンドルを握る伊地知さんに詫びを述べる。そういえば、助手席で眠るのは失礼だとどこかで聞いたことがある。
「構いませんよ。復帰したてなのに今回で3件目です。疲労も蓄積するでしょう」
本当はまだ安静にしているべきなんですから、なんて言う伊地知さんの顔は険しい。いつだったか、わたしや乙骨君たちにこんな仕事をさせるのは本当は嫌だと言っていたのを思い出す。
だが悲しいかな、呪術界はいつだって人手不足の業界だ。わたしたちのような学生でも容赦なく呪霊討伐に駆り出されるのは仕方がないのだ。
彼は呪術界において数少ない常識的な大人だと言える。
根本的にこんな仕事は向いていないだろうに。可哀想な人だ。
高速道路を降りてしばらく、目的地である廃工場の駐車場に車を停めた。
窓の外には廃工場の建物が静かに佇んでいる。確か有名な電機メーカーの製造工場、だったか。
「数時間前、窓が呪胎を確認しました。」
伊地知さんが資料に目を通し、必要な情報のみを読み上げる。わたしはポケットからいちごグミを取り出し、パッケージを眺めながらそれを聞く。
もう何度も繰り返している、いつもの作業だ。
「幸い工場は既に閉鎖されているので人はいません。」
人が居ないなら歪曲に巻き込む心配がないな、なんて考えながらグミを数粒口に放り込む。いちごの甘さに頭痛が溶けていくような錯覚を覚える。
それと呪胎ですが、と伊地知さんが言い淀む。わたしが促すとため息をついてから続きを口にする。
「変態すればおそらく一級か特級相当かと・・・・・・。
12月の件もありますのでくれぐれも無茶だけはしないように」
「ご心配ありがとうございます。ですが、ご安心を」
伊地知さんと連れ立って車から降りる。いつから手入れされていないのだろう。駐車場は不法駐車と雑草にまみれていた。
「『眼』で見えるなら特級相手だろうと相手ではありませんから」
ふらつく足を地面に押し付け、グミをもうひとつ口に放り込む。
いつの間にか頭痛は気にならなくなっていた。
「それに、あのような失態を繰り返すつもりはございませんから」
西日に照らされた工場が大きな影を伸ばしている。
「行ってまいります」
伊地知さんが帳を下ろす声を聞きながら、廃工場に足を踏み入れる。
お読みいただきありがとうございました。
呪術廻戦≡、楽しみですね。
悲しいかな、作者は単行本派なので読めるのはまだ先になりそうです。