銀河英雄伝説 〜無能なる俗物が勘違いで英雄に祭り上げられ、気づけば貴族連合盟主としてラインハルトと雌雄を決する件について〜 作:斉宮 柴野
共和国軍もまた、傷ついたイゼルローン要塞を守るため追撃を断念した。
戦いは終わった。
だがヤン・ウェンリーは、公国軍が得た「土星の翼」が、銀河の戦争そのものを変えたことに気づく。
【シャンタウ星域】
戦場には、勝敗が決する瞬間というものがある。
一方の砲列が崩れ、もう一方の艦隊がその傷口へ殺到する。あるいは、退路を塞がれた指揮官が最後の予備兵力を投入し、それさえも押し返される。戦っている者の誰もが口に出さずとも、天秤がどちらへ傾いたのかを理解する瞬間である。
だが、現在のシャンタウ星域には、その瞬間がいつまで経っても訪れなかった。
帝国軍の先鋒に立つ《ベイオウルフ》が加速する。
疾風ウォルフの異名に恥じぬ猛攻だった。ミッターマイヤー艦隊は共和国軍の砲列に生じたわずかな間隙を見つけるや、艦首を揃えて鋭く食い込んでいく。普通の指揮官なら、敵がそこまで踏み込んできたと気づいた時には、すでに側面を食い破られている。
しかし、アッテンボローは踏み込まれる半歩前に退いた。
第十三艦隊は敗走するのでも、恐慌を起こすのでもなく、まるで足元を流れる水に押し流されたかのようにするりと後方へ下がる。先頭を走っていた帝国艦が共和国軍の射程へ入った時には、獲物となるはずだった艦列は遠ざかり、その左右から交差砲火だけが飛んできた。
ミッターマイヤーは追わない。
勢いに任せて突出すれば、今度こそアッテンボローの網に絡め取られる。そう判断した帝国軍は、共和国軍が反撃へ移るより早く推進力を殺し、整然と元の位置へ戻っていった。
反対側では、ラップの第十一艦隊が薄く横へ広がっていた。
損傷から立ち直った艦を外周へ回し、パエッタの第二艦隊と連携して、帝国軍の側面を抱き込もうとする。だが、その腕が閉じるより先にレンネンカンプが後退した。重厚な陣形を崩すことなく、前列と後列を規則正しく入れ替えながら射程の外へ滑っていく。
追えば逃げる。逃げれば追う。
押せば引き、引けば押し返す。
何万という戦艦が砲火を交わしているにもかかわらず、戦況は巨大な振り子のように同じ場所を往復していた。
もっとも、その往復のたびに人は死んだ。
光点として表示されていた艦が一つ消える。その中に数百人の人生があり、家族があり、言葉にできない恐怖があったことなど、戦術画面からは読み取れない。両軍の指揮官がどれほど巧みに損害を抑えても、振り子が一度動くたびに、宇宙には新たな棺が作られていった。
帝国軍の陣形中央、そのさらに奥深くに、灰色の巨艦が浮かんでいる。
砲撃戦艦《ブリトマート》無数の長距離砲を全身に備えたその艦は、推進器を取り付けた要塞に近かった。先ほどまで前線で凶暴な火力を振り回していた巨艦も、今は両軍の押し引きを冷然と見守るように、砲口を共和国軍へ向けたまま静止している。
そのブリッジに、一通の暗号通信が届けられた。
発信元を知ることが許されている者は、ごくわずかだった。最高度の暗号鍵が幾重にも掛けられ、開封と同時に複製不能となるその通信文を、指揮座の人物は黙って読み進めていった。
イゼルローン要塞の外壁を《ロンゴミニアド・スピア》によって貫通。
装甲擲弾兵による要塞内部への突入に成功。
しかし共和国軍の増援が相次いで到着し、要塞中枢の完全占拠には至らず。突入部隊を収容後、皇帝親征軍は戦闘宙域からの離脱を開始する。
これをもって陽動作戦を終了。シャンタウ方面に展開する全軍も、現戦域より撤退せよ。
簡潔な文面だった。
末尾には、皇帝アルブレヒト本人の電子署名が刻まれていた。
だが、その数行の背後にあるものを、指揮官は正確に読み取っていた。
難攻不落の外壁に大穴を穿ち、二万もの守備兵を一撃で葬った。それは疑いようのない戦果である。一方で、穴を開けることと、その奥にある巨大都市を占領し続けることは全く別の問題だった。
正面にはヤン・ウェンリー。周囲には、共和国の予備艦隊が次々と集まりつつある。そして背後には、土星エンジンの翼を得たローエングラム公の公国軍がいる。
今この瞬間は、義兄を助けるために共和国軍へ砲火を浴びせているとしても、ラインハルト・フォン・ローエングラムは帝国の臣下ではない。彼が率いているのも、帝国軍ではなくキルヒアイス公国軍である。
欲をかいて要塞へ食らいつき続ければ、前からは魔術師に締め上げられ、後ろからは黄金の獅子に退路を握られる。
皇帝は、勝利という名の果実へ伸ばしかけた手を自ら引いたのだ。
指揮官は最後まで通信文を読み終えると、小さく息を吐いた。
「……なるほど。分厚い外壁に大穴を穿つことには成功したものの、完全な占拠には至らず、ですか」
声には落胆も焦燥もなかった。
むしろ、最も大切な者が危険な賭けの引き際を誤らなかったことへの、かすかな安堵すら混じっていた。
「陛下も、背後にいる公国軍をご覧になって、これ以上の無理はなさらぬことにしたようですね。実に冷静なご英断でしょう」
傍らに控えていたグリルパルツァー大将が、一歩進み出た。
「閣下。我々は、これよりいかがなさいますか」
戦術画面に視線を移す。ミッターマイヤーが再び前へ圧力を掛け、それを察したアッテンボローが砲列をわずかに下げている。どちらもまだ余力を残していた。続けようと思えば、夜も昼もない宇宙で、あと何日でも殺し合いを続けられるだろう。
だからこそ、続けてはならなかった。
「作戦の目的は十分に果たしました」
立ち上がる。
その所作には、軍服の肩にどのような階級章があるかなど問題にならない、自然な威厳があった。ブリッジにいた将兵たちの背筋が、一斉に伸びる。
「我々の役目は、シャンタウ星域に共和国軍の精鋭を釘付けにし、イゼルローン本隊から引き離すことです。要塞への攻撃が終了した以上、これ以上ここに留まり、目的もなく血を流す意味はありません」
「はっ」
「全艦、撤退を開始しなさい。ミッターマイヤー提督には、機動力を生かして両翼の収容を。損傷艦を陣形の内側へ入れ、健在艦を外周に配置。殿はレンネンカンプ提督に任せます。敵に退路を悟られた後も、決して艦列を乱してはなりません」
グリルパルツァーは即座に復唱しようとしたが、戦術モニターの片隅に映る共和国軍の光点を見て、わずかに口を閉ざした。
「……アッテンボローたちが、素直に我々の背中を見送ってくれるでしょうか」
「追撃に移れば、ラップ提督もパエッタ提督も、我々を減らせる好機を見逃すほど臆病ではありますまい」
その懸念に、指揮官は優美な笑みを浮かべた。
砲火と死に満ちたブリッジには似つかわしくないほど穏やかで、それゆえに底知れない自信を感じさせる微笑だった。
「追ってはきませんよ」
「そう断言なされますか」
「今頃、相手の前線司令官にも、イゼルローン要塞が直撃を受けたという報告が届いているでしょう。しかも、ただ被弾したのではありません。彼らが絶対と信じていた流体金属の外壁を破られ、トールハンマーまで一時的に沈黙させられたのです」
細い指が、戦術画面に浮かぶ第十三艦隊の光点をなぞった。
「ヤン・ウェンリーの弟子たちは利口です。目の前の獲物に手放しで飛びつき、傷ついた要塞と自分たちの背後を空にするような真似はしません。まして、こちらがわざと隙を見せれば、それが罠ではないかと疑わずにはいられない」
「我々が、彼らにそう教えてきましたからね」
グリルパルツァーの口元にも、納得の笑みが浮かんだ。
「では、追いたくとも追えない形で退く、と」
「ええ。退却とは、敵に背中を見せることではありません。敵が手を伸ばせない場所へ、こちらから盤面を移すことです」
直後、《ブリトマート》から発せられた命令が帝国軍の全艦へ走った。
最初に動いたのはミッターマイヤー艦隊だった。前へ出ると見せかけて共和国軍に防御姿勢を取らせ、その一瞬の硬直を利用して両翼を滑らかに後退させる。グリルパルツァーの砲撃艦群が、その動きを隠すように長距離砲の幕を張った。
最後尾では、レンネンカンプ艦隊が巨大な扉のように戦列を閉じる。
急がず、乱れず、しかし確実に遠ざかっていく。
四万を超える大艦隊の撤退でありながら、そこには敗走につきものの混乱も、焦りも、獲物を誘う露骨な隙もなかった。
灰色の《ブリトマート》が、最後にゆっくりと艦首を巡らせる。
共和国軍へ向けられていた無数の砲口は、相手に一発撃ち込む機会さえ与えぬまま、暗黒の彼方へ消えていった。
◇◇
【共和国軍第十三艦隊旗艦《トリグラフ》】
「……退く、か」
アッテンボローはベレー帽を深く被り直した。
メインモニターには、帝国軍の光点が少しずつ小さくなっていく様子が映し出されている。望遠映像に切り替えれば、殿を務めるレンネンカンプ艦隊が今なお砲列をこちらへ向け、一定の間隔を保ったまま後退しているのが見えた。
背中は見えている。
だが、刃を差し込む場所がない。
「こちらの要塞がやられたという報せと、ほとんど同時に撤退とはな。最初から時間を合わせていたのか、それとも、向こうの指揮官が機を見るのに長けているのか」
「どちらにしても、嫌な相手です」
ラオの返答に、アッテンボローは苦い顔で頷いた。
帝国軍の動きはあまりにも整っている。艦隊の外側には無傷の戦艦が並び、損傷艦はその内側へ隠されていた。追撃部隊が距離を詰めれば、レンネンカンプが受け止め、その間にミッターマイヤーが側面へ回るだろう。《ブリトマート》の長距離砲も、こちらの陣形が前後に伸びきる瞬間を待っているはずだ。
通信モニターに、パエッタ大将の顔が大きく映った。
「アッテンボロー元帥! ここは追撃すべきではないか!?」
「相手は背中を見せているのだぞ! 我が第二艦隊も合流を果たし、兵力ではこちらが上回っている。この機を逃せば、敵は戦力を保ったまま帝国領へ帰ってしまう!」
別の通信枠に、ラップ大将の姿が現れる。
第十一艦隊は先ほどまでの包囲で少なからぬ傷を負っていたが、その表情に疲労はあっても戦意の衰えはない。
「パエッタ中将の主張にも一理ある」
「我々は三個艦隊を合流させた。国家として総数の上では有利だ。この兵力差を今後も維持し、さらに広げるという意味では、敵が撤退へ移った今を狙うに越したことはない。無理に殲滅を目指さずとも、後衛を削るだけで戦略的な価値はある」
「分かっている」
「分かっていますよ。俺だって、目の前で尻を向けた連中に、記念の一発くらい蹴りを入れてやりたい」
帝国軍の予想退却線が、モニター上に細い帯として表示される。
「だが、見てください。レンネンカンプは後衛を厚く見せながら、左右に高速艦を伏せている。あそこへ食いつけば、先頭の艦だけが突出する。ミッターマイヤーはそれを待って反転し、こちらの鼻先を横から叩くでしょう」
「ならば、全軍で押せばよい!」
「全軍で押せば、今度は俺たちの背後が空になる」
アッテンボローの声から、軽口の色が消えた。
戦術画面が縮小され、シャンタウ星域からイゼルローン回廊までを含む広域図へ変わる。その中央で、共和国の根拠地を示す光点が、傷口のような赤い警告色を放っていた。
「イゼルローン要塞外壁、第三百二十ブロックから第百二十ブロックにかけて大破。守備兵およそ二万が一撃で失われた。敵装甲擲弾兵の侵入は阻止し、帝国軍と公国軍は撤退を開始したそうですが、トールハンマーの伝導回路と収束ミラー群にも甚大な損傷。完全復旧の見込みは、まだ立っていない」
ブリッジの空気が重く沈んだ。
数字として聞く二万と、一人一人の死を足し合わせた二万は、本来同じものではない。だが、戦場ではその違いを噛みしめる時間すら与えられなかった。
「俺たちはここへ出てくる時、背後に難攻不落のイゼルローンがあると思っていた。何があっても要塞が補給路を守り、トールハンマーが回廊を塞いでくれるとな。だが、もう同じ前提では動けない」
ラップが静かに目を伏せる。
「……帝国軍を追えば、損傷した要塞を守る兵力が戻るまで遅れる」
「そういうことだ。しかも、公国軍がどこへ消えたのかも完全には掴めていない。あの速さで、別の出口へ回り込まれたら目も当てられません」
パエッタはなおも何かを言いかけたが、やがて太い息を吐いた。
「……不本意だが、致し方あるまい」
「すみません、親父さん。今回は獲物を譲ってやってください」
「謝る必要はない。元帥であり方面軍司令官である貴官が、全体を見て下した判断だ。従う」
「こちらも了解した。第十一艦隊は損傷艦の応急修理を急がせる。航行可能になり次第、先行して要塞へ戻そう」
「頼む。第二艦隊は外周警戒、第十一艦隊は中央。第十三艦隊が最後尾につく。敵の撤退を確認しながら、こちらも段階的にシャンタウ星域を離れる」
アッテンボローは遠ざかる《ブリトマート》の映像を、しばし睨みつけた。
「まさに、分かっていても追えない、か。随分と高い授業料を取ってくれたものだ」
彼の指が、モニターに表示されたイゼルローン要塞の損傷箇所へ触れる。
「急いで帰るぞ。あの要塞の絶対的な防壁に頼れないとなれば、これは修理だけで済む話じゃない」
ベレー帽の下にある眼差しが鋭く細められた。
「共和国の防衛戦略そのものを、根底から作り直さなきゃならなくなる」
◇◇
【自由惑星共和国・イゼルローン要塞 総統府執務室】
「総統。帝国軍、公国軍、ともに戦闘宙域からの完全離脱を確認しました」
ユリアンの報告を聞き、ヤンは深く息を吐いた。
「そうか。どうにか、お帰りいただけたわけだね」
その声には、勝者の喜びなど欠片もなかった。
執務室の照明は、先ほどから何度も明滅している。要塞内部の電力網が損傷し、重要区画へ優先的に電力を回すため、自動調整を繰り返しているのだ。遠くからは隔壁を切断する重機の振動が低く伝わり、ときおり、負傷者を運ぶ医療車両の警報音が廊下を走り抜けていった。
机の上には、いつ淹れたのか分からない紅茶が置かれている。
カップの表面には薄い膜が張り、すでに湯気もない。ヤンはそれを口へ運びかけ、さすがに思い直して元へ戻した。
「……これは、しゃれでは済まなくなったかな」
「はい」
ユリアンは、外壁の損傷図を空中へ投影した。
球形の要塞の一部が深く抉れ、内部へ向かって赤い被害領域が伸びている。
「共和国の防衛戦略は抜本的な見直しを迫られます。あのような力技で流体金属層を貫通されては、もはやイゼルローンは絶対の盾ではありません」
ユリアンの声は冷静だった。
だが、指先にはわずかな力が入っている。
「《ロンゴミニアド・スピア》の威力と射程、発射後の再充填時間を至急分析させます。外壁の隔壁構造も改め、同じ箇所へ二射目を受けても中枢まで抜かれないように多重化を――」
「いや」
「もちろん、それも必要だ。穴は塞がなければならないし、トールハンマーも直さなければ困る。だが、私がしゃれにならないと言ったのは、帝国軍の火力のことじゃない」
「違うのですか?」
「公国軍だよ」
ヤンは立ち上がり、広域星図の前まで歩いた。
「あの尋常ではない速さ。土星エンジンだったかな。公国軍は、共和国側で待ち受けていたボロディンやクブルスリーの部隊を振り切り、通常ならあり得ない短時間で回廊を走り抜けた。巡航艦でさえ、こちらの最新鋭駆逐艦より速い」
「確かに、脅威ではあります」
「脅威、という言葉でも足りないかもしれないね」
ヤンは星図を操作し、公国軍が通過した経路を再現した。
純白の光点が、迎撃部隊の横を抜けていく。迎撃側が敵の到来を知り、命令を受け、陣形を整え、砲列を向ける。その一連の動作が終わる前に、公国軍はすでに射程の外へ出ていた。
「ユリアン。軍艦が速いと、戦場では何ができる?」
「敵より有利な位置を先に占められます。敵の側面や背後へ回り込み、こちらが不利なら交戦を避けることもできます」
「そうだね。純粋な艦隊戦なら、彼らは好きな時に近づき、好きな時に離れられる。こちらは戦うかどうかを選べない。気づけば背後を取られ、殲滅される危険もある」
「では、やはり艦隊決戦での対策を急ぐべきです。機雷原や小惑星帯へ誘い込み、速度を生かせない地形で――」
「それも一つの手だ。狭い回廊なら進路を制限できるし、陣形と地形を工夫すれば、戦術的にはまだ対抗できるだろう」
広域図をさらに縮小する。
イゼルローン要塞を中心に、旧自由惑星同盟領と、かつて帝国領だったネオ・フリー特区が、星の海の両側へ広がっていく。共和国の版図は、三国の中で最も広かった。
「だが、本当に恐ろしいのはそこじゃない」
「では……」
「兵站さ」
補給基地から前線基地へ。前線基地から艦隊へ。食料、燃料、反応炉の予備部品、ミサイル、医薬品、交換要員。巨大な艦隊を一日動かすためだけに、無数の輸送船が宇宙を往復しなければならない。
「戦艦は、勇気だけでは飛ばない。乗員は食べなければならないし、核融合炉にも燃料が要る。主砲を撃てば砲身が傷み、推進器を使えば部品が摩耗する。戦場で華々しく撃ち合っている艦一隻の後ろには、それを動かすための何十隻もの輸送船と、何百人もの整備員がいる」
「はい」
「戦術画面には、つい戦闘艦だけを表示したくなる。輸送船は遅く、武装も貧弱で、見栄えがしないからね。だが、戦争の本体はむしろそちらだ。補給を失った艦隊は、どれほど勇敢でも数週間で巨大な漂流物になる」
ヤンは、公国軍の光点を一つ、共和国領の外縁に置いた。
そこから複数の矢印が、一斉に別々の星系へ伸びる。
「公国軍が占領地に腰を据え、行政機構を作り、住民を統治しようとするなら話は別だ。占領軍にも補給が必要になるし、現地へ兵力を分散させなければならない。こちらにも反撃の時間が生まれる」
「しかし、占領を目的としない奇襲なら……」
「そう。話が全く変わる」
「彼らは惑星を取る必要がない。補給基地を焼き、宇宙港の燃料タンクを破壊し、通信施設を潰したら、こちらの艦隊が来る前に去ればいい。警報が鳴ってから迎撃命令を出し、乗員を呼び戻し、炉を立ち上げ、艦隊を発進させる。その頃には、彼らは次の星系へ向かっている」
ユリアンの顔から血の気が引いていく。
「では、各星系に十分な守備艦隊を常駐させるしか……」
「共和国の全領土にかい?」
ヤンは疲れた笑みを浮かべた。
「守るべき場所はいくつあると思う? 有人惑星、鉱山星、食料生産地、工業衛星、軍港、通信中継点。それぞれに、公国軍の一個艦隊を追い返せるだけの戦力を置くのかな」
「それは……不可能です」
「では、全艦隊を常に即応状態で待機させる?」
ヤンの問いに、ユリアンは答えられなかった。
即応状態とは、命令一つで出撃できるという格好の良い言葉ではない。
乗員の外出を禁じ、交代要員を艦内に拘束し、機関をいつでも最大出力へ上げられる状態に保つことだ。定期整備は後回しとなり、訓練と休養の周期は崩れる。燃料は待機しているだけでも消費され、商船に回るはずの港湾施設と輸送能力が軍に吸い上げられていく。
一週間ならできる。一か月でも、国民に非常時だと訴えれば耐えられるかもしれない。
だが、半年、一年と続ければ、軍より先に国家が疲弊する。
「ナンセンスすぎて、笑いも出てこないね」
「そんなことをすれば、敵に一発も撃たれないまま共和国経済が死ぬ。工場は軍需品ばかり作らされ、商船は徴用され、兵士は疲労で使い物にならなくなる。公国軍は、ときどき国境に姿を見せてこちらの警報を鳴らすだけでいい」
「本当に攻めてくるかもしれない以上、我々は毎回出撃せざるを得ない……」
「狼が来たぞ、と叫ぶ子供が、本当に狼を三倍の速さで連れてくるようなものだ。無視するわけにもいかない」
共和国軍は、艦隊の総数だけなら三国で最も多い。それは事実である。だが、広大な版図のあちこちに薄く広げれば、どの戦場でも数的優位を作れない。
イゼルローンを中間点として、旧同盟側と旧帝国辺境側の双方に領土を持つという共和国の形が、ここにきて弱点へ変わろうとしていた。
敵は速く、守る側は広い。
その二つが重なった時、艦隊数の多さは帳簿の上の慰めでしかなくなる。
「それなら……」
ユリアンは意を決したように顔を上げた。
「こちらから先手を打つべきではありませんか」
「先手?」
「公国軍は速くとも、総数では我々より少ない。彼らが各地を襲う準備を整える前に、大軍をもって中枢を叩くのです」
「予定されていたハイネセン奪還作戦は、すでに実行寸前まで準備が進んでいたはずです。イゼルローンの防御が損なわれた今こそ、受け身に回らず、主導権を取り返すべきではないでしょうか」
ヤンはしばらく答えなかった。
「今回のことで、その作戦は事実上できなくなった」
「なぜですか?」
「では、やってみようか」
ヤンは共和国軍の主力を示す青い光点を集め、ハイネセンへ向かって進めた。
青い大軍の後ろに、細長い補給線が伸びる。イゼルローンから遠ざかるほど、その線は長く、細くなっていった。
「ハイネセンは遠い。奪還軍が大きければ大きいほど、必要な物資も増える。途中の補給拠点を整備し、輸送船団を何往復もさせなければならない」
次に、公国軍を示す白い光点を動かす。
白い艦隊は青い主力へ向かわなかった。
ハイネセンを守るために正面決戦を挑むのでもない。進路上にある物資を回収し、使えない施設を破壊しながら後退する。そして青い大軍が空になった星系を通過した後、その背後へ回り込んだ。
「公国軍は、こちらと戦う必要がない。ハイネセン周辺の物資を持ち出し、持ち出せないものを焼く。いわゆる焦土作戦だ。こちらが追えば逃げ、止まれば別の場所へ現れる」
白い光点が、青い艦隊の後ろに伸びる補給線へ触れた。
輸送船を示す小さな点が、次々と消えていく。
「そして狙うのは戦艦ではない。燃料も食料も満載しながら、足が遅くて武装の乏しい補給船だ。護衛艦隊を付けても、公国軍は護衛の薄い区間だけを選べる。待ち伏せを読まれたら、その速さで即座に離脱すればいい」
「補給路をすべて守ろうとすれば、主力から戦力を割かなければならない」
「そう。十隻の輸送船を守るために十隻の戦艦を付ければ、前線から十隻が消える。補給路は一本の線ではなく、何百という航路の束だ。それを全部守ろうとすれば、ハイネセンへ到着する前に、奪還軍の方が骨だけになってしまう」
青い大軍はハイネセンへ着いた。
しかし、そこには決戦を挑む公国軍はいない。倉庫は空で、港湾施設は破壊され、住民へ食料を配る責任だけが共和国軍にのしかかる。
「仮に占領できたとしても、維持できませんね」
「兵站を断たれ、疲弊し、やがて撤退せざるを得なくなる。そして我々が去れば、公国軍は戻ってくる。彼らにとっては、こちらが直してくれた施設をもう一度受け取るだけだ」
「フェザーンへ攻め込んだ場合も……」
「同じだよ。むしろ、航路と商業施設が複雑なぶん、こちらの守る場所はもっと増える」
「速い艦隊は、戦場で強いだけじゃない。どこを戦場にするかを選べる。そして、戦場にしない場所までこちらに守らせることができる。土星エンジンが変えたのは艦隊の速度ではなく、戦争に流れる時間そのものなんだ」
◇◇
「それでは……我々に打つ手はないのですか」
ユリアンの問いは、絶望を押し殺したものだった。
ヤンは冷えた紅茶を諦め、新しい湯を頼もうとして通信端末へ手を伸ばす。だが、要塞中が負傷者の救護と復旧に追われている時に、紅茶のお代わりを要求するのも気が引けたのだろう。途中で手を止め、何事もなかったように引っ込めた。
「いや。打つ手なら、ある」
「本当ですか!」
「ただし、今は駄目だ」
「なぜです?」
「公国軍の側に、戦わなければならない理由がないからだよ。こちらがどれほど大軍を揃えても、逃げれば勝てる相手は逃げる。速い敵を捕まえるには、こちらから追うのではなく、敵の方から、こちらが決めた場所へ来てもらわなければならない」
ヤンは星図の中央に、一人の人物の肖像を表示した。
豪奢な金髪と、年齢に似合わぬ尊大な笑み。公王マルガレータ・フォン・キルヒアイス。
「少なくとも、彼女が自ら戦場へ出てこなければ、話にならない」
「マルガレータ公王が、ですか」
「公国の全軍へ命令を下せて、なおかつ自分の艦隊を率いて最前線まで飛び込んでくる人物は、彼女しかいない。ローエングラム公も全軍を動かせるが、彼は合理的すぎる。罠だと理解すれば、どれほど魅力的な餌でも切り捨てる可能性がある」
「しかし、公王ならば、自尊心や守るべき立場を利用して、戦場を固定できる」
「そういうことだね。速さを奪う必要はない。目的を与えて、逃げるという選択肢を奪えばいい」
「もっとも、彼女には懐妊の報道が出ている。公国政庁がどれだけ醜聞の火消しに苦労しているかはともかく、妊娠中の公王をワープさせ、最前線へ出すほど公王配も軍務尚書も愚かではないだろう。当分は使えない手だ」
ユリアンはしばし考え、やがて得心したように言った。
「では、出産後に彼女を戦場へ誘い出し、直接討つのですね」
「討つ?」
「はい。敵の総大将である彼女を戦場で倒せば、公国内では後継者争いが起きます。現在の懐妊を巡る混乱もあります。公王を失えば、キルヒアイス公国は瓦解するのではありませんか」
「いや、それは違う」
「彼女を殺せば、むしろ公国は一つにまとまるかもしれない。公王配キルヒアイス、軍務尚書オーベルシュタイン、そしてローエングラム公。三人が、『マルガレータの仇を討つ』という一点で完全に一致する。共和国にとって、それほど迷惑な団結はないよ」
「では、生け捕りに?」
「それも簡単に言わないでくれ。捕虜にするには、まず彼女の艦隊を止めなければならないんだから」
ヤンは椅子へ戻り、ひどく憂鬱そうに背もたれへ身体を預けた。
「そもそもね、ユリアン。私が全宇宙で一番戦いたくない相手は、彼女なんだ」
「……マルガレータ公王が、ですか?」
ユリアンは素直に驚いた。
「軍事の天才であるローエングラム公でも、あのファルケンハイン帝でもなく?」
「あの二人も、もちろん嫌だよ。ローエングラム公は正面から戦えばこちらの小細工を力ずくで食い破るし、ファルケンハイン帝は、こちらが一番されたくないことを一番嫌な時にしてくる。できることなら、二人とも生涯、戦術画面の外にいてほしい」
「最近のローエングラム公は今回の用兵は見事でした。ファルケンハイン帝も、以前より精彩を欠いているようですが、要塞の外壁を正面から破っています」
「うん。だから、二番目と三番目に戦いたくない」
「その二人より、彼女が上なのですか」
「君は、マルガレータの戦歴を詳しく見たことがあるかい?」
「もちろんです。公王となる以前、ヘルクスハイマー姓を名乗っていた時代から、主要な戦歴には目を通しています」
「第七次イゼルローン攻防戦は?」
「当時十五歳の中将として駐留艦隊を指揮。総統の作戦によってイゼルローン要塞を奪われ、帝国側へ撤退しています」
「ほら、もうそこから間違っている」
「私は要塞を占領した。だが、彼女の艦隊を戦術的に破ったわけじゃない。彼女は戦略目標であるイゼルローンを失い、そこへ留まる意味がなくなったから、自分の艦隊を連れて帰っただけだ」
「しかし、それは敗北と呼ぶべきでは」
「戦争全体では帝国軍の敗北だよ。ゼークト艦隊は三割を失った。だが、彼女の直轄艦隊一万五千隻の損耗は、わずか二百五十隻だ」
ユリアンは息を呑んだ。
一・七パーセントにも届かない。
「要塞を失った責任を負わされ、彼女は敗軍の将と呼ばれた。だから、戦歴を表面だけ見れば、私が彼女に勝ったように見える。実際には、私は彼女の艦隊とまともな決戦すらしていない」
ヤンが端末を操作すると、マルガレータが参加した戦闘の一覧が表示された。
第七次イゼルローン攻防戦。
アムリッツァ星域会戦。
リップシュタット戦役におけるアルテナ星域の戦いと、ガイエスブルク周辺の一連の会戦。
内戦終局の艦隊決戦。
ガイエスブルク要塞跡宙域からフェザーン、そしてハイネセンへ至る長距離侵攻。
「アルテナでは、ロイエンタールの流動的な罠に一度は引き込まれながら、艦隊を無秩序に見える形へ分散させて射線を外し、逆に退路を先回りして後退させた。内戦の決戦では、《ブリトマート》の火力を相手にしながら、こちらの常識では予測できない機動を繰り返している」
「彼女自身は、あの戦いで重傷を負っています」
「そう。自分自身は死にかけた。旗艦も酷い損傷を受けた。それなのに、麾下の艦隊は壊滅していない」
「ガイエスブルク要塞跡では、崩れかけたローエングラム公の全軍を引き継ぎ、自分の桃色竜騎兵を殿に置いた。私たちは追撃すれば相応の損害を与えられたが、彼女の艦隊が死ぬまで噛みついてくると判断して、追わなかった。その後、彼女は退却を敗走で終わらせず、フェザーンとハイネセンの電撃占領に繋げている」
「負けを、次の勝ちへ変えた……」
「それだけじゃない」
一覧の横に、それぞれの戦闘で推定された損害率が表示された。
帝国と公国が公開した数字、共和国軍の観測記録、捕虜から得た証言。情報源は一様ではなく、当然、誤差もある。それでも、一つの傾向だけは疑いようがなかった。
「彼女は、艦隊戦において一度も負けていないんだ」
「総統も不敗と称されています。ローエングラム公も常勝の名で呼ばれております。戦術的な敗北がないというだけなら、同じではありませんか」
「そうだね。だが、彼女の異常さは勝敗の欄にはない」
指が、損害率の列を上から下へゆっくりとなぞる。
「彼女の麾下で戦った艦隊は、どの会戦でも二割以上の損害を出していない」
「……な」
「二割、以上を……一度も?」
「公表値を疑い、こちらに都合の悪い推計を採用してもだ。会戦の勝敗や作戦目標の成否は関係ない。どれほど激しい砲火の中へ飛び込み、どれほど無茶に見える突撃をしても、彼女は麾下の八割以上を必ず次の戦場へ連れて帰っている」
「そんなことが……」
「普通の名将でも、激戦になれば三割、四割を失うことはある。勝つために損害を受け入れなければならない場面もあるし、撤退が一瞬遅れただけで被害は雪崩のように増える。ローエングラム公だって、勝利のために前衛を半壊させることがある。私も、全員を無傷で帰せた戦いばかりじゃない」
「だが、彼女にはそれがない」
「あれほど突撃を好む方なのに?」
「そこが、もっとも理解しにくいところだね」
ヤンはマルガレータの戦術記録を拡大した。
桃色の艦列が、敵陣へ向かって一直線に突っ込む。砲火が集中する寸前、艦隊は突然ばらばらに散った。統制を失ったように見えたそれぞれの艦が、敵の照準を外した直後に別の一点へ集まり直す。
別の記録では、味方を救うために自ら目立つ位置へ出ている。敵の砲火が桃色の艦隊へ集まると、損傷艦を内側へ送り込みながら、外周の健在艦だけで射線を引き受け、退路を作っていた。
「彼女は、理論を積み上げて未来を読むタイプじゃない。少なくとも、本人はそう見せていない。危険が数字に表れる前に、何かがおかしいと感じて動く。敵が罠を完成させる前に陣形を崩し、逃げ道が閉じる前に別の出口へ飛び込む」
「動物的な勘……ということでしょうか」
「おそらくは。そして、勘だけなら、優秀な指揮官には珍しくない。彼女が恐ろしいのは、その直感に従って、それまでの作戦を一瞬で捨てられることだ」
ヤンは七度目のイゼルローンの記録を指した。
「要塞を失ったと分かった時、名誉を重んじる指揮官なら奪還を試みる。あるいは、敗北の責任を恐れて、せめて一矢報いようとする。ゼークト提督は、まさにそうして三割を失った」
「マルガレータは、逃げた」
「そう。恥も外聞もなく、全速力でね。本人がどういう言葉で説明したかは、あまり公文書に残したくない内容だったそうだが、とにかく一秒も迷わず逃げた」
「軍人は、勇敢であろうとする。自分の判断が正しかったと証明したがる。払った犠牲が無駄ではなかったと思いたがる。その感情が、あと一歩、もう一撃という執着を生む」
「彼女には、その執着がない」
「正確には、執着する対象が戦場の勝敗ではないのだろうね。目的が消えた瞬間、昨日までの作戦をゴミ箱へ捨てられる」
公の場では尊大で、わがままで、色恋に暴走し、国政を預かる者たちの胃を日々痛めつけている少女。その人物像と、画面に並ぶ冷厳な数字が、どうしても一つに重ならない。
「損害を恐れて消極的に戦っているわけではありません」
「むしろ逆だ。誰よりも危険な場所へ飛び込み、敵の注意を引きつける。だが、致命傷になる直前で必ず抜ける。自分の艦隊の形を固定せず、突撃も分散も後退も、すべて同じ呼吸でやってのける」
「型がないから、読めない」
「読めた時には、もう別の型になっている」
「私は、相手がどう考えるかを読み、その人が選びそうな手に罠を置く。ローエングラム公は最善手を選ぼうとするし、ファルケンハイン帝は最小の労力で最大の利益を取ろうとする。難しい相手だが、彼らには彼らなりの論理がある」
「マルガレータ公王には、それがないのですか」
「あるのだろうけれど、本人にも言葉で説明できないのかもしれない。私が罠を完成させる三秒前に、『何となく嫌じゃ』という理由で全艦を反対へ走らせる相手は、実に困る」
「それは……総統にとっては、相性が悪いですね」
「最悪だよ」
ヤンは机の上の冷えた紅茶を見下ろし、とうとう観念して一口飲んだ。
ひどく渋い味がした。
「しかも、今の彼女には土星エンジンがある。これまでは危険を察知しても、艦隊の物理的な速度が退路を制限していた。これからは違う。彼女が『嫌な予感がする』と思った瞬間、本当に誰も追いつけない場所まで逃げられる」
「逆に、こちらの弱点を嗅ぎ取れば……」
「誰よりも早く、そこへ来る」
二人は、同じ光景を想像していた。
広大な共和国領のどこかで警報が鳴る。守備艦隊が駆けつけた時には、桃色の艦影は消えている。次の警報は数百光年離れた補給基地から届く。追えば逃げ、諦めれば戻り、罠を張れば完成する直前に進路を変える。
要塞なら、そこにある。
座標が決まっている。攻略するには近づかなければならず、包囲することも、補給を断つこともできる。
だが、マルガレータの艦隊は違う。
彼女自身が危険を察知し、土星の翼がそれを瞬時に遠ざける。艦隊そのものが移動する防壁となり、どこにも存在しないからこそ、どこからも攻められない。
「異常なまでの損害率の低さ。それはもう、単に名将という言葉で片づけられるものではない」
ヤンは窓の外へ目を向けた。
外壁を覆っていた流体金属の一部は失われ、その向こうには暗黒の宇宙が口を開けている。かつて絶対と呼ばれた要塞は傷つき、死者を悼む時間もないまま、修復の光がその傷口を走っていた。
「あの年齢で、あれだからね」
疲れ切った不敗の魔術師の声に、冗談の響きはなかった。
「化け物、と呼んでもいいかもしれない」
被害を極小に抑えながら自軍を生かし続ける『無傷の用兵』
そして、戦場と戦場の間にあったはずの時間を消し去る、土星エンジンの圧倒的な機動力。
その二つが完全に結びついた時、銀河の歴史上、最も攻略しがたい防壁が生まれる。
それは流体金属に覆われてはいない。トールハンマーも持たない。
決まった座標にすら存在しない。
敵が近づけば消え、守るべき場所が生まれれば、誰よりも早く現れる。
要塞なき要塞。
お読みいただきありがとうございました。
今回はシャンタウ星域からの撤退と、土星エンジンが今後の戦略へ与える影響を描きました。
ヤンが「全宇宙で一番戦いたくない」と評したマルガレータの用兵や、「要塞なき要塞」という結論について感想をいただけると嬉しいです。