「次は王都だ」
アインズ様の目的は、ダークエルフの場所を知る人物の特定。
「何日かかっても構わん。確実性を優先せよ」という言葉を受け、俺は王都へ向かった。
まず昼間は、高所から遠距離で観察する。
俺は王都の構造を見て顔をしかめた。巨大な樹木そのものが建築物であり、枝、空中通路、樹洞が入り組んだ立体構造になっている。
(千葉駅より分かりづらいんだが……)
俺特有のしょうもない比較で文句を垂れつつ、半日かけて見張り台や兵士の交代時間、商人の搬入口を完全に把握した。
夜。
《隠密化》と《無音歩行》で、衛兵の横をすり抜け、影から影へ幽霊のように侵入する。
(こういうコソコソした仕事してる時が一番自分に合ってるって思うの、色々終わってるな)
王都の内部で住民の会話を盗み聞きしていくと、強烈な違和感を覚えた。
住民は戦争への不安や前線へ送られた家族を嘆いているのに、王宮側からは戦争を本気で終わらせようとする気配が薄い。
(……現場と上の温度差が酷すぎる。ブラック企業かよ)
さらに、王についての不穏な噂。
「王は非常に強いが前線に出ない」
「子供が多い」
「女性を無理やり……」
(……エ・ランテルの親父さん、話盛ってなかったのかよ)
むしろ、事実の方が遥かに酷い可能性があった。
第一夜は具体的なダークエルフの情報はなく、俺は無理に動かず拠点へ帰還した。
「成果不足です」と素直に報告する俺に、アインズ様は「構わん。ならば調査対象を絞ろう」と、対象を『狩人・採取者・行商人など、南の森へ行ったことのある人物』に限定する方針を立ててくれた。
(要するに、“村の場所を知ってる奴”を探すんじゃなくて、“知っててもおかしくない生活してる奴”を探すわけだな)
二日目。
俺は完全な「人間観察」に切り替えた。市場や酒場を行き交うエルフたちの、靴、手、日焼け、筋肉、匂いから生活パターンを読む。
酒場で「南の森へ行ったことがある」と吹聴する男を発見した。
《腐った目》と観察力で、それが嘘ではないと確信する。俺はその男の生活パターン、一人暮らしか、何時に帰るか、消えた場合に誰が探すかまで徹底的に追跡調査した。
(誘拐前提で勤怠管理してる俺、犯罪者そのものだな)
拠点へ戻り、確度七割で候補を見つけたと報告すると、アインズ様は身柄確保の許可を出した。
ただし条件付きだ。絶対に殺さない、怪我も最小限、捜索騒ぎを起こさない、記憶処理後に戻せるようにすること。
「承知しました。……誘拐にも品質管理ってあるんですね」
「…………」
アインズ様(鈴木悟)は(言われてみればとんでもない指示だな……)と沈黙していた。
翌日の夜。
男が酒場を出て、人気のない道を一人で歩いている時だった。
「……?」
男が何かを感じて振り返るが、誰もいない。
次の瞬間、背後の影から現れた俺が口を塞ぎ、頸部へ軽い一撃を入れる。
数秒で意識を奪い、《影潜み》で男を抱えたまま夜の王都から音もなく消失した。
(俺、元高校生なんだけどな……)
今更すぎるツッコミを入れながら、俺は拠点へと急いだ。
挿絵のリクエストです。
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おまかせ
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