フリーサイドで問題となっている揉め事の相談にキングスの根城を訪れたものの、彼らのリーダーは宵っ張りではないらしく、朝を待ってまた出直すことになった。饐えた匂いと埃の漂うかつてのハイウェイに出ると目と鼻の先にあるストリップ地区のネオンは今日もギラギラと輝いている。
「どうする?オールドモルモンフォートに戻って休むか?」
アルケイドがそう提案したが、病人とジャンキーばかりの集まりで夜を過ごす気分でもなかった。
「アトミックラングラーに行きたいな」
代替案を目を見て言ってみると彼は僅かにうろたえ、そして赤面した。誘い文句だとわかってもらえたらしい。
ガレット家の双子たちが経営するホテル兼カジノ兼、そういうお店にはきょうもまばらに照明が点き、まばらな人々がそれぞれの時間を楽しんでいる。ウルトララグジュやゴモラ、それにトップスも悪くはないけれど、ほどよく寂れたここの雰囲気が好きでそういうことを楽しむのは大抵ここと決めている。
「あら運び屋さん、どうも」
「ビールをひとつ。アルケイド、君は?」
「じゃあ、俺もそれを」
冷蔵庫から一応は冷えたビールをふたつ受け取り、二階の角部屋へと続く階段へと連れ立つ。
「たまにはうちのキャストとも遊んでよね。みんな声をかけられるのを待ってるのよ」
カウンターで応対してくれたフランシーヌと階下の人々からの視線にまた今度と手を振って扉を閉めると、ざわめきは遠のいて束の間の静寂が訪れた。外したキャップをポケットに入れてから瓶をかちあわせ、RADを帯びたアルコールを喉に流し込む。
「そういえば、ここでは客じゃなくキャストが一晩付き合うかどうかを選ぶらしいじゃないか」
普段より朗らかになったアルケイドがそんなことを言って意味ありげに視線を投げかけてくる。いいだろう。売られたケンカは買う主義だ。思いつく限りに歯の浮くような甘いセリフや、彼のプライドをくすぐる褒め言葉を並べおだててみると、色白の肌を持つ彼は最初は機嫌よくしていたものの次第にむず痒いとでも言いたげに口を結び、果ては耳まで赤くした顔を背けてもうやめてくれと懇願するに至った。
「それで、今夜は俺を選んでくれるのかい?」
「ああ、選ぶ、選ぶよ。茶番を仕掛けて悪かった。降参だよ」
ふふ、と笑いかけて熱を持つ彼の頬にくちづける。ベッドを軋ませて傍へとにじり寄り、彼がぎこちなくこちらを向くのを待っているさなか、一応は防音の効いているはずの部屋の隣から誰かの喚くような叫ぶような声が聞こえた。思わず顔を見合わせて耳をそばだててみると、どうやらそれは機械の連続して動作する際の物理的な音と、そして男性の歓喜の悲鳴のようだった。
「ジェイムス、かな」
「ジェイムスだろうな」
何のことはない、ガレットツインズの片割れがセクシーロボットと大いにお楽しみ中の声が盛大に漏れ聞こえているのだった。それまで作り出したムードとのあまりの熱量の違いにどちらともくつくつと笑い出し、ついには大笑いになってしまう。普段より朗らかになったふたりは笑いの収まるタイミングなんか待てずにキスを交わしては、ときおりぶり返す笑い声を窘めたり、あるいはつられて笑い出したりと思い思いにおかしさを分かち合った。そして夜が更ける頃には指を舐め肌をついばみなどして熱量高くなった身体を持ち寄り、情熱的な時を過ごしていったのだった。