特定人類絶対守護 ベリアル   作:ぶ千切れた尻尾

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本日は二話同時投稿しておりまして、このお話はその二話中の二話目でございます。
前のお話を読み流さない様にお気をつけて!




8-ex

 

 

 

 

 

「定例よりも二月(ふたつき)程早いが、よくぞ集まった。これより我らが新世界統一機構の緊急集会を開始する」

 

「集会を開く要因となった出来事は、皆とっくに聞いておろうが……フェーネン王国国境に潜伏していた支部が壊滅した」

 

「全く由々しき事態やねえ。彼奴(あっこ)の生贄(いけにえ)の調達拠点、それなりに優秀やったんやけどなあ」

 

どこかじめじめとした空気を纏った、暗い石積みの室内。少し鉄臭く、そして苔むしている。そんな場所で僅かな明かりの元に物々しい石造りの円卓を囲う者達がいた。

 

「ふざけた話だ。信じられないが、彼処の支部はたった一人の男に壊滅させられたらしい……聞き及んでおるだろう、フェンリルを連れた一行の話を」

 

「それこそ眉唾物だがな……人の身でありながら、神獣を手懐けるなどと」

 

「ぐわっかっかっか。それを我々が言いますか?邪神(カイジュウ)を降ろし、征服の尖兵にせんとする我らが!」

 

「それもそうだな……だが、それ故に惜しいものだ。フェンリルともあればそれは極上の贄たり得ただろう」

 

「是。神獣の魂を喰らへば、我らが邪神は格段の飛躍を遂げた筈」

 

彼らは少し前にベリアルが壊滅させた犯罪組織、シンジケートの総本山。世界の征服を目論み暗躍する秘密結社、新世界統一機構(しんせかいとういつきこう)……その大幹部達である。

 

「で、そいつらがなんやいうのん?その一行の内の一人が我々の支部を壊滅させたっちゅうことなんやろ。やったらどうすんねん」

 

「まあ、その通りよ。流石に幹部や戦士共には敵うまいが、その力を持って拠点と我らの面子を潰したのは事実。だがしかし無論其奴の顔は割れておる。現在の大凡(おおよそ)の位置もな」

 

「悪くない手際だが、相手はフェンリルぞ。襲えば確実に出てくるであろう」

 

復讐の炎を胸に宿し、何かへの憎悪を積み重ねた者。世界を支配する絶対の権力を求める者。強者も弱者も分け隔てなく踏みにじり、その悲鳴に愉悦を見出す者。抑えがたい破壊衝動に身を委ねる者。そして己の私欲を満たすためだけに暗躍する者。

 

彼らは決して同じ理想を掲げて集ったわけではない。「統一」という旗印はあくまで建前。互いの利害が一致しているに過ぎず、その実態は欲望と悪意の坩堝であった。

 

それぞれが異なる欲望を抱き、それぞれの野望のために手を組んだ烏合の衆──しかし、その危険性だけは紛れもなく本物。裏社会では知らぬ者のいない、悪名高き秘密結社なのである。

 

「ふん。フェンリルの何するものぞ、我らが邪神と対峙すればその威容に自らの矮小加減を知ることになるだけである」

 

「それは……やる、のか?邪神を召喚するべきなのか。まだ生贄の数は充分とは言えぬだろう」

 

「忌々しいが、フェンリルの力が障壁たりうるのは事実だ。ここで確実に叩き潰さねばならない」

 

「生贄など、時間をかければいくらでも集まる──だが、奴らが我らの邪魔立てに走ればその時間と機会が失われると。そう言いたいのであるな?」

 

「左様」

 

「よかろう!フェンリル討伐の任はこの吾輩、大幹部が一人!欺瞞・幻惑がバルカノス、請け負ったぁ〜!」

 

 

「……そうか」

 

「……そらわかったけど、なんでそないテンション高いん?やかましいっちゅうねん。もうちょい二つ名寄りの性格なってこい」

 

「ぐわっかっかっかっか!そりゃあ聞けんなぁあ!」

 

「普通関西弁糸目がそういうの(幻惑系)やるやん普通。なんでお前やねんホンマ」

 

 

 

 

 

 

 

 

side.B/M

 

「明らかに変だなァ」

 

「……ええ」

 

『………………むゥ』

 

朝の飯を食べ終わってからかれこれ半日、彼らは次の街への道を進んでいた。目的地は道なりに進んだ先にあり、少なくとも道に迷うことはあり得ないことであった。

 

だが、様子が変わったのはたったの数刻前──ここは鬱蒼とした森ではない。木々は生えているものの、疎(まば)らといって良い様な有様で、湿度は篭らない。更に朝方とは言えど、向田が半袖で過ごせる程度に寒くもない。

 

だというのに、薄らとした霧が立ち込め始めたことはまさしく異常であった。その頃はまだ足元を薄く転がる程度で、視界が覆われるようなことはなかった。

 

「うわ〜、これ以上離れたらお互いも見失っちゃいそうだね。ここまでくると幻想的だなあ」

 

『呑気な奴よ』

 

「まぁ、みんながいるし……」

 

「ううん……霧なのに、湿りを感じないような?」

 

「そこらの草とかもなんか一切濡れてないよ。露の一雫もないし」

 

「風は無ェとは言え、これほど濃い霧が吹き溜まる様な場所じゃなかった筈だろォが」

 

今や一行はまるで白い塊の様な霧に包まれて、完全に異常事態へと陥っていることが明白であった。お互いの視認がやっとで、先の道すら怪しいような視界。

 

『我は鼻が効かなくなった。1000年生きてきて初めてだぞ……』

 

「んだとォ?お前の鼻がか」

 

『嗚呼。まるで詰め物でもされた様な……いや……何処かおかしな……ぐぬぅ、上手く言語化できん』

 

「いや、良い。異常事態かもしくは緊急事態であることははっきりしたからなァ」

 

『ウム。警戒するに越したことはないが、これでは満足に歩みを進めることも出来ん』

 

(加えてェ──……朝飯の時すらくっついてた奴らの気配が完全に消えたなァ、離れたタイミングもわからねェ。文字通り霧にでもなっちまったんじゃねェかって位、……ンな訳ねーんだがな)

 

変わらない太陽が透けて見える事すらない程の濃霧。だが、一行もこのまま立ち往生しているわけにはいかない。高校生の三人組は大人二人と神狼を見失わない様に必死である。

 

埒が明かないと判断し、ベリアルは殿を務める。先頭はフェルと向田に任せ、分裂してしまわないことを最優先に、一行はとにかく歩を進めることにした。

 

「……ん!?お、おい!あっち、村みたいじゃ無いか?」

 

『なんだと?……確かに、家屋が見えるな』

 

「だろ?昼飯も食べてないし、ちょっと寄ってかないか」

 

『我より先にお主が村を見つけたと?我の目と我の鼻と我の耳を掻い潜って?ぐぬゥゥ』

 

「……あ、結構(けっこー)マジで村っぽ」

 

「ほんと?道案内の標識は建てられてなかったような……」

 

「楽観的に考えれば、……小さな村だから立て看板をするほど人が寄らない。か、もしくはこの霧で見逃した。あとは別に立て看板はメジャーじゃない。とかですかね、わからないですけど」

 

ベリアルは口の内に舌打ちを押し込めながら、心なしか早足になった向田を追う様に歩幅を広くする。客観的に考えてその村が怪しくないわけがない……

 

「助かったぁ、霧の中で野宿するよりマシだよな!」

 

「まだ決まってねェよ」

 

「え?」

 

ベリアルが即座に釘を刺した。

 

「歓迎されるとは限らねーからなァ」

 

『いやに静かだな……』

 

だが、警戒心にモヤがかかっているように向田を止めるという選択を取れない。疑問を抱こうにも抱けない。結果、執念の様な警戒心をかすかに残しつつ、ベリアルは一行に続いて村へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うへ〜っ。凄い霧だったけど、村があって助かった」

 

「おんや……お若いの。旅人か商人かなんかかい?見ない顔だねぇ……」

 

「あっどうも。一応商人のムコーダです」

 

「荷物はないようだが……まあ、霧で困ってたんだぁのう……この村には……なんにもありはせんぞ。酒場ならあっちに小さいのが一つだけ……」

 

「は、はぁ」

 

向田は呑気ながらも何処(どこ)か違和感を感じていたが、それが何かわからないでいた。ベリアルや櫂斗達に言わせれば、沢山の──視線が合わないことや、抑揚が感じられないことなんかの違和感が見て取れたのだが。

 

「村の中でも霧が途切れやがらねェ」

 

『鬱陶しいにも程があるぞッ』

 

「あはは……。とりあえず、教えてもらった酒場に行ってみますか?」

 

「にしても人がいませんね」

 

道は踏み固められているし、井戸からは水の気配もする。軒先には洗濯物が吊るされ、薪小屋には新しく割られた薪が積まれていた。

誰かが生活している──様な痕跡は、至る所に残っている。

 

「こんな霧で洗濯物干してたらカビちゃいそー」

 

『見られているな』

 

「あァ」

 

ベリアルとフェルの短い一言に、一行は思わず周囲へ視線を巡らせた。

 

……閉じかけた雨戸の隙間。半開きの玄関。薄汚れたカーテンの影──視線が合う。一行が彼らを見返せば、彼らはゆっくりと物陰へ姿を消した。

 

「気味悪っ」

 

「なに?どういうこと?何見てんの?」

 

「歓迎されてる気はしませんね」

 

先ほどの村の老婆が指し示した方向への道を歩む。一人、二人と村人とすれ違う。声をかけられることはなく、無関心とも何か違った態度で視界の後ろへと彼ら彼女らは消えていく。

 

辿り着いた店は、寂れた看板がひとつだけ通りに掲げられている、狭い扉が一つしかない店だった。窓もない。通気口も──ない。

 

「らっしゃい。旅のお方かな」

 

店の奥。カウンターで老人が穏やかな口調で問いかける。向田はその様子に少しホッとしたようだ。

 

「ええ、ちょっと霧に巻き込まれちゃいまして」

 

「そうかそうか、災難だったなあ。腹は減っていないか」

 

「霧について聞きてェ」

 

ベリアルは少し強引気味に話を変えた。向田はそれに軽く驚きつつも、そうだったそうだったと思い直した。老店主は笑って述べる。

 

「珍しいモンじゃないな」

 

「この濃さがか?前の街じゃ何にも忠告してくれやしなかったがなァ」

 

「山(・)を越えるなら当然のことさ。皆知っている、君は遠くから来たのかい?」

 

「山ァ……?山、ね」

 

「十歩先の視界も利かないなんて、よくあることさ」

 

ベリアルは店主の顔を盗み見る。生気がないわけではない。濁ってもいない。だが、何かを隠している者の目をしていた。舌打ちの一つでもしたいところだが、店主の機嫌を損ねるわけにはいかなかった。

 

「それに──注文の一つもせずに店の前に溜まって、質問攻めとはよくないとは思わないかい」

 

「え?あー、自分たちで作るつもりだったけど……まあしょうがないか〜」

 

チッ!ベリアルは今度こそ、音こそ鳴らさかったが舌打ちをしてしまった。

 

「よし。客であるなら歓迎しよう、もし霧が晴れなきゃ、空き家くらいは……貸してやれるしな」

 

「良いんですか!」

 

「もらうものはもらうがな」

 

「あ、そう……」

 

「おっと、その狼は店内に入るのか?」

 

「まあできれば……」

 

『…………』

 

「飯食うなら金は払いな」

 

仕方なく足を踏み入れる。柔らかく軋む床板が沈み切ったその瞬間、店内にいた十人弱の客の目が一行に向けられた。

 

誰も酒を飲む手を止めない。料理を口に運ぶ手も止めない。ただ視線だけが向けられている。歓迎の意でないことだけは確かだが、品定めでもするかのようなその視線を浴びながら、ムコーダ達は空いていたテーブル席へ腰を下ろす。

 

「おすすめとかあります?」

 

「うちのメニューは煮込みとパンとラガーだけさ、具材だけは日替わりだがね」

 

「じゃ、じゃあお酒はなしでそれを六人分……」

 

店主は何も言わずに奥の厨房へと引っ込んでしまう。

 

「ベリアルさん、どう思いますか?」

 

「………………」

 

ベリアルは店内を観察していた。椅子、窓、客、出入り口、厨房、天井の梁、壁にかけられた狩猟用の槍。視線は一巡し、今度はゆっくりと鼻腔に空気を含む。

 

獣肉。萎びた葉野菜。香辛料。酒。焦げた鉄。脂。ありふれた匂いばかりであるが、それでもベリアルには何かが引っかかっていた。

 

「まだわからねェな」

 

程なくして料理が運ばれてくる。

 

粗雑なライ麦が香る黒パンと、粘度の高い黄土色の煮込みスープ。それに加えて僅かなチーズ──何も、おかしなところはない。

 

「あー腹減った。時間的にも昼飯というより夜飯だよなぁ〜……いっただっきまーす」

 

「いただきま──」

 

「待ちなァ」

「「!」」

 

向田のスプーンは、口内まであと数センチというところで静止した。他の者も同様に、ベリアルの静かな一言で静まり返る。

 

「ベリアルさん?」

 

ベリアルは返事を返さない。スープの器を持ち上げ、鼻先へ近づけ、嗅ぐ。──もう一度。静かに臭(・)い(・)を確かめた。

 

『良くないモノだな』

 

「こんだけ近けりゃその鼻でも気づくか」

 

『ああ』

 

ベリアルは眉を顰め、憎々しげに歯を噛み合わせる。気を抜けばその手に持つ器を握り潰してしまいそうなほど、ベリアルは怒りを感じていた。

 

「食うんじゃねェぞ」

「えっ」

「薬だ」

『ウム』

 

ガタッ!

 

櫂斗、花音、莉緒は椅子を引いて立ち上がる。いつでも武器を構えられる様にと腰を落とし、周囲の人間を睨みつけた。

 

ムコーダはびっくりしつつも何が何だかわからないまま、持っていたスプーンをいそいそと器の中に戻した。

 

「あ゛ァ〜、臭ェなあ。ムカつくぜッ……」

 

『どうした、お前らしくもない』

 

「前に嗅いだことがあってよォォ……胸ッ糞の悪ィ組織が人をダメにする為に使ってた薬があってなァ〜……!」

 

「……!まさかそれが……!」

 

店内中の視線が集まっている。いっそ不気味な程に誰も騒がない。飲んでいた筈の酒の杯を全員がおろしている。無表情で冷たく一行を見つめている。

 

「誰が入れた?」

 

怒鳴り声ではないが、それでもその一言で燻る怒りが店中に伝わった。薪が爆ぜる音だけが小さく響いている。

 

誰も答えない。店主は包丁を構えたまま、客達は食事の手を止めたまま、全員が不気味な無表情でベリアル達を見つめていた。

 

「誰が入れたって聞いてんだァ゛ッ!早く答えやがれッ!!」

 

バギィッ!

 

ベリアルは椅子を蹴り上げ、破壊した。ぱらぱらと粉塵を撒き散らしつつも、ベリアルの頭は沸騰してしまいそうな怒りに埋め尽くされていた。

 

だが、それでも村人達の無表情は崩れない。

 

「な、なんなんだ」

 

向田も思わず身構える。

 

「チッ……」

 

「バレちまった」

「どうする」

「惜しかったのに」

 

誰も武器は抜いていない。が、しかし──敵対の意思だけは、互いに痛いほど感じ取っていた。

 

「質問に答えやがれッ」

 

店主が肩をすくめて答える──

 

「俺だよ」

 

「誰の指示だ?」

 

 

 

「言うかよ、バ〜〜カ」

 

「ブッ潰──!!」

 

しかし、

 

「待て」

 

野太い声が店の奥から響いた。厨房の更に奥、薄暗い廊下の先から重そうな足音が近づいてくる。革靴の音だ──床板が震える度に、酒場全体が静まり返る。

 

店主は慌てて道を開け、立ち上がっていた客達も自然と左右に分かれる。まるで王を迎える家臣の様に……

 

「ぐゎァッかっかっかっ!!」

 

やがて、一人の男が姿を現した。2メートル近い巨体、日に焼けた浅黒い肌、分厚い胸板を隠そうともしない皮の外套。無精髭に覆われた口元の両端は、獰猛な獣のように吊り上がっている。

 

男は酒場を一瞥すると、大股で歩み寄った。低く、良く通る声──人を恫喝する事に慣れた者の声である。

 

「テメェが頭か?」

 

「いやぁ、違うぜ。俺ぁただの幹部さ……そう身構えるなよぉ〜!せっかく会えたんだから」

 

「テメェとの話題なんざありゃしねェなァッ」

 

「あるさ、大アリだ!」

 

男は笑みを崩さず、ベリアルを指差す。

 

「覚えがあんだろ?お前が潰してくれた俺たちの下部組織……あぁ〜あ勿体ねぇ、いい仕事する奴らだったのによお」

 

「…………?」

 

「テメェ……ブン殴られるだけじゃ足りねェようだな」

 

一触即発の空気。弾ける直前の風船の如く、いつ誰が爆発して争いが起こるかわからない。

 

「お優しいお前が解放しちまった奴らにも、尊い使い道ってぇモンがあったんだよ。俺たちの力の源になるってぇ〜使い道がなぁ」

 

『下衆だな』

 

「それに!そこのフェンリル、そいつの肉体と魂が俺たちゃどぉ〜おしても欲しい!」

 

「調べたんなら知ってんだろォが。テメェら程度じゃ、俺にゃ敵わねーってよォ!」

 

「ぐわぁっかっかっか!おい、お前」

 

「……はっ」

 

呼ばれた中年の男は静かに膝をつき、顔を上げた。そこに驚きも疑問も恐怖もなく、ただその命令を待つ表情だけがあった。

 

ドシュッ!

 

男が腰に差していた斧を閃かせる。筋と骨を断ち切る鈍い音が響く。錆びた鉄の臭いが飛び散る。

 

「「「!?」」」

 

「なっ……」

 

ムコーダが息を飲み、花音は口を押さえ、莉緒も言葉を失う。櫂斗は反射的に一歩前に出かけるが、ベリアルが静かにギチギチと力んで震える手で制した。

 

──事切れて、血を吹き出しながら倒れ込む中年の男。

 

異様であった。倒れた男を見ても、周囲の誰一人として反応しない。悲鳴を上げない。助けもしない。それを当然の出来事として見つめているだけだ。

 

「……どォいうつもりだ」

 

「この形だと贄としては中途半端なんだがなあ……まあ、速い話が呼び水だ」

 

「何を呼ぶってェんだッ!!」

 

幹部が顔を上げる。その笑みが、これまでで最も深くなる。

 

「俺たちのぉ、神サマ(怪獣)さ!」

 

『神、だと……?不遜な』

 

「もっとも、まだ完全じゃね〜んだ、これが。程遠い──何千、何万って数の奴隷を生贄にしたその上で!」

 

「生、贄……?」

 

「うそ……」

 

「そうともぉ!彼らはそれを持って我らと同じ敬虔なる使徒とぉなったっ!生きたまま、我らが神の腹の中で、永劫に苦しみという供物を捧げ続けるぅ!これ程尊いものは他にぬぁ〜い!」

 

「ふざけないでよ!解放しなさい!」

 

「だがそれでも足りん。だから──フェンリルという本物の神狼の魂を捧げれば!我らが神は完成に大きく近づくことだろぉう!ぐわっかっかっかっか!!」

 

────グゥヴォオォオオォオオオォオォォォォッッ!!

 

天地を揺るがす巨獣の咆哮が、村全体を貫いた。酒場の扉が激しく震える。食器達が音を立ててぶつかり合う。梁が軋み、天井から細かな砂塵が降り注いだ。

 

「クソ野郎ォォォォッ!!」

 

ベリアルの姿が掻き消える。床板が弾ける程の踏み込みだ。一瞬で幹部との間合いを詰め、剣閃にも似た爪が走る。

 

しかし──

 

「…………!」

「えっ!?」

「消えた!」

 

爪は何も捉えることはなかった。幹部の姿が陽炎の様に揺らぐ。輪郭が霞み、煙として溶けていった。

 

「幻覚ッ……!」

 

『ぐわぁっかっかっかぁっ!精々あがけ!』

 

「チィィッ!」

 

ベリアルは扉を蹴破って外へと飛び出した。後を追い、フェル一行が出てきて周囲を見回す。

 

「どこだ!」

 

櫂斗は剣を抜いて辺りを警戒したが、それらしい影は見えない。

 

だが、地面が確かに震えている。腹の底まで響く様な重い振動を彼らに伝えている。

 

『……山かと、思ったぞ……!』

 

「なんっ……嘘……」

 

「やっば……」

 

無数の巨大な触腕。大きな巻き貝の様な殻。到底生き物とは思えぬ極めて奇怪な姿──

 

『我は長く生き、多くの魔物を見てきたが。そうだな、エンシェントドラゴン(古竜)とも争った……だが、あれは違う。世界に、あってはならぬものだ』

 

『どうだぁ、神狼一行!気に入ったかぁ!──俺たちが幾年も費やして育てた怪獣(神)は!まだ目覚めたばかりで、未完成でも──お前達を踏み潰すには、充分だろぉう!?』

 

 

 

グゥヴォオォオオォオオオォオォォォォッッ!!

 

 




ウァ-眠い。惰眠を貪りたい。バイト行ってきます。
どれだけの人がこの作品を読んでくれてるか分かんないけど、待ってくれてる人がいてとっても感謝。

次回は遂に怪獣戦?

……どれだけ待たせる事になるでしょうか。おお、怖や怖や。

では、また!
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