密かに思っていた幼馴染が実は自分のことを監視していて、その事に気づいたら危うく襲われそうになるもギリギリのところで逆転してゴールインする話。

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ピピピピッ――ピピピピッ――

 

頭上から響く電子音に、ゆっくりと意識が現実へと引き上げられる。

目を開くと僅かに開いたカーテンの隙間から、新鮮さのある陽光が射し込んでいるのが目に入った。

少し冷たい部屋の空気へ布団から腕を伸ばして、スマホのアラームを手探りで止める。

そのまま、顔の側にまで画面を持ってきて、時間を確認すればいつも通りの時間だ。

一度、目を閉じて今日が学校のある日であることを思い出して、一気に布団をめくって上体を起こしてから、伸びをする。

カーテンを開けて体に起きる時間だと言い聞かせ、今日も朝ごはんの準備をしていてくれているだろう、幼馴染の姿を思い浮かべて顔を洗いに1階へと降りていく。

冷たい水は目覚ましには丁度良い。

寝癖を手で何となく直しながら、リビングに入ると制服にエプロンを着けた幼馴染の花奈がキッチンに立っていた。

 

「おはよう、花奈。」

「あっ慎也、おはよう!」

 

朝一番で乾いた声で花奈に挨拶すると向日葵のように明るくニコリと笑って元気な挨拶が返ってくる。

その姿にはこちらまで元気を貰えて、最近の寒い朝でも気持ちが暖まった。

 

「ちょうど朝ごはん出来たところだから、机に運んでくれる?」

「ああ、いつもありがとう。」

「えへへ……いいのいいの好きでしてることだから。」

 

気にしないでと微笑む彼女には感謝しかない。

まだ、計算もままならない頃に父が他界し、忙しい母の代わりに何かと家事を手伝ってくれる花奈には非常に助けられていた。

自分が幼い頃は花奈宅でよくお世話になっていたが、だんだんと遠慮を覚えるようになり、自分で母親の分まで家事をするようになった。

だが、母も自分もあまり食事に拘りがなかったため、ほぼ同じようなメニューばかり食べていたところを見かねて、花奈が料理を作ってくれるようになった。

綺麗に盛り付けられた卵焼きとベーコン、サラダはまさに朝のメニューにお腹がすいてくる。

ご飯と味噌汁を机に並べて、花奈が座るのを待った。

 

「「いただきます。」」

 

正面に座った花奈と一緒に手を合わせた。

箸を整え始めに味噌汁から手にとって、湯気を浴びながら一口含む。

出汁の香りが口に広がり、味噌汁の熱が寝起きの体をホッと弛緩させた。

 

「うん……今日も美味しい。

花奈の作った味噌汁が無いと朝は物足りなくなってきたよ。」

 

すっかり食べなれた花奈の料理を味わいつつ、ぼんやりとする頭で冗談めかしてそう言った。

実際、前のようなゼリーと携帯食料の朝ごはんには戻れそうにない。

“えへへ”と照れたように花奈が笑うと思っていたが、何の返事もない事に不思議と思い顔を見ると無表情で少し目を見開いた花奈と目が合う。

まるで獲物を見定める鷹のような鋭い視線に何故か背筋が凍った。

 

「ーーっ、どうかしたか?」

「えっ?……ああっと、何でもない!

も、もう変なこと言わないでよ〜。」

「おう……悪いな。」

 

いつもの朗らか雰囲気とは打って変わった冷たさに、つい息を飲んだ。

その事に気づいた花奈が、誤魔化すように明るく振る舞う。

さっきまでの不穏な雰囲気が嘘のように、霧散していつもの穏やかな朝に戻った。

何だったのだろうか……そんな変なことを言ったつもりはなかったが、たまにじっとりと見られていることがある。

理由を聞いてもはぐらかされるので、あまり気にしなくはなってきた。

時間も限りがあるため、さっさと食べてしまい皿を片付ける。

 

「お皿洗うのも私がするよ?」

「これぐらいはさせてくれ。時間も切羽詰まっているわけじゃないからな。」

 

皿の泡を水で流しながら、隣で後ろ手に覗き込んで来る花奈にそう言う。

任せて自分は支度をしたほうが良いのだろうが、ただでさえ朝早くにご飯を作ってもらっているのに、これ以上甘えるのは申し訳がない。

大したことではないかも知れないが、精神衛生的にそうさせてもらっている。

 

「じゃあ、着替えてくるから少し待っててくれ。」

「うん、急がなくてもいいからね。」

 

テレビの前でコーヒーを飲む花奈に声を掛けて、2階の自分の部屋へと駆け上がるのだった。

 

 

木漏れ日が射し込む通学路は、夏の暑さなどすっかり忘れたように冷たい風を運んでいる。

肌寒さからポケットに手を突っ込みながら、ふと隣の花奈を見ると同じく寒そうに身を縮こませていた。

 

「これ使えよ。」

 

首に巻いていたマフラーをそっと花奈の首にかける。

 

「えっ?あっでも……。」

「大丈夫、まだ数回しか使っていないし、今日はマフラーを巻くほどでもなかった。」

 

マフラーをかけられるたことに驚き、心配そうな目でこちらを見る花奈に、自分は問題ないと伝えるように微笑む。

実際、少し暑かったからちょうど良かった。

 

「そっか……へへ、ありがと。」

 

照れたように笑いマフラーを巻く彼女に心がホッとする。

夜空のような黒髪が、マフラーに巻かれてふわりと膨らむのは、心くすぐられて、つい頷いてしまった。

 

「何?どうしたの?」

 

腕を組んで頷き出した俺を不思議そうに覗きこむ。

 

「ああ、朝の通学路にマフラーの少女は絵になるなと思ってな。」

 

見惚れていたのを誤魔化すように戯けた調子でそう言った。

 

「ええ〜それって、私が可愛いすぎるってこと?」

 

そんな俺の様子にニヤリと笑って揶揄するように花奈が口に手を当てて言う。

 

「いや、この絶妙な赤色を選んだ自分のセンスに感動してた。」

「なんだ、ただの自画自賛じゃん。

私はオマケですよ〜。」

 

見透かすような言葉に、つい意地を張ってズレたことを言うと、花奈は口を尖らせて不貞腐れてしまった。

 

「あっそうだな、人物も重要だよな!

いや〜最高に可愛い幼馴染がいて助かるぜ。」

 

慌てるように、そう言うとそっぽを向いていた花奈と目が合う。 

 

「「……ププッ、あははは!」」

 

お互いに見合った後、どちらからともなく笑い声が漏れる。

なんてことはない、くだらない2人のいつものやり取りだ。

 

「――はあ、可笑しかった。

でも、駄目だよー、幼馴染の私は良いけど、女の子に気軽に可愛いなんて言ったら。」

「わかってるよ。そもそも花奈以外に言う相手がいない。」

「それなら良し!」

 

親指を立てて力強く言う言葉に、俺の友好関係が狭いのはよくないのではと思うが今はいいか。

 

 

花奈とは教室が別なため、廊下で別れてそれぞれの教室に入る。

 

「おっす、眠たそうだな。」

「お〜う。」

 

机に突っ伏して、眠たそうに欠伸をする友人の村田に声を掛けると覇気のない挨拶が返ってきた。

 

「また、今回は何を観てたんだ?」

 

村田は映画好きで、よく月額制の映画サービスを深夜まで観ていることがある。

好きな映画の趣味が合うため、オススメをよく教えてもらっていた。

 

「いや〜昨日はゲームしてたんだ。」

「へぇ、珍しいな。何のゲームだ?」

 

眠気のせいか間延びした声でそう言う。

操作が難しくてあまりはゲームはしないと言っていたのを憶えていたので、少し驚いた。

 

「戦闘機を操るゲームでさ。

トップガン観たらしたくなっちゃったんだ。」

「ああ、トップガン面白いよな。」

「最近のゲームはすごいねぇ。

映像が映画みたいで、自分が主役の気分だったよ。」

 

喋り方も相まってお爺さんみたいだなと思った。

結局、映画に影響されているのは村田らしい。

 

「面白そう、俺もやってみようかな。」

「いいねえ、確か協力プレイも出来たはずだから、時間あるときにやろうよ。」

 

村田とスマホを見ながら、どのゲームかを聞いていると声をかけられた。

 

「お話のところごめんね。」

 

片目を閉じて申し訳なさそうに手を顔の前に持ってきながら、花奈が教室に入って来ていた。

何の用事だろうかと視線を向ける。

 

「昨日、私の部屋に筆箱を忘れてたから、持ってきたよ。」

「おお、悪いな。ありがとう。」

 

昨日、花奈の部屋で宿題をしているときに忘れたようだ。

鞄に入れたような気もしていたが、こうして届けてくれているため、忘れていたのだろう。

 

「もう、おっちょこちょいなんだから。

あっ村田くんも邪魔してごめんね。」

「いや、気にしてないよ。」

 

会話の邪魔をしたことを村田にも謝る。

村田はあまり目を合わせないように作り笑いで答えた。

 

「それじゃあ、私はクラスに戻るから、また放課後ね。」

「あいよ、授業中寝るなよ。」

「それは慎也でしょ。じゃあね〜。」

 

軽口を叩きながら、嵐のように花奈が去っていった。

最近、よく忘れ物をする気がする。

そして、その度にこうして花奈に持ってきてもらうのは、申し訳ない気持ちだ。

こんなやり取りが、何度かあったせいか、最初は揶揄っていたクラスの人達も気にしなくなっていた。

 

「相変わらず、花奈のこと苦手なんだな。」

 

そう言いつつ、村田のほうに向き直る。

明るくて人当たりの良い花奈は、誰とでも仲良くなれるが、村田は苦手意識があるそうだ。

 

「う~ん、苦手というわけじゃないんだけどね。

なんというか……暗いというか怖い雰囲気があってね。」

 

少し申し訳なさそうに眉を顰めていた。

 

「そうか?怖い印象なんて、ほとんどないけどな。」

「わからない、多分ただの思い過ごしだよ。」

 

そこまで言って、朝の視線を思い出したが、怖いと言うほどではなかったなと結論づける。

その話はそこまでにして、さっきのゲームの話へと戻るのだった。

 

何の変哲もない1日が過ぎ去り、花奈と自宅へと帰った。

晩御飯にはまだ早く、この後で来るだろう花奈を待つため、読みかけていた本を開こうとと探す。

そういえば、花奈の家に置いて来てたなと思い出した。

迎えに行くついでに、花奈の家のインターホンを押すと花奈の母親の佳代子さんが出てきた。

 

「あら?シンくんどうしたの?」

「佳代子さん、こんばんは。花奈の部屋に忘れ物しちゃって。」

「そうなの?花奈ならさっき買い物があるって出ていっちゃったけど、どうする?」

「忘れ物を取るだけなんで、すぐ戻りますよ。」

 

そう言って2階へと上がる。

部屋の電気をつけるとちょうど机の上に、目的の本が置かれていた。

手にとろうとして、視界ほ端に気になるのものが写った。

クローゼットだ。なんの変哲もないない普通のクローゼットだが、いつもは鍵がかけられていて、花奈からは絶対に見ないでと念押しされている。

それが、珍しいことに少し扉が開いていた。

ものすごく気になるのが、ここは見ないのが礼儀だろうと立ち上がるとクローゼットの隙間から、一枚の写真らしき紙が足元に滑り込んでくる。

何の写真だろうかと反射的に広い上げてしまった。

裏返した瞬間、目に入った写真に息を飲む。

俺が写った写真だ。

それだけならよかった。それは俺がお風呂に入っているときの写真だった。

指の力が抜けて写真が下へ落ちる。パサリと乾いた音が妙に響く。

そして、視線は自然とクローゼットに向けられた。

震える手でクローゼットの取っ手を握り、意を決して一気に開ける。

 

「――っ!」

 

目に飛び込んだのは、食事や睡眠、寛いでいるときなどの日常の中の写真。

他にも“趣味”や“好み”と短く題名が付けられたノート。

〇〇年と年代が書かれたノートが、花奈らしく丁寧に並べられていた。

試しに、“趣味”を開くと俺がSNSでイイネをつけた内容のこと、村田と何となく話していた映画や本の花奈には話していないことが、事細かに書かれている。

 

心臓は耳元にあるかのように大きく動いているのに関わらず、体は冷たくなっていく。

何故?どうして?そんな疑問が頭の中に駆け巡った。

 

「シンく〜ん?大丈夫?」

 

扉越しの佳代子さんからの呼び声に意識が戻る。

頭が上手く働かない。取り敢えず、花奈が戻ってきたら困ると思い、急いでノートと写真をクローゼットに戻し、下へ降りた。

 

「探してたものあったんで、帰ります。」

「それは、よかったわね。

あら、大丈夫?顔色悪いわよ?」

 

足早に家を出ようとする俺の顔を見て、心配そうに佳代子さんがそう言った。

 

「大丈夫です。ちょっと寝不足なだけです。」

「そう?あまり無理しちゃだめよ。

いつでもいらっしゃいよ〜。」

 

適当な言い訳をして靴を履く。

背中からかけられてた佳代子さんの言葉には、答える気にはなれなかった。

 

 

自室の暗い部屋の中、制服を着たままベッドの上で物思いに耽る。

 

「……ははっ。」

 

今の姿も何処かで撮られているのかと思うと乾いた笑い声が出る。

これから、花奈とどんな顔をして会えば良いんだろうか。

もう、全てを無かったことにしようと目を瞑るとガチャとドアが開く音に心臓が跳ね上がる。

視線を向けると花奈がドアを背に立っていた。

一目見ておかしいと気づく。

幼馴染とはいえ、お互いの家に入るのにはインターホンを押すようにしている。

こんな風に勝手に入ったのは初めてだ。

黄昏時が花奈の表情を隠して異様な雰囲気を醸し出している。

 

「ど……どうした?」

 

自分でも分かるぐらい、ぎこちない笑顔を作る。

 

「……見たよね。」

 

久しぶりに聞いた、花奈が本気で怒ったときの低い声に手に汗が湿る。

カチャリと閉められた鍵に焦りが加速した。

 

「何をだ?」

 

ここで認めては、何かが終わるような気がしてとぼける。

 

「電気ついてたよ。」

「あ、ああ……ちょっと忘れ物を取りに入ってな。

つけっぱなしだったのは悪かった。」

 

ゆっくりと近づく花奈から逃れようとも、足がベッドに当たりこれ以上は下がれない。

 

「ふーん……ノートの順番も間違ってた。」

「いや、ちゃんと戻した――」

 

“はず”と言いきる前に墓穴を掘ったことに気づいて、慌てて口を塞ぐが遅かった。

恐る恐る手の届く距離まで近づいていた花奈を覗き見る。

そこで初めて見えた表情は、能面のように色がなく、目が深い井戸の底のように暗かった。

 

「今日のことは忘れ――うっ。」

 

俺が何かを発する前に唇を奪われた。

突然のことに思わず力が抜けてしまい、後のベッドに押し倒される。

そのまま、口の中に舌をねじ込まれて頭の中まで、ぐちゃぐちゃにされるような気分だ。

永遠とも思えるほど長い時間の後、名残惜しそうに離された花奈の口から唾液の糸が引いている。

その糸が、なんだか蜘蛛の糸に見えて、自分は巣にかかった獲物なんだなと理解させられた。

 

「初めてはもっとロマンチックな方がよかったんだけど……見ないでって言ったのに、見た慎也が悪いんだよ。」

 

馬乗りされた状態で上気した顔の花奈にそう言われる。

振り払おうと手を動かそうとしたら、左手が金属音を立てて遮られる。

いつの間にか、手錠でベッドと固定されていた。

 

「――っ!?い、いっかい落ち着かないか!?」

「ふふっ、大丈夫。全部、私に任せて。」

 

俺の言葉は無視されて、聞き分けのない子供を諭すように言いながら服を脱がされる。

 

「なんでこんなことを……!」

 

その言葉に花奈の動きがピタリと止まった。

すると、また顔を近づけられキスをされると思ったが、そうではなく耳元に顔を寄せられた。

 

「ここまでされてもわからない?」

 

そう囁かれて耳から全身にゾワリとした寒気が走る。

こんな状況にも関わらず、花奈の柔らかな体の感触と髪から漂うシャンプーの香りにドキリとしてしまう。

 

「鈍感な慎也にも分かるように、はっきり言ってあげるね。

慎也のこと好きなんだ。他の全部がどうでもよくなっちゃうぐらい。

だから……襲うね?」

 

何となくわかっていたことだった。

俺も花奈のことは好いている。

だから、このまま流されてもいいんじゃないかと言う気さえしてきた。

だが、同時にここで流されては後悔が後で襲うという確信がある。

そしてその事に、悲しむのはきっと花奈だと思い至ると最後の力を振り絞った。

 

「きゃっ!?」

 

突然、起き上がったことでバランスを崩した花奈を自由な右手で抱きしめる。

 

「俺も好きだ!結婚しよう!」

 

何を言うか考えずに思ったことを口に出す。

割と大胆なことを口走った気がするが気にしない。

花奈は固まってしまい、カチカチと時計の進む音だけが、部屋を支配していた。

 

――どれぐらい経っただろうか。

身動ぎ一つしない花奈に不安に思い肩を持って顔をみる。

 

「す、すき?……けっ……こん?」

 

キャパオーバーだったのか、目を見開いて口をパクパクと魚のように開閉している。

 

「おーい、大丈夫か?」

「えっ!?うん。大丈夫……ダイジョブ。」

 

肩を揺すると壊れたロボットみたいに返事をする。

そんな姿がなんだなと面白くて悪戯心が湧いた。

 

「それで返事は?」

「へ、返事!?ええっとぉ、ちょっと待って……。」

「待たない。」

「あうう……その、どうして?」

 

しどろもどろに視線を逸らして、余裕が無くなっていく様は愉快だ。

そうだ、さっきの意趣返しをしてやろう。

表情を隠すように下を向いた花奈の頬を持ち上げ、そっと慈しむようなキスをする。

 

「ここまでされてもわからない?」

 

そのまま、耳元に顔を寄せて囁いた。

 

「うう……ううぅ――ずるいぃ。」

 

すると、駄々をこねるようにグリグリと胸に顔を押し付ける。

さっきまでの異様な雰囲気は霧散し、甘い時間が流れていた。

花奈を落ち着かせるように背中をゆっくりと撫でる。

すっかりと暗くなった部屋の中、包み込むように月明かりが射し込んでいた。

しばらく、そうしていると鼻を啜るような声がする。

 

「泣いてんのか?」

 

心配するように聞くとギュッと服が握られ、さらに顔を押し付けられる。

すると、ポツポツと花奈が喋り始めた。

 

「私……慎也のことが……好きで……だから私のこと……好きになってほしくて……。」

「うん。」

 

途切れ途切れに語られる言葉をじっと聞く。

 

「どんな子が……好みなのかとか調べるうちに……どんどん止められなく……なっちゃったの。」

「そっか。」

「本当は……一生隠すつもりで………でも……嫌われちゃうと……思ったら……どうにかしないとって……頭の中ぐちゃぐちゃに……なっちゃて……ごめんね。」

「俺も勝手に見てごめん。」

 

後悔を滲ませる声音が痛々しくて、慰めるように後髪を優しく梳く。

 

「いいの……でも幻滅……したよね。」

 

自嘲するように言われた言葉を考える。

 

「う~ん、最初はドン引きだったけど――。」

「やっぱり!」

「まあ聞けって。」

 

勢いよく上を向いた、目を腫らした花奈の口を手で塞ぐ。

 

「でも、花奈なら良いかなって思ったんだ。」

「それって――。」

 

不安そうに覗き込んでいた花奈が、少しづつ言葉を理解してくと同時に、顔が赤らんでいく。

 

「花奈、好きだ。どうしようもなく君に惚れている。」

「ーーっ!」

 

心臓がドクドクと暴れている。

だが、この鼓動は心地がよかった。

改めて言われた俺の言葉に、花奈は両手を口に当てて目に涙を溜めている。

 

「ばかだよ。こんな重たい女の子に好きなんて言っちゃどうなるか知らないよ?」

 

呆れたように言うが喜びが声音に溢れていた。

 

「そうか?俺は重たいなんて感じたことないけどな。」

 

花奈の言葉に挑発するように言う。

 

「ふふっ!言ったね?

じゃあ、これからは遠慮無しでいくから!」

 

はにかんだ笑顔は雨上がりの空のようで、思わず見惚れしまうのだった。




愛情の重たい女の子っていいですよね。

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