9月第二日曜日午後。
この日、一輪は外出していた。言わずもがな月命日の墓参と清掃を行う為である。
必要な物品を持っていき命蓮寺への道すがら……コソコソと後を着いてくる芦戸さんや葉隠さん耳郎さん達……それに加えて若干の涼しさがあるとはいえ夏の熱気が残る中でダウンジャケットを着込みコートの内ポケットに常に手を突っ込んでいる不審者。
クラスメイト達と不審者はバレていない尾行のつもりなのだろうが曇天の際は雲そのものが一輪の眼となる、故にバレバレな訳であるが今の所は大した事もないので放置して行きつけの花屋でいつも通りの花を購入して馴染みの雑貨屋で線香を買う。
そうしてしばらく歩いたのち思い出したかの様に裏路地へと入る一輪。
一輪を見失わない様にと急いだ3人が裏路地へと入ると一輪と鉢合わせる形となる。
一輪は裏路地のすぐ近くに不審者が居る事を確認して語る。
「こんにちわ、付かず離れずの距離で着いてきてましたね」
一輪が眩しい程の笑顔でそう語ると3人は観念したかの様に謝ってきた。
「ごめんなさい‼︎ どうしても一輪が何処に行くか気になっちゃって‼︎」
そう語る芦戸さん、耳郎さんも葉隠さんも謝罪してきた。
月2回、毎回朝6時に何処かへとふらっと出ていき戻ってくるのは20時ともなれば気になるのは当然であろう。
一輪は雲で形作った手に持った献花用の花などを見せると軽快に語る。
「別に隠す程のものではありませんが……命蓮寺というお寺へお墓参りですよ、墓参りの後はいつもそこで夕食を食べて近接格闘訓練をつけてもらっています……良ければ来ますか? まぁその前にやらなきゃいけない駆除がありますが……3人とも私の背後に来てください……」
訓練が気になったのか行ってみたいと話す3人。
友人たちに話す口調から切り替えて氷よりも更に冷たい声音と共に路地の出口で待ち構えている者に対して殺気を飛ばすとそれに反応した不審者が現れる。
眼を見るにMDMAか
「ファンレターは読んだか? 殺す‼︎ 殺してやる‼︎ アバズレめ‼︎ 死ね‼︎ 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね‼︎」
狂乱の叫びを上げながら刀を振るってきた。
金属の刀と建物のコンクリートが擦れ合い独特の音が響く最中……一輪はその手に持った献花用の花束を投げて舞い散る大量の花弁で相手の視界を奪う。
そしてほんの僅かな一瞬の隙を突いて
確実に気絶する程度には力を込めた一撃、だがしかし……自身の拳から伝わる感覚が違和感を唱える、刹那。
「ヒヒヒヒヒヒ‼︎ 殺す‼︎ 殺す‼︎ こぉろりろろろろすすすれ‼︎」
薬物の影響下か極度の興奮状態で痛みを感じてないのに加えて完全に眼がイッており呂律すら回っていないソイツは今殴られた箇所からも鋭い刀を凄まじい速度で生成し一輪の事をを串刺しにしようとしてきた。
時が止まったと誤認する程、一輪は極限まで研ぎ澄まされた集中と、鍛え上げた反射神経、並外れた動体視力と咄嗟の判断により地面を蹴って跳躍し身体を右回転で捻るようにして回避すると着地と同時、即座に男の頭部へと強烈な回し蹴りを叩き込み建物の外壁と蹴りの間にサンドイッチのように挟み込む。
流石に気絶したのか泡を吹いて地面に倒れ伏す男を見遣りながらスマホを取り出して警察と相澤先生への連絡を入れると荒い息を整えてからクラスメイトの3人への声掛けを行う。
「怪我はありませんでしたか? 3人とも」
それに対して頷く3人。
あまりの事態に何が起きたか飲み込めてないようであるが次第に事を理解して一輪を心配して駆け寄って抱きついてきた。
倒れ込みそうになるがそこは鍛え上げた体幹を以てして耐える。
3人は口々に心配して声をかけてきた。
そして……警察からの事情聴取で1時間ほど無駄にしたが現在時刻は10:58分。
此処から移動しても十分に間に合う。
そうして、一輪、耳郎、葉隠、芦戸の一行は再度花屋で献花用の花を購入して命蓮寺へと向かうのであった。
命蓮寺へと到着すると一輪は慣れた手つきで必要な物品を雲山と共に持っていく。
3人も手伝うとの事でお願いする。
と言っても毎月2回は一輪が清掃に当たっているので特段忙しい事はない、清掃用の水も一輪自身が雲を生み出してそこから飲料水に転用可能な位に清潔な水を適宜出しており掃除自体は30分もかからずに終わる。
念仏を唱え終わり使用した物品を返却すると一輪は本堂の方へと歩いていき聖白蓮に声をかける。
「食事と訓練をつけてもらいにきました……私と、3人も」
そう語ると聖から参拝者に向けたいつものように寺の解説が始まった。
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