トルキナ連邦召喚   作:mogatoku

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30 エピローグ ―― 帰還

中央暦1639年3月18日

 トルキナ連邦 シーナ共和国

  北真戸軍港 埠頭

 

 

 ジローは軍港に降り立った。

 

「トルキナに戻ってきたのじゃ」

 

 一緒に降り立ったニムディスが両腕を伸ばしている。

 

「2か月の船旅だったけど、4カ国と国交を結べた。結果は上々だね」

 

 クワ・トイネ公国、クイラ王国、ロウリア王国、そしてパーパルディア皇国。

 

(なかなかの成果だ)

 

 とジローは思う。

 

「大変じゃったな。とくに随行軍が」

 

 初めの2国は良かった。

 けど残り2国とは武力衝突があった。

 対ドラゴン戦を担ってきた近代装備の第13軍にとっては、初めての対人類戦だった。

 戦訓も技術的課題もたくさん見つかった。

 

「そうだね。でもパーパルディア皇国から通知が出たはずだし、今後は手間がかなり省けるはずだよ」

 

 合意内容には「皇国は、連邦と対等の外交関係を結んだ事を、関係を有する全ての国に速やかに通知する」とある。

 通知が出されれば、それらの国々への初訪問は、今回のような事態にはならないことが期待できる。

 

(外交としては成功だ。監査人の仕事も当初の見込みより少なくて済む)

 

 ジローは満足していた。

 

「明日は我が家かのう」

 

 すると、そんなニムディスの願いを即座に否定する声が後ろから聞こえてきた。

 

「クワ・トイネ公国とクイラ王国の代表団が史都に滞在してる。明後日には最終合意に立ち会う。園都に向かうのはその後」

 

 その声に振り返ると、そこにはニムディスの秘書官アメリア・ヴィシナンザの冷たい顔があった。

 史都とはここシーナ共和国の首都である。そこで転移後最初の条約の最終合意があるようだ。

 

「アメリア! いつの間にそこにおるのじゃ!」

 

 動揺するニムディスに、アメリアが冷たく告げる。

 

「最初からいる。明日は記者会見。次に臨時の監査人電話会議で条文の最終確認。明後日は最終合意。その後は空港に行き専用輪空に搭乗。翌朝に園都空港到着。そのまま監査府に直行。到着後すぐに定例監査人会議。午後は両院合同報告会にて外遊の報告。翌日は質疑。その後は予算委員会で条約の詳細説明。その後再び史都に直行して、調印式。園都に戻って監査人会議にて批准…」

「やれやれ、戻ったとたんに忙しくなるな」

 

 ジローは肩をすくめる。

 

「船旅はのんびりできたのじゃ」

「3月は会計年度末。決裁文書も山盛り」

「それはそうだね」

 

(久しぶりにのんびり過ごせた)

 

「もっと旅を続けたかったのじゃあ!」

 

 ニムディスが天を仰いだ。

 

 こうして、異世界転移後、初となった外遊を紆余曲折の末に終えた二人であったが、二人にとってはむしろ安穏とした日々が終わり、激務の毎日に戻ることを意味する。

 

 左右を軍艦に挟まれた埠頭の先まで歩き、ジローが海に沈む夕日に赤く染まる海を眺めると、ニムディスも付いてきて、それに倣う。

 

(綺麗だ)

 

 旅の終わりを告げる波は静かに見えた。

 

 だが二人は知らない。

 パーパルディア皇国の通知が届かない国が、トルキナ連邦の近隣に三つもあることを。

 そして、これらの国々で、近く新たな嵐が始まることも――

 

 

 

第二章 パーパルディア皇国訪問編 ~ 完 ~

 




あとがき

 第二章の完結です。
 転移後初のジローとニムディスの外遊によって引き起こされる騒動の顛末を、最後まで見届けてくださった皆さまに、心より感謝を申し上げます。
 第二章は、第一章で気付いたことを元に、原稿を大幅に書き直しながら進めてきましたが、なんとか無事に書き上げることができました。
 ひとえに、読み続けてくださった皆様のおかげです。
 ありがとうございました。

 評価してくださった方。
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 ありがとうございます。
 少しでも楽しんでいただけていたら、嬉しいです。

 ここまでの投稿を通じて、多くを学ぶことができました。
 それらを今後の執筆に活かしていきたいと思います。

 ご感想など、お聞かせください。

 原稿のストックが尽きつつあるため、本作の投稿は、しばらくお休みします。
 再開の際には、またよろしくお願いします。
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