「エーヴィリーベの実」〜わたくしのゲドゥルリーヒはヴィルフリート様です〜 作:ピースちゃん?
そして、あっという間に約束の1週間は終わりました。
「ありがとう、本当に・・・今まで、シュウをマインの家に泊めてくれて」
「ううん。こちらこそありがとうだよ。シュウのおかげで、父さんたちと話し合う機会ができたんだよ。・・・私だったら、何も言えないで終わってたもん」
「・・・」
マインは、このままではどうやっても死んでしまうのは確定です。しかも、それがあと数年で・・・
マインは、助からないのです。もう、無理なのです。わたくしに、できることなど何一つないのです。
そう自分に言い聞かせていても、きゅっと、拳を握ってしまいます。
「やめてくれ」
「・・・シュウ?」
思わず、声が出ました。ポロポロと、言葉が溢れ出してきます。
「お願いだ。貴族のところに行ってくれ、生きてくれ、死なないでくれ」
「シュウ・・・泣かないで」
マインがそう言って、優しくわたくしを抱きしめました。
気づけば、自分の目から水が出ているのに気づきました。
わたくしよりも、何歳も歳上なのです、マインは。それなのに、わたくしよりもずっと細い手に、なんとも言えない気持ちが沸き上がってきます。
「貴族のところに行ったら、またきっと会える。だから、だから・・・」
「あのね、シュウ・・・私、家族のもとで朽ちるのを選んだの」
マインが言った言葉を、すぐには理解できませんでした。
「・・・なん、で?」
「・・・だって、最後は、家族と一緒にいたいよ。知らない貴族のところにつれてかれて、家族と一生会えないなんてヤダもん」
『家族』・・・マインにとっては、きっと、自分の根底にあるものなのでしょう。けど、わたくしにとっては、よくわからないものです。ロリーナは、とても大切です。その気持ちはよく分かるのですが・・・
「マインにとって、『家族』より大切なものはないのか?このままだと、それを諦めることになるぞ?」
「うーん・・・今のところは、ないかな?
けど、死ぬまでに一度本を一冊ぐらい読めたらいいなーって思うなぁ・・・全財産使ったら、なんとか一冊ぐらいは買えないかな?」
「・・・本?」
本は、この下町では、とても高く。庶民は見たこともないはずです。けれど、マインはうっとりとした表情で話し始めます。
「そう!本。元々、本を作るために植物紙を作り始めたんだけどね・・・」
そして、マインは長々と本への良さを話し始めます。ですが、わたくしはそれを聞くごとにますますわからなくなってきます。
「なぁ、家族ってそんな大事なもんなのか?今までの努力を、全部投げ出してでも、そっちを選ぶのか?」
マインは痛いところを突かれたような顔をしました。
「うん・・・私にとっては、『居場所』だからさ・・・シュウだって、もしお母さんとかお父さんとかと死ぬまで一緒に居るのと、夢を叶えるの、どっちから選べって言われたら、家族と一緒に居る方を選んじゃわない?」
わたくしは、それになんの返事もできず、それっきりマインと別れました。
「・・・お母様と、お父様」
呟いてみても、よく想像できません。生まれてから一度もあったことがない人を想像するというのは、とても難しいものです。
そのまま、わたくしは新しい住まい――北の離れへと帰りました。