男塾の塾長 江田島平八が高度育成高等学校に就任。
そして江田島平八塾長のあのセリフが高度育成高等学校の生徒たちに向け宣言する。
男を磨き、日本の将来を背負って立つ人間を育成することを目的とする私塾・男塾の塾長 江田島平八。
彼の伝説は底知れぬものであった。
東京帝国大学に11歳で入学、首席で卒業し、旧日本海軍中将まで昇進したと噂され、時の首相とは女子トイレを覗いた仲でもあった。街中で戦車を乗りまわして大学まで突っ込んで大暴れした挙句、駆け付けた警官に対して「これは映画のロケだ」とオチをつけたり、やりたい放題であった。
かつてアメリカ大統領から「EDAJIMAがあと11人いたら連合国は敗北していた」(つまり一人で一国の戦力という計算)とまで言わしめ、さらにかのGHQ総司令官をもってしても「EDAJIMAが二人いればアメリカは負けていた」と言わしめるほど。まだまだ伝説は数多いが省略する。
現在、150歳以上という高齢でありながらも未だに健在。
そして日本政府がエリート育成を目的とした男塾と育成目的に類似点がある高度育成高等学校にて不正疑惑発覚より謹慎中の坂柳成守に変わって江田島平八は理事長として就任する事となった。
江田島平八塾長は理事長として就任後、自己紹介を含め高度育成高等学校の生徒へ向けてスピーチをする事となった。
当日、江田島平八塾長が現れ、体育館に集まった生徒たちに対して訓を垂れる。
目を坐らせて、塾長があいさつに立つ。
そのやかましすぎる一喝は校内中のガラスを割り、空の鳥も落とし、通話先の電話を破壊するほどの物理的な威力を持ち、生徒たちの多くがビクッと身体を震わせ、耳を塞ぐ。
中には鼓膜が痺れ、倒れそうになる者も数人。
立っている者の多くがその尋常ではない圧に驚愕するも、目の前の男の前で気を失えば、恐ろしいことが起きそうな予感を感じ、キリッと背筋を伸ばす。
そして江田島平八は生徒たちにさらに喝を入れるべく、かつて苛烈な修練の末、男塾の卒業を迎えた塾生たちに対し、自分が巣立っていった連中に浴びせた言葉を言う……。
「皆いいツラがまえになりおった だがこれだけは肝に命じておけ」
「男なら 幸せになろうなどと思うな 幸せになるのは 女と子供だけでいい」
江田島平八塾長が放った、あまりにも苛烈で前時代的な、しかし一本芯の通った「男の死生観」。合理主義と自己愛を重んじる生徒たちと学園の方針を真っ向から否定する苛烈な訓示。
これを突きつけられた高度育成高等学校の生徒たちの、一瞬の静寂の後の反応は……。
綾小路 清隆
「……。幸福を放棄し、他者のための礎となることが『男』の定義か。ホワイトルームの『個の完成』とは対極にあるが、組織を維持するための滅私奉仕としては究極の形だな。だが、塾長。その理論では、俺たちがこの学校で競い合っている『自由』や『未来』という報酬そのものが無意味になってしまうんだが。そして俺に『幸せを諦める』という選択肢はない。俺は俺自身の幸福のために、この学校に来たんだからな」
堀北 鈴音
「……(絶句)。な…何を言ってるの……? 時代錯誤だと言い捨てたいけれど、その眼光に気圧されて言葉が出ないわ。……男は死ね、女と子供は幸せになれ? 冗談じゃないわ。性別で役割を固定されるのも、庇護の対象として扱われるのも御免よ。私は私自身の実力で勝利という名の幸福を掴み取ってみせる。」
龍園 翔
「ククッ……!あのジジイ、最高にイカれてやがる。俺に幸せを捨てて死ねだと? 死ねと言われて大人しく死ぬほど殊勝なツラはしてねぇが、面白いじゃねえか。だがよ、塾長。俺にとっての幸せは、テメェみてえなバケモノを地獄へ引きずり落とすことなんだよ。死ぬのは、俺の支配を完成させてからだ。」
坂柳 有栖
「ふふ、実に野蛮で、そして純粋な美学ですね。男性にのみ自己犠牲を強いる…。まるで絶滅した恐竜を見ているようで、とても興味深いですわ。ですが、その教えに従えば、この学校の男子生徒は皆、私のための『御盾』として散るのが
一之瀬 帆波
「そんな……! 幸せになっちゃいけない人なんて、どこにもいません! 男の人だって、泣きたい時は泣いていいし、幸せを望んでいいはずです。塾長さん、あなたの言葉はあまりに悲しすぎます。誰かが犠牲になるんじゃなくて、みんなで手を取り合って幸せを目指すのが、私の理想なんです……っ!」
南雲 雅
「ハハッ! 潔いな。だが、俺は誰かのために死ぬつもりはない。生徒を俺の幸せのために死なせる、それが俺の『男』としての流儀だ。江田島、あんたの思想は俺の支配下では少し都合が悪すぎるな。」
佐藤 麻耶
「え、ええ……!? ちょっと待って、今のマジ? 『男なら死ね』って……。え、じゃあ私の好きな人も、いつか ……? そんなの……そんなの絶対ヤダよ……!」
篠原 さつき
「はぁ!? 何その古臭い考え! 男は死ねって、 幸せになるのは女だけとか、そんなの全然嬉しくないわよ、バカじゃないの!」
高円寺 六助
「塾長。君は一つ大きな勘違いをしている。私の幸せこそが、この世界の幸せなのだよ。私が死ねば、世界から美しさが消えてしまう。そんな損失を神が許すと思うかね? あまりにナンセンスだ。男だの何だのという枠組みで私を縛ろうとするのは無益だよ。君の筋肉は素晴らしいが、美学があまりに時代遅れだね。フッフッフッ!」
葛城 康平
「……。自己を捨て、集団の礎となる覚悟。規律を重んじる者として、その精神性には敬意を表する。だが、我々は明日を作るためにここにいる。死を前提とした教育が、果たして次世代に何を遺すというのか……。重い問いだ。」
須藤 健
「男は死ね……!? 冗談じゃねえ、俺は未来と幸せを掴むために頑張ってんだよ! ……けど、あのジジイの目……。本気で言ってやがる……。あのジジイに言われると、『押忍!』って言わなきゃいけねえような……これが『覇気』ってやつか……。」
平田 洋介
「……。どうして、自分を犠牲にすることだけが強さだと言うんですか。僕は、みんなで幸せになりたい。男とか女とか関係なく、一人も欠けずに笑い合える未来を目指しちゃいけないんですか……?」
伊吹 澪
「……。男は死ね、女は幸せになれ? ナメんな。アタシは女扱いで守られるくらいなら、その場で舌を噛み切ってやる。アタシの魂は、あんたの言う『男』よりもずっと尖ってるわよ。」
軽井沢 恵
「ええっ!?ちょっと何このおじいさん、怖すぎ!死ねとかありえないんだけど!……でも、なんかこの人の前だと、隠し事とか全部見透かされそうで……直視できないわ」
櫛田 桔梗
「(涙を浮かべて)塾長さん、それはあまりに酷です!女子も男子も生徒みんなが幸せになるべきです!(傑作。この筋肉ジジイ、マジで言ってんの? 幸せになるのは女だけ? 最高じゃない。男子全員、私のために死ぬまで働いてポイント貢ぎなさいよ。)」
池 寛治
「ひ、ひえぇぇぇぇっ!? うるさすぎる。それに男は死ねって……マジかよ!? せっかくこの学校に入って、これから可愛い女の子とイチャイチャして幸せになる予定だったのに! ふざけんなよおっさん、俺はまだ死にたくねーよっ!」
松下 千秋
「(一歩引いて冷ややかに分析しながら)え、マジ …?? 今時そんな価値観で人動かそうとしてるの? ……でも、あの塾長、ただの精神論じゃない『何か』があるわね。」
幸村 輝彦
「生存本能を完全に否定する思想……。生物学的には種の保存に反するが、社会学的には『特攻』や『殉教』による集団の維持を狙ったものか。……だが、個人の利益最大化を是とするこの学校で、この訓示が浸透する確率は、限りなくゼロに近い。」
椎名 ひより
「……。古風な、あまりにも古風な武士道精神ですね。まるでページが血に染まった戦記物語を読んでいるようです。私には刺激が強すぎますが、その一途なまでの厳格さは、男女の扱いの差を除けば文学的な美しさを感じてしまいます。」
神室 真澄
「はぁ? 何このジジイ、頭沸いてんの? ……って言いたいけど、この威圧感、ただ事じゃないわね。坂柳の嫌がらせよりよっぽど心臓に悪いわ。」
佐倉 愛里
「……。死ぬのが……教えなんですか……? 私は、みんなで生きて、みんなの笑顔を……撮っていたいのに……。そんなの、悲しすぎます……。」
王 美雨(みーちゃん)
「……っ!(あまりの気迫に震え、奥の瞳に涙を浮かべる)。そ、そんなの……悲しすぎます……! 男の人だって、生きて幸せにならなきゃダメです! 死ぬのが教えだなんて……私、認められません……っ!」
山田 アルベルト
「……Dead? No. I will survive for my brothers. but…Respect. (静かに拳を胸に当てる)」
※その巨体をもってしても、塾長の覇気には一瞬気圧されるが、自身の静かな闘志は崩さない。
石崎 大地
「ひ、ひいいいっ!龍園さんより怖えええ!あの目が……目がマジだ!殺されるッ!!」
橘 茜
「(かつて堀北学の書記として鍛えられた冷静さで)……驚きました。今の時代、組織のトップがこれほど極端な自己犠牲を強いるなんて。……学様なら、この言葉をどう受け止めるのでしょうか。」
堀北学
「……(唖然)。私心が一切感じられない、純粋なまでの滅私奉公。今の日本において、これほど強固な精神的支柱を維持している者がいるとはな。男が礎となり、女子供がその上で幸福を享受する……。その是非はともかく、組織の『根幹』を支える者の覚悟として、これほど重い言葉はない。」
茶柱 佐枝
「……ふん。相変わらずだな、塾長。この学校のシステムすら、力ずくでねじ伏せかねない男だ。お前たち、あの方の言葉を額面通りに受け取るな。だが、その『覚悟』だけは学んでおけ」
男は、「幸せ」はなる事はおろか、「幸せ」と「死ぬ」こととの間で生きることも許されないと言うのか…。
この発言はブーイングを呼び、その後も大きな論争を呼び、一部女子生徒からは支持を受けた一方、ほとんどの男子生徒や女子から猛反発を受け、それが大きな騒動を生み出していくのはまた別の話である。